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Another story 10.約束。
「出来たぁぁぁ」
ようやく3種類のプレゼントが仕上がったのは昼過ぎ。
絆創膏に貼り替えたら、思ったよりも痛くて力が入らず手間取ってしまった。
起きてきたねーさんに「その絆創膏どうしたん?」と、美樹ちゃんが言った通り目ざとく(?)発見されてしまったけれど「サカムケになっちゃった」と答えて凌いだ。
「すごいねー。めっちゃよく出来てる」と出来上がったプレゼントを見てねーさんが褒めてくれてなんだか、すごく嬉しい。
明日からはおばあちゃんへのお念珠作ろう。
ようやく出来上がったプレゼント。
どうやって渡そう。
ねーさんに相談するも「部屋に行かなきゃどうやって渡すの?」と言われてしまった。
何をするかはわからないけど、何かしら片付けると言っていたから邪魔したくない。
ねーさんが美樹ちゃんにも「どう渡したらいいだろ」と聞いてくれるけど、美樹ちゃんも「家におるねんから普通に渡したら?」と言う。
部屋から出てきてくれるかな。
出てきたら渡そうかな。
今日出てくれるといいんだけどな。
悩みつつラッピングを始めていると、美樹ちゃんが真ちゃんの部屋まで呼びに行ってくれた。
まじか!まだラッピング終わってないって。
ひとまず中身が見えないようにしよう。と決めて、急いで袋に入れる。
あ、コーヒー淹れに来ただけ?
台所でコーヒーを淹れている姿を確認。
今のうちにやってしまおう。
せっかく出てきてるんだから、このタイミングで…
……。
いきなり出てくるネガティブ。
いらんって言われたらどうしよう。
美樹ちゃんが呼びに行ってくれたけど、今渡してしまったらプレゼント渡したいから邪魔してるみたいじゃない?
どうしよう。
渡すのが怖くなってきた。
今まで、私が渡すプレゼントは不幸になるプレゼントだった。
「ねーさん、渡して?」
「いやいやいや、何で?笑」
「なんていうか、、、何か渡しづらい…」
「きーちゃんからのプレゼントなんだから、自分で渡さなきゃ」
台所でコーヒーを飲んでいる姿を確認。
渡しても良いのかな?
意を決して行くことに…した瞬間
「そうだ、きーちゃんケーキ予約してるから取りに行ってくれへん?」とねーさん。
出鼻を挫かれて、渡すぞ!と決めた勇氣はどこかへ行ってしまった。
今ですか。このタイミングですか。
戻ってきて、私の勇氣。
「あのね、プレゼントなんだけど、きーちゃん一人でケーキ取りに行くとかなったら絶対真ちゃんついて行くと思うの。だから話あわせて♪その時渡したらいいでしょ。あ、ケーキも実際よろしく。」
思いつきじゃなくて、渡すタイミング作ってくれたんだ。嬉しい。
おつかいも頼んでくれるんだ。
買い物へはは少し歩かなきゃいけないから、1人で行ったことはほとんどなかった。
いつもは「あぶないし、遠いから」と言われてる所へ行ってきて。と頼んでくれたことが嬉しい。
「ケーキ取りに行く前にね、ビールとかいつも買ってるのわかる?きーちゃんの飲むのも買っておいでね」
と言って、ケーキを予約していたお店までの地図を描いてくれる。
いつもお買い物に行ってるスーパーの近く。
「ビールだけでいい?」
「おつまみになりそうなのも欲しいかなぁ。なんでも良いからこれはきーちゃん選んでくれる?いつも食べてるみたいなの」
「オッケーです!」
何だかワクワクしてきた。
「これ、きーちゃん1人じゃ無理やろ。荷物かなり重たくなるで」
と背後から真ちゃんの声がした。
プレゼント隠せ!
急いでテーブルの下に置いた。
「絶対しんどいで、ビールとケーキとか」と心配してくれる。
大丈夫だよ。私、結構力持ちだから。
「じゃあ、真ちゃんも一緒に行ってあげて」とねーさんが言ってくれるけど、
邪魔しちゃダメだ。
「大丈夫!頑張れる!」
ビールが重いしケーキも偏らないようにしなきゃいけないから、リュックで行けばいいかな。
お財布に預かったお金をいれて、リュックを背負えば準備完了!
「じゃあ、行ってくるね!」
「きーちゃん、20分待てるか?シャワーだけしたいから20分待って」と言って真ちゃんは部屋に戻っていった。
外に出ても大丈夫なのかな?
でも、連れて行ってくれるってことは、大丈夫なはず。
無理させちゃってないよね。
今日の誕生日の主役にワガママ言ってしまってると嫌だなぁ。
やっぱり行ってきた方がいいのかな。
いろんなモノが頭の中でグルグルして悩んでいるうちに、真ちゃんが戻ってきた。
「お待たせ。行こうか。後で地図見せて」
きっと良いんだろう。
ビールもあるし車で連れて行ってもらえる方が助かる。
「指、大丈夫?痛むんちゃうか?」
車に乗ってすぐに心配してくれた。
「もうね、だいぶ痛くなくなったで」と指を曲げてみると、やっぱ痛いものは痛かった。
「無理せんでええって」と笑われてしまった。
本当に、何かの片付けの邪魔じゃなかったのかな。
中断して…とかじゃないといいな。
もう、終わったのかな。
じゃあ、おばあちゃんにもお知らせしなきゃ。
「多分、終わったで。長いことごめんな」
「よかったー。真ちゃんのせいじゃないし」
多分。誰のせいでもない。
終わったってことは…
「あ、おばあちゃんに電話!」
真ちゃんが終わったら連絡をちょうだいと言っていたのを思い出した。
「そうなん?」
「電話ちょうだいって」
「かけてみるわ」
少し走った所にファストフード店があったのでそこに入って電話することにした。
お小遣い、ほとんど残ってないんだよなー。
メニューとお小遣いの残金と相談する。
「お腹へってへんの?」
結局、真ちゃんがご馳走してくれたんだけど申し訳なくてシェイクを頼んでみた。
初シェイク。
なんだかハードルが高くて自分で頼んだ事がなかった。
嬉しい。
初シェイクを満喫していると電話が終わった真ちゃんが戻ってきた。
「そんな美味しい?」
目の前に座った真ちゃんがニコニコしながら言う。
小学生の頃を思い出した。
夏休み、ラーメン屋さんに連れて行ってもらった時。
すごく美味しくて喜んでいたら、こうやって言ってた。
あれから真ちゃんはずいぶん背も高くなって雰囲氣も変わったけど、笑うとあの時と変わらない。
本当にまた会えたんだなと思ったら嬉しくなった。
「ちょっと寄り道していい?」
お店を出ると、おばあちゃんちへ寄った。
「きいちゃん、いらっしゃい」
おばあちゃんが迎えに出てくれた。
真ちゃんとおばあちゃんが話をしている間、私は別室で待つ。
このお家、何だか落ち着く。畳の香りかな。お線香の香りかもしれない。
徹夜してたせいか、睡魔が襲ってくる。
「もう少し寝かせてあげたらよろしいやん」
おばあちゃんの声がして目が覚めた。
やっば。めっちゃ寝てた。
「帰ろうか。ケーキ間に合うかな」
真ちゃんの言葉に時計を見るともう夕方になっていた。
「ダッシュで行くでー。寄り道してて店閉まってたとか言ったらキリコにボコされるで」と笑う真ちゃん。
おばあちゃんにご挨拶して急いで車に乗る。
「夜、もう一回こっち帰らないとあかんねんけどきーちゃんも来る?」
おばあちゃんとあまり話せなかったから行きたいかも。
まだお念珠できてないけど。
ちょっとお話ししたいなぁ。できるかな。
「行っていい?」
「いいよ。」
「おーそーいー!!寄り道するなら電話くらいしなさい!」
ケーキと頼まれたモノを買うと19時を過ぎていた。
「真ちゃんも!昨日まで外行けなかったんだから、いきなり帰ってこなかったら心配するでしょ!」とねーさん。ごもっともです。
電話するのすっかり忘れていて「ごめんなさいー」と言うしかなかった。
「ご飯出来たから早くケーキも開けようよ」とリビングに向かうねーさんの後ろ姿を見て真ちゃんは「あれ、ホンマおかん(お母さん)やな」と笑った。
「すっげぇ。ありがとう」
ケーキを出すと真ちゃんはびっくり。
ケーキ屋さんの中まで連れて行くとロウソクを消すまでにどんなケーキが分かってしまうから車で待っててもらった。
お誕生日おめでとう。のプレートがなかったから追加してもらった。
「誕生日やったんなぁ」と真ちゃん。
大人になると自分の誕生日って忘れるのか。
「きーちゃん、プレゼント忘れたでしょ」
ねーさんがコソッと言った。
「あ…」
なんだかんだでその為の外出だったのをすっかり忘れていた。
おばあちゃんの家に行く時に渡そうかな。
「キリコ、ホンマきーちゃん好きやんな」
おばあちゃんの家に向かう途中、急に真ちゃんが笑いだした。
出発する時、ねーさんはとっても心配してくれてアレコレと確認してくれたり、熱が出ちゃったらすぐ電話するんだよ!と言ってくれた。
「もし、しんどくなったらすぐ言ってや」と真ちゃんも言ってくれる。
このお家に来てから、体調が悪くなっても怒られることがなくて嬉しい。
だからって、体調崩してもいいってわけではないのはわかってるけど。
怒られるどころか心配してくれるなんて。
おばあちゃんと真ちゃんがお話している間、昼間待っていた部屋でおばあちゃんのお念珠を作って待っていた。
「次はどの子がいいかしら♪」
そういうと、ビーズが「私、私」と言っているように教えてくれる。
ビーズと話ししてるみたいで楽しい。
「かわいい♡」
おばあちゃんのイメージ通りの紫色メインのお念珠。
透明な水晶もキラキラしてる。
お話が終わるまでにラッピングもしてしまおう。
ラッピングも終わって、お念珠もおばあちゃんの元に行くのを楽しみにしているみたいでワクワクしている。
「お待たせ」真ちゃんが部屋に入ってきた。
「今ならまだ帰れる思うけど、どうしようか。ちょっとドライブして帰る?」
ドライブ?
もう少し真ちゃんとお出かけできる?
昔、一緒に遊んでくれていた時を思い出して嬉しい。
「おばあちゃん、ありがとう」
車に乗る前、おばあちゃんにお念珠を渡した。
「あら、覚えてくれたんやね。きいちゃん、ほんま色々頑張ってくれたなぁ。ありがとうね」と言ってくれた。
「お念珠も綺麗。ちゃんときぃちゃんの心も入ってるわ。婆の宝物やわ。ありがとね」
「ばぁと何話してたん?」
車に乗って真ちゃんに聞かれた。
「お念珠プレゼントするね、って言ってたから渡してん。この間お買い物連れてって貰った時にね、真ちゃんのプレゼントと…」
あれ?真ちゃんのプレゼント…。
忘れた!
また家に置いてきちゃった!
「どしたん?」
今、そのまま帰ればお誕生日の間に渡せる。
けど、ドライブに連れて行ってくれるって言ってるから早く帰ろうって言ったら失礼かな。
どうしようか。
もうちょっとお出かけしておきたいんだけどプレゼント…。
「プレゼント、帰ったらくれるんやろ?」
バレてた。
さっき帰った時に、プレゼント用意してたこと美樹ちゃんが言ってたんだって。
「楽しみにしてるわなー」
「誕生日に渡したかったのに…ごめんー」
時計をみると、急いで帰ってもギリギリアウトになりそう。
「家に帰るまでが誕生日ですよー」
「遠足みたい」
「遠足行きますか」
ラーメン屋さんに連れて行ってもらった後、夜景の見える展望台に連れて行ってもらった。
途中でまたシェイクも買ってもらった。
楽しくて、前みたいに色々話してしまったけど、同じように真ちゃんは「うんうん」って全部聞いてくれた。
会えなかった間、聞いてほしかったことがたくさんあって、それを全部話したかもしれない。
何年もの間に、いろんなことがあったけど、
前に戻ったみたいで楽しかった。
私は、誰かに話を聞いてほしかったのかもしれない。
「いつ帰ってきたっけ?」
外はもう明るくなっていて、私はリビングのソファーで目が覚めた。
「これ、窓開けないと暑くなるやつ」と思って窓を開けに行こうとすると、ソファーの下、足元で真ちゃんが寝ている。
そうだ!プレゼント!
起こさないように細心の注意を払って、ソファーから起きてプレゼントを取りに行く。
ダイニングテーブルに置いてあった。
プレゼントをソファーの所にあるテーブルに移動させて、窓を開ける。
「今日は外で洗濯物を干せそうだ」天氣を確認して洗濯機を回しに行く。
留守番中にお手伝いさせてもらってるおかげで、多分基本的な家事は出来るようになったはず。
みんな月末に生活費を出しているけど、アルバイトも出来ない私は当然生活費を出すことが出来ない。
中学生でも何かバイト出来たらいいのになー。
生活費全部をみんなに出してもらっているので心苦しかった。
「まだ働けないんだから、そんなの氣にしなくていいの!」
生活費精算の日、お小遣いを出そうとした時にねーさんに怒られて、その言葉に甘えるしか無かったけれど、その分何か出来るかと言えば家の事をしてお仕事に行ってるねーさんたちが帰って少しでも負担をかけないようにするくらいしかできない。
オフィシャルにお手伝いを頼まれたら、メンバーの一人になったみたいで嬉しかった。
「多分、昨日帰ったのは遅いはず」
夜景を見てからどう帰ってきたか覚えていないけど、夜景の所では午前1時を過ぎていた。
ということは、いつも真ちゃんは夜一番最後にお風呂に入ってお風呂掃除して出てくる。
日付変わってからのお風呂掃除はなぜか禁止なのでしていないはず→たまにはやってみよう。
ホントに思いつき。
いざ、お風呂掃除!
失敗。
洗剤が指先の傷にめっちゃしみる。
痛くて涙が出てくる。
慌ててシャワーで水をかけて、服が水浸し。
私は何がしたかったのか…。
服は水浸しだし、まだ指先はヒリヒリして痛いし。
若干心が折れながら、お風呂掃除だけ済ませた。
さて、このTシャツとスカートどうする?
ねーさんに買ってもらった服をローテーションで着ているけど、真夏に着られる服は今濡らしてしまったものと、さっき回した洗濯機の中。
「後はちょっと暑いんだよなー」
困った。
ひとまずTシャツを脱いで絞る。
暑いし1時間くらい干してたら乾くかな。
前にキャミソールだけでリビングに居たらねーさんに怒られたので、多分このまま家をうろついてはまずいはず。
バスタオルに包まってウッドデッキへ走る。
スカートを脱いで干すわけにいかないので、ウッドデッキに置いてある椅子を並べ替えて即席ベッドを作ってそこに仰向けになる。
これで乾くかも♪
しばらくすると、朝だけどなかなか日差しが強くなってきて、仰向けで居るのがつらくなってきた。
「スカートだから座ったままでも乾くんじゃない?」と氣付いて脱力。
大人しくバスタオルに包まって座る。
暑いなぁ。Tシャツもスカートも早く乾かないかなー。
ボケーっとしていると、窓が開く音がして「きーちゃん何してんの?」と真ちゃんの声がした。
「乾燥中」
「どないしたん?」
「お風呂洗ったらめっちゃ水浸しになったから、乾かしてるん」
「着替えたらええやん」
「今洗濯中なん…」
「キリコに借りるか?」
「起きたら借りようかなー」
その手があった。
真ちゃんが「キリコに言うてくるわ」と言うから全力で止める。
「起きたらでいいー」
「このまま外居たらキリコが起きる頃にはミイラになるで。とりあえず入りや」と部屋に入っていく真ちゃん。
もう少しだけ乾かそうとそのままでいると、また真ちゃんが顔を出して、
「これならそこまでデカくないはずやから、キリコが起きるまで着ておき」とTシャツを持ってきてくれた。
そこまでデカくないとは言え、でかい。笑
ワンピースになりそうだと氣付いてスカートを脱ぐ。
「外で着替えないの」と怒られてしまった。
「真ちゃん、誕生日おめでとうございました」
部屋に入ったタイミングで意を決してプレゼントを渡す。
「ありがとう。で、おめでとうございましたって新しいな」と笑う。
だって、昨日渡せなかったから過去形の方がいいかと思って。
「開けていい?」と聞かれて「どうぞどうぞ」と言ったけど、緊張する。
自分で作るって無謀な挑戦だったかもしれない。
初めて作ったのなんか使えないかもしれない。
「おおー。これ、こないだ作ってたやつ?」
「やっぱり返してー」
遠くで見るとなんだか変かもしれない。という不安が勝って返品希望を出すけど、却下されてしまった。
「どう?」とペンダントとお念珠をすぐ付けてくれた。
「変じゃない?いらなかったら捨ててな!」
「変じゃないって。ありがとう」
喜んでくれたのかな?
大人だから、喜んでくれたフリ?
わからない。ネガティブは一度出てくると止まらない。
失敗したのはピアスは開けてなかったこと。
イメージだけ浮かんだから作ったけど。
「開けるわ。だからこのまま貰っとくで」
マジですか!
ピアスってそんなに簡単に開けるもの?
「17日に入籍するから」とお買い物に行く道中車内。
ねーさんがいきなり爆弾発言。
すごい!すごい!なんかすごい!
ふと浮かぶ疑問。
「お婿さん、誰?」
この言葉に美樹ちゃんが大笑いして質問を質問で返してきた。
「誰やと思う?」
入籍ってことは結婚するから男の人だけど、
ねーさんは、真ちゃん、美樹ちゃん、兄ちゃんと仲が良くて誰が一番仲良しなのか正直わからない。
「キリコは欲張りやから3人と結婚すんねんで」と美樹ちゃん。
結婚って1人としか出来へんと思ってたけど、3人と出来たりするの?いつの間に法律変わったの?
驚いていると「嘘教えないで!」とねーさんが美樹ちゃんにツッコむ。
ああ、一瞬ホンキにしちゃった。
「美樹とだよー。ホンキにしないで」
なんか、ねーさん疲れてる。
でも、なんかいいなー。すごーい。
ねーさんのお嫁さん姿綺麗だろうなー。
私も見たいな。見せてもらえるかな?
お店に着いて、美樹ちゃんが「アイス食べに行かへん?」と誘ってくれた。
このモールに好きなアイス屋さんがあるけどねーさんは余り好きではないらしく、でも1人で行くには勇氣がいるから一緒に来て。と言われた。
これ、役に立ってるかな。そうだったら嬉しい。
「きーちゃん、ホンマ頑張ったから2段にしてええでー」
アイス屋さんのケースの前。チョコミントにするかストロベリーにするか悩んでいたら美樹ちゃんからの誘惑。
2段とか凄すぎる!
いつも2段アイスにしたいって言ったらねーさんは「お腹壊すからダメ」って言うのに禁断の2段アイス行っていいとか。
パッと見のイメージではアイスとか甘いもの食べない感じだけど、美樹ちゃんは甘いものが好きだと教えてくれた。
「キリコと居る時食べるやろ、絶対冷やかしてくるからゆっくり食べれんわけよ」
美樹ちゃんは生クリームとチョコのクレープを食べてる。
時々交換して2段アイスとクレープとを食べられて幸せ。
「これはな、きーちゃんが邪魔やとか早く帰れってことちゃうで」
美樹ちゃんがこう前置きして話し始めた。
「きーちゃんちの事はなんも知らんし、きーちゃんが今までどう過ごしてきたかも分からんから、これは勝手な意見やで」
「うん」
「きーちゃんはあんま家の事とか今までの事とか言いたくない?」
家のこと。
おとーさんやおかーさん。兄弟のことだよね。
今までのこと。
氣がついたら、あの家の中に私は存在しなくなってたから話をすることはあまり無いんだけど。
「キリコでええからな、タイミングが合えば少し話せん?普通だと親御さんは心配すると思うねんな。けど、これはキリコがこの間行ってクリアになったと思うって言うててん」
ねーさんはおかーさんに私の居場所と連絡先を知らせておいてくれていた。
けど、電話がかかってくることは無かった。
「色んな家庭があるから全部普通に当てはまらんけど、もし、この生活が終わる時きーちゃんは家に帰れるんか?」
「ねーさん達が結婚するから?」
「違う違う」と言って笑う美樹ちゃん。
「まだこの生活を変えようとは思ってへんで」
良かった。ねーさん達は結婚しちゃうから、もしかしたら引っ越すのかと思った。
「ただ、何十年とこの生活ってのは現実的では無いとは思ってる」
やっぱりそうなるよね。
「けどまだ何年かはこのままやろうと思うで。何年後かにもしこの生活をやめるってなった時きーちゃんは自分の両親の居る家に帰れるのか聞いておきたいねん」
両親の居る家…。
また空氣に戻るだけ。なんだけど、想像するだけでも拒否したくなる。
この家が良いけど。
現実的で無いのも、一応分かってる。
「両親の元に居るだけが幸せで無いって分かってるつもりやねんな。だから、帰れんのに帰れとは言わへん。居りたいだけ居ったらええで。けど話せるんやったら誰かに話しておいて欲しいねん」
「分かった。けどもう少し後でもいい?」
「きーちゃんのタイミングでええよ」
いつもなら勝手にネガティブな思考が出てきそうな話だったけど、不思議と落ち着いていた。
「まだね、誰にどうやって聞いてもらったらいいか分かんないけど、絶対に話すね」
家に帰るとサプライズ。
ねーさんと真ちゃんが夏の服を買ってくれていた。
一着だけでなくて、たくさん。
嬉しい。
全部一氣に着てしまいたい。
夜、みんなが寝てからこっそりリビングにある姿見の前で色々着替えてみる。
やっぱりどれもカッコいいし、かわいい。
宝物が増えた。
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