Another story 09-3.私の痛みとそうでないもの。

家に帰ると、ねーさんたちが迎えてくれた。
ねーさんと美樹ちゃんにも魔法の飴のおすそ分けする。
 
そして、これを真ちゃんに渡したい。
けど、お部屋に行って渡す。
これがどうしても何だか恥ずかしくてできなかった。
 
結局、夜になってねーさんたちが2階に行っても渡せずにいた。
お布団に入って、せっかくおばあちゃんと買いに行ったのに渡せない自分にうわーっとなってしまってなかなか寝られない。
 
リビングの電氣がついた音がした。
もしかして真ちゃん?
音を立てないように少し部屋の襖を開けてのぞいたけど、見えない。
真ちゃんだと思って飴を持って出てねーさんや美樹ちゃんならまだしも兄ちゃんだったら、絶対笑われる。
せめて誰か確かめたい。
 
コーヒーの香りがする。
真ちゃんだ!
いそいで飴の入った紙袋を持ってリビングへ出た。
 
「まだ起きとったん?」
真ちゃんがちょっと驚いたようにこっちを見た。
渡すのは今!と思って紙袋を持って出たものの、顔を見るとその勢いは急速に消えてしまった。
お茶をいれるふりをして通り過ぎてしまった。
 
お茶をいれながら、せっかく渡せそうだったのに飲み終わってお部屋に戻ったらどうするんだ!と後悔。
台所から様子を伺うと、椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。
まだお部屋に戻る様子はない。
 
がんばれ、せっかくおばあちゃんが一緒行ってくれたんだから。
 
紙袋からひとつ飴の入った袋を出して食べる。
「あれ、それどうしたん?」
すぐ後ろで真ちゃんの声がして、驚いた。
 
「おばあちゃんと買いに行ってん。魔法の飴やねん!だからね、雲が来たら食べて!」
残りを紙袋ごと全部渡した。
真ちゃんは、中をのぞいて「ありがとう」と受け取ってくれた。
 
その後、少し話をした。
といっても、私が一方的に今日おばあちゃんとお買い物をした時の事やおばあちゃんが私の話を聞いてくれて嬉しかった話。
真ちゃんは「うんうん」と聞いてくれていた。
 
 
次の日、ねーさんたちはお仕事に行った後、リストアップしてくれたお手伝いをチェックする。
「洗濯物を干す。」
外を見るとなんだか曇ってる。
「干しちゃっても大丈夫かなぁ」
雨の日、ねーさんは洗面室で干してたよね。
よし、洗面室で干そう。
 
そう決めて、庭に出て物干し竿を取ろうとした。
後もう少しで取れそうだけどどこかに引っかかって取れない。
ウッドデッキにある椅子が見えたので取ってくることにした。
 
失敗。
後ろ向きに降りたせいで椅子共々ウッドデッキの階段を踏み外してダイブしてしまった。
痛い。
落ちた時に降ってきた椅子が腕に当たって腕とぶつけた膝がジンジンしてる。
「これは私が痛い」
おばあちゃんに言われたことを思い出して座り込む。


痛くても私の痛みじゃない。


膝を擦りむいて血が滲んでいる。
やっぱりジンジンと痛い。
後ろ向きに落ちたのになんで膝を擦りむいたんだろう。とも疑問に思ったけど、傷を見ながら腕と膝の痛みを感じてみた。
自分の痛みと他の痛みの差がよくわからない。
もう少し強い痛みなら、もっとわかるんだろうか。
擦りむいた傷に爪を立ててみる。
 
「きーちゃん、どないした?」
真ちゃんが自分のお部屋の窓を開けて出てきた。
「椅子持ってくるの失敗したー」
失敗がバレてとてつもなく恥ずかしい。
多分、椅子が飛んでった音で氣がついたんだろうな。
「あぶないなぁ。怪我は?」
「大丈夫ー。洗面室で洗濯干そうと思って」
「洗面室に物干しあるけど?」


あったんや…。
どおりでねーさんが物干し竿を運んでるの見たことなかった。
「とにかく一回家に入り」
そう言って、飛んでった椅子を元の場所に戻してくれた。
 
「ほら、これ」
洗面室に行って、上を見ると物干しがちゃんとセットされてる。
「ありがと!」
でもちょっと高い。
洗面室に置いてる折り畳みの椅子を出す。
「また落ちるで。干したるからハンガーにかけてって」
さっき落ちた所だから反論できるわけもなく大人しく洗濯物をハンガーにかけて真ちゃんにパスする。
 
「膝擦りむいてるやん。先に言わな」
洗濯物を干し終わった時真ちゃんが氣付いてリビングで消毒してくれた。
「キリコに言われたの何が残ってる?」
リストをチェックする。
「後は行けるならのお買い物ってある」
「買い物かぁ。20分待てる?」
頷く。
「ちょっと待ってて」と言って、シャワーを浴びに行く真ちゃん。
 
膝はまだジンジンしていた。
「これは、私が痛いやつ」
私が痛いのと、そうでないけど痛いのとの違いはやっぱりわからなかった。
その後、真ちゃんは一緒にお買い物へ行ってくれたけど、これねーさんに言って信じてくれるかな。
 
次の日もねーさんたちはお仕事で、ねーさんのリストを見ながらお手伝いを進める。
真ちゃんが様子を見にきてくれて、お手伝いが完了してからもそのままリビングに居てくれた。
ソファに座って話していたら、またあの雲がくる空氣に変わった。
けれど、いつもの痛みの電氣はなかった。
構えていたので拍子抜けしたけど、痛いのが来なかったのはラッキー。
話をしていたら急に眠氣がやってきてそのまま寝てしまった。
 
 
まさかそんなに寝てしまうとは自分でも驚きだった。
ねーさんたちが帰ってきた時、夜中、翌朝に目が覚めたのはねーさんたちがお仕事に出たあと。
あれだけ寝たというのに、まだ体はだるくてとても眠たい。
お手伝いしなきゃ。と思うのに体が動かない。
そのまま、また、睡魔がやってきた。
 
次に起きるとお昼過ぎで、真ちゃんはコーヒーを飲んでいて私が起きたのに氣がつくと
「なんか食べる?」と声をかけてくれた。
 
そういえば、お腹空いていた。
「昨日の昼から食べてへんかったんちゃうの?」
「うん」
寝すぎて頭がぼーっとしてる。
 
 
テーブルの上に回覧板が置いてあって、その上で光がくるくると回っていた。
何か回覧板の上に置いてあるのかと手でその光を捕まえようとすると、ふっと消える。
手を離す。回り出す。
手を伸ばす。消える。
楽しくなって、手を離したり伸ばしたり。
前はこういうの良くやってたけど、出来なくなってたなぁ。
 
下からすくえるかな。
消える。
 
これなんだろう。
「どうしたん、出来たで」とお昼ご飯を持ってきてくれた。
真ちゃんが回覧板を移動させると、光も一緒に移動する。
回覧板にくっついてたのか。
 
ご飯を食べながら、回覧板にくっついてた光の話をする。
「これ?」回覧板を持ち上げて、裏向きにすると光は下でくるくると回ってる。
 
「さっきの光さ、どんな形やった?」
ご飯を食べ終わると真ちゃんが言った。
メモを取り出して見えた形を描く。
「こんなのがくるくるしてる」
「他には?」
「楽しそうだよ」
光が回っていた回覧板を見ると、夏祭りのお知らせだった。
 


「これはどんな感じ?」
「なんか、ぶわっと光が溢れてる感じ」
真ちゃんの部屋に行って、真ちゃんが本や自分で描いたいろんなカタチを見せる。
そのカタチのイメージを伝える。
「この中で一番好きなのは?」
「これ。」
いろんなカタチが集まって、円になっているものを指差す。
「これはな、神さんの座席表やで」
座席表。
そんなのあるんだ。
「こっちは?」
ぐねぐねしたモノがいっぱい。
「なんか忙しい。」
 
いろんなカタチを描いてくれるので、すぐに部屋が紙で溢れてしまった。
それでも、真ちゃんが描くいろんなカタチは優しくて心地よくて「他には?」とたくさん描いてもらった。
「なんか、頭がフラフラする」
私たちの周りにいろんなカタチがたくさん並んで紙が無くなってしまう頃、なんだか車に酔ったような感じがしてきた。
 
「さすがに疲れたわー。ごめん、ちょっと寝る」と倒れこむと真ちゃんはすぐに寝てしまった。
体を伸ばしてタオルケットを取って真ちゃんにかける。
起き上がる元氣がないくらい私も眠たくなってそのまま倒れ込んで寝てしまった。
 


目の前が明るくなった氣がした。
それでも身体が重たくて、起き上がるどころか目を開けるのもつらくてそのまま目を閉じていた。
「帰ったよ!!何寝てるの!!」とねーさんの声が聞こえた。
真ちゃんが起き上がる氣配がしたけれど、私はまだ起き上がれずにぼーっとしている。
「これまた、よう散らかしたなぁ」と美樹ちゃんの声もした。
「あーーー、うん」
真ちゃんもボケーっとしているようで、明らかに寝起きの声がした。
 
ねーさんと美樹ちゃんが帰ってきたということは、20時過ぎ。
寝る前に見た時計が15時だったから5時間も昼寝してたみたい。
わたし、昨日今日で向こう1年分くらい寝たんじゃないかと思う。
 
「なにこれ、超怖いんやけど」
「おーーー」と真ちゃんの声に「返事になってないし!いい加減起きて!」とねーさんの声がする。
確かに返事になってないね。
 
「おかえりー」
ようやく声が出た。
「ただいまー♪いい子にしてた?」とねーさんが覆いかぶさってきた。
ひとしきり頭を撫でられる。
最近、ねーさんが家に帰ってくるとこれが習慣になっていて、ちょっと小さい子供扱いされてる氣がするけど、ねーさんの香水の香りと手が氣持ち良くてだいすき。
 
「ご飯、食べてなかったー」
ねーさんたちが20時過ぎに帰ってくる日は、先にご飯を食べてないと「なんで食べてないの」と注意されるので先に食べておきたかった。
けど、しっかり寝てしまっていた。
 
「なんか作ろうか。おいで」と真ちゃんに言われ台所についていく。
まだ、頭はぼーっとしていてあまりお腹がすいてないんだけど。
炊飯器に残ってたご飯で焼きおにぎりとお味噌汁を作ってくれた。
真ちゃんは一番料理が上手で、料理をしているのを見るの好き。
 
「おにぎりって…ピザ、とろう!足りない!」
着替えてきたねーさんに言われて美樹ちゃんがピザ屋さんに電話していた。
「今日当番やったからラッキー」と電話を終えた美樹ちゃんが言う。
 
この家のお約束。
美樹ちゃん→真ちゃん→ねーさん→(居れば)兄ちゃんの順で晩ご飯を作るお当番。
私は後片付けの食器洗い。
掃除当番も決まっていて、お風呂掃除もあったんだけど「結局やらなきゃいけないんだよなぁ」と仕事から帰ってすぐと寝る前にお風呂に入る真ちゃんがよくぼやいてた。
引越ししてから、しばらくの間私の当番は割り当てられていなかったけれど、夏休みに入って留守番するようになってから、私にもお掃除当番が割り当てられてちょっと嬉しかった。
だって、ちゃんとこの家のメンバーになれたみたいで。
私が割り当てられたと言っても、ほぼ家に居ない兄ちゃんの当番の所に入っただけだけど、兄ちゃんが帰ってきた時に「下剋上!!」と言ってみた。
兄ちゃんは「当番なくなるんやったら下剋上大歓迎やわ」と言っていた。
 
 
ご飯を食べたあと、「明日はお休みだからお風呂屋さん行こう」とねーさんが誘ってくれて二人でお風呂屋さんへ。
ねーさん、お風呂屋さん好き。
ちょくちょく連れて行ってくれた。
 
「明日、真ちゃんの誕生日だけど大丈夫?お祝いとか出来る感じ?」とねーさんに聞かれたけど、大丈夫と言えば大丈夫な氣もするし、真ちゃんがどうなったら大丈夫なのか。がよくわからなかったりした。


家に帰ってから、おばあちゃんに買ってもらったお念珠作りのセットを広げる。
予定ではもう出来上がっているはずだったのに、昨日今日と思いのほか寝てしまったせいで進んでいない。
明日中に仕上がるかな。
 
プレゼントが仕上がるのか不安で、夜から続きを作り始めた。
2日間でこれでもかと寝たおかげで作業が一氣に捗った。
「痛っ」
ペンダントの金具を付けようとして、爪の間に針金が刺さってしまった。
爪の間から血が滲む。
その指先を押さえるとまた血が滲んで鈍く痛む。
「これは、私が痛い」
でも、他所の痛みとの違いがわからない。
もっと、はっきり痛かったら分かるかもしれない。
ニッパーを手に取って滲んだ指先を挟んで爪を剥がしてみる。
「痛い…かも」
違いはわからない。
少しして、またいつもの黒い雲がやって来る氣配。
ちょうどいいかもしれない。
電氣が走るような痛みは、何回かやってくる。
その間、指先をまた押してみれば同時に痛みを感じるかもしれない。
耳鳴りが始まる。
熱くて冷たいモノが体の周りに居るのがわかる。
自分の痛みとよその痛みの違いに興味を持ったおかげで、いつもよりも冷静かもしれない。
それでも、やっぱり嫌な空氣がして怖い。
いつものように、電氣が走るような痛みが走る。
電氣が紐になって足元から体を締め上げるような痛み。
「これは私のじゃない、これは私のじゃない…」
さっき怪我した指先を押さえてみるけれど、何も痛みは感じない。
私の痛みが足りないのかもしれない。
ニッパーを手に取ってもう一度指先の感覚に集中する。
「何か」が指先に向かっている。
それが何か分からないけれど、痛みが足りない。
一度、痛みが足りないと考えが浮かぶと痛みを渇望し始める。
もう一度、ニッパーを指に当てた瞬間ニッパーを取り上げられた。
 
「持ってかれたらあかん!」
真ちゃんだった。
黒い雲が消えている。
「いったぁぁぁぁ」
心臓が動くたびに指が痛くて熱い。
「大丈夫。先に綺麗にしてしまおうな」
 
リビングに行って、乾きだした血を拭く。
消毒液がかかるとまた、痛みと熱さが帰ってくる。
「絆創膏でいい」
真ちゃんはガーゼを当ててくれようとするけど、ガーゼだと大袈裟な氣がするし、ねーさんにも心配かけてしまう氣がした。
「絆創膏やと絶対痛いで」
「大丈夫!」と言ったけれど痛い。
 
「持ってかれるって?」
さっき、真ちゃんが言っていたことを思い出した。
「あれは悪意なんかが固まったやつでな」
人の心にある恐怖や憎しみや悲しみ、そのほかの「良くないモノ」 が集まったもの。
私はそれに同調してしまっていたらしく、
「まだ痛みが足りないって」
「痛みっていうのは恐怖に繋がるねん。命を失うことに繋がるからな。アレはそう言ったものを糧に大きくなって、力をつけてくねんな」
「大きくなったらどうなるん?」
「負のループやな。さっきのきーちゃんはソレに合わせたからわかりやすかったかも。きーちゃん痛みが足りないってなったやろ」
「負のループ?」
「例えばな、苛々してたり怒っている人の近くにいると苛々が映ったりせん?」
「する」
「あれと大体同じでな。それは伝染していくねん。苛々や怒り、恐怖そんなのが広がったらどうする?」
「怖い」
「そうやろ。これが人の思念やねん。それが伝染してくのに何の目的があるかは、わからへん。ただ逆もできるってことやねん」
「ハッピー?嬉しい?」
「せやな。そう言ったものも伝わってくやろ。どっちが正しいとか良いはないねん。人間は両方持ってるやろ。両方ないと人間として生きてないのかもしれへんのかなって思うわ。どうコントロールするか。かな。」
 
真ちゃんの言っていること、半分も理解出来たのかわからない。
けど、私が今まで怖いと思っていたものと繋がっている氣がした。
「痛い思いもさせてもうてごめんな。あれを呼んでしまったどころか喰われかけててん。ホンマにごめんな。もうちょっとで片付けるから」
絆創膏はすぐに血が滲んでしまった。
「もう怖い目も、痛い目も合わさんから。朝までこれでおって、キリコたちが起きる前に絆創膏に変えたらええから。」と言ってガーゼに取り替えてくれた。真ちゃんが立ち上がった。
 
「しばらく水使わん方がええで、朝の分作っとくわな」
そう言って朝食を作って、洗濯機を回してくれた。
「美樹に言うて干してもらいや。今日美樹が当番やからやってもらえばええから」
「ありがと。」
真ちゃんは少し笑って「おやすみ」と部屋に戻って行った。
 
 
人の思念。
人の氣持ち、想い。
話を聞いた時はわかったつもりだったけど、
考えれば考えるほど良く分からなくなってしまった。
おばあちゃんが教えてくれた「自分が自分であると強く信じる」ことは「バリア」になる。
黒い雲から守れる。ってことだろう。
でも、自分が自分であると強く信じる。と言う意味が分からなかった。
 
ガーゼでとめられた人差し指は、作業を難航させた。
氣が付くと日の出を迎えて、暑くなりだしていた。
美樹ちゃんに洗濯物は干してもらいや。と言ってくれたけど、氣分転換に干すことにした。
怪我したのが左手で良かった。
洗濯物を干している時に美樹ちゃんが起きてきた。
「やってくれたん?」
「うん、氣分転換しようかなーって」
「ありがとう、助かるわってそれどないしたん?」
絆創膏に貼り替えるのを忘れていた。
やらかしだ。
「ちょっと刺しちゃって…」
「それ、ちょっとちゃうやろ」
洗濯物を干し終えて部屋の中に戻るとまだねーさんは起きてなかった。
ねーさんは一番心配してくれるから内緒にしたい。
起きてくる前に絆創膏に貼り替えようとするけど、うまくいかない。
けど、このままにするのはマズイ。


「美樹ちゃん…ご飯終わったらお願いが…」
「どないしたん?今でええよ」
「絆創膏、貼って」
絆創膏を渡す。
「どれ」と貼ろうと人差し指を見ると「うわぁ」と美樹ちゃんは小さい声で言った。
「これ、どないしたん。」
「ちょっと針金刺しちゃって…」
「針金刺しただけで爪は剥がれん思うけど」
やっぱり針金刺した傷には、見えないよなぁ。
どうやってこの場を凌ごうか。
「何してん。キリコには黙っとくから」
言ってしまっても良いものか悩む。
「言わんかったら、キリコに言うで」
それは困る。
正直に話すことにした。
「その雲やらってのは分からんけど…人の思念がどうってのはなんやわかったわ。多分、婆さんの言う通りきーちゃんはきーちゃんってことをもっと自信持たなあかんってのも何かわかる。今までどんなことがあったかはわからんけどさ、いきなり無理やったらせめてキリコの言うことは信じたってや。そうしたら、きーちゃんも自信ついてくる思うわ」
「正直に言うたから、約束通りその傷には触れんとくわな。けど、バレたら知らんで」
キリコは結構目ざといからな。と美樹ちゃんが笑った。

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