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Story 13.優しい友達。
夏休み終盤。
真ちゃんの勤める会社の社長さんに誘われてバーベキューへ。
個人的にこの夏は大きなイベントがあったものの、よく考えたら夏休みらしいことを何一つしないままだったから誘ってもらって良かった。
川の流れる山の中のキャンプ場。
きーちゃんは最初あまり乗り氣ではなく、お留守番していると言ってたけど連れて来たら川原で何やら楽しそうにしている。
小中学生も他にも何人かいて集まって遊んでいるけど、きーちゃん1人だけ外れて居るのがちょっと氣になるものの「人見知りちゃん」だから仕方ないのかな。
帰りの運転係で飲めないし、おっちゃんおばちゃんとずっと話をするのもアレなのできーちゃんが遊んでいる方へ行ってみた。
「きーちゃん」
私が近くに行くと、きーちゃんは急いで積んでいた石を崩してしまった。
ちょっと賽の河原?とか思ったけど別に隠さなくていいのに。
「もうすぐお肉焼くよー」
「もうちょっとしたら行くね、先行っててー」
きーちゃんに追い返されちゃった。
戻る時に振り返るときーちゃんはさっき崩した石に向かって手を振っていた。
石に挨拶しているの?
手を振っていた表情はとても柔らかく楽しそうだったのに、みんなの居る所に来ると一転表情が硬い。
話しかけられるときちんとやりとりしているけど、少し食べるとまた離れた河原に行ってしまった。
旦那は旦那で普通に社長さんや他の社員さん達と楽しげに話してたり真ちゃんは真ちゃんで子供らに懐かれ子守係になっていて私はちょっと退屈なんだけど。
きーちゃんと遊ぼうかと思うけど、さっきみたいな感じになるとちょっと氣まずいよね。
何で私が行った時すぐに石を崩したんだろ。見られちゃまずいみたいだった。
そして、石に向かって手を振っていた。
アスレチックの公園で、人の感情がカタチになって見えてると言ってたけど、川原の石にもそんなものが見えたのかな。
第2弾第3弾のお肉も焼け出したからきーちゃんを呼びに行く。
今度は焦らせないようちょっと離れた所から呼んでみる。
今度は石を崩すことなくみんなの元へやって来た。
氣になったから、きーちゃんが石で遊んでいた所に行ってみた。
文字というか、形というか不思議なカタチに並べられている。その隣には不思議なカタチに折られた葉っぱが2枚置かれている。
葉っぱ、どこから取ってきたんだろ。
きーちゃんに遅れてみんなの所に戻ると何だか騒がしい。真ちゃんは子供らに本氣で怒ってる。
やんちゃして怒られてるのかな。
あるあるだよねー。
とかノンキで居たけど、旦那ときーちゃんを見てびっくり。
旦那がきーちゃんの顔をタオルで押さえてるし、お子たちを怒っているのは真ちゃんだけかと思ってたら周りの大人まで怒ってるし。
「きーちゃんどうしたの?」
2人の所に行くと「大丈夫ーちょっとぶつけただけー」ときーちゃん。
「ホンマ目に当たったりしてへんか?」と旦那。
「でもちょっと痛いから冷やしてくるー」とフラフラと川の方に行ってしまった。
「だからどうしたのってば!」
成り行きが見えなくて苛々してると旦那が教えてくれた。
きーちゃんが焼けたお野菜を食べようとしている時に、子供らの何人かがきーちゃんに向かって石を投げてそのうちいくつかが顔とおでこに当たったみたいで。
しかも当たって油断した時また違う子がきーちゃんを突き飛ばして鉄板に手が触れたとか。
「は?何考えてるの!」
石を人に投げるとか頭おかしいんじゃないの?しかも別の子も突き飛ばしたとか。
「イタズラじゃなくてリンチじゃん。これだけ大人がついてて誰も止められなかったわけ?てか、人に石投げたり危ないと分かってる所で人突き飛ばすとか正氣の沙汰じゃないわ。何?真っ当な教育受けられないかわいそうな子たちなの?」
一氣に戦闘モードに入ったけど、それどころじゃないのを思い出してきーちゃんの所に走る。
きーちゃんは川に右手をつけながら上を見ていた。
空に向かって何か話してる?
「大丈夫?見せてって何で葉っぱを顔に付けてんの」
葉っぱを外してみると目の下が少し腫れてる。
「大丈夫よー。みんな優しいよー」
みんな優しい?
「これを乗せてみてーって」と言って少し大きめの立てた石に向かって言うきーちゃん。
誰と話してるんだろ。
このまま氣を取り直して引き続きバーベキューで楽しみましょうって雰囲氣になれず、先に私達だけ帰ろうと後から来た旦那に言うけど、当のきーちゃんは「せっかく誘ってくれたのに、帰ると感じ悪いから大丈夫」と止める。
感じ悪いって、石を投げつける子らの方が感じ悪いんだからきーちゃんが心配するところじゃない。
真ちゃんも社長さんに先に引き上げると言ってたみたいで社長さん夫妻が謝りに来てくれた。
石を投げて来た子らは向こうで「邪魔者を追い払っただけなのに何で怒られなきゃいけないんだ」と叫んでいる。
誰が邪魔者なんだ。遊びにしても限度があるし遊びだからといって許されることじゃない。
「あいつ氣持ち悪い!」とまだ叫んでいて氣分が悪い。
きーちゃんはそんな声に氣にせずに帰る用意をして「ごめんね、ちょっと待っててね」と言ってまた川原に走った。
石でカタチを作っていた所にしゃがみ込むと少し石に触れた後戻ってきた。
帰りの車内はとても空氣が重たい。
しかも、何だかんだであまり食べてないからお腹も空いた。
「きーちゃん、ホンマ痛まへんか?」
「大丈夫よー」
車の中でも引き続き顔を冷やす。
「女の子なのにな」
きーちゃんの顔冷やしながら真ちゃんが心配してるんだけどきーちゃんは「大丈夫ー!元から潰れてるからこれ以上潰れないよー」と笑う。
「きーちゃんは一番かわいいんだからね!」
慌てて修正しちゃった。
何を言い出すのかしらね、この子は。
にしても、きーちゃんは川原で何と遊んでたんだろ。
聞いてもいいのかな。
聞かない方がいいのかな。
なんて悩んでると真ちゃんが「川原に何おったん?」と聞いてしまった。
聞いて良い感じなの?
「石!とね、なんだろ、チュウさんと、羽根さん」
うーーーん。えーーっと。
なに?
「ねずみっぽいからチュウさん、羽根さんは羽根みたいなの。クラゲさんとどっちがいいかって聞いたら羽根のがいいって言ったから羽根さん♪」
「ねずみと羽根と石で遊んでたの?」
「石をね、並べるとワープになるの。ありがとーってチュウさんのお友達にいっぱい言ってもらったよ」
うーーーん、えーーっと?
何だって?
ワープって何?
「ごめんね、せっかくのバーベキューだったのに…楽しかったから他に人居るの忘れてみんなと遊んじゃった」
だから、きーちゃんは謝らなくていいんだってば。
でも、みんな?
なんだっけ?ネズミと羽根だっけ?
きーちゃんの空想のお友達なのかもしれないけど、きーちゃんには見えて遊んでいたってこと?
黄色いくまのお話みたいな感じ?
あれも男の子の空想の世界だったよね。
「ヒトはね、仕方ないんだよ。自分達を守るためだから違うものを嫌がるのが正常なんだよ、きっと。痛いものは痛いんだけどー。それに慣れてるからー。もう怒らんで。怒ってくれてありがとう」と笑いながらきーちゃんがまだ怒りのおさまらない様子の真ちゃんに言っていた。
中学生の言葉にしては、何だろう。
きーちゃんの言う通りだと思うんだけど、子供の口から聞くととても悲しくなる。
まだ生まれて10年ちょっとでこんな事をサラッと言えてしまうなんて、きーちゃんはこれまでどんな風に過ごしてきたんだろう。
どんな生活をしていたら、嫌がられて石を投げられることが、しかも笑って慣れてると言ってしまえるんだろう。
帰宅してみんな小腹がすいていたので旦那がお弁当を買いに行くと言うときーちゃんも行くと言い出した。
お留守番なのがお氣に召さないみたい。
「大丈夫やと思うけど、念のため今日は家でゆっくりした方がええから。キリコ置いてくし、アイス買ってきたるから」
旦那よ、私を置いてくってその言い方よ。
けど、「ねーさん居てくれるなら留守番しとくね」とあっさり引き下がるきーちゃん。
私と一緒ならお留守番するのね。あら、嬉しい。
「さっき、仕方ないって言ってたやん」
ちょっと氣になって聞いてみた。
「きーちゃん、本当に仕方ないと思う?」
石を投げられたりすることが仕方ないと思うのか。そんなことは許さないことだって思わないのか。
「聞いてた?」と笑うきーちゃん。
だから何で笑えるの。
「やっぱり痛いしあんまり嬉しい事じゃないけど、私も自分と違うヒトは怖いもん。みんな違う人なんだけどね、なんて言うんだろー、完全に別世界の人?そんなヒトは怖いもん」
そう言うきーちゃんはどこか寂しげに見えた。
だからね、ヒトはとっても怖い。石もそうだしヒト以外のモノの方が優しいのが多い。と言うきーちゃん。
「でもねーさん達は怖くないからね!だからね、ここが一番好き」と笑う。
その姿がとっても可愛くて思わずハグ。けど、ここ以外でも好きな場所が増えて欲しいと思った。
「きーちゃんがここが一番好きって言ってくれるのすごく嬉しい。けどね、自分と違うからって石を投げられたりきーちゃんが痛めつけられるのはね、どこでだっておかしい事なんだよ。だから怒って良いんだよ。何でこんな事されなきゃいけないんだって泣いたって良いんだからね」
きーちゃんはよく泣く。
けど、それを私たちに氣付かれないように耐えて唇を噛んで静かに泣いてる。
夜みんなが寝静まった後や、帰って来て着替えると言って自分の部屋で静かに泣いて私たちの前では笑っていようとする。
ずっと泣くことも許さなかったのかな。
きーちゃんはいろんな場面で、泣いたり笑ったりする時、一旦間を空けてその場面で表現していいかを確認しているような様子をみせる。
それが子供らしくなくて心配になる。
もっと自分の感情をそのまま出したっておかしくない年頃なのに。
だから、我慢しきれずに泣いてしまったとしても自然と笑いたい時に笑って、泣きたい時に泣いているのを見ると私たちの前では、子供らしく、ヒトらしく感情を表に出すことが出来るんだと思ってホッとする。
これが、もっと自然に出来るようになったらいいなと思うから、きーちゃんが安心できる場所でありたいと思う。
「どーしてねーさん達そんなに優しいのー?」と言って泣くきーちゃん。
私はそんなに優しい人間じゃないし、きーちゃんに対して特別優しくしてるわけじゃないのにそう感じてくれるんだ。
私達と居ることできーちゃんが穏やかで居られるなら、何が出来るのか分からないしまだ葛藤も残っているけど側にいると決めた。
「ねーさん達がホントに家族やったら良かったのになぁ…」
小さな声できーちゃんが言った。
確かに他人から見たら私達は友達でしかないかもしれない。
けど、私にとってきーちゃんは大事な妹みたいなものだ。妹以上かもしれない。
出会ってからまだ数ヶ月しか経っていないかもしれないけど、私にとってきーちゃんも大事な家族になっていた。
何故かは自分でも分からないけど、きーちゃんが一人前になるまで、それ以上になっても側に居て付いていてたいと思うんだ。
そして、笑って欲しいと思うんだ。
「あのね、、、今日行った所に行くのってどうしたら行ける?」
早めの夕食中、きーちゃんがとても言いづらそうに言った。
「バーベキューの所?車じゃないの?」
電車で行くという発想はなかったな。
だって、遠いし。
「電車で行けない?電車見えたよ?」
電車、そういえば走ってたね。
でも何線なのかすら知らないや。
「どないしたん?」
旦那の問いかけに黙ってしまうきーちゃん。
「何でもない!電車が見えたから行けないかなーって思っただけ!」
行けないかってことは、行けるならもう一度行きたいの?
「忘れ物したん?」と真ちゃんの質問にも明らかに何かを濁すきーちゃん。
結局、何でそんな事を言い出したのか分からないままきーちゃんはお風呂に入ってしまった。
「きーちゃん、また行こうとしてるのかな」
ふと氣になって、飲み出した旦那と真ちゃんに言ってみた。
「どこへ?」
旦那よ、さっきの話を聞いてたら今日行った場所って分かるでしょ。もう酔ってるの?
「行きは着くまで寝てたし、帰りも外を見る所じゃなかったから行きようがないやろ」と真ちゃん。
「なんかね、氣になるんだよ」
「何が」
何がと言われると困るんだけど。
さっき、電車で行けないかって言ってた時、旦那の質問にも真ちゃんの質問にも明らかに何かを隠してた。
遊んだっていうネズミと羽根と、あの石のカタチ。何か関係があるんだろうか。
「単に電車が通って氣になっただけじゃないの?」と旦那。
なら、良いんだけど。
「あれって何線?」
これは私も知らないから聞いてみた。
「普通に在来線」
「ここからは直通じゃいけないよね?」
「乗り継ぎが上手く行けば1時間くらいで行けんちゃう?あそこまで行こうとしたら…」と旦那が言いかけた時、隣の部屋のドアが開く音がした。
「ストップ!きーちゃん戻ってきた、言わないで!」
小さめな声で止めた。
烏の行水にしても程がある。まだ10分も経ってない。
「何やねんな」と旦那は腑に落ちない感じだけど、電車で行く方法を聞かれたらダメな氣がした。
「きーちゃん、出てきたの?」
リビング側からドアをノックしてみる。
「出たよー!お先ー!今服着てるよー」
きーちゃんてば、また、着替え持たずにお風呂入ったな。
まだリビングを通過せずに部屋に入っただけオッケーにしようかしら。
「お先でしたー」とパジャマを着て笑顔でリビングに来るきーちゃん。
「ホンマに入ってきた?」
真ちゃんにも聞かれてんじゃん。
「入ったよー。今日はちゃんとお湯にも浸かったよ♪」
何秒か位しか絶対浸かってないと思うんだけど。
何でそんなにお風呂が嫌いなの。
でも一緒に入ると、長風呂の私と同じだけ平氣で入ってるんだよね。
「じゃあ明後日ね。ありがと!おやすみ♪」
お風呂から上がってリビングに行くときーちゃんはご機嫌な口調でおやすみを言うと自分の寝てる部屋に入っていった。
「何が明後日なの?」
旦那に聞いてみた。
「真弥が明後日もう一回今日行った所まで連れてくんやと」
何で明後日?
「明日は何かあかん氣がするから」と真ちゃん。
あかん氣がするからって何よ。
「明後日って私仕事だけど」
「知っとる」と真ちゃん。
「私も氣になるんだけど!私も行きたいってば」
何できーちゃんがまた行きたがってるのか氣になった。
ほぼ押し通して、明日もう一度行くことに。
だって私も旦那も明後日は仕事なんだもん。
昼過ぎにバーベキューをした場所に到着。
最初に言ってた予定より1日早くなってきーちゃんは朝からご機嫌だった。
昨日は私達グループの他にもバーベキューしているグループも居たけど、さすが平日の今日は人が少ない。
きーちゃんは川の近くまで行って、時々空を見上げたり座り込んで石に手を置いたりしてる。
「きーちゃん何してるんだろ」
「さあ。終わるまで車で寝てようかな」
旦那はマイペース。氣にならないのかしらね。
ってか、車で寝てたら干からびてミイラになるわよ。
「きーちゃん!あかん!」
旦那とそんなやり取りをしていたら急に真ちゃんが走り出した。
驚いて真ちゃんが向かう方を見るときーちゃんが川の中にザブザブ氣にせずに入ってしまった上に派手にコケてた。
幸い足の立つ所で真ちゃんに捕獲されて強制送還されてきた。
「もー、替え持って来てないでしょー!服も水浸しじゃん!」
サンダルも脱がず服のまま川に突撃してくとか、びっくりだわ。
「ごめんなさいー」
急に深くなってるかもしれないし、誰にも言わないで川に入っていったことを叱られるきーちゃん。
そら怒られるわ。
だから私は着替えも持って来てないのに、川へ入ったことだけを言っておいた。
でも何で急に川に入っていったんだろ。
「びっくりして目ぇ覚めたわ」
さすがに旦那も驚いたらしい。
ホント、時々驚くほど小さい子みたいだわ。
「風邪ひいたらあかんから帰ろう」と言うときーちゃんは大人しく頷いた。
「きーちゃん、どうぞ。」
真ちゃんがきーちゃんの前にしゃがみ込む。
「真ちゃんも濡れちゃうで」ときーちゃんは遠慮するけど、「サンダル脱いでたら足痛いやろ。暑いし多少濡れても大丈夫。すぐ乾く」と真ちゃんが答えるときーちゃんは「いいのー?」と嬉しそう。
濡れたサンダルを手に持って真ちゃんに背負われると「高いー!すごーい!」とまた嬉しそう。
「ねーさん達、こんな風景見てるん?いいなー」と子供らしい声で話すきーちゃんを見て少しホッとした。
けど、私の目線はそんなに高くないから。
「真ちゃん、一回川の方、向いて!」
川を指差すきーちゃん。
急に方向転換。何ごと?
「チュウさん!楽しいよ!だいじょーぶーー!ありがとーー!」ときーちゃんは川の方向に向かって言った。
チュウさんが返事をしたように、風が吹いた。
「また、会えるかな?」
きーちゃんが小さな声で言った。
「会えるで」
うん、私もそう思う。
「チュウさんがね、この世界で過ごすのが悲しいならあなたの命が消えるまで一緒に居ようって。ヒトの命は短いけど、それでも我慢出来ないくらい寂しいなら一緒に居ようって」
帰りの車内で何で急に川に入って行ったのか聞いてみた。
チュウさんって、この間遊んでたってモノだよね。
チュウさんは、どう考えてもこの世のモノじゃない。
それが一緒に居ようと言ってきーちゃんはその言葉に応えようと川に入って行った。
派手にコケたと思ったけど、あれはもしかしてコケた訳ではなく…。
昨夜、真ちゃんは今日ここに行くのは何かあかん氣がする。と言ってた。
それは、きーちゃんが何かに誘われることに氣付いていたってこと?
氣になるからと言って今日行こうと押し切ってしまった。
もし、あの時真ちゃんが氣が付かなかったら…。
急に背筋が凍った。そして、後悔がやってきた。
きーちゃんは、それを理解して川に入って行ったのか。
この世で過ごすのが悲しい、短いけど我慢出来ないくらい寂しいなら…と言ってた。
きーちゃんはそう感じているから、チュウさんの呼ぶ方、川に入ったってことなんだろうか。
きーちゃんは寂しかったり悲しいと感じてるってこと?
「ごめんね、ずっと私が居なかったからね、そうやって言ってもらうと忘れて行きそうになるねん。でも、今はね、ねーさん達居るから本当は寂しくないねん」
私が思ったことを感じたのか、きーちゃんが焦った様子で言った。
「ずっと私が居なかったって?」
どういうこと?
きーちゃんは少し言いづらそうな顔をして頷いた。
「だからね、チュウさんだけでなくてね色んなのが一緒に居ようって誘ってくれるねん。ヒトの中には私は居ないんだけどみんなの中には私は居て、話をしてくれるねん」
そうきーちゃんは嬉しそうに言った。
「でも、ここでは私が居てるから嬉しいんだけどね…氣を抜いたらね、フラってついて行きそうになっちゃうねん。ごめんなさい」
また、きーちゃんは謝った。
本当はお喋りが好きで、楽しそうに話すきーちゃんは今まで、ヒト以外のものとしか話せなかったんだろうか。
「ここでは」って、私達と居ることだよね。
私達は普通に接してるだけなのに、それが嬉しいの?
どんな風に生きてきたのか謎が深まるけど、これを追及しても良いものか悩む。