-
- Jujuの書庫
- Story & Another story
- Story 16.パーティー
Story 16.パーティー
きーちゃんの誕生日から3日後。
私の誕生日。
みんなで企画してくれたウェディングパーティーの日。
朝からみんなバタバタしてる。
と言っても、私は昼過ぎに加奈子が家にヘアメイクをするために来てくれるのでそれまで待っているだけ。
きーちゃんも会場の準備があるからと、アキちゃん真ちゃんと一緒に朝から出かけてしまってつまらない。
私が準備としてやったこと。
旦那と一緒にゲストを決めてアポを取る。
呼びたいバンドをピックアップ。(ほぼゲストと被る)
加奈子にドレスを頼む。
ライブするからバンドの練習。以上。笑
招待状と言う名のチケットはきーちゃんが作ってくれたからそれをチェックするだけで済んだし、お食事(と言っても軽食)始め会場関係はアキちゃんが手配してくれて。
対バンで出てくれるバンドとのミーティングやらタイムスケジュール決めなんかは真ちゃん担当。
職場の人らの話によると、結婚式は目が飛び出るほどの費用の他にめちゃくちゃ準備が忙しかった。とのことだったのに、ぜーんぜん。逆に拍子抜けしちゃった。
これで大丈夫かな。何か忘れてないだろうか。と心配になるくらい手持ち無沙汰。
なもんだから当日の今日も手持ち無沙汰すぎて、きーちゃん何か忘れ物して困ってないだろうか。なんてきーちゃんの心配をしてる。
終わってから熱出しちゃったら困るから薬の在庫をチェックしたり、多分夜中お腹すくだろうから夜食用のパンとかラーメンとかをスーパーに買い出しに行ったり。(飲み過ぎ対策も万全にした)
お昼過ぎに約束通りの時間に加奈子が到着。
喋りながらヘアメイクをしてもらう。
「妹ちゃん、超張り切ってたよー」と加奈子。
ここに来る前に会場に寄ってくれたらしく、きーちゃんがテキパキとお仕事してたと教えてくれる。
加奈子やバンドのメンバーにも話せば長くなるので、きーちゃんは複雑な家庭の事情で離れてた妹を引き取った。と説明していた。
なんかうちが複雑過ぎる家庭ってことになったけど、一番手っ取り早かったし意外と信用してもらえた。
15時過ぎ会場へ行っていた旦那が一旦帰宅してダッシュで加奈子が髪をセットする。
向こうで着替えるって言うてるけど、バチっとセットしてるのにラフな服装ってなんか変よ。
セットが済んだちょうどのタイミングでタクシーが到着。
どうせ飲むんだからとアキちゃんが手配してくれたんだけど、頭の中で本日の費用をざっくり計算してちょっと不安。
一応主婦ですから。
まあ、旦那がなんとかなると言ってるから任せよう。(考えるのを放棄。)
タクシーの運転手さんにもお祝いされて、「最近の若い子はお洒落な結婚式なんやねー」と言われた。
いや、多分少数派に入ると思います。と言いながらもかなりいい氣分。
会場に着くと、スタッフさんが出迎えてくれる。
わりとマメにライブしてる会場なので、超フランク。
ただ、ドレスが歩きにくい。
次回のライブで着るまでに改良してもらおう。
スタッフさんにも「ウェディングドレスっていうから真っ白かと思ってました」って言われたけど、私は白より黒が好きなんだから仕方ない。
会場にはいると、なんだか明るくていつもよりも爽やか。
会場の店長さんやアキちゃんがお手伝いに呼んでくれた仕事関係の子たちに挨拶したりしていると一氣に現実味が。
すっごい浮かれてきた。
「妹ちゃんは?」と加奈子。
そういえばきーちゃんがいない。アキちゃんにきーちゃんの場所を聞くけど不明。
真ちゃんなら知ってるんじゃね?と言われたけど真ちゃんも行方不明。
「二人でどっか逃げたんじゃね?」というアキちゃんを無視。
もしかしたら具合悪くなったとか?
「探してくるから、キリコさんはバック行っときや」と旦那に言われ加奈子と楽屋へ行くけど心配。
「あのワンピ今日来てくれるとかめっちゃ光栄だわ。似合ってるでしょ?」と加奈子。
「天才w」
きーちゃんのワンピースは真ちゃんが誕生日にプレゼントした加奈子のブランドのワンピース。
きーちゃんのイメージで。と言われて真っ先に不思議の国のアリスが浮かんだんですって。
でも、青色というよりも赤のイメージだから赤色のワンピースにしたとか。
「髪がさーちょっと短いと思って、ホラ、持ってきたぁ」とウィッグを取り出す加奈子。
黒のお姫様カットのロングヘア。
「超かわいーーー♡」
「で、おまけ」
きーちゃんのワンピースと同じ生地の大きなリボン。
これは、可愛すぎる。
私、カメラ持ってくるの忘れてきた。大失敗。
加奈子と盛り上がっていると、旦那が2人を連れて楽屋に来たけれどきーちゃん泣いてるし、真ちゃんに抱えられてる。
「どうしたの??」きーちゃんの所に行くと「階段踏み外しちゃった」ときーちゃん。
「ごめんなさいー」
また謝る。
「怪我は?」
「大丈夫。さっき先生が来てくれてシップしてくれた」
ほんとに?という視線を真ちゃんに送る。
「ちょっと落ちた時ひねったらしいわ。骨折もしてへんし、今日はずっとついてるし大丈夫。」とちゃんとキャッチしてくれた。
「靴、はいるかなぁ。」と心配氣なきーちゃん。
靴は…無理じゃないかしら?
「ストラップをフルに伸ばして…なんとかいけそうだね」と加奈子。
「歩くとストラップ外れて脱げるかもしんないけど、抱えてくれるんでしょ?だったらいけるよ。」と真ちゃんの肩を叩く加奈子。
きーちゃん、ちっこくて軽いと思うけど、一応中学生だよ?結構大変だと思うけど?
まあ、頑張れ。笑
「きーちゃん、セットしようか。このソファーでセットしたらいいよ」と加奈子がパーテーションで区切り出す。
「他のバンド来てもここなら邪魔じゃないでしょ。」
色々な意味で加奈子って仕切るの上手よね。と感心しながら私もきーちゃんの着替えを手伝う。
「やだーかわいいーーー♡」
セットが完了したきーちゃんを見て加奈子と2人で思わず叫ぶ。
赤色アリスがぴったり。
「加奈子、天才ーー♡」
きーちゃんはものすごく照れてるけど、ホントかわいい。
髪伸ばせばいいのに。
最初きーちゃんに会った時、市松人形みたい。って思ったけど、長い髪が更にお人形感をアップさせてる。
もっと愛でていたかったんだけど、リハに呼ばれて私と加奈子はステージへ。
着替えるの、リハ後にすればよかった。
動くのこれだけ大変ならトイレとかやばくない?
と少し後悔しつつ・・・。
つつがなくリハ終了。
まぁね、いつもやってるところだし。
慣れたものです。
リハが終わって会場に出ると、もう人が入りだしていて。
「おめでとー」ってたくさん声をかけられるもんだから浮かれっぱなし。
私たちのバンドは最初だけど、通常のライブとはスケジュールが違うからちょっと時間に余裕あるわ。と喋ってたら加奈子に連れ戻される。
新郎新婦が最初からまったり喋ってどうすんの。って怒られちゃった。
お出迎えした方がいいかと思ったんだけどな。楽屋に戻ると、旦那も着替え完了。
スーツ姿新鮮で笑っちゃうわ。
なんだか改まると緊張するので、氣を紛らわすためにきーちゃんを探すけど居ない。
今日はきーちゃんとなんだかすれ違い。
おねーさん、さみしいわ。
「妹ちゃんはちゃんとトランプ兵が連れてったよ」と加奈子。
アリスだからトランプ兵ね。そこは王子様にしてあげて。笑
加奈子のおかげで緊張はだいぶ和らいでる氣がする。
持つべきものは友達だわ。
そんなことをしていると、呼ばれる。
いざ、旦那と並ぶとなんかやっぱり緊張。笑
やだ、もっとライトな氣でいたんだけど。
でも、ステージに出てみるとスイッチはいっちゃったみたいで。
脳内アドレナリンでまくり。
通路側の端にあるソファーで座るきーちゃん発見。
手を振ると振り返してくれる。
お人形さんみたい。
やっぱうちの子かわいいわ。
ご挨拶が終わって、うちのバンドの演奏だと思っていたら指輪の交換とかアキちゃんが言い出して。
指輪とか用意してないって。と焦ったら真ちゃんに連れられてワイヤーの籠を持ったきーちゃんがステージへ。
籠の中に真っ白ならぬ真っ黒なリングピローと指輪。
私のドレスに合わせてくれたのね。
「これ作ってくれたの?」と聞くと、加奈子に教えてもらって作ってくれたって。
「指輪も?」
「作れないよー。美樹ちゃんが買いにいってたよ」と教えてくれた。
いつの間に。旦那を見ると、めっちゃドヤ顔。
なんだか悔しい。
指輪の交換ですでに感極まりだしてしまう。
ここで泣いたら絶対死ぬまでアキちゃんにいじられるから泣かない。と心に決めて演奏準備。
史上最高に楽しいライブ。
私は主役だから観る方に徹すればいいのに。とアキちゃんに言われたけどやって良かった。
やっぱりワンマンにすればよかったと思うくらい楽しい。
次にひとつ友達のバンドが演奏してインターバル。
その間に食事。
けど、やっぱりお腹いっぱい食べる余裕なくて夜食買っておいて正解。とか思った。
「きーちゃんたちは?」
料理を取ったものの、きーちゃんたちが見当たらず加奈子に聞く。
「休憩じゃないの?朝からめっちゃ動き回ってたんだし」
そっかー。やっぱり今日はすれ違い。
おねーちゃんはさみしいぞーーー。
と思いながらも、やっぱりお祝いしてもらうっていうのは嬉しいし楽しくて。
立食スタイルにしてくれたからゲストとたくさん話せるし、アキちゃんに感謝だわー。と思いながら楽しむ。
ドレスだと動きにくいから、加奈子がお料理やお酒持ってきてくれるしVIPだわー。
と思ってると、照明が消える。
「次どこだっけ?」と加奈子に聞くと
「次は超スペシャルシークレット♪」
ああ、アキちゃんたちが言ってたなーと飲みながらステージを見ると…
「ちょっと!美樹がいるってば!」
飲んでたカクテル吹きそうになった。
「言ったやん。シークレットってwww」
加奈子、知ってたな。
ドラム叩けるの?中学校の吹奏楽部以来じゃないの?いつ練習してたのよ。と思ってるとアキちゃんもギター持って出てくる。
背も高いし、けっこう派手な分似合ってるし。でもそれが何か悔しい。笑
で、ギター弾くなんて知らなかったけど。
「ほら、妹ちゃんもいるよん♪」と指差す。
トランプ兵《真ちゃん》にお姫様抱っこで連れられてくるアリス。
「えぇぇぇぇぇ!!」
本氣でむせた。
「驚き過ぎwwww」
加奈子が私の姿にめちゃくちゃうけてる。
驚くでしょ。
一緒に住んでて知らなかったんだから。
いつ練習してたの。
真ちゃんが昔習ってたってピアノと篳篥だったかなんかはできるの知ってたけど他は音楽やってるって聞いたことないって。
「いつ練習とか私は知らないってばwww」と加奈子。
まぁ、そりゃそうだわ。
練習期間って決まってからの3ヶ月?
大丈夫かしら。
ああ、何だかヒヤヒヤしてきた。
我が子の初発表会の時のお母さんってこんな氣分なのかしら。
自分の出番より緊張してきた。
きーちゃん緊張し過ぎてて、今晩熱だしたらどうしよう。
「キリコ、黙って聞いててあげなよ」と加奈子。
心の声が全漏れしてたらしい。
失礼、失礼。
演奏が始まって、思ってたよりもずっと上手で。
きーちゃんの歌声がとっても可愛い。
前から思ってたけど、特徴のある声がとってもよく透ってる。
旦那、ちゃんとドラム叩いてるし。
びっくり。
3曲全部私の好きな曲ばっかり。
「ねーさん、いっぱい幸せありがと。私がもらった幸せの何倍も何倍もねーさんの元にやってきますように。おめでとう♡だいすき♡」ってきーちゃんが言うもんだから、今日始まってから封印してた涙腺が崩壊。
それ見て加奈子が爆笑。
笑うことないでしょ。
爆笑しながらもハンカチとドリンクのおかわりをくれる。
もう、飲んでやる。
みんなが戻ってきて。
「びっくりしたー?」
「キリコ何泣いてんwww」と次々と何か言ってるけど、ひとまずトランプ兵からアリスを奪って今世紀最高のハグをしたよね。
もう、アキちゃんに一生いじられてもいいから泣いてやる。
ようやく可愛いアリスを隣に座らせてひとしきり「かわいいかわいい」と愛でる頃、トリの今日出演バンドのセッション。
「真ちゃん歌えるの??」
「めっちゃ恥ずかしいってギリギリまで言ってたよーー」
「じゃあなんで歌うの」
「真ちゃんが歌った方がおもろいからって兄ちゃんが言ってん。最後まで嫌やって言ってたんだけどジャンケンで負けたん」
なるほど。
面白いからっていうところがアキちゃんらしいけど。
真ちゃん、カラオケは上手だと思ってたけど、意外とボーカルもイケるんだね。
なんだろ、ちょいちょい絵になってムカつく兄弟だな!笑
私史上最高のライブが終わって。
ゲストをお見送りして会場に戻る。
放心状態。
飲みすぎって説もあるけど。
「あーーー終わっちゃったぁぁ」と加奈子に言う。
「超良かったよねー。私の時もやってよー」
「やるってば!今日はホント加奈子が居なきゃダメだった!」
女の友情を確かめ合ってると、「着替えんでええんか」と旦那。
超空氣読め。
向こう十年分くらい加奈子にお礼を行って見送る。
加奈子の時もやるからね!と固く心に誓う。
着替えるために楽屋に戻る。
「加奈ちゃん帰っちゃったの?ありがと言ってないー」と残念そうなきーちゃん。
「今日はホントありがとうねー♡」ともう一回ハグ。酔っ払いはひっつくよ。笑
「あ、加奈ちゃんに頭返してない…」
ウィッグね。頭って…笑
「可愛いからねるまでアリスで居てー」ともう一回ハグ。
片付けが終わって撤収までアリスを独り占めする私はさしずめヴィランズの女王かしら。
「帰って二次会ね♪」
多分人生で何度かしかない、酔っ払った日。
帰りのタクシーで旦那に言う。
「はいはい」
私のかわいいアリスは極悪トランプ兵兄弟《アキちゃん真ちゃん》に奪われてしまい、帰りのタクシーは旦那と先生と。
このおっさん率よ…。
かわいいアリスと一緒が良かったんだけどなー。
先生は、きーちゃん負傷で呼び出されたんだけど、多分帰って熱出すだろうからって真ちゃんに引き止められたらしい。
なんだかうちの妹が申し訳ございません。
「うまい料理とアルコールいただいたんで大丈夫」って先生は言うけど、飲んだの?
そんなんで点滴とかできるの!?診察できるの?
不安になりつつ帰宅。
夢から醒めるのもったいない。
この間、きーちゃんが誕生日の後片付けたくないって言ってたのがちょっとわかった氣がする。
極悪トランプ兵兄弟は酒盛りしてた。
なに、主役の私たちより先に飲んでるの。
きーちゃんはソファーで寝ていたんだけど、まさに不思議の国のアリスだわ。
チェシャ猫かウサギはないかしら。と思ったり。
朝からたくさん動いてくれたもんね。
心配していた発熱はなさそうで安心。でも先生無駄足。
なので、泊まりがてら飲んで帰ってもらうことに。
不思議なメンツで楽しい。まさにアリスのお茶会。アリスは夢の中だけど。
私の人生のトップにランク入りする記念日の夜になった。