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Another story 68.伝えたいこと。
真ちゃんちの子にして下さいとお願いすると呆氣ない程すんなりと真ちゃんは「喜んで」と言ってくれた。
たくさんのオマケの言葉が付いてきてしまうけど、私が真ちゃんと居たいと思うこと。これを受け入れてくれて嬉しかった。
おばあちゃんに言いたかったけど、おばあちゃんもおっちゃんも仕事で泊まりだから仕方ない。
真ちゃんは電話して言えばいいやんと言ったけどおばあちゃんにも「私を真ちゃんちの子にして下さい」ときちんと会ってお願いしたかったからおばあちゃんが帰ってから話をすることにした。
多分、これから何度も心が折れてしまうことがあると思うし、今だって消えてるタイムラインの事や私じゃない私がいつ現れてしまうか怖くて仕方ない。
けど真ちゃんがその度に光を分けてくれるし「大丈夫」と言ってくれる。
「真ちゃんの光を貰うやん、そしたらね強くなれる氣がするねん。早く強くなるからね」
お布団に入って眠くなるまでのおしゃべり。大好きな時間。
これも甘えてるのかもしれないけど、思ってることを素直に聞いてもらうことにした。
だっていつも真ちゃんは私の声を聞いてくれる。
「怖いと思った時にそう言ってくれたらいいで。1人にさせんし、無理に強くなろうとせんでいい。生きてここに居るって思い続けてくれたらいい」
そう言ってくれる真ちゃんの声が心地いい。その言葉に甘えていたいけど、もう少しくらい出来ることを増やしたい。
立ち位置を整えることで私の力を正しく使える。という意味はまだ分からないけど、ちゃんと理解出来るようになる氣がする。
「婆が帰ってきたら結構忙しくなるで。でも絶対無理したらあかんねんで」
どれだけ忙しくなるかは想像出来ないけど、こうやって心配させてしまうことも減らしたい。
大丈夫、大丈夫。
真ちゃんが居てくれるって言った。
私にはねーさん達やおばあちゃん達もいる。
焦らなくていいっておばあちゃんが言ってくれた。
少しづつ、心配させてしまうこと減らそう。
翌日の朝、おばあちゃんから電話がかかってきてお仕事のお手伝いを頼まれた。
早くおばあちゃんに言いたかったせいか、何だか緊張してしまった。
「大丈夫やで。この仕事を頼むってことは婆はキリエの事をちゃんと認めてるってことやで」
「もう一段、頑張る!」
「頑張らんでええって」と真ちゃんが笑う。
こんなやりとりが出来るのが嬉しい。
文箱を取ってきて頼まれたお仕事を始める。
いつもよりも穏やかな氣持ちで筆が進む。
おばあちゃんだって、お家のお仕事をこうやってお願いしてくれる。
きっと家族になれる。
一段落すると、リビングが賑やか。
聞いたことある声。
「ねーさん!」
何で?今日来るって言ってた?
美樹ちゃんも居る。
「きーちゃん元氣なったねー」と言ってハグしてくれるねーさん。
「ねーさん来るの内緒にしてたん?」
真ちゃんに聞くと「キリエが仕事始めてちょっとして電話来てん」と返事が返ってきた。
そうなんだ。
美樹ちゃん達が働いていたお店のオーナーのお家に遊びに来たって。
マハルくん達に会いたかったけど、マハル達はオーナーのおっちゃん達とお留守番だって。
ねーさん達とゆっくり話したいから早くお仕事仕上げちゃおう。
真ちゃんと美樹ちゃんでお買い物しに行ってくれてる間、ねーさんとお留守番。
真ちゃんは「キリコは蛍光灯か?」って笑うけど、やっぱりねーさんが居るとお家が明るい。
「私の蛍光灯はきーちゃんだから、蛍光灯姉妹で良いじゃない」とねーさん。
どうしよう、ねーさんにちゃんと真ちゃんちの子にしてもらえるって言いたくてソワソワする。
でもまだおばあちゃんにオッケーって言ってもらってないしなぁ。
「ねえ、きーちゃん」
言いたくてウズウズしていたらねーさんが呼ぶ。
「さっき神さまに約束しに行くって言ってたやん?あれって決まった日に行かなきゃダメなん?」
あ、ポロっと言っちゃった時のことだ。
いいや、ねーさんは特別。話しちゃえ。
真ちゃんちの子にして下さい。ってお願いした話。
でもやっぱり怖いことも思うけど、真ちゃんが「よろこんで」って言ってくれたこと、その言葉を信じて強くなろうと思うことを聞いてもらった。
「そっかそっかー。何か嬉しい!安心したよ。大丈夫、きーちゃんはね、きーちゃんだから。きーちゃんが笑ってると私も美樹も真ちゃんもみんな嬉しいの」と言ってハグしてくれた。
「真ちゃんはね、世界一きーちゃんのこと大好きだから安心。そこは私が真ちゃんよりもきーちゃんが大好きって言いたいんだけど、私あんなに突き抜けて屈折した変態にはなれないからなー。世界一の座は譲る」と笑うねーさん。
「美樹が真ちゃんぶん殴らないように止めなきゃね」
美樹ちゃん、真ちゃんをぶん殴っちゃうの?それは大変。
「私も一緒に止める」
「そうしよう」と言ってまた2人で笑った。
4人でご飯を食べるのは一緒に住んでいた頃を思い出して嬉しい。
けど、今日はご飯を食べたらねーさんと美樹ちゃんは帰っちゃうのはちょっとさみしい。
「今度はマハルくんもタマキくんも一緒に来てね」
「もちろん。元氣なきーちゃんに会えて良かったよ」
ねーさん達を見送る。
「次会う時は一緒に美樹を見張らなきゃね」とねーさんが内緒で言って、それが何だか面白くて今日は泣かなくて済みそう。と思ったけど、やっぱり悲しい。
「そろそろお邪魔虫が帰った!ラッキーとか思いませんか」と言って笑う真ちゃん。
次会った時、美樹ちゃんにぶん殴られるがいい。
何でねーさん達がお邪魔虫なんだ。
おばあちゃんが帰って来て、真ちゃんちの子にして下さいと2人でお願いした。
おばあちゃんは「本当嬉しいわ。ありがとう」と言ってくれた。
「きいちゃんを正式にお迎えする支度しなきゃあかんね。忙しくなるから手伝ってね」と言っておじいちゃんに一度帰って来るように電話をするおばあちゃん。
おじいちゃんはその日のうちに帰って来ておじいちゃんも「良かった、これで安心や」と言ってくれた。
「そっかー。想像通りー。ありがと」
おばあちゃんとおじいちゃんにお願いした次の日。
午前中会社へ行って帰ってきた真ちゃんの言葉にそう言うしか無かった。
想像通り。と言うのは私のおとーさん達。
高校に上がる頃から、真ちゃんの繋がりからおとーさんの会社と真ちゃんの会社で取引きするようになっていた。
今日、おとーさんに会ったから真ちゃんが私が真ちゃんちの子になるという話と改めて挨拶に行きたいことを言ってくれた。
おとーさんは思った通り「好きにしたらいい」と言って挨拶もわざわざしなくてもいいと言ってたらしい。
想像通りだけど、なんだろう。寂しいのか悲しいのか変に反対されなくて安心しているのか、複雑だった。
「ごめんね」
「何でキリエが謝るねんな」
「だって…」
多分ね、普通ならきちんとご挨拶しなきゃいけないと思う。
友達がおねーちゃんがお嫁さんになるからって家族揃って旦那さんになる人の家族と会ってご挨拶しに行くと言ってた。
だからきちんとご挨拶が出来ないことはおばあちゃん達にも失礼なんじゃないかしら。
「そんなことで失礼やなんて思わへんよ。逆にうちがちゃんとご挨拶出来へんのが心苦しいけど、そんな事できいちゃんをうちに迎えられへんようになるなんて無いわ」
おばあちゃんのお仕事のお手伝いをしながら真ちゃんから聞いた事を伝えて謝った。
「これからちょっと出かけられる?真弥も仕事入ってへんかったでしょ。」
「大丈夫だと思う。どこ行くん?」
尋ねるとおばあちゃんは「とってもええ所よ。善は急げって言うやろ」と笑った。
おばあちゃんと真ちゃんおっちゃんと市街を抜けた呉服屋さんへ向かった。
昨日の間にいつもお世話になっている呉服屋さんに連絡したら、今日はお休みだったけど特別にあけてくれたとおばあちゃんが教えてくれた。
神さまにご挨拶の時、もといお式をする時の着物を誂えてくれると言うおばあちゃん。
さすがに普段着でご挨拶するわけにはいかないのは分かってるけど。
「うち、意外と古い家やでな…なんか婆のが盛り上がってる氣もせんでもないけど…」
呉服屋さんの奥さんと話すおばあちゃんを見ながら真ちゃんが言った。
「お式って前に見たみたいなことするの?」
「みたいってか、それですな」
何だろう。真ちゃんちの子になるのと結婚式とが結びついてなかったから変な感じ。
「じゃあ、あんな感じなん?」
「まあ、そんな感じやろうな」
「何をどうしていけばいいか全然知らない…」
「ワタシもよう分からんけど、婆に任せとったらええんちゃうかしら」
おばあちゃんに呼ばれて、反物の見本を見せてもらう。
どれも綺麗な刺繍がしてあって目移りする。
ふとあの日黒い着物が見えた事を思い出した。
「あのね、こういうお式の時に黒い着物を着るのっておかしい?」
そのまま聞いてみた。
白無垢姿の人の方が圧倒的に多いけど黒もあると教えてもらった。
「きいちゃん黒がええの?」
お店の奥さんが黒い着物を用意できるか聞きに行ってくれてる間におばあちゃんに前に浮かんだ映像の話をした。
「それやったら黒を用意しなあかんね」とおばあちゃんが言ってくれた。
「白は嫁ぐ家に染まる。って意味があって黒いのはもうこの家の人間です。って決意の色なん」
そんな意味があるんだ。
ねーさんの時のパーティもねーさんは黒いドレスだったからお揃いみたいで嬉しいし、このお家の人間ですって決意を表すなんて素敵。
白無垢よりも時間はかかってしまうけど用意出来ると返事を貰えた。
お式の時の着物だけかと思ったら、おばあちゃんは他にも紋の入った物を誂えてくれると言う。
「真ちゃん、お着物ってさ、とっても高価なものじゃなかった?」
「相場はよく知らんけどその辺で服買うのとは違うと思うで」
「いいのかな…」
いきなり現実的な問題。これ、私のお小遣いでどうにかなるものを軽く超えてる氣がする。
どうしたらいいんだろ。
「うち、意外と古いから…」
真ちゃん、それさっきも聞いたよ。
「婆が用意するんちゃうか?ワタシもう、そのつもりやで。付き合ってたら破産するわ」と笑うけど、甘えてしまって良いのかな。
だからって多分私にはどうにも出来ないんだけど。
「多分な、婆も嬉しいねん。お迎え前の人生最後の楽しみや思って付き合ったって」
「誰のお迎えや。そんなん来てもまだ追い返します」
おばあちゃんに聞こえてたよ。
お着物をお願いすることから始まって、お式の日を決めたり神社にもご挨拶に行くこと、真ちゃんがお家を継ぐ時と同じように、お仕事でお世話になっているお家の方へのご挨拶の会の準備、私もお家の人間としてお仕事をする為の準備。
家に帰って、母屋に集まってみんなでこれからやらなきゃいけないことを教えてもらう。
お家のお仕事の準備が一番大変かも。
今までは真ちゃんやおばあちゃんのお手伝いや見習いとして関わっていたけど、これからはこのお家の人間として関わることになるから何倍も責任を感じる。
「美樹があんな声出したん初めてちゃうか?」
日にちが決まって真っ先にねーさん達に知らせる。
また明日になったら会えるけど、やっぱり一番最初に聞いて欲しい。
ねーさんに私が電話してお知らせしようかと思ったけど、やっぱりお父さんの美樹ちゃんに言った方が良いかなー。なんて言ってたら、真ちゃんが「じゃあお義父さんやな。電話して挨拶せなあかんやんか」と言って美樹ちゃんに電話してくれた。
電話を切ると、美樹ちゃんは相当驚いていたらしくて真ちゃん何故か爆笑。
後でねーさんにも電話すると『びっくりし過ぎて奥さんも笑ってたよ』と笑ってた。
『私らの時よりもずっと準備とか大変だろうけど、本当無理しないようにね。真ちゃんに任せてゆっくりするんだよ』と言ってくれた。
「寝られなーい!!」
昨日今日と盛り沢山な一日だったせいか、お布団に入っても眠くなる氣配が全くない。
「明日キリコら来るし昼寝できへんで」
「もう明日まで起きとく」
「なんでやねんwww」
私が起きて何かをしようとすると真ちゃんまで寝られないからとベッドに入ったけど、結局起きる予定時間まで寝られなかった。
明日からみんなで旅行に行くため、今日ねーさん達がうちに泊まりに来る。
兄ちゃんが魔法使いのお城のみんなとこっちに来るから私たちもおいでと誘ってくれた。
兄ちゃんからお誘いを受けた時、魔法使いのお城においでと迎えに来てもらっておきながら断ったことを思い出して行っても良いのかと悩んだけど、マスターのおばさんが「元氣になった姿を見せて」と言ってくれてると聞いて会いに行くことにした。
魔法使いのおばあちゃんも一緒に来ると聞いて楽しみだった。
兄ちゃんが魔法使いのおばあちゃんに私の体調が良くないと話してるのを聞いておばあちゃんが呼んでくれたと言ってた。
「真ちゃん、外国語喋れる?」
カウンターの向こうで朝食の支度をしてる真ちゃんに聞いてみた。
「喋れるとは言いきれんけど、何となしやったら分かるかなぁ」
「あのね、後でちょっと教えてほしいねん」
寝られなかった間に思いついた。
魔法使いのおばあちゃんに会ったら聞いてほしいことを先にノートに書いておこうと思った。
前に会った時、おばあちゃんに進路のことを聞いてもらっておばあちゃんの言葉で高校へ行こうと決めた。
その時、おばあちゃんは「学校で学ぶこともとても大切だけど、人生で大切なことは他にもある」と言っていた。
それは、自分の意思で自分の場所を見つけること。大切な1人と出会って喜怒哀楽すべての感情を分かち合って味わうこと。
「よし、やるか!いつでも来い!!」
テーブルに辞書を置いて翻訳スタンバイする真ちゃん。
まだワープだってしてしまうし、タイムスリップしたら怖くて仕方ない。
けど、真ちゃんが一緒に居てくれるし、おばあちゃん達だって家族になることを喜んでくれた。
ねーさんや美樹ちゃんだってずっと一緒に居てくれてた。
私はずっと1人だと思っていたし、この世界に居てはいけないと思ってた。
けど、私がいても良い世界はみんなと暮らしていた時からあって、それまで悲しくて寂しくて仕方がなかったのはこうやってみんなに会う為だった。
真ちゃんと本当の家族になれるの。
真ちゃんのお家の人間として、お仕事もさせてもらえるって言ってもらえた。
私は大丈夫だよ。
魔法使いのお城で言っていた「人生で大切なこと」見つけられたし、もっと見つけられる氣がする。
これを魔法使いのおばあちゃんに伝えたかった。
真ちゃんは一緒に翻訳してくれた。
「ありがとう!!これでおばあちゃんに言える!外国語サッパリやからどうやって言おうか悩んでてん」
「キリエさんや、現役の学生さんなんやからワタシより出来ないとあかんのちゃうの?www」
確かにそうだ。
いいや、ここは笑っとけ。
「けど、ありがとう。『大丈夫』って言ってくれたの嬉しい」と言ってハグしてくれた。
「もっと出来ること増やすからね」
「楽しみにしとるでな」
なんて嬉しい満ち足りた空氣に浸っていると車が止まる音がした。
「あ、ねーさん達かも!」
「キリコら、何かのアンテナ持っとるんちゃうか?いっつも良いところで邪魔しおってからに…」
良いところを邪魔って、翻訳はちょうど終わったしむしろナイスタイミングじゃないの。
ちょっと休憩したかったのかな。朝から頭を使わせちゃってごめんね。