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Another story 26.ねーさんのカケラ。
ねーさんが連休を使って美樹ちゃんとねーさんの地元にみんなで行こうと誘ってくれた。
いつもみんなと一緒だけど、旅行に行くとなればまた違ったワクワクがいっぱいで夜中に何度も荷物のチェックする。
「キリエー、まだ寝ないん?」
忘れ物がないかリビングに置いた荷物のチェックをして布団に戻ると真ちゃん起きちゃった。
絶対早く寝なさいって言うよ、これ。
「何か忘れ物してる氣がしてー」
嘘。楽しみすぎて寝られないからなんだけど。
「忘れ物するくらいの物は大して必要ないものです。どうしても必要やったら向こうで用意したるから寝なさい」とやっぱり言われた。
けど、楽しみすぎて寝られなかった。
5時に起きて6時出発予定。
時計が5時になった瞬間に真ちゃんを起こした。
「え?早ない?」
まだ半分寝ながら真ちゃんが言うけど、全然早くない。
「5時ー。置いてくでー。起きてー」
真ちゃんにダイブ。
「絶対寝てへんやろー」
真ちゃんに反撃されてマウント取られた。
「10分で用意したらあと50分寝れるで」
私の上で真ちゃんが言う。
でも許さん。さあ、起きて早く用意するんだ。
真ちゃん、びっくりするくらいお出かけの支度に時間かかるもん。絶対10分で用意とか無理!
「無理。もう二度寝した。50分経たないと起きません」と言って私の上で寝たフリする真ちゃん。
「喋ってるやんー。寝てないなら起きてー!」
でも、これも楽しい。
「何やっとん…」
部屋のドアが開いて美樹ちゃんが言った。
「早よ、用意せぇ」と言って真ちゃんの頭を一発叩いて私を解放した後二階に上がってしまった。
「最近、美樹が厳しいと思わん?」と頭を叩かれて不服そうだけど、早く用意しないからだよ。
真ちゃんがシャワーしに行ってる間に着替えて荷物を玄関に持っていく。
真ちゃんもそうだし、自由人の兄ちゃんも美樹ちゃんだと言うこと聞くよね。
美樹ちゃんってお父さんみたい。
やる事がなくてお茶を淹れるけどまだ5時半。
早く行きたいのになー。
ねーさん達が降りてきた。
「ご飯食べないのー?お腹すくよー」
ねーさんが朝ごはんを用意してくれる。
ねーさんの茶色のおかっぱロングヘアかわいいよなー。
私もやってみたいなー。
ねーさん達は何だか忙しそうに一階と二階を行ったり来たり。
つまらない。
真ちゃんがお風呂から上がって来たから、真ちゃんの部屋に行ってみる。
「やだー着替え見たいのー?」
もう着替え終わってるやん( ˘•ω•˘ )
ねーさんがよく言うけど、真ちゃん時々お馬鹿発言するよね。
あれ?違和感。
何かいつもと違う。
「なに?」
よく観察する。
髪、くくってるね。
でも、違う。
分かった!
「なんで付けないの?」
違和感は首のコルセット付けてないからだ。
「もうええかな?って」
勝手にコルセット付けないって決めていいの?今日長いこと車に乗るのに。
やっぱりダメだと思う。しんどくなったらどうするんだろう。
「いくない!」
「日本語は正しく」
「良くない!( ˘•ω•˘ )」
真ちゃん、こういう細かいとこうるさいよね。
いくら言っても「付けなくていい」って。
困った時のお父さん。美樹ちゃんだ。
ヘルプを出してみる。
ねーさんが顔を出した。
「髪、いいじゃーん」
ねーさん、違うってば。髪じゃなくてコルセットだよ。
「痛くないならいいんじゃない?」とねーさんは楽天的だけど、何時間も車に乗るのに絶対ダメだと思う。
少しすると美樹ちゃんが顔を出して「付けてけ」と一言で終了。
やっぱり美樹ちゃんってすごい。お父さんみたい。
今度、お父さんって言っちゃダメかな。
美樹ちゃんみたいなお父さん欲しい。
でも、お父さんってよりお兄さんだから呼んじゃダメか。失礼だよね。
予定通りに出発。したけど、15分も経たずにねーさんは「酔ってきたー」と倒れ込んでる。
大丈夫かな。
サービスエリアに着く前、全身に鳥肌が立った。
なんだろう。
そして一氣に寒氣が来た。
そして甘い香りがする。
それは、ねーさんの香水の香りではない。
「キリエもしんどいんか?」
前の席から真ちゃんが声をかけてくれた。
「大丈夫よー」とは言ったものの、なんだろう。
ものすごく氣になる。
サービスエリアに着いた。
ねーさんは顔面蒼白になってる。
「車酔いとか子供の頃ぶりー」と言うけどしんどそうだよ。
無理して喋らなくていいよ。
お水を買ってきてねーさんに渡す。
冷たいお水を飲んでねーさんは楽になったからご飯食べよう。と言ってくれたけど、やっぱりしんどそうで美樹ちゃんに支えられて何とか歩いてる感じ。
今日、旅行に行ってしまってもいいのかな。
と思った時、また全身に鳥肌が立った。
なんだろう。
「心配かけてごめんねー。行こう!」とお店に入るまでの間に立ち止まっていたねーさんが歩き出すとスカートからキラキラした粉が落ちる。
今日のねーさんの服にそんな色はない。
「どしたん?」
ねーさんから落ちる粉を追ってると真ちゃんが氣付いたみたい。
「あれ、何かな?」
「どれ?」
見えないのかな。
「ねーさんについて回ってるん」
ねーさんが歩く度にキラキラな粉は舞う。
少しずつ大きな粒になる。
綺麗なんだけど…
「氣になるん?」
「大きくなってきたー」
「どれくらい?」
「さっきはキラキラな粉が今はね、ガラスの破片くらい。さっきはフワッとしてたけど今は落ちてる」
一瞬だけどねーさんが歩いた跡みたいにキラキラっと光って消えていく。
一瞬、丸い薄いガラスがシャボン玉の弾けたように破れる映像が見えた。
そしてまた全身に鳥肌が立った。
「何か、怖い。」
一瞬、見えた映像は綺麗なんだけど、怖い。
「ちょっと様子見とくか。また何か様子が変わったら教えて」
ご飯を食べようとテーブルに付くと、座った瞬間にまたさっきと同じ映像が見えた。
やっぱり、綺麗なのにすごく怖い。
ねーさんは食欲がわかないと言ってご飯を食べなかった。
ねーさんが話す度にまたガラスの破片が上から降ってきた。
触れてみるけど、やっぱりガラスじゃない。
触れた瞬間に氷みたいに溶けた。
「なんだろう」
触れてみて分かった。夏に真ちゃんが調子悪くなった時に見た光の柱だ。光の柱の欠片だ。
丸い感じだから気づかなかったけど、同じものだ。
あの光の柱は真ちゃんだった。
今日のはねーさん。
ねーさんの欠片が落ちてるってこと?
分かった瞬間にまた全身に鳥肌が立った。
大変。おばーちゃんにどうしたら良いか聞かなきゃ。おばーちゃんに電話してもまだ朝早いからダメだよね。おばーちゃんの所にねーさんを連れて行きたい。
でもこのままだとおばーちゃんの家と真逆の方向に行っちゃう。
そうだ、こういう時はお父さんだ!
「美樹ちゃん、今日どうしても行かなきゃダメ?」
お父さんが行かないって言ったら戻れる。ってことは美樹ちゃんだ。
「どないしたん?きーちゃんもしんどいんか?」
やっぱり優しくて嬉しい。
けど、それどころじゃ無い。せめて早くお家に帰りたい。
「しんどないけど、帰れるなら帰ろ」
「キリコ?」
そうなの。
「ちょっと休憩したら大丈夫よー。ありがとね」とねーさんが言うけど、顔色も悪いよ。
「キリコ大丈夫って言ってるし、あれ、二日酔いやから。ありがとな。きーちゃんは飲み過ぎて死にそうになってる大人なったらアカンで」と笑う。
お父さんもダメだった。
どうしよう。
結局、ねーさんは朝ごはんを食べずテーブルの上で倒れ込んでた。
外の空氣に当たったら大丈夫って言って外へ向かうけど、一歩歩くたびにやっぱりガラスの破片みたいな大きさのキラキラな欠片が落ちる。
これ、拾い集めて戻すなんて出来ないよね。
拾って見ようとするけど、やっぱり拾えない。
「キリエ?」
そうだ、真ちゃんだったら光の柱の話聞いてくれる。
「真ちゃん、ちょっと来て」
ねーさん達が聞いたらやっぱり嫌だよね。ねーさんの光の柱がポロポロ落ちてるなんて。
「アイス買うん?」
お店の中に連れて行くと真ちゃんがアイスを買ってくれた。ラッキー。
違う、違う。
アイスを食べながら、真ちゃんに車から降りてからのキラキラな欠片の話を最初から話した。
「今日だけ?」
良かった。やっぱり信じてくれた。
「落ちてるのは今日だけ。ねーさんいつもキラキラやで」
「そうなんやw」
なんで笑うの。
「欠片の元は?」
「欠片の元?」
「落ちてきたってことは大元のがあるやろ。あれは確認した?」
そうだ。落ちてきたのしか氣にしてなかった。
「見てなかった。真ちゃんは分かる?」
「全然。欠片も氣づかんだ」
真ちゃんが分かったらもっと話が早そうなのにな。やっぱりおばーちゃんかなぁ。おばぁちゃんに聞きたいよー。何でまだ朝なんだろう。
「元の様子を確認せんとなんとも言えんけど、氣にはなるな」
一度ねーさんの所に戻って欠片の元の様子を見ることにした。
「ちょっと離れた所から見た方が分かりやすいんちゃうか?」と言われて離れた所で色んな角度からねーさんを見てみる。
フワッとキラキラの光がねーさんの周りにある。
ねーさんは私に氣付いて手を振ってくれた。
手を振り返すけど、ねーさんの手の動きに合わせてキラキラから落ちてる氣がするからあんまり動いて欲しくないなぁ。
「普段のキリコと今日のキリコと違う所ある?」
ねーさんを観察する。
見た感じはそんなに違わない。
けど…なんだろう。
「分かった!小さい!」
「小さい?」
「ねーさんのキラキラね、いっつもキラキラ~ってしてるねん。けど、今日そのキラキラ~が小さい!これくらい」
身振りを交えて説明するけど…
「ごめん、ようわからんwww」
何で笑うの。
何て言えば伝わるんだろ。
「キラキラレベルがね、いつもがお部屋の明るさ位やったら、今日はお部屋の電氣を1個消したみたいなん」
「暗いってこと?」
そう!
ちょっと説明したら分かってくれるから真ちゃん好き。
真ちゃんもねーさんを観察する。
「氣になるな。美樹に話するからキリコと居たって」と言われてねーさんの隣に座る。
真ちゃんは美樹ちゃんに話をしてくれる。
「ねーさん、大丈夫?」
おまじないが効くか分からないけど、ねーさんの隣でこれ以上欠片が落ちないようにおばあちゃんに教えてもらったおまじない。
真ちゃんが説明してくれたからか、美樹ちゃんも今日は帰ろうと言ってくれた。
家に戻って、真ちゃんと美樹ちゃんはお昼ご飯を買いに行ってくれた。
美樹ちゃんがねーさんの事を頼むね。って言って任せてくれたから2階のねーさん達のリビングで待ってることにした。
ねーさんが起きてきた。
けど、すぐに座り込んでしまった。
急いでベッドに連れて行く。
「ごめんごめん」と言うけどやっぱり顔色が悪くて心配。
すぐに真ちゃんに電話してねーさんの事を話すとすぐ帰って来ると言ってくれた。
すぐ帰って来てくれると言ってもやっぱり時間はかかるわけで。
時々ベッドからねーさんの唸る声がして怖い。
どうしたら良いか分からなくて無駄にウロウロしていたら、美樹ちゃんから電話が来る。
『もう帰るでな。キリコはどない?』
「今は寝てるけど時々うーって言ってる」
『帰ったら病院連れてくから、もうしばらく頼むな』
2人が家に着くまで美樹ちゃんが電話しててくれてちょっと怖いのもどこかに行ってしまった。
やっぱりカッコイイ頼れるお父さんだ。
でも、ねーさんはお母さんってよりもお姉ちゃんなんだよねー。
そうなると美樹ちゃんはお兄さん…なんだけど、やっぱり美樹ちゃんはお父さんなんだよね。
「ねーさんな、ずっとうーんって言っててん」
帰って来てすぐに美樹ちゃんがねーさんを病院に連れて行ってくれたけど、出るまでもずっと「始まったらお腹痛ーい」と唸ってた。
「生理痛が酷い言うてただけやし大丈夫やろ」と真ちゃん。
「生理痛って痛いん?」
「………。」
何で黙ってるんやろ。
「真ちゃん生理痛なった事ある?」
「………。」
何でそんな変な顔するん。
真ちゃんはものすごく変な顔して黙った。
「大人になったら分かるんちゃいますー?」
また子供扱いするし。
好きで1人だけ歳が離れてるわけじゃないのに。
「ねーさん、大丈夫なん?」
「大丈夫やって。人間、意外としぶといで」
そうだけど、ねーさんがしんどいって言うのは滅多に無いから心配。
美樹ちゃんが帰って来てねーさんは入院する事になったと言って、ねーさんの荷物を用意してまた出かけてしまった。
入院するくらい体調が悪かったなんて。
「ねーさんホント大丈夫かな?もっと早くに帰ろうって言った方が良かった?」
「2週間で帰って来る言うてたし大丈夫やって」
2週間って長いよ。
「キリコが居らんで寂しいん?」
「寂しい(´・ω・`)」
「美樹ちゃん、ねーさんやっぱり2週間は帰って来れないの?」
ご飯の時、美樹ちゃんに聞いてみた。
いつもなら4人の晩御飯なのにねーさんが居ないから変な感じ。
「どうした?キリコおらんから寂しい?」
それ、さっき真ちゃんにも言われたよ(´・ω・`)
「キリコも似たような事言っとったで。きーちゃん居ないからつまらんーって叫んでたから顔見せに行ったってや」と美樹ちゃん。
本当は家族しかお見舞い行けないけど、ねーさんが私のことを妹だと言ってくれて毎日お見舞いに行けることになった。
看護師さんとか「妹さん」って言ってくれて本当に妹になったみたいで嬉しい。
「赤ちゃん生まれるん?」
お見舞いに行った時に、結局何で入院したのか聞いてみた。
そしたらびっくりな返答だった。
「美樹ちゃんがお父さん?」
お父さんみたい。って思ってたけど。本当にお父さんなんだ。と思って言ったら、何故かねーさんはむせる。
「大丈夫?」
「大丈夫。お父さんなるの美樹しか居ないってば」
「うん、一番お父さんだもんねー」
赤ちゃん生まれたら、どさくさに紛れて『お父さん』って一回呼んでみたら怒るかな。
ねーさん、おかーさんかぁ。
美樹ちゃんはお父さんって呼んでみたいけど、やっぱりねーさんはねーさんだな。
お見舞いに毎日行くのはお手伝いもある。
着替えとかねーさんの必要なものの調達係。
夕方まで居て、仕事が終わった美樹ちゃんが迎えに来てくれるまで居る。
ねーさん、全然動いたらダメだからなかなか不便らしい。
動けないけど、その他は元氣そうで安心した。
「赤ちゃん来るって知ってた?」
真ちゃんに聞いてみた。
「美樹が言うとったやん」
「いつ!」
「キリコが入院になったって言うてた時」
言ってたっけ?
2週間入院ってことしか言ってなかった氣がするけど。
「いつ産まれるん?」
「10月言うてたで」
10月って意外とすぐだなー。楽しみー。
「抱っこしていいかなー」
「氣ぃつけな、世話全部させられるで」と真ちゃんが笑った。
私も一緒にお世話させてもらえるのかな。そうだと嬉しい。
あ、でも。
赤ちゃん産まれるってことは、私ここに居ていいのかな。
あ、嬉しい氣持ちがどこかへ行ってしまった。