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Another story 19-1.おばあちゃんち。
年末、真ちゃんはおばあちゃんに帰っておいで。と言われておばあちゃんの家に帰ることなった。
「行く?」と聞かれて一緒に行っても良いものかと悩んだけど、おばあちゃんがおいでと言ってくれたと聞いてついていくことにした。
約1週間。こんなに長いこと、このうちに来てお泊りするのは初めて。
楽しいといいなー。
おばあちゃんの家に到着。
「きいちゃん、よく来たね」
私も一緒に行ってしまって本当は邪魔だったりしないか不安になってしまったけど、おばあちゃんの優しい声を聞いて少しほっとした。
少しゆっくりした後、真ちゃんと一緒にお遣いに行く。
おばあちゃんに渡されたリスト、めっちゃ多い。
そりゃ真ちゃん居ないと大変かも。と納得。
お正月の間は、お客さんがたくさん来るから色々と準備しなきゃいけないと言ってた。お餅つきの時、用意したお餅もたくさんだった。
「真弥やん!帰って来たん?」
お買い物をしていると、後ろから声をかけられた。
真ちゃんのお友だちみたいで、なんか楽しそうに真ちゃんも話をしてる。
ねーさんや美樹ちゃんたちと話している時も思うけど、お友だちと話すのを見るといつもと雰囲氣が違う。
やっぱり、色々氣を遣ってくれてるのかな。
他のもの、見に行っといた方がいいかな。
でも、見に行ってるねって言ったら絶対話を切り上げてくれそうだし。
こういう時、どうするのが正解なんだろ。
「明日、忘年会すんで。おいでや」
「明日は無理やわ。また誘ってや」
「なんでやねんー。せっかく帰ってきてんのに。来れそうなら来てや」
お友だちはとっても来て欲しそうだけど、真ちゃんは何回も断った。
「忘年会、行かへんくてええの?」
「なんで?」
「お友だちが、誘ってたから」
「行かんでええよ」
そんなもんかな。もしかして、私が着いてきちゃったから?
やっぱり、私の楽しみだけで真ちゃんにまた我慢させちゃった。
ついてこない方が良かったのかな。
「どうしたん?もしかしてもうキリコに会いたくなったん?」
夜、真ちゃんが言う。
ねーさん…うん、会いたい(´;ω;`)
どうしたら、真ちゃん明日私のこと氣にせずに忘年会に行くのか1人で考えてると、どうしてもしんどい。
おばあちゃんが「帰ってきてるのにどこも行く予定ないって珍しい」って言ってたから、きっといつもさっきみたいにお誘いがたくさんあるんだろう。
ねーさんにどうしたらいいか聞いてみたいなぁ。もう1人じゃわかんない。
「キリエ、ほら、キリコ」と電話を渡してくれた。
『もしもし?きーちゃん?』
ねーさんの声だ。
聴きたいと思ってたけど、いざ話すとどう聞いたらいいか。真ちゃんが居るのにどうやって聞けばいいか悩む。
「ちょっと向こうにビール取りに行ってくるわ」
しばらくねーさんと話してると、真ちゃんが母屋に行ったからこの隙に聞いてみることにした。
『大人って社交辞令みたいなとこあるから、真ちゃんの言う通りでいいよ』とねーさん。
ホントかなぁ。社交辞令なのかなぁ。
ねーさんに聞きたいって思ったの、こうやって行かないのは我慢じゃないって言って欲しかったからなんだろうなって思うと自分は何て卑怯なんだろう。と嫌になる。
「どうしたー。先寝てええねんで」
何で私、まだねーさんたちみたいに大人じゃないんだろう。
私もみんなと一緒に大人が良かったなぁ。って思ったら何か泣けてくる。
これもとっても嫌で、泣きたくないのに涙が止まらないから反対向いてる布団を頭までかぶった。
「昨夜な、キリコから電話あってさ。キリエが寝た後」
「うん」
「キリエと買い物行きたいからお前は忘年会行ってこいやって」
ねーさんそんなこと言ってくれたんだ。
もしかしなくても、相談したからだよね。
ねーさんたちまで我慢させちゃった。
「違うで。キリコがもう『きーちゃん居ないと何していいかわからん』って言ったんやで」
私の不安がバレちゃった。
「忘年会、行ってきてええか?大丈夫か?」
「大丈夫。ありがと」
夕方、真ちゃんとバスと電車に乗って出かける。いつも車だから何か新鮮。
「きーちゃーーん!」
少し離れた所からねーさんが走ってきて思いっきりハグしてくれる。
白いマントがかわいい。
「1時間で出て来るから。人多いししんどくなったらすぐ美樹に言うねんで」と何回も言って真ちゃんは忘年会に向かった。
「あれ、絶対1時間で帰って来んな」
美樹ちゃんが呟いた。
「全然いいよ。きーちゃんとお買い物だもん、ねー」とねーさん。
「大人には冬のボーナスっていうシステムがあるから欲しい服あったら言ってねー」
欲しいと言う前に、ねーさんはかわいい服を見かけると「試着ー!」「似合ってるね!」「買う!」と色々買ってくれる。
「もうこれだけ買ってもらったからもういいよー」
「だめだめ。おばあちゃまのおうち、たくさんお客さんがあるんでしょ?ならパリッと似合うもの着ておかなきゃ。ヨレヨレだとおばあちゃまが恥ずかしい思いしちゃうんだよ」
そうなのかな?
持ってきた服もこの間買ってくれた服なんだけどなぁ。
何軒も回って色々買ってくれた。
とってもかわいいワンピースを買ってくれた時は、どうしてもすぐに着たくてお店の試着室を借りて着替えちゃった。
「ウサギの耳だよー、これかわいいよー」とねーさん。ウサギの耳のついたパジャマ。
「ネコもあるねー」
「こっちもかわいいーーー!」
ねーさんはウサギとネコを交互に真剣に見てる。
「ここはウサギだな!」
お買い上げ。今日めっちゃ買ってくれてる。
いいのかなぁ。
「あとね、靴!さっきのやっぱり行っとこう。」
靴まで買ってもらっちゃった。でも、ワンピースと合ってる。
鏡に映る自分を何回も見てしまう。
かわいいなぁ。格好が。
あんまりにもかわいいから、歩いてる間、お店のガラスに映るたびに見てしまう。
シンデレラみたいに魔法が解けてしまわないかちょっと心配になる。
楽しくて浮かれて、忘れてたけど…
「真ちゃんから電話来た?」
美樹ちゃんに聞いてみた。
「まだやなぁ。飯、食いに行こうか。電話あっても待たせよう」
「真ちゃんが行ってる店にしたらいいんじゃない?そのまま捕獲すればいいしー」とねーさん。
捕獲って、怪獣?笑
人が多くてちょっとフラフラしてきたから、どこか座れるのはありがたいかも。
「年末だし混んでるかなー。きーちゃん疲れたよね」と言いながら、お店のドアを開けてねーさんが先に入る。
少しして出てきて「すぐ案内してもらえるって」
ラッキー。今日はいい日かもしれない。と言う氣持ちはすぐにどこかに行ってしまった。
真ちゃんを見つけてやっぱりラッキー♪と一瞬喜んだけど…
真ちゃんは隣に座っている女の人に誕生日にあげたペンダントを笑いながら渡していた。
席に案内されて、座ろうと思った場所はちょうど真ちゃんたちが見えていて。
時々声も聞こえる。
「今日は美樹ちゃんと座るー」
見えない方がいいから。
前にペンダントを兄ちゃんがちょうだいって言っても嫌!触らすのも嫌!って言ってくれたのに。
「やっぱり人多いね。きーちゃん大丈夫?」
ぼーっとしてたらねーさんたちに心配かけちゃう。あかんあかん。
「きーちゃん、きーちゃん、パフェ食べんか?」
ほろ酔いを通り越してガチ酔いになりだした美樹ちゃんがメニューを見せてくれる。
ねーさんを見ると「頼んじゃえ♪」と言う。
デザート付きの外食って素敵ー。チョコレートパフェにしよう。
「これちょうだい」クッキーを指差す美樹ちゃん。
「生クリームつける?」
「くれんの?」
美樹ちゃんってやっぱり甘党だね。
あまりオヤツ食べてるイメージが無かったからいつ見ても意外ー。めっちゃ氣に入って次々「これちょうだい」ってリクエストがある。
あんまり喋らないし、怖そうに見える時あるけどパフェを美味しそうに食べる時はかかわいい。
それを見てねーさんも楽しそうだし、何か幸せー。
夢みたい。
こんなに幸せでもいい。って錯覚してしまいそう。
なんだか、複雑。
あれからすぐに真ちゃんが来て、ねーさんたちにおばあちゃんの家まで送って貰った。
遅くなったからねーさんたちもお泊りして行くことになったし、ねーさんに買ってもらったウサギの耳がついたパジャマもかわいくて嬉しい。
けど、真ちゃんを見るとやっぱりお守りのペンダントはつけてない。あげちゃったのかな。
作ってくれたもので大事だから誰にもあげない。って言ってたのに。
全然、知らない人にあげちゃったんだ。
あげたものだから、別に真ちゃんが捨ててもあげても決めたらいいんだけど。
あげてた時の様子がタイムスリップしてきて。
なんだろう。
残念、悲しいって言うよりも、イライラ?
何て言ったら良いかわからない感情で混乱する。
なのに、真ちゃんは酔っ払ってるからかウサギのフードを何回も被せてくる。
それも何だか苛々してくる。
でも、せっかくねーさんたちも一緒にお泊りだし八つ当たりしたりしちゃ空氣悪くなっちゃう。
ただでさえ、私はその場の空氣を悪くさせる天才だもん。
無心になる為にアイスを食べてたけど、無くなってもこのよく分からないモヤモヤは収まるどころか酷くなってる。
「今日はねーさんと寝る!おやすみ!」
モヤモヤを押さえる自信も、空氣を壊さない自信もない。
せっかくねーさんたち楽しくお酒飲んでるのに。
ここに混ざれない自分にも苛々してきた。
おばあちゃんが、母屋の方にねーさんたちのお布団を敷いてくれたからそっちに行って頭冷やそう。
「あかん。許さん」
真ちゃんに引っ張られて立ち上がるの失敗。
「何怒ってん」
怒ってない。怒ってないけど、わかんない。
「1時間言うてたくせに何時間も飲んでるからや」と美樹ちゃんに言われて真ちゃんが謝ってくれるけど、それはどうでもいい。
やっぱりペンダントはつけてなくて。
それを確認したらモヤモヤが一氣に広がって自分の中から、夏に見たあの怖くて黒い雲が溢れてきた。
「真ちゃんの嘘つき」
黒い雲と一緒に勝手に言葉がでてくる。
真ちゃんは何も嘘言ってない。
真ちゃんにあげたものだから、つけなくなっても、誰かにあげても、捨てても真ちゃんの自由なのはわかってるけど止まらない。
「兄ちゃんにも触らさんしあげへんって言ったのに」
『えー、いらんわー。』
『あれのプレゼントなんて、持ってて呪われんちゃうのー?』
突然のタイムスリップ。
プレゼント交換の時だ。
キラキラのどんなに可愛い雑貨も、私が渡すと不幸のアイテムになった。
だから。もう誰にもプレゼントはあげないって決めてたのに。
浮かれて忘れてた。
やっぱり、私のあげたものは不幸のアイテムなのかもしれない。
私から出てくる黒い雲は、真ちゃんに向かっていく。
あれだけ大変だって知ってるのに、私が黒い雲になってる。
嫌だ。私が黒い雲になりたくない。
「要らなくなって誰かにあげるんやったら、捨ててくれたらいいのに。なんで捨ててくれへんの」
黒い雲が溢れて止まらない。
絶対、終わった。
大好きな所だったのに、自分で台無しにしちゃった。
黒い雲になりたくないのに、どうしようも出来ない。
「あげてへんって。くれってうるさいから外してただけやで。つけるの忘れてたけど。」と真ちゃんがポケットからペンダントを出した。
あげてないの?
でも渡してたやん。
何なん?1人で拗ねてただけなん?
めっちゃ馬鹿みたいやん。
それでも黒い雲は止まらない。
「捨てて、捨ててそんなん今すぐ捨てて。いらないそんなのもう無くていい」
誰かに一回渡したのなんて見たくない。
私が作ったものなんて見たくない。
私なんて見たくない。
黒い雲でもう周りも見えない。
完全に黒い雲になったのかな。
やっぱりなりたくない。
「絶対捨てへんし。要らんくならない」
真ちゃんの声だけ聞こえる。
「こっち、見て。いいから見て」
「無理無理無理。見えへん。見えへん!もう黒い雲なっちゃったから見えへん」
「なってへん!そんなんなってないからこっち見て」
真ちゃんの声で黒い雲が消える。
元の部屋に戻ってる。
「ごめんなさいー」
1人でわけわからなくなってごめんなさい。
黒い雲を向けちゃってごめんなさい。
勝手に怒って嫌な空氣にして、更に泣いてごめんなさい。
ひとしきり拗ねて怒って泣いて落ち着くと、すごく恥ずかしくなった。
「やっぱり寝るーおやすみー」
この場から逃げてやる。
「ここで寝たらええやん」
今日捕獲しに行った真ちゃんに捕獲されてしまった。
寝落ちしそうな時、「早く大人にならんかなー」って真ちゃんの声がした。
私も早く大人になりたい。
みんなと同じ大人になりたい。