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Another story 18.ひとり。
「どこ行こうとしてたん」
「家、帰る前に散歩してた」
「散歩にしては、遠いで。」
「スキーは?」
「ぼぼたちがな、帰れって。キリエを迎えに行けってずっと言うてくるから帰ってきた」
「行く先々で、さるぼぼが居るねん。土産物やけど。キリエのこと思い出したら、目の前のさるぼぼが落ちてな。」
真ちゃんが、キーホルダーのさるぼぼを出した。
あり得ない場所が切れてる。
「ホンマは三体連れて帰った方が良かったんやけど。こいつだけ買って、帰ってきた」
「ぼぼたち、姿は無くなっても全部消えたわけじゃないと思うわ。こいつに、どこ行けばええか聞いたらここやった」
「帰ったら、こいつ直したってや」と、さるぼぼちゃんを渡してくれた。
「今帰ってもキリコがメシ用意してへんわ!ってキレるやろなー。どっかで食べて帰るか」
車に乗ると真ちゃんが言った。
入ったお店でも、クリスマスでいろんな人が楽しそうだったけど、私はまた真ちゃんの楽しみを我慢させてしまった罪悪感しかなかった。
食事をして、前に連れて行ってくれた夜景の見える展望台に行った。
「どいつもこいつもクリスマスだからって来やがって。ええ所全部車停めとるし」
夜景の見える場所まで、歩きながら真ちゃんはぶつくさ。
「寒ないか?」とマフラーをぐるぐる巻きにしてくれる。
「ホンマはどこ行こうとしとったん?」
展望台に着いて、真ちゃんが煙草に火をつける。
私は何で答えようかと、その煙を見ながら考えていた。
「家帰ろうとしてたって嘘やろ。あの神社までちょっと足を伸ばしてみようなんて距離ちゃうやん」
どれだけ取り繕ってもばれてしまいそうで、顔を見られなかった。
「1人でスキーに行っておきながらやけどさ、どっか1人で行こうとしなや。キリエの場合、帰ってくるつもりないやろ。何でやねん」
正直に答えたら、また真ちゃんの同情をひこうとしているのを自分で認めてしまいそうで、同情をひいて、また我慢させて迷惑かけた自覚があるから、口に出したくなかった。
「今度はもっと綺麗なのも、もっと楽しいのも、連れてくから、全部見せるまでおってや。今度は約束守れるから。キリエは覚えてへんかもしれんけど、いろんな世界見せる言うてん」
一瞬、どこかの風景が映る。
見たことのない、場所。
青い布。笑い声。
いろんなカタチの光。
それがどこの風景なのか分からないまま、その景色は消えてしまった。
「家はいったらな、静かに部屋行くねんで。部屋入るまでお口はチャック!」
そう言って、真ちゃんはそーっと玄関の鍵を開ける。
探検みたい。
「ドキドキするねー」と小さい声で言うと真ちゃんはしーっと言う。
そして、素早く部屋に向かって、電氣をつけた。
そーっと玄関を閉めようとすると、ガチャンと音がしてしまった。
しまったー!と思ったけど、急いで鍵をかけて真ちゃんの部屋に向かう。
「ドア、音がしちゃったよー」
引き続き小さい声で。
「これぐらいやったら大丈夫やろ」
真ちゃんも小さい声で。
部屋まで行って今度はそーっと襖を閉めた。
「大丈夫かな?お邪魔虫なってないかな?」
「大丈夫やろ。ストーブつけよう。寒い。風呂は…もうちょい我慢な」
「お邪魔虫?」
「そう!」
「でも、楽しかったねー、忍者になった氣分」と話していたら勢いよく襖が開いた。
驚きすぎて声がでない。
「なんやねんーー、帰って来るんやったら電話せぇよーー!!」
美樹ちゃんだった。
「あーびっくりしたー」と真ちゃん。
「こっちが言いたいわ!なんでおんねん!」
私もびっくりし過ぎてまだ心臓が痛いレベルでバクバクいってるよ。
少しして、ねーさんがダッシュで降りてきて、そして思いっきりハグして頭をグリグリされながら、「ただいまー」と自然と出た。
また、ひとつ夢が叶っちゃった。
「それなら帰って来ればいいでしょおぉぉ!」
何故、帰る予定のない日に、こそっと2人で帰ってきたのか。
美樹ちゃんとねーさんに絞られた。
真ちゃんは、私が実家に帰れなかったから野宿しようとしてた。と上手に説明してくれた。
「だって、身投げ考えてたなんて言えへんしな」と真ちゃんが後でこそっと教えてくれた。
ひとしきり、ねーさんにお説教をくらってお風呂に入る。
帰ってきちゃった。
さっき、この時間だとお邪魔虫になるって言ってたけどいつもまだ起きてる時間だよね。なんでお邪魔虫になるんやろか。
どの道、私お邪魔虫やん。
1人になると広がるネガティブ。
帰って良かったのかなぁ。
また帰ってきたよ。とか思われてないよね。
でも、帰ったらいつもよりもずっと心配してくれてた。
なんだ、胸がギュッとしてくる。
なんか、泣きたい。
「泣きたい時は部屋来たらええで。絶対1人で寝ようって思わんでいいから。」
真ちゃんが言ってた言葉を思い出した。
今日も真ちゃんの部屋で寝ていいかなぁ。
スキー中止にさせちゃったし、嫌かなぁ。
ぼぼちゃんのキーホルダー、明日直そう。
色んなことを一氣に考えてしまって、少しのぼせた。
「今日も真ちゃんの部屋で寝ていい?」
お風呂から上がって、真ちゃんに聞いてみる。
「ええで」と言ってくれたんだけど、ねーさんが「ダメ!」と答える。
なんで?真ちゃんは良いって言ってくれたのに。
ねーさんが美樹ちゃんと話をしている間に真ちゃんが布団を持ってきてくれた。
「いんじゃんで…」
寝心地良い真ちゃんのベッド争奪戦。
今日も勝ち!
連勝中。
真ちゃんのベッドに入って、真ちゃんにこの間の本の続きをリクエストする。
真ちゃんの部屋で寝る日は、寝る前にゲームをしたり、疲れない本の読み方の練習をしたりする。
これが楽しくて大好き。
座っていると、私が中々寝ないからって、本を読む練習の日は寝るまで一緒の布団に入って本を読んでくれるんだけど…
「おねえさんはかわいい妹が若い男と寝るのは許さんらしいでー」と美樹ちゃん。
えー、なんでー。
でも、寝る時もみんなが居てるって嬉しい。
年末に入って、みんながお正月休みに入る。今日は、ねーさんは忘年会ってなんか嬉しそう。
そうだよね、たまには解放されたいよね。
ねーさんを忘年会するお店まで送った後、お買い物。
美樹ちゃんを誘ったけど、寒いし家で飲んでる。と来てもらえなかった。
今日は真ちゃん美樹ちゃん私の3人で晩ご飯。
「ねーさん居ないの、なんか寂しいね」
「それ、キリコの前で言うたってや。夜遊びせんようになるわ」と美樹ちゃんが笑う。
「11時かぁ。そろそろやろか。」と言って真ちゃんが立ち上がる。
ねーさんを迎えに行くお約束。
「すまんな。よろしく」と美樹ちゃん。
ねーさん、飲み過ぎるとよくコケて怪我するから早めに出て向こうで待たせない方がいいんだって。キケン、キケン。
待ち合わせた場所に着くと、ねーさんとパーティのドレスを作ってくれた加奈ちゃんと、もう1人。
パーティで、会った。優希さんだ!パーティの時に会ったけど、ちょっと苦手。
黒い雲ほどじゃないんだけど、トゲトゲしたものを投げてくるんだ。
挨拶だけして、三列目に乗り込んで毛布にくるまる。
これで、前の声が聞こえにくいからトゲトゲが来てもマシなはず。
車が走り出すと、音が増えて前の声は一段と聞こえにくくなった。
音は怖いものって思っていたけど、今日は私を守ってくれる。
「えー、いいやん、付き合おうや!」
優希さんの声が聞こえた。
誰が?誰に言うてる?
思わず毛布から少し頭を出してみた。
多分、真ちゃんに言ったんだ。真ちゃんの声、聞こえにくいけど何か言ってる。
ねーさんが「無理って言われたら潔く諦めなよ」とか言ってるから多分真ちゃんに言ったんだ。
また毛布をかぶる。なんだか、しんどくなってきた。
飴、食べとこう。
少し手を伸ばして足元にある鞄から飴を取る。
「新婚生活も妹連れてさ、妹の為に人生捨てる氣なん?引き取ってからずっと子育てやん。旦那さんかわいそうやん」
少ししてまた優希さんの声が降ってきた。
妹って、私だよね。
ねーさん、私のために人生捨ててる?
美樹ちゃんもかわいそうって。
「私がいいって言ってるからいいの。美樹だっていいって言ってるし、黙っててくれる?人生捨ててるとか思ったことないし」とねーさん。
「今だけだって」
やっぱり、そうか。
やっぱり、私が居ていいことないよね。
息が苦しくなる。
だめだ。ここでまたしんどくなったら、もっと迷惑かかっちゃう。
また、水が落ちてきた。
私の周りにだけ透明な水槽があって、水が溜まってるみたい。
瞬きするたび、水が増える。
いいよ、どうせ今、息が出来ないんだもん。
やっぱり、私は誰かの邪魔にしかならないのか。
ごめんなさい。
みんな優しいから、自分で氣付くまで待っててくれたのかも。
どれだけ此岸に引き留められようとしても、もう、それに負けちゃいけないのかもしれない。この間も、そうだったんだろう。
弱いから、心地良い方に行ってしまうけど。
だから、こんなに分かりやすく投げられたんだ。
ごめんなさい。
早く決めるから。
いつもは私を苦しめる水音が今日は心地良かった。
人間、どうしても考えなきゃいけないけど、考えたくないことがあるとホントに思考が停止する。
横になったまま手を降ろすと鞄のあったはずの場所は水たまりがあって、私はボーッとしながら水たまりに手を入れて水音を立てて聞いていた。
前にはねーさんたちが居るはずだけど、音は無く、ただ水音だけが聞こえる。
それの方がいい。
今は何も聞きたくない。何も考えたくない。
「キリエ、起きてる?」
真ちゃんの声がした。
今は話したくない。
「さっきの聞いてたやろ」
思い出させないで。
「氣にしてん?」
本当のことだから、氣にしてない。
「こっち見てや」
嫌だ。
「なぁ」
そうやって、また此岸が私を引き留めようとするんだ。
「キリエはどっちの言葉信じんの」
どっちの言葉ってなんだよ。
「また、どっか行こうとしてんやろ」
今、それを考えてるから邪魔しないで。
「こっち見てや」
やだ。真ちゃんの顔見たら、また、此岸に負けるから。
「顔見せてくれんやったら、このまま外連れてくで」
それもいや。
「外連れてってかわいいキリエをいじめんなって叫ぶぞ」
何それ。
ちょっと笑ってしまった。ホント、何それ。意味わかんない。
毛布が取られてしまった。
油断した。
「やっと見えたわ。ホンマ世話焼けるなぁ。後でさ、お邪魔虫のキリコ送ったらドライブしようや」
「ねーさん、お邪魔虫ちゃうし」
「今、めっちゃお邪魔虫やで、酔っ払いのお邪魔虫とかタチ悪くね?」と言って真ちゃんが笑った。
ねーさんを家まで送って、真ちゃんは本当にドライブに連れて行ってくれた。
よく連れて行ってくれる展望台がいいと言ったら、こないだ行ったとこやん。と言いながらも連れてきてくれた。
ここが最近のお氣に入り。夜景も綺麗なんだけど、空が近くてちょうど天と地の真ん中な感じが好き。星だって綺麗に見える。
この中に私がいても良い星はあるのかな。
音と光が少ないのも良い。
「さて、問題です」
展望台に着いて、タバコに火をつけた真ちゃんが急に言った。
「キリエのこと、一番わかってるのは誰でしょう」
問題の意味、よくわかんない。
私のこと、一番わかってるのは私じゃないの?
「ブー、時間切れー。答え聴きたい?」
答えを考える時間短過ぎるって。
「答え、真弥さん、キリコさん、美樹さんの3人でーす。残念ながら、ご本人のキリエさんは入ってませんー」
なんか、納得いかない。
なんで、私が入ってないん。
私が、一番わかってるよぉ。
「自分が一番分かってるって思ったやろ」
図星です。思ってますよ。
「キリエはな、全然分かってないで。分かってたらどっかに行かなきゃいけないとか、自分が居たらあかんとか思わん。」
分かってるから、そう思うんだけど。
「言うたやろ。行かんでええって。」
言ってくれたけど。
「キリエが覚えるまで言うからな」そう言って笑う真ちゃん。
「さっむーー」
冬の山はやっぱり寒くて、展望台にいる間にしっかり冷えてしまった。
エンジンをかけて暖房をいれるけど、冷たい風があたる。
「そらそうかー。もうしばらく待たな。ちょっと後ろ行こ」
真ちゃんはそう言って後ろの席に行く。
後ろには毛布を置いてるからそれにくるまった。
「キリエもおいでや」
そう言われて私も後ろに行って、真ちゃんのくるまってる毛布に入り込んだ。
「次来る時はもう一段何か着なヤバいな。凍死するわwww」
「カイロもいる!」
車に戻る前に真ちゃんが買ったコーヒーで一緒に暖をとる。
「私も暖かいのにしたら良かったー」
「だから言うたやんwww」
オレンジジュース買ってもらっちゃったよ。
凄く寒いけど、なんか、楽しい。
「でも、なんか楽しい、ワクワクするねー」と言うと真ちゃんは「喜んで貰えたんやったら良かったわ。寒いけど!」と笑った。
それから、いろんな話をした。
途中で暖房がきくようになったけど、毛布の中でたくさん話を聞いてもらった。
「キリエ、ちょっとヤバいぞ」
寝てしまったみたいで、真ちゃんの声で目が覚めた。
「2時過ぎたわ。キリコ、怒るで」
時計を見ると2時を過ぎていた。
「今から帰るんもアレやで、婆んとこ行こか」
「おはあちゃんも寝てない?」
「大丈夫やで。離れの方の鍵持っとる」
ここからだと、家に帰るよりもおばちゃんのおうちのが近いんだって。
教えて貰った通り、家に着く時間よりも早くおばちゃんの家に着いた。
真ちゃんは離れの玄関に向かうのでそれに着いていく。
離れの2階のお部屋。
「ここ、今のところ来るまで住んどってん」
2階のお部屋はワンルームマンションみたいになっていて小さいキッチンもシャワーもトイレもあった。
「すごーーい!お家の中マンションみたい!」
「こないだ来た時布団干したから使えるやろ」とベッドをチェックする真ちゃん。
「キリエここで寝てええで。」
「真ちゃんは?」
「コタツで寝る」
「私がコタツでいい」
「それはあかん。風邪ひくで」
「真ちゃんも風邪ひく!」
「分からんさんやな。それなら一緒に寝るか?」
「そうしましょー」
知らない所だから寝られるか心配だったけど、暖かくて心地良くてすぐに寝てしまった。
部屋のドアをノックする音で目が覚めた。
窓の外は明るくなっていた。
「真ちゃん、誰か来たよ?」
真ちゃんを起こすと、真ちゃんはドアの方に向かう。
少し部屋の外に出ると、また戻ってきた。
「婆の弟子さん。今日餅つきするんやって、してくか?」
「したーい」
「オッケー。けど、もうちょっと寝るでーさっきので冷えたわ。」
二度寝も楽しい。
お餅つきも楽しみ。
小さい頃、私のおばあちゃんちでしたなー。
次に目が覚めたら8時前だった。
真ちゃんはまだ寝ている。
起きてコタツに入っているとドアをノックする音がして、少しするとゆっくりと開く。
「あら、きぃちゃんやったんやね」
おばあちゃんだった。
「おはようございます。お邪魔してます」
ご挨拶すると「いらっしゃい」と言ってくれた。
「まだ寝てるんかいな。きいちゃん、お腹空いてへんか?おいで」
おばあちゃんは母屋に連れて行ってくれて、ご飯を用意してくれた。
おばあちゃんが作ってくれたご飯が美味しくておかわりしちゃった。
「また一緒に作りましょ」
美味しいと言ったら、おばあちゃんはこう言って笑ってくれた。
「9時半なったら用意始めよか。それまでゆっくりしてな」とおばあちゃん。
真ちゃんの部屋に戻ると、やっぱり真ちゃんは寝ていた。
ちょっとつまんない。
窓の外に何かキラキラしたものが見えた。
「なんだろ」
窓に近づいてみる。
光が4つ。綺麗。
光に見とれていると、真ちゃんの携帯が鳴った。
「真ちゃーん、電話が鳴ってるー」
起こすけど、反応がない。
「真ちゃーん、でんわー」
「出て…後でかける言うといて」
半分寝てるけど、出てって言ったの覚えてるのかな。仕方ないなぁ。
「もしもーし」
出てみる。
『きーちゃん?真弥は?』
美樹ちゃんだ。ちょっと安心。
『どこおるん?』
あ、言うの忘れてた。ごめんなさい。
おばあちゃんがさっき、今日のお餅つきに美樹ちゃんとねーさんも誘っていいよって言ってたの思い出した。
「あ、今日ね、おばあちゃんがお餅つきするって!だからねーさんたちもおいでって言ってたよ」
『何時位に行けばええやろか』
9時半から準備って言ってたけど、いつ来て貰えばいいかな。
「真ちゃん起きたら聞いてみるね」
『頼むわ。じゃあちゃんとお手伝いすんねんで』
「美樹ちゃんお父さんみたいー。じゃあねー」
電話を切って、もう一度窓を見た。
光はもう見えなかった。
「誰やった?」
あ、起きた。
「美樹ちゃん。あ、お餅つきおばあちゃんがねーさんたちもどうぞって。9時半なったら用意しようって言ってたけど、美樹ちゃんたち何時に来て貰えばいい?」
「んーー、来ないでええわー。キリコ絶対うるさいで。で、キリエはおいでー」
「何それー」
三度寝。
「準備!」
急いで起きたらまだ9時半にはなってなかった。セーフ。
真ちゃんもまた寝てるよ。
1人で行ってみよ。
母屋に行こうとドアを開けると、おばあちゃんが階段の下にいた。
「ちょうど呼びに行こうと思ってたんよ。真弥は?」
「寝てるよ」
「しゃあないなぁ。きいちゃんは手伝ってくれるか?」
「はーい♪」
おばあちゃんが割烹着を出してくれた。
「若い子はもっとかわいいのがええやろうけど、これしかないわ」
「これ、かわいいけどなー」
お米の研ぎ方や炊き方、お餅をいれるお味噌汁の作り方を教えてくれた。
家でだいぶお手伝い出来るようになったけど、お味噌汁は即席味噌汁だったんだよね。
今度からちゃんと作れるね。作ってみよう。
「真ちゃんの朝ごはん作ってもいい?」
「朝寝坊してるんやから、自分で作らせばええのに。優しい子やなぁ。」
「卵をくるくるってしたの作ってみたいけどどうしたらいい?」
「それはな…」
すごく楽しい。
おばあちゃんもこうやって私が居るってしてくれるから。
玉子焼きの完成と同時に真ちゃんが来た。
ベストタイミング!
「玉子焼き、教えてもらってん!食べて」
ちょっと崩しちゃったし焦げてドキドキしたけど「美味しい」と言ってくれて嬉しい。
「もう着くらしいけど、早くね?外見てくるわ」
真ちゃんが外に出て、すぐに車の止まる音がした。
「ねーさんたち、来た!」
「2人に朝食済んだか聞いてくれる?まだやったらもう一度玉子焼いてくれるか?」
「うん!」
急いでねーさんたちを迎えに行こうとしたけど、ふと「キリコ、怒るで」と言う真ちゃんの言葉を思い出して、そーっと覗いて様子を見ることにした。
おはよう?ごめんなさい?
どっちが先がいいんだろ。
怒ってるかなー。
「きーちゃーん、かわいい♡」
私に氣付いてねーさんが私の方に来た。
「おはよー。ごめんね。」
「ホントだよー。お泊りとか不良だよ」
朝ごはんはまだ食べてないらしい。
良かった。もう一回作れる!
2人分の玉子を焼き終わると、おばあちゃんは「先行ってるから持ってきてな」と言ってねーさんたちが居る部屋に向かった。
ねーさんと美樹ちゃん喜んでくれるかなー。