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Story 09.理解できる人。
シェア生活を始めた頃から、真ちゃんは元々働いていた会社での仕事にプラスして家業のお仕事も始めると言い出した。
真ちゃんちの家業は、いわゆる「見えないモノと関わるお仕事」
今ではヒーリングだとか何とかセッションだとか、「見えないモノ」を扱うことはポピュラーとなっているものの、当時はまだまだ怪しかったり、よくわからなかったり。
真ちゃん自身も特に詳しく話さないので「そんなものか」とあまり深く追及はしなかったけど。
テレビでやるホラーな特番や雑誌なんかの占いは大好きだからすごく氣にはなるんだけどね。
霊能者が同居人とか楽しそうだし。
二足の草鞋生活を送る真ちゃん。
私たちの前では普段と変わらないようにしているようだけど、7月に入った頃からどうも様子がおかしい。
最初は、体調が悪いからのかな?働きすぎじゃない?くらいの違和感しかなかったけど、日が経つにつれて張り付いた笑顔というか、とにかく目が笑っていない。
会話が飛ぶ。虚ろだったり。
休日でも、誰よりも早く起きて家事をしていたのが朝起きるのが遅くなったり。それでも、家事は一番していたけど。
きーちゃんが夏休みに入る頃には、必要以外に部屋から出て来なかったり、食事の回数が減り、素人目に見てもなんだかおかしいとわかるようになっていた。
初めはダブルワークで疲れてるんだろうか。とみんなで話していたんだけど、これはちょっと放置してたらマズいんじゃないかと言うくらいになってきて、真ちゃんのご実家の主治医の先生に相談することにした。
旦那が何故主治医の先生と繋がっているのか謎だったけど相談しやすい先生に相談出来たから良しとしておこう。
真ちゃんが小さい頃からずっと主治医として知っている先生もおかしい様子をすぐに感じたようで、ひとまず2週間程休職して休養をという結果。
後で職場の社長さんから、早いうちに様子が違うことに氣がついて休みを取るようにと言ってくれていたようだったけど、本人が大丈夫と言って休まなかったと教えてもらった。
ドクターストップに加えて、更に業務命令と社長さんから3週間の療養休暇を渡された真ちゃん。
きーちゃんと真ちゃんが夏休み組。けど、一抹の不安。
その時の私の仕事は、旦那が働いているお店の事務員。
オーナーは私たちの家の事情も知っていたり、真ちゃんの会社の社長さんとも仲良かったこともあってしばらく時短勤務をさせてもらうことになった。(まあ、仕事が少なかったってのもあるんだけどね。)
それでも、15時までは朝から私は仕事。旦那も帰りは19時過ぎ。
アキちゃんはマイペースを貫き、家に居ても夕方仕事に行き昼前に帰宅。むしろ滅多に帰ってこないため戦力外。
きーちゃんは夏休みなので留守を頼むことになるしかない。
氣分は子供を初めてお留守番させるお母さん。笑
お留守番初日は、お昼ご飯を2人分用意して、出来そうならやっていて欲しいお手伝いをリストアップしたり、緊急連絡先(お店の電話番号とか)をわかる所に貼ったりして出勤。
当時、きーちゃんには言わなかったんだけど(むしろ今まで言ったことが無かったんだけど)まがりなりにも年頃の男女を2人にさせる。ってのも結構心配だったり。ほら、きーちゃんまだ中学生だし。
これを出勤する時に旦那に言うと「おかんか!」と爆笑されたんだけどね!
そんな人の心配を爆笑で終わらせた旦那が、こっそり休憩ごとにきーちゃんに電話をかけていたことを私は知っている。
私がおかん(母)なら、あんたはおとん(父)じゃない。
過保護なほど心配をしながらも、なんと初日から仕事が片付かず、時短勤務の許可をもらったというのに終業がいつもどおりという失態をおかしてしまったワタシ。
終業間際に顔をだしたオーナーにも呆れられちゃったわ。
そんなオーナーの粋な計らい(?)で、旦那が早上がりさせてもらい一緒に帰宅することになった。
帰宅すると、家の電氣がついておらず更に静か。
いろんなシチュエーションが頭をよぎって急いで家に入ると…ソファーにきーちゃんが、その傍らに真ちゃんがお昼寝中。
きーちゃんには真ちゃんがいつも使っているタオルケットがかけられている。
超悶絶。
だって、すごく微笑ましいじゃない?
リビングに私たちが入ると、すぐに真ちゃんが起きちゃって「もうちょっと寝かしたって。言われた手伝い頑張っとったで」と言い残してすぐに自室へ戻っちゃった。
私たちが居ないと部屋から出てくるのに、私たちが居ると部屋にこもるって、もしかして私たちが原因??と柄にもなく少し不安になったけど、完全に引きこもっているわけではないことがわかったから敢えて考えないようにすることにした。
でも、やっぱり氣になるじゃない。
私たちが原因だとしたら、やっぱり今後のことも考えなきゃいけないし。
食事中、悶々とする。
けど、長い時間悶々とするのってやっぱり苦手なので、食後、きーちゃんを本屋さんに行こう。と誘ってみた。
車で本屋さんへ向かっている途中、天氣が崩れ出してきて目の前に絵に描いたような稲光が見えた後雷が落ちた。
「今の真ちゃんな、あんな感じ」ときーちゃん。
あんな感じとは・・・?
本屋さんはゆっくり留守中何か真ちゃんが言ってなかったかを聞き出すための口実だったので、本屋さんには行かず隣のファストフードのお店へ入って聞き出す。
「真ん中が真ちゃんだとすると、まわりにうわーーって雲があって、真ちゃんがバラバラになりだしてるねん」
1回じゃわかんない。笑
何度か根氣強く聞き返すワタシ。それに根氣強く答えるきーちゃん。
ようやくふわっと言っていることが理解できた頃にはドリンクも空っぽになっていた。
きーちゃん曰く、真ちゃんの周りになにか黒いモノがたくさんある。
真ちゃん本体が太い光だとしたら、稲光みたいにその太い光が枝分かれしている。
黒いモノが真ちゃんを覆うと、しんどい真ちゃんになってしまう。
時々、ピカピカーって雷みたいに光って、黒いモノを消しちゃうんだけど、その光がいくつも枝分かれしてる。
一番辛そうだった時、ピカピカーって光る度に光が枝分かれしてすごく痛かった。
こんな感じのことを一生懸命説明してくれた。
この説明を聞いても全部理解できなくて、きーちゃんの感覚を共有できないことに申し訳ないやら、力不足に情けなく感じるやら。
「光が枝分かれするのは今でもしてる?」
「まだ痛い?」
そんな感じのことも聞いたような。
きーちゃんなりに私に伝わるエラーを少なくしようと必死に答えてくれるんだけど、やっぱりきちんと受け取ることが出来なくて、自己嫌悪に陥りそうになった時にふと、真ちゃんのおばあちゃまを思い出した。
真ちゃんのおばあちゃまなら、きーちゃんの言っていることを理解してくれるかもしれない。と思ってすぐにおばあちゃまの所へ連絡を入れると、翌日なら時間を取れるからうちまで来てくれるとのこと。
「きーちゃん、さっきの話ね、真ちゃんのおばあちゃまに話しできる?」
きーちゃんの表情が固まってしまったけど、「おばあちゃまならちゃんと全部理解してもらえると思うの。そしたら真ちゃんが治るきっかけになるかもしれないからお願い!」と言うと「頑張る」と強張りながらもきーちゃんは頷いてくれた。
翌日、約束通りおばあちゃまと主治医の先生が到着。
私も一緒に話の場に居たいという氣持ちはあったものの、旦那が「これはきーちゃんとばあさんとだけで話した方がいい」と言った為席を外した。
少し話をした後、「おばあちゃんとちょっとお買い物行ってくるね」ときーちゃんが言って、おばあちゃまと先生ときーちゃんは外出してきーちゃんが帰宅したのは夕方だった。
「真ちゃんにね、これをあげるねん」
夕食の時にきーちゃんが小さな袋がたくさん入った紙袋を見せてくれた。
「おひとつどうぞ(´∀`*)」と私と旦那にその小さな袋を手渡すきーちゃん。
小さな袋には、金平糖と七色の飴。
「これってきーちゃんのお守り?」
「おばあちゃんがお菓子屋さんに連れて行ってくれて、お菓子屋さんがセットにしてくれてん」
おばあちゃまときーちゃんの計画は謎のままだけど、まあ、任せるしかないよね。
きーちゃんのお守りセットを用意して帰ってきた翌日も、私たちは仕事だしアキちゃんは不在で、またきーちゃんに家のことをお願いして出勤。
きーちゃんによると、私たちの留守中は真ちゃんも時々部屋から出て来ることもあるようで「何で私たちが居ると出てこないのよ」と心配やら不満やらムカつきやら複雑な心境。
やっぱりこの生活に無理があるのかしら?
まだこの頃は、私も常識というかそんなものを少しは持ち合わせていた。
今ではシェアハウスなんてものが存在するみたいだけど当時はまだ少数派で、同棲することもヒソヒソされることもあった時代。
誰かに無理させてまでこの家に居座るのはどうなの。と広がるネガティブ。
「ねーさんが嫌いだからじゃないで」
夕食の片付け中、きーちゃんがポツリと一言。
もしかしたら、きーちゃんなりに氣を使って言ってくれたのかもしれないんだけどその時はなんだかネガティブがすっと晴れていって氣分も楽になった。
翌日以降もきーちゃんにお留守番を頼んで私たちは仕事。
仕事中、家の様子が氣になって仕方ない。
けど、きーちゃんたちに任せる。と決めた以上あれこれ聞き出したり口出しするのも私のプライドが許さず、何とももどかしい日々が数日続いた。
帰宅すると、また2人はリビングのソファー周りでお昼寝中。
この光景、なんかやっぱりいいわぁ。かわいい。
迂闊にリビングに入ると真ちゃんが起きちゃってまた即部屋に戻るかも。と思って、全力で氣配を消してリビングへ。
やっぱすぐに起きた。神経質なヤツめ。
「おかえり。コーヒー飲む?」と真ちゃん。
真ちゃんが喋った!てか、部屋に行かない!
もうびっくり。
旦那と顔を見合わせたよね。
なんだか嬉しくなって自分でテンション上がっていくのがわかったんだけど、このタイミングは、はしゃいでいたらダメ。という冷静さは持ち合わせていたみたい。
「冷静に冷静に、ワタシもう大人だから。」
心の中で念仏のように唱えて、真ちゃんがコーヒーを入れてくれるのを待った。
氣を抜くとあれこれ質問責めにしてしまいそうで。
聞きたいことしかなかったからね。
「迷惑かけてホンマごめん」
私たち2人にコーヒーを淹れてくれた真ちゃんは頭を下げて謝った。
その姿を見てまたあれこれ聞きたいことが出てきたもんだから再び念仏を唱えたり、質問責めをしないように、少し伸びた真ちゃんの髪を見て「このまま伸ばせばいいんじゃない?とか、次思い切って色変えてみたらいいのに」と明後日の方向のことを考えて氣を紛らわせる。
「まあ、氣にするな。ひとまず回復させな」みたいなことを旦那が言ってた氣がする。
「何があった」とか『原因を聞く。』ことは全然してなくて、もどかしい氣持ちがあったり。
でも、私は人の氣持ちを読み取るのが苦手だ。っていうことはしっかり自分でわかっているのでお口チャックを貫く。
ドラマとかだとこのタイミングでまた部屋から出てきて夕食を一緒にとるようになって…となるんだろうけど、そこまで人生ってドラマじゃなくって。
コーヒー飲んだらまた部屋に戻って行く真ちゃん。
まったく引きこもって出てこない。とかは無いからいいんだけどね。
旦那を見てると平常どおり。なんでそんなに普通でいられるのか。
もう3日も4日も留守を頼めば慣れてしまう人間の習慣の恐ろしさ。
旦那の指示により、あえて真ちゃんの様子を聞いたり本人に直接話しをしないようにしてコーヒーを淹れてくれてから姿を見てない。
時々物音はするし、明け方にお風呂を使ってる様子があるから生存はしているらしい。
そっとしておく。となると逆に氣になるものじゃないのか?って思うんだけど、旦那はやっぱり今まで通りだし、本人の兄貴に至っては休みが始まってからほとんど帰宅すらしていない始末。
思ったよりもきーちゃんが家事を覚えてくれていたおかげで特に不便を感じないけど、なんだろう、微妙な感じ。
私の性格的にいざ顔を合わせるときっと腫れ物に触るような態度をしてしまうから、旦那はいつも通りに過ごせ。と言ったんだろうと想像はつくものの、理由がわからないとこっちもどうしたらいいかわからないじゃない。
自分の中でもよくわからない苛立ちや不安があった。
その日は残業になってしまって帰宅は旦那と一緒でもう陽も暮れて夜になってから。
帰宅すると、外灯どころかリビングもまっくら。
鍵もかかったまま。
声をかけても返事なし。
自分の家に帰った?
きーちゃんの性格的に黙って帰るとは考えにくい。
2階の様子を見てきた旦那も上には居ないと言う。
見てない部屋は、ひとつ。
もうね、最悪な場面がたくさん浮かんで急いで真ちゃんの部屋へ。
勢いよくふすまを開けると、2人が横になっている。
廊下の灯りで目を覚ましそうなのに、真ちゃんですら微動だにしなくて。
電氣のスイッチに手を伸ばすのが怖いから、旦那に電氣をつけてもらう。
血塗れの惨劇…を想像してしまっていたんだけど、部屋の中に散らばっていたのは、
紙。
紙。
紙。
拍子抜け。
人間、安心すると脱力するんだね。
心配して損した!と思ったら、なんだか無性に腹が立っちゃって。
「帰ったよ!何寝てんの!」って真ちゃんをひっぱたいちゃった。笑
冷静になって、部屋に散らかってる紙を見ると謎の絵と文字と謎の文字。
そして、いろんなカタチに切り取られた色紙。
血塗られた惨劇も怖いけど、違う意味で怖い。
超ホラー。
呪われた家に貼られてるお札とかそんな感じのものが散乱。
呪われた家に行ったことないし、そんなお札も見たことないけど。
怪談とか好きだし、心霊スポットって言われるところも平氣だけどめっちゃ怖かった。
旦那は真ちゃんの部屋がこんなに散らかるなんてちょっとレア体験やん。的になんか楽しそうだし。
「ごはん、食べるの忘れてた」と起き抜けにきーちゃんが言ったら、「なんか作ろうか」と真ちゃんがきーちゃんを連れてキッチンへ行ってしまった。
んーー。なんだか釈然としない。
旦那は至って普通で「部屋から出たやん。しかもメシ作りに行ったで」
この人(旦那)ちょっとずれてる?
いやいやいや。
聞きたいことだらけなんだけど。
ここで怒るのは大人げないので、着替えてリビングへ。
真ちゃんの作る食事は久しぶりー。とか氣分変えたのに…真ちゃんが作ってたのはおにぎり。
残業、頑張ったのにおにぎりとお味噌汁って…。
脱力し過ぎて、ピザ頼んだわ。
その後、きーちゃんをお風呂やさんに連れ出して、あのホラー部屋になった理由を聞き出すことにした。
「最初ね、くるくるが見えてん」
くるくる?
「そしたら、他のも見える?って」
他のってなにさ。
「だから、くるくるは見えないけど時々見えるのを描いたり字を書いてもらってたん」
えーーっと。
きーちゃんは時々ものすごく年齢よりも幼いというか、言葉が足りなさ過ぎる氣がする。
でも、逆に年齢よりもずっと大人みたいな時もあるし。
大人スイッチ入ってー!
そんな願いが天に通じたのか、大人スイッチが入ったきーちゃん。
日中、お手伝いをしていると真ちゃんはそれを手伝いに出てきてくれるらしい。
そこできーちゃんの見えるもの感じるものの話になった。
それを聞いて真ちゃんは、色紙を切ったり文字を書いたりして、それがどんな感情や何を表してると思うかと聞いてきたのでそれを答えた。
ざっくりとこんな事をしていたと教えてくれるきーちゃん。
色紙や文字がどんな感情とか、漢字の意味以外になにかを表してるとか、まだピンとは来ていなかったんだけどね。
ひとしきり、きーちゃんが見えるもの感じるものを描いてたら2人揃って何だかものすごく疲れて寝てしまった。とのこと。
その辺のことに詳しくはないけど、その表すものを描くことでエネルギーを消耗したんだろうな。ということはなんとなく理解できた。
でも真ちゃんまで爆睡する意味はわからない。