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Another story 15-2.誕生日プレゼント。
「37.2℃、下がったね。けど念のため今日は休みだねー。今日のメインイベントはきーちゃんのお誕生日パーティーだからね」とねーさん。
結局、明け方まで真ちゃんは一緒に寝てくれて、いつもの時間にお仕事に行った。
お仕事に行く時に「キリエ、誕生日おめでとう」と言ってくれた。
朝になってねーさんもお部屋に来てくれて「きーちゃん、お誕生日おめでとう」と言って熱を測ってくれて、学校に欠席の連絡を入れてくれた。
「昼くらいにアキちゃん帰って来るって言ってたからそれまでちゃんと寝ておくんだよ」と言ってねーさんと美樹ちゃんがお仕事に出る。
ねーさんが熱を測ってくれたり学校に電話したりしてくれてる間、美樹ちゃんが朝とお昼のご飯を用意してくれた。
こんなに嬉しい誕生日って初めて。
顔に何かが触れた感触がして目が覚めた。
兄ちゃんだった。
「おかえりー」と言うと「きぃおめでとう。で、誕生日に熱出すとかきぃっぽいな」と笑った。
「家具揃えたんや」
「昨日真ちゃんが買ってくれてん」と言うと兄ちゃんは黙って私を見る。
兄ちゃんのおうちなのに勝手なことをしたから氣に障ってしまったかな。
この家の人間じゃないくせに自分の部屋みたいな顔して図々しいって。
「心配せんで大丈夫や。きいにぴったりな部屋なったやんか。誕生日にそんな顔してどうすんねん」と言って笑う兄ちゃん。
「美樹、きいの分しか用意してへんやん」
美樹ちゃんが用意してくれたピラフは1人分。だから兄ちゃんと半分ずつ分けることにした。
「昼からきいは真弥の部屋な」
「なんで?」
「誕生日パーティーの準備やから」
「私もする!」
「なんでやねんwwwきいの誕生日に自分がやってどうすんねんwww」
真ちゃんの部屋に放り込まれた。
仕方ないから、お部屋にそっと戻っておばあちゃんに貰ったアクセサリーセットを取ってきて作る。
兄ちゃん、誕生日パーティーって言ってたけど、もしかして私の誕生日?いいのかな。
なんだか不安になる。
しばらくアクセサリーを作っていたけど、氣が付いたら外は暗くなりだしていた。
「たまにやらかしちゃうんだよなー」
何かを作ることに没頭し過ぎるのか、氣付いたら寝ていたということ多数。
私、寝過ぎなんじゃないかな。
「きーちゃん♪お待たせー」の声と共にドアが開いてねーさんが顔を見せた。
「このピアスかわいいねー。後で購入!ご予約オッケー?」とビーズのピアスを指差すねーさん。
「ご予約ありがとうございまーす」
ねーさんはよく作ったアクセサリーを買ってくれる。
しかも、お友達にも宣伝してくれて、おかげで私のお小遣いもアップしてる。
ねーさんにだったらプレゼントしたいのに、なかなか貰ってくれない。ちゃんとお値段つけて!って言うんだよね。
結婚お祝いは絶対貰ってもらうんだ。
リビングのドアを開けるとびっくり。
「お誕生日おめでとう」というみんなの声がするとクラッカーがなる。
いつものリビングだけど、お花やバルーンがたくさんあるし、テーブルの上にはご馳走がたくさんある。
真ん中には大きな四角いケーキで、蝋燭が13本。
美樹ちゃんが蝋燭に火をつけてくれた。
「消す前に願い事言うねんで」と兄ちゃん。
そうなんだ。知らなかった。
お願いごと。パッと浮かぶのは2つ。
「お願いごとはひとつだけ?」と兄ちゃんに聞くと「2つあれば両方いっとけ」と笑った。
ハッピーバースデーの歌も嬉しい。
きーちゃんときいとキリエが混ざってわけ分からなくなったけど、それも嬉しい。
真ちゃん、みんなの前でキリエは何か恥ずかしいからよしてってお願いしてたのに言っちゃったよ。でも、いいや。だって嬉しいから。
お願いごと。じゃあ…
「みんながもっと幸せでありますように!」
それと、この夢が醒めませんように。
プレゼントは何とみんなからひとつずつ。
しかも、真ちゃんがおばあちゃんと弟子さんのおっちゃんからと、真ちゃんのパパからのプレゼントもひとつずつ預かって来てくれた。
真ちゃんはお部屋の家具がプレゼントだって言ってたのにプラスして白いエプロンの付いた不思議の国のアリスみたいな赤色のワンピースをくれた。加奈ちゃんにこっそり頼んでくれてたって。
ねーさんからは真っ白のコート。赤色のワンピースに合わせたようにぴったり似合う。
兄ちゃんはお化粧セット。
美樹ちゃんからはたくさんビーズの入ったセット。
おばあちゃんおっちゃんからは急須とお湯呑みとお茶のセット。
前に行ってお茶した時に、日本茶大好きだからちゃんとした急須でお茶飲みたいんだって言ってたの覚えてくれてた。
真ちゃんのパパからは高価そうなペンのセット。
お料理は、兄ちゃんが前に連れて行ってくれたパーティーでお料理を作ってたシェフに頼んで届けてくれたって。
「おめでとう」って言ってもらえるのって、こんなに幸せなんだ。
夢みたいだ。
パーティーも終わって、ねーさんたちはソファーに移動して晩酌中。
「早く寝ないとまた熱でるよ」って言われてお布団に入ったけど、嬉しすぎて寝られそうもない。
リビングに行ってみる。
「あ、まだ寝てへんー」とねーさんが言うけど、みんなに言い忘れ。
「今日はありがとー。こんなに嬉しくて楽しいの初めて」
改めてお礼を言うのはちょっと照れたけど、せっかくみんなが揃ってる。
「誕生日はスペシャルなんだよー。特にね、女の子はお姫さまの日なんだからー」と言ってねーさんが巻いていたストールに入れてくれる。
ねーさんの甘い香りがする。ねーさんの香りは幸せの香り。
「誕生日特権や、ケーキ追加」とビールを取りに行っていた美樹ちゃんが明日用にと切り分けてくれてたケーキを持って来てくれた。
私だけお茶だけど、みんなの晩酌タイムに乱入。
大人の仲間入りしたみたいで嬉しい。
この夢がずっと続いてほしい。
「きい…」
夜中、名前を呼ばれて目が覚めた。
兄ちゃんだった。
「もう少ししたら出ないとあかんでな、ちょっとだけ話せぇへん?」
兄ちゃんのお部屋へ行く。
兄ちゃんはココアを入れてくれると、隣に座る。
「きぃ、学校つらい?学校だけやない、生きてるのまだ辛い?まだ透明に戻るか不安なるか?」
兄ちゃんの質問にすぐ答えられなかった。
このおうちに居てる以外は辛いし、この家の中でも私が消えてしまうんじゃないか、夢が醒めてしまうんじゃないかと不安になる。
辿々しくなりながらその通りに伝えた。
兄ちゃんは黙って聞いてくれる。
「きぃ、もしな、きぃが不安にならなくても良い、きぃの全部を歓迎する場所があったとしたら、きぃは行きたいと思うか?」
不安にならなくて、私の全部を歓迎してくれる場所。
「このお家以外で?」
そんな場所なんてあるんだろうか。
「そう、この家以外で。外に出てもきぃで居られる。みんなリスペクトをもってきぃと接する。きぃは1人の人間としてきちんと存在する場所。ただそれだけでなくて、きぃも『きぃのやらないとあかんこと』をしなあかんけどな」
私のやらないといけないことって何だろう。
「難しいことはないで。きぃが持ってるものを惜しみなく与えるねん。それと、きぃはもっともっと色々と学んでいかなあかんからそれやな」
私が何かを与えるなんて出来るのかな。
学ぶって、お勉強だけじゃない氣がするけど。
「そこはな、絶対にきぃを不安にさせない場所や。きぃがきぃで居られる。おいでって言うたら行きたい?」
私が私でいられる場所。そんな所が本当にあるんだろうか。
「行きたいって言ったとして、兄ちゃんに迷惑かからへん?」
これが一番重要だった。このお家でないだろう。だったら、兄ちゃんしか頼れなくなるだろうし、そうしたら一手に迷惑をかけてしまう。
「なんでやwおいでって言うてるの俺やで。迷惑かかるんやったら言わへんわwww」と笑う兄ちゃん。
兄ちゃんにも迷惑がかからない。
このお家でみんなに迷惑をかけない。
でも、私が居ても良い場所。
本当にあるのかな。
「まだもう少し準備がいるねん。けど、きぃが行きたいなら連れてったる。だから、もうしばらく我慢出来るか?」
無意識に頷いていた。
もし、そんな場所があるとしたら…。
もう、誕生日を迎えるごとに後悔と終わりを考えなくても済むんだろうか。
「約束。絶対連れてくから。その準備でしばらくの間今みたいに顔出せんくなるかもしれん。けど、大丈夫やから泣かんと待っててや。大丈夫。魔法は解けへん」
兄ちゃんは何度も名前を呼んで魔法は解けないと言ってくれた。
そう言ってもらうたびに解けかけた魔法がもう一度かかるような氣がした。
「じゃあ、明後日か。現地集合な。真弥に言うて連れて行って貰えばええから」
そう言うと、兄ちゃんは迎えの車に乗って行ってしまった。
私が居ても良い場所に行けるかもしれない。
そんな夢のようなフレーズに心が踊って明け方まで寝付けなかった。
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