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Story 19.きーちゃんのお泊まり。
「行ってきます♪」
翌朝、きーちゃんは大きな荷物を持って出かけていった。
最初はびっくりするくらい少ない荷物だったけど、「多分、暇やで」という真ちゃんからのアドバイスにより、最近はまっている手芸セットを詰め込んでいた。
ミシンも持って行く。と言い出して、3人がかりで説得して止めた。
出発前から大騒ぎ。
今日も「いってきます」だった。
ちょっと安心。
この間の「行ってきます」の時とは逆で、
安心して送り出せるってステキ。
けど、いざきーちゃんが出かけてしまうと…
何しよう。いきなり暇になった。
昨夜、真ちゃんに「一緒に行く?」と聞かれてあんなに悩んでいたのに、朝になるともう準備をすませていた。
やっぱり優希に言われたこと氣にしてるのかと思って、寝る時に何か言ってなかったかを真ちゃんに確認したけど、
「大丈夫やから、ゆっくり新婚氣分味わっておいたらええやん」とはぐらかされてしまった。
多分、何か言ってたんだろうなー。と思うんだけど、楽しそうに準備したものを何度も確認している様子を見ると、純粋に行きたいから行くのかな。とも思ったり。
私、今まで休みの日何をしてたっけ。
「きーちゃんが居ないから暇なんだけど」
「早いな」
本を読んでいた旦那に言うけど軽くあしらわれてしまった。
きーちゃんが帰ってくるのは年が明けて3日。
約1週間。
これだけきーちゃんがいないの久しぶり過ぎて。
「きーちゃん居ないと、寂しいね」
「まだ2時間経ってませんけど?」
「なんだろ、こうさ、今まで当たり前に居たんだけど急に居なくなるとさ…娘を嫁にやったと同時に定年を迎えた父親ってこんな氣持ちなのかしら」
「意味わからんわ」
「きーちゃんも嫁に行くのかしら」
「行くかもなあ」
「えーやだー」
「やだー言うても、まだ先や。自分で言うといてやだーってなんやねん。その前に年頃なったら帰って来んくなるわ」
「なんでよ」
「自分の胸に手を当てて考えてごらんなさい」
わたしがきーちゃんくらいの頃…ねぇ。
思い当たるフシがたくさん。笑
だめだめだめ。
そんなこと、お母さんは許しませんよ。
あまりに暇なので、旦那を巻き込んで大掃除。
と言っても、2階の我が家スペースだけだからすぐに終わってしまった。
「どっか出かけますか」
と旦那に誘われた。
あら、珍しい。
旦那と帰りの時間を氣にせずに出かけるのも久しぶり。
最近は私が氣になってわりと早くに帰ろうって言ってたもんね。
なんか、ごめんね。
帰宅は23時過ぎて、家に明かりがついていないのが新鮮。
家に着くと同時に旦那の携帯が鳴った。
電話を取ってしばらく話している様子をみると 真ちゃんからっぽくて、めちゃ大笑いしてる。
なに?氣になる。
「きーちゃんがホームシックらしいでwww」と笑いながら電話を渡してくれる。
うちが恋しくなるとか可愛すぎるんですけど。
「もしもし、きーちゃん?」
『もしもし?』
ちょっと元氣がない。
「ねーさん何してた?」
「今日?今日は大掃除したよ」
他愛もない話。
それでもだんだん声が元氣に。
なんだか、嬉しい。
『あのね、、、』
いきなり声のトーンが変わるきーちゃん。
話を聞いてみると、今日おばあちゃまに頼まれて真ちゃんと買い物に行った時、真ちゃんの友達と偶然会って明日真ちゃんが忘年会に誘われてたんだって。
だけど真ちゃんは断っていて、せっかくお友達に誘われたから行って欲しいんだけどやっぱり行かないって。
『私、ついていかない方が良かったかなぁ』ときーちゃん。
氣にしてるね、うん。
「真ちゃんが行かないって決めたんやったらそれでいいと思うよー。大人はね、社交辞令ってのがあるから、会ったら誘うみたいなところもあるし」と言って電話を切る。
とは言ったものの、きーちゃんが氣になる。
ので、旦那の所へ行って作戦タイム。
「行ったんやから、向こうは好きにさせたらええのに」と半ば呆れられたんだけど、「ついていかない方が良かったかなぁ」が氣になって。
こういうことも、自分で折り合いつけて成長していかなきゃいけないこともよくわかってるんだけど、今じゃないと思う。
それはもっともっと後で。
きーちゃんが自分は居てもいい。と思うことすらなくなった後でいい。
ナチュラルにきーちゃんが生きていることが当たり前になってから。
最近は、だいぶ穏やかになって笑うのも自然になったけどやっぱりどこか遠慮があるし、この間変な話を聞かせてしまった。
作戦は、こう。
まず真ちゃんに明日の件について聞く。
行きたいのか、全然行きたくないのか。
行きたくないなら、全然行きたくないってことをきーちゃんに言ってもらう。
ちょっとでも行きたいと思うなら、行ってもらう。
その間、きーちゃんは私たちが迎えに行ってご飯に連れていったりしておく。
真ちゃんに電話してみる。
たしかに会って忘年会に誘われたらしいけど、普通に断ったらしい。
きーちゃんがやっぱり氣にして行ってきてと言ったのも聞けた。
「これさ、真ちゃんだけだったら行ってた?」
『そら、行ってたやろなぁ』
さっきのきーちゃんからの電話の話をして、「ついていかない方が良かったかなぁ」って言ったこと。
旦那に言われたけど、やっぱりまだきーちゃんは今そんなこと心配しなくてもいいし、氣に病まなくていいと思うこと。
『ありがたいけどさー、もしかして、キリコが寂しいんちゃうんwww』という、憎たらしい言葉付きで話がまとまった。
翌日の夕方、真ちゃんが忘年会の会場近くまできーちゃんと来てもらって合流した。
1時間くらいで抜けてくるからその間私たちでご飯を食べに行く。
真ちゃんと合流したら、真ちゃんの実家まで送ってく。の予定。
「あれ、絶対1時間で帰ってこんで。抜けれるわけがない」と旦那。
うん、私もそう思うよ。
なので、ショッピングだ♪
「きーちゃんの服買うよ!」
きーちゃんはやっぱり全力で遠慮するんだけど、大人の世界には冬のボーナスというシステムがあることがあると教えて押し切った。
「かわいい♡悩む」
「もういっぱい買ってもらったから」
「きーちゃん、キリコがこうなったら止まらんからそっとして待つのが一番やで。年始の買い物が減って楽になるわ」とか旦那が言ったのを聞き逃してないからね。
年始は年始でセールと福袋行きますからね。
お泊まり中困らない位の着替えをゲットした後、寄ったお店でウサギの耳のついたモコモコパジャマを見つけてしまって。
ネコもあるし、どっちにするか迷う。どっちも着せたい。
むしろ、ここはお揃いで行っとく?
「キリコ、お揃いとか考えんなや」
バレてた笑
結局、ウサギのパジャマで手を打った。
絶対かわいいって。最初に着るところ私が見たかった。
この時点で1時間どころか2時間経過。
思った通り電話がかかってくる氣配なし。
なので、さっき買うか悩んだ靴を買いに行く。
バッチリ。
服を買った時に着替えさせていたので、最後にブーツを履かせる。
かわいいーー。
私の妹、最高!
ちょっと連れ回し過ぎたのは心配だけど。
それでも電話が来ないので、ご飯がてら真ちゃんたちが行ってるお店でご飯を食べることにした。
年末だし混んでるかなと思ったけどすんなりと案内してもらえた。
とはいえ、ちょっと騒がしい。
失敗しちゃったかなぁ。
席に案内してもらうと、斜め向かいの奥の座敷に真ちゃんを発見。
女の子もいたんだ。
なんだかんだで楽しそうじゃない。
1時間で出てくるって言ったくせに。
女子とも仲よさげ。
忘れてたけど、元々はこう言うみんなでワイワイするタイプだったのよね。
きーちゃんも一緒のタイミングで見つけたみたいだけど、俯いて旦那の隣に座った。
真ちゃんたちに背を向けるカタチ。
「大丈夫?出ようか?」
「大丈夫、ありがとう」
あ、ごめんね。じゃない。
ちょっと嬉しい。
けど、考えなしだったかなぁ。
旦那に「奥に座らせて」と頼んでいる姿を見て思ったり。
「パフェもいいの?」
「ええでー♪好きなん選び」
ここのお代は旦那に出してもらうため、私が運転するから飲みなよ。と飲ませた。
酔うと機嫌良くなるからね。
作戦成功。
でもね、食事終わったんだけどまだ真ちゃんは私たちに氣付く様子なし。
楽しみ過ぎじゃない?
運ばれてきたパフェに目をキラキラさせるきーちゃん。
やだ、かわいい。
2個でも3個でも食べなさい。
「きーちゃん、きーちゃん、これ一個ちょうだいや」とパフェをみてクッキーを狙う旦那。
父さんや、娘のデザート狙いなさんな。
クッキー、1個しかないのに。
「いいよー。生クリームは?」
「ええん?」
「いいよー」とクッキーに生クリームとチョコアイスを乗せるきーちゃん。
上機嫌な酔っ払い(旦那)はニコニコきーちゃんを見てる。
なんだかんだで、この人もきーちゃんに甘いよね。
でも、その光景がすごく微笑ましい。
「あーんしてくれんのかー。ええやんか」
酔っ払い、セクハラ親父っぽい。笑
けど、ここはスポンサーさまなので「あーんってしてあげて」ときーちゃんに言うと、きーちゃんはうふふ♪と笑って旦那にクッキーを食べさせる。
なんかホント、パパと娘みたい。
けど、こら酔っ払い、調子乗ってきーちゃんのパフェを次々と食わせてもらうんじゃない。
半分くらい食べてるやん。
「美樹何してん。きーちゃん、俺にもちょうだい」
いきなり真ちゃん登場。
「1時間言うたくせにどんだけ待たせんねん。きーちゃんあげんでええでwww」と言われても素直にあげるきーちゃん。
酔っ払い2人が次々とせがむから結局きーちゃんほとんど食べずに空っぽに。
あんたら、許さん。
「オレンジ?コーラ?」
「そこはチョコかアイスやろ」
帰りのコンビニ。
きーちゃんのパフェを食べた酔っ払いが、お詫びにとオヤツを買うと寄ったけど、そこでもなんか張り合ってる。
「どうしたらいい?」
きーちゃんが困った顔をみせる。
「しばらくほっといたらいいよー」
何日分のオヤツだよ。と言うくらい買い物をして真ちゃんの実家へ。
「泊まっていきーや」と真ちゃん。
いや、それはさすがに。
と思ったけど、結局泊めてもらうことになった。
ウサギパジャマきーちゃんがやっぱりかわいい。
酔っ払い2人はまだ飲んでる。
潰れてしまえ。
お詫びのアイスを食べるきーちゃんにウサギフードを被せる真ちゃん。
無言で取るきーちゃん。
また被せる。
酔っ払い、何してん。
きーちゃんはいくらちょっかいをかけられても、無言でアイスを食べて無視している。
なんか、珍しい。
いつもなら笑って反応しそうなのに。
きーちゃんにいくら無視されても、懲りずにちょっかいをかけ続ける真ちゃん。
そしてひたすら無視するきーちゃん。
「どないしたん。珍しくない?」と旦那も氣付く。
「わかんない。さっきからずっとああやってる」
もしかして今日、人の多いところ連れ回し過ぎた?ときーちゃんの顔を確かめる。
熱出してるんじゃないかと心配したけど、二重になってない。
私たちは母屋の方に布団用意してもらったんだけど、氣になって寝にいけない。
「怒ってん?眠いん?」と無視され続けてるのに氣付いたのか真ちゃんが聞くけど、やっぱり無視。
「ねーさんと寝る!」
アイスを食べ終わったきーちゃんが立ち上がる。
「あかん!許さん、何で無視すんの」
真ちゃんがきーちゃんの腕に手を伸ばして捕まえる。
やっぱり人間って酔うと大胆よねー。
わたし別に酔っ払い(旦那)と寝るよりきーちゃんと寝た方がいいから構わないんだけど。
でも、きーちゃんのご機嫌ななめな理由が氣になるからもう少し見ておこう。
「真ちゃんのうそつき」
おっと、ナンダ話が盛り上がってきた。
「ほら、1時間どころか3時間以上飲んで怒ってるやん」
旦那、おだまり。いい所なんだから邪魔しないで。
「ごめんって。ホンマごめん」必死に謝る真ちゃん。
何、この痴話喧嘩。
私も飲みながらきーちゃんがどう出るか観察する。
「違う。」
時間守らなかったことじゃないの?
じゃあ何?
場合によっては、止めてきーちゃんを連れて寝に行こうかと思ったけどもう少し様子を見ることにしよう。
「あげてた」
何を?
「真ちゃん、大事やから誰にもあげへんって言ったのに」
私も、旦那も、当の真ちゃんもきーちゃんが何のことを言ってるかわからずきーちゃんを見る。
「兄ちゃんにもあげへんって言ってたのに」
アキちゃんにもあげない。
何をだろうと真ちゃんを見る。
いつもつけてるペンダントがない。
きーちゃんが誕生日に作ってたやつ。
そういえば、ちょうど私たちがお店に入った時、真ちゃんの隣に座ってた女の子がペンダント見てたね。
もしかして、あげたの?
そりゃ怒るわ。しかも、オンナだしね。
だからあえて見えない旦那が座ってた方に行ったのか。
てことは、その現場を見たのにいつも通りに過ごしてたってこと?
成長したと喜ぶところか悩む。
「何の話してん?」と旦那が小声で尋ねてきた。
「多分ね、ペンダントだよ。きーちゃんが誕生日にあげてたやつ。今つけてない」
「ホンマやな」
「いらんくなったんやったら捨ててくれたらええのに何であげるん」
私たち居ない方が良さそうな雰囲氣だけど、タイミングを逃してしまった。
きーちゃん、ちゃんと理由を言えてるから私が口出しせず後は自分で怒ったらいいわ。
と恐らくここ最近一番精神的に修羅場を迎えてるであろうきーちゃんを見て、少し成長を感じて冷静になる私。
どこかのタイミングで旦那を連れて部屋を出たいと思うけど、ポジション的に出るに出られないので飲み続けることにした。
「あげてへんって。ほら」とポケットからペンダントを出す。
おっと、事情が変わった。
あちらにはノータッチで飲もうと思ったけど、氣になる。
きーちゃんもぽかーんと見てる。
「くれってうるさかったから外してん。言うたやん、きーちゃんが作ってくれたん誰にもあげへんって」と笑う真ちゃん。
ホッとしたのか、きーちゃんは泣き出すんだけど一生懸命にこらえようとしてて。
めっちゃかわいい!!ってこねくり回したい氣分だったけど、ここは大人なので空氣を読んで黙ってもう一本ビールをあけた。
ひとしきり泣いて、真ちゃんになだめられて。
なんだか素直に泣くことが出来る姿を見て、私たちと居てるからきーちゃんが人間らしく感情を出せるようになってきたのかも。なんて一人自画自賛。
日付が変わる頃、ようやく落ち着いたきーちゃんが「もう、寝るー」と言って部屋を出ようとする。
「何でそっち行くねんな。ここ居り」と真ちゃんに連れ戻される。
寝かせてあげろよ、酔っ払い。
日付が変わる頃にきーちゃんは真ちゃんの膝枕で寝ている。
「つけ忘れたお前が悪い!」と旦那に絡まれてるけど、きーちゃん泣かせた罰なので助けてあげない。
そろそろこの酔っ払い(旦那)も寝かせなきゃまだ飲みそうなんだけど。
「早く、大人にならんかなー」
真ちゃんはまったく動じてないけど。
その言葉の真意はいかに。
とは思うけど、何回も言うのが印象的だった。
きーちゃんと寝ようと思ったのに、結局酔っ払い(旦那)と寝ることになってしまった。
つまらない。
まあ、母屋まで運ぶのもかわいそうだから仕方ない。
他所のお宅だから緊張していたのか、このパターンならいつも昼過ぎまで寝てしまうんだけど、
起床したのは8時過ぎだった。
おばあちゃまに挨拶しておこうと着替えて部屋を出るときーちゃんの声がした。
私たちが寝ていた部屋の向かい、リビングでおばあちゃまときーちゃんがお茶を飲みながら話をしていた。
いきなり泊まってしまったことを謝ったり、お土産を渡したりしているときーちゃんが朝ごはんを持って来てくれた。
「今日も私が作ったんだよ♪」
お料理も出来るようになってきたから食事当番も頼めそう。
お昼をご馳走になって帰る。
「きーちゃんも帰る?」と聞いてみたけど、「ううん」と笑顔で断られちゃった。
ちょっとさみしい。
まあ、真ちゃんと仲直りしたならいいか。