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Story 03.違和感。
当時、私と旦那は超古いマンション。というかマンションという名前が付いてた古いハイツで同棲中で、アキちゃんと真ちゃんの後輩兄弟は元々うちの隣に2人で住んでいて、その縁から仲良くなった。
去年、家のことを全くしないマイペース男の兄(アキちゃん)に我慢の限界が来た真ちゃんが一人で暮らすと言って引越してしまったけれど、ウマが合うのか4人でちょくちょく遊んでいて今に至る。
大家さんがそのハイツの近くに住んでいて家賃を払いに大家さんの家に行くシステムだったので、いつものように私は旦那と家賃を払いに大家さんのお宅へ伺うと「近いうちに退去をお願いしたい」と言われてしまった。
我が家うるさくしてた!?とか一瞬パニックになったけど、よく聞くと大家さん宅の事情で「建物も古いし、売れないだろうから取り壊して…」ということで我が家が迷惑行為をしてたわけじゃなかったから安心。
けど、我が家が原因の退去話ではないものの、そんなにすぐに引越しなんて出来るか?とか、引越しにかかる費用のこととか。
諸々頭を駆け巡るワタシ。
いつまでに退去したらいいのか?と確認すると3ヶ月位の間に退去してくれたら助かる。とのこと。
旦那の交渉で3ヶ月以内の退去でお家賃サービスしてもらえることに♪
やったね。
その後2人揃って仕事が休みだったので、急いで不動産屋さんへ行った。
が、しかし…希望する条件の物件が見つからない…。
まあ、その日に見つけられる方が奇跡ってことで、その日は諦める。
時間的にきーちゃんの学校が終わる時間だったので学校近くを通ってみるときーちゃんを発見。
きーちゃんは私たちの顔を見ると笑顔で手を振ってくれた。
「今からご飯行こうと思うんだけど行く?」と尋ねるとこれまた満面の笑みを見せてくれた。
旦那が真ちゃんとアキちゃんに連絡を入れてくれてみんなでご飯を食べに行くことに決定。
で、やっぱりこの話題になるよね。
そうしたらアキちゃんが一言、「家、買おうや」と言い出した。
アホちゃう?
スーパーで豆腐買うみたいに言わないで。
空氣が固まる。ってリアルにアキちゃん以外が体験したかも。
当のアキちゃんは涼しい顔。
「家買うってケーキ買うのとワケが違うわ!」と真っ当なツッコミを入れてくれる真ちゃん。
兄がよくわからないボケをかまして弟が真っ当なツッコミをする。というスタイル。
よく聞くと、仕事関係の知り合いで家を売却したい人がいて買わないか?と言われていたところだった。
その家を買うのは私たち夫婦(当時はまだ結婚していない)ではなく、
アキちゃん。(若いくせに超お金持ち)
↓
その家は結構広そうなので、みんなで住めば良くない?
と言いたかったみたい。
言葉の足りない人ばっかりなので会話中の言葉の脳内補完が鍛えられた時期でもありました。笑
「それってさ、アキラになんのメリットあるんさ」と旦那。
「メリット?何やろな。面白そうちゃう?」
面白そうってだけで家を買わないで。
超お金持ちの感覚って分からない。
「みんなって?」
質問を続ける旦那。
「ワタシ、おとーと、美樹とキリコと…きぃも来る?」
「いいの?」
5人揃って行動する事が増えたせいか、最初は人見知りを発動させていたきーちゃんも随分と旦那やアキちゃん、真ちゃんへの警戒もとけていて、アキちゃんの言葉にきーちゃんは目をキラキラさせてるけど、中学生だよ?そんなの出来るの?
「行かんで」と真ちゃん。
「なんでよ。おまえが来ないと話始まらんやんか」とアキちゃん。
「おまえと暮らすのは金輪際ごめんや。家のこと全くせんし、好き勝手するし、こっちのやる事増えるの目に見えてる」
それは何だか想像が付く。
うちの隣に住んでた時、結局家のことをアキちゃんがしなさ過ぎて真ちゃんがブチ切れちゃって同居解消したもんなー。
で、結局どうなるのよ。
その後すぐにアキちゃんは例の家を売りたいという人に連絡を入れると言って席を離れ、戻ってくると上機嫌だった。「いつでもイケるで。今度一回見に行くか?」と言うアキちゃん。確かに内覧はしておきたいかも。どさくさ紛れて家具も新調したい。ちょっと楽しみになってきちゃった。
「なー、考え直さん?」
シェア生活の話題が出た次の休みの日。
共通の友達が店をオープンしたから揃ってお祝いがてら食事に来た。
アキちゃんは何度も真ちゃんにシェア生活に参加しないかと誘っているけど、真ちゃんは相変わらず首を縦に振らない。
「前ほど俺家に居らんし、今度は美樹もキリコも居るし、ここは昔のことは水に流そうで」と笑うアキちゃんの言葉に「水に流そうってこういう時兄ちゃんが言うん?真ちゃんが言うんちゃうの?」と首を傾げるきーちゃん。
そうだよ、きーちゃんが正解。
「嫌やて。そんなん言うて面倒なんこっちに回す氣なんやろ」
何度も言われて流石にうんざりしてる様子の真ちゃん。
「真弥も断り続けてるんやし諦めたらええのに」と呆れる旦那。
「あかん、あかん。真弥が来なかったら美樹らと3人暮らしやで?意味わからんと思わん?」と自信満々に言うけど、普通に考えたらそもそも家族でもないのに同居しようって時点でだいぶ意味わからない状況だよ。
「ホラ、かわいいきぃも居るで」
何でそこできーちゃんの名前出すのよ。きーちゃんビックリして硬直してるじゃん。きーちゃんは定住組じゃないから。
「行かん言うてるやろ、いい加減諦めろや」と真ちゃんが口調を強めた瞬間きーちゃんが席を立って化粧室へ行った。
「キリコ、ごめんやけどきーちゃん見てきたって」
きーちゃんの後姿を見た真ちゃんに言われる。
「トイレくらい1人で行けるでしょ」
「やったらええねんけど、やってもうたかもしれん。トイレやなかったら飴食べるように言うたってくれへん?」
何?どういうことよ。
いまいち状況が理解出来なかったけど、旦那にも「一応行ったってや」と言われ化粧室に向かう。
きーちゃんは手洗いの前で座り込んでいた。
「どーしたの?氣持ち悪い?」
声をかけると「大丈夫。ちょっとフラッとしただけ」とうつむいたままで答えるきーちゃん。
貧血?と一瞬思ったけど、真ちゃんが飴を食べるように言われたのを思い出してきーちゃんに言った。
きーちゃんは飴を口に入れて少しすると「もう大丈夫。ごめんなさい」と言って笑った。
貧血じゃなかったのかな?
食事を始めてたから飴を食べてマシになったのは低血糖だとかそんなんじゃないと思うし。
「ホント大丈夫?切り上げてうちで休憩する?」と声をかけると「大丈夫、ねーさんホントごめんね。元氣になった」と笑顔を見せてくれた。
きーちゃんは飴のことを『魔法使いの飴』だって言ってたけど、本当に魔法でもかかってるのか?と思うくらい声のトーンが変わっていた。
「キリコー、勝ったで」
きーちゃんと席に戻るとアキちゃんが嬉しそうに言う。
なにが?
私たちが化粧室に行ってる間に真ちゃんが折れたらしく、私たちとのシェア生活に参加することになったと言う。
「そんなに簡単に決めて大丈夫なの?」
おそらくシェア生活するメンバーの中で一番家事が出来るし色々頼りになるから、親元離れて結構経つけど家事が苦手な私からしたら願ったり叶ったりで嬉しいんだけど、逆に心配になってきた。
「今は仕事であっちこっち回ってそんなに居らんやろうし、了承するまで言い続けられたらかなわん」と真ちゃんはうんざり顔。
「そのかわり、家のことは当番制やからな!全部はせんからな!」
よっぽど前のアキちゃんとの同居で懲りたのね。
「さっきのさ、何できーちゃん見に行って来いって言ったの?」
きーちゃんを送った後、真ちゃんに聞いてみた。
「え?言ったっけ?」
ボケてんの?言ったじゃないの。
「言ったやん。トイレでなかったら飴食べさせてって」
「あ、言ったわ」
ホント若いのにボケてんの?
きーちゃんの感受性っていうのはとても豊かで、その場の空氣にも敏感らしい。
アキちゃんに詰められて声を荒げてしまったから、きーちゃんは責められているように捉えてしまってしんどかったんじゃないかと言った。
「でもさ、それまでのやり取り見てるんだから責めるとは思ってないんじゃないの?」
たしかに飴を食べると落ち着いたけど。
「やり取りを知ってても…なんていうかな。その成り行きと空氣とは別物やねん」
何それ。
「例えばさ、明らかに何か怒られてる方にミスがあって怒られるのは仕方ないと分かってても、怒ってる方が激怒してたりすると自分が怒られてるように錯覚してしまうねん。怒るって感情をキャッチする的な?」
氣の毒に感じるってのとはまた違うみたいよね。
「なんていうのかな、その場の空氣を自分に向けられてるように感じてしまうっての?」
よく分かんない。
で、それと飴とどう関係あるの?
「氣休め?」
氣休めなんかい。しかも疑問形かい。
「何やろ、そのキャッチしてしまったものは自分に向けられたもんじゃない。って氣付くためのトリガー?これを食べたら大丈夫って…やっぱ氣休めやな」
やっぱ分かんない。
ただ、きーちゃんは思っていたよりもとても繊細である。ってことは何となく分かった。
その週の金曜日。夕方、アキちゃんに言われた場所へ旦那と向かう。「うわ、でかっ」家が見えると運転していた旦那が呟く。確かに大きな家だ。ガレージの前でアキちゃんが待っていてくれた。「きーちゃんは?」今日は出張先から直接来るという真ちゃんにきーちゃんのお迎えを頼んだけど、まだ車はない。「もうちょいしたら着くんと違うか?」40分ほど前に「今迎えに来てもらったよ」ときーちゃんから電話があったらしい。「きーちゃん携帯持ってたっけ?」「真弥の電話」「なるほど」
今みたいに1人1台ではなく、大人ですら携帯電話を持ってる人はだいぶ少ない時代だったから浮かんだ疑問。とは言っても、氣になるものは手に入れたい私や仕事で使うと言う旦那・アキちゃん・真ちゃんは持っていたんだけど。一度使い出すと便利なんだよね。きーちゃんにも持たせてあげたいわぁ。
雑談しているときーちゃん達が到着。「おかえり」と言うとニコニコな顔で「ただいま」と言うきーちゃんはやっぱり可愛い。親バカならぬ姉バカだわ。
ガレージも広くて車を3台止めてもまだ余裕があるし、ガレージから見える家本体も本当に立派だ。ちょっと時代を感じるテイストなのは仕方ないだろう。アキちゃんが玄関を開ける。「おおー!すごいじゃーん」吹き抜けの玄関ホール。そしてシューズクロークまである。なんで一般家庭にシューズクロークなんてあるのかしら。「シューズクロークいうか、土間ちゃうん?」と旦那が苦笑いしてるけど、立派なシューズクロークだと思うわ。空き家だと言っていたから薄暗いのかと思ったけど、家主さんが今日雨戸を開けて換氣をしてくれていたらしく明るい。「まだちょっと荷物残っとるけどすぐ片付ける言うとったわ」私たちが来るまでにアキちゃんは家主さんと引渡しの手続きをしてくれてたらしい。まだ内覧もしてなかったのに氣が早い。って私たちが住まなくても買うつもりだったのかしら。玄関ホールだけでテンション上がっている私の横を先に上がっていた真ちゃんが戻ってきた。「どしたのー?」真ちゃんを目で追うと、真ちゃんはまだポーチで立っていたきーちゃんの所へ行って何か話してる。聞き耳を立てたけど聞こえない。「きーちゃん、おいで!中、豪華だよー」声をかけてみる。私の呼びかけに真ちゃんもきーちゃんに何かを言って、きーちゃんは頷くと飴を口に入れて真ちゃんの後に着いてきた。「ホラ、ここ凄くない?これだけ大きかったら私のもきーちゃんの靴も余裕で置けるね」大人4人、プラスお年頃の女の子の持ってる靴全部おけそう。「ここだけで私のお部屋くらいありそう」ときーちゃん。さすがにそれは言い過ぎ。笑
順番に部屋を見て回る。確かに生活感は薄いものの、家具がまだ置かれている。きーちゃんを見ると真ちゃんにピッタリくっついて常に後ろを歩いてる。えー。なんで真ちゃんの後なのよ。1階はリビング、ダイニングキッチン、そして和室が4部屋と水周りに納戸。リビングには中2階がある。なんて小洒落ているんだろう。この時点で2DKの現在の我が家よりも大きい。2階に同じく4部屋と御手洗、シャワールーム。うち一部屋にはミニキッチンが付いてる。二世帯住宅だったのかしら。「超豪華やん」リビングに戻って一息。きーちゃんはやっぱり真ちゃんの隣に座ってる。おねーちゃん、ちょっと寂しい。
「リフォームするんやったらどれくらいかかる?」とアキちゃんが真ちゃんに尋ねる。「そんなん、リフォームの規模によるわ」「どこまで出来るんな」「希望聞かな分からん言うとるやないのwww」ということで作戦会議開始。真ちゃんがざっくりと家の間取りを紙に書いてくれるけど、それ学校のプリントじゃない。紙を探してたらきーちゃんが渡してくれたから裏に書いても大丈夫なのかな。
「リビングはほぼ触らないで大丈夫やけど壁紙変えて」リビングは壁紙と窓のサッシを変えたいアキちゃん。2部屋はアキちゃんが使う部屋として繋げてしまって一部屋にするのだとか、もう2部屋は私たち用。ミニキッチンのある部屋をリビング代わりにして隣を寝室として使うことにしよう。多分、1階の台所を使う方が多くなる氣がするけど。ウォークインクローゼットもあるし、ホントこの家の売主は何者なんだ。けど、そんな計画を立ててたらワクワクしてきた。
「やだ、かわいいー」真ちゃんが持ってきてくれてた壁紙の見本を見ながらどんなものにしようかと盛り上がってしまって、きーちゃんは退屈だったんだろう。真ちゃんにもたれかかって寝てしまっていた。「天使の寝顔っていうやつ?ホントかわいい。カメラ持ってない?撮りたいー」「やめたげろ。キリコの寝てる所撮ったら発狂して怒るやろ」と旦那が言うけど。私の寝顔ときーちゃんの寝顔は違うのよ。友達が子供の寝顔ばっか写真撮ってた氣持ちが今分かった。幼さの残る丸いほっぺの輪郭がたまらない。つついたらダメかしら。「ほら、寝室の壁紙どれにすんねん」ほっぺをぷにぷにしてやろうとしたら真ちゃんにも止められた。枕代わりにされるっていう良いとこ取りしてるくせに生意氣よ。「めっちゃ氣持ちええで」壁紙に氣を取られてる隙にアキちゃんがきーちゃんのほっぺをぷにぷにしだした。ずるい!私も!「起こしたら可哀想やないか」と真ちゃんはアキちゃんの手を払ってきーちゃんの体勢を変えてしまった。これだけすぐ横で騒いだ上に体勢を変えられても寝てるって、よっぽど疲れてるのかしら。けど膝枕されて寝てる姿も可愛すぎ。
リフォーム計画も佳境に入った頃に鳴るインターホン。「あー、部長やわ。出たって」と真ちゃん。旦那と玄関に迎えに行くと真ちゃんの言った通り真ちゃんの職場の部長さんが大量のピザのお土産付きで立っていた。リフォームの話を詰める為に来てくれたらしい。いつの間に呼んでたのよ。
「真弥、お前いつの間に子供産まれててん」リビングに案内すると、部長さんが笑う。さっきまで膝枕されて寝てたきーちゃんは真ちゃんの腕の中で寝ていて、確かに部長さんの言う通りマジお父さんが子供を寝かしつけてるみたいになってた。「一瞬起きて泣き出したから真弥パパが抱っこ中やんなwww」とアキちゃん。泣き出した?え?中学生よね?確かに小さい子を寝かしつけるみたいにトントンしてるけど、中学生だよね?
「きーちゃん、ご飯しよう。ピザだよー」声を掛けてもおきる氣配なし。超爆睡。「真ちゃんも食べられないから起きたげてー」しばらく声をかけるとようやく目を覚ました。真ちゃんはそのままの体勢で何かをきーちゃんに言ってる姿は微笑ましいんだけど何か違和感。やっぱり中学生の女の子がいい歳の男の子に抱かれてる姿が違和感なのかしら。これ付き合ってるとかだったら、人前でイチャつくな!ってツッコミ入れたら良いだけなんだけどイチャつく感じでもないし、何より付き合ってる訳じゃないし、なんだろう、この違和感は。