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Story 29.お年頃。
翌日、面会時間ちょうどにきーちゃんが来てくれた。余りにも早く早くと言って30分ほど駐車場で面会時間になるまで待ってたんだって。早朝一度車を取りに帰る旦那を迎えに真ちゃんが来てくれたんだけど、その時、真ちゃんずるい!とお怒りだったみたい。マハルには会えないからってなだめてくれたんだって。
「ねーさん、昨日ちゃんと食べられなかったから」と餃子と天津飯を買ってきてくれたけど、30分待機の間にちょっと冷めていた。でも、「おねーちゃん一番大事でもいい?」って聞いてくれたきーちゃんが、その通りに大事に思ってくれてると分かったから冷めていてもいつもよりも美味しく感じた。
「あのね、ベッドとかどうするの?」ときーちゃん。あ、洋服は買ったけど、大きいものは直前でいいよね。って言って忘れてた。笑「ほら、やっぱり忘れててんで」ときーちゃんに言う真ちゃん。やっぱりって何よ。忘れてたんだけど。「マハルくんが帰って来る前に買いにいってもいい?やっぱりねーさんが選びたい?」ときーちゃん。私が選びたいかもって思って聞いてくれるのが嬉しい。買いに行ってくれといた方がありがたいんだけどね。「買いに行ってくれる?」と聞くと「いいよ♪」と嬉しそうに返事をしてくれるきーちゃん。「他には?ベビーカーとね、オムツも無いと思う」「うん、そうだね。一緒に見に行って来てくれる?」「任せて!」「領収書は美樹に渡してー」真ちゃんに言って2人を見送る。「マハルくんーーまた明日来るから忘れないでねー」と言い残してきーちゃんは部屋を出た。
「こんなのにしたよー♪」と早速昨日ベビーベッドとベビーカーを買いに行ってくれたきーちゃんたち。買って設置までしてくれて、その写真を見せてくれた。私の生活リズムを考えて私たちの寝室と1階のリビングに一つづつ用意してくれたみたいで。あとね、どーーしても可愛くて♡と子供用の小さいタンスとリビングと私たちの部屋用にと青空のラグ。「かわいい♡」「でしょー。真晴くんだから青空なん♪」帰るのが楽しみになる。
「あそこ、なんかいたたまれんって言うか…なんか居心地悪いな」と真ちゃん。めっちゃジロジロと他のお客さんに見られたみたいで。それ、多分何人か誤解してるかもね。一緒に赤ちゃんグッズ買いに来てる女の子、中学生だからね。子供に手を出したって誤解されたのかもね。ドンマイ。
けど、氣になるプライス。まさかベッドとお布団セットが倍になるとは…嬉しいんだけどね!領収書を受け取るのがちょっと怖い。「ホンマ、すっかり忘れてたわ。助かったわ。」と旦那は封筒を真ちゃんに渡そうと出す。旦那も忘れてたのね。やる氣ないなぁ。「ええよ。出産祝い。組み立てたベッドに熨斗とリボン付けとこうか?笑」と笑う真ちゃんに後光が差して見える。拝んどこ。「何で夫婦に拝まれてるんすかね?」
「まはるくん、寝ててもかわいーねー♡」ベビーベッドで寝ているマハルを眺めてうっとりしているきーちゃん。「ほっぺさわりたーい♡」「触ってもいいよー」「起きたらかわいそうー。でもさわりたーい」もうメロメロやん。そんなきーちゃんがかわいい。しばらくしてマハルが泣き出す。「泣いちゃったー。触ってないよ」とあせるきーちゃん。「オムツかなー。かえてみる?」「いいの?」とオムツを替え始めるきーちゃん。あれ、慣れてる。「うまいね」「おとーとの時にやってたから」そう言えば年の離れた弟いるって言ってたよね。だから、抱っこも上手だったのね。
翌日、きーちゃんたちは面会時間より少し早目に顔を出してくれた。これから予定があるから今日は顔だけ見に来たという2人。つまんないなー。「明後日来るからね、マハルくん忘れないでね」いつもの帰りのご挨拶だけど…明後日?「明日じゃないの?」「あのね今からねー」「きーちゃん、あかん」「そう、あのね、明日はね…」怪しい。今からって言わなかった?これからの予定と明日と関係あるの?
「今からなに?」「ううん。今からじゃないない!」怪しい。さっきは今から予定あるって言ったけど?
「で、今からと明日となんか関係あるの?」「今からね、温泉にお泊り行くの♪だからね、明日は来れなくて明後日なん。社長さんがね行っておいでってくれたんだー」意外にあっさり陥落するきーちゃん。「温泉?泊まり?」きーちゃんたちが帰ろうとするタイミングで仕事から戻った旦那がしっかりと反応。
「そうなの♪最初、社長さんが奥さんと行く予定だったんだけど、奥さんギックリ腰なったんだって。急だから行ける人居なくて、真ちゃんが貰ったの♪社長さんが奮発したからええ部屋やでーって。お部屋に露天風呂もあるんだって♪お食事もね、ランクアップしてるって社長さんが言ってたよ」あ、きーちゃん、ガソリンに直接火をつけたんじゃない?「それ、いつ貰ったん?」と超冷静な旦那の声。「真ちゃんがね、忘れ物してたから会社行ったの。社長さん居てね、オヤツも貰ったよ」「そうかー。で、真弥、泊まり?」どんどん燃料投下してるよ、きーちゃん。わたし、真相が聴けたらそれで良かったんだけどなー。「キリコ、美樹が怖いって」と真ちゃんからヘルプの視線が送られる。仕方ないなー。「ホラ、きーちゃんへのご褒美だよ。入院の時もそうだし、ベッドとかも用意してくれたしー」「まあ、そうやけども」
「美樹ちゃんも温泉行きたい?真ちゃんと行ってくる?ご飯美味しいって言ってたよ」旦那の『必殺、親父のひと睨み』にきーちゃんが『必殺、上目遣い』で対抗してくるけど、なんかちょっとズレてる氣がするよ。「きーちゃんが行ったらええで。なあ、真弥」「マジで美樹が怖いんですけど?」ちょっと怖いね、なんか殺氣を感じるね。なんだか面白くなってきちゃった。「美樹ちゃん、行っていいよ。真ちゃんと行っておいで。私1人でお留守番できるよ?」きーちゃん、そうじゃない。きっとそういうこと言ってるんじゃないよ。きーちゃんそう言いながら残念そうやん。行きたいオーラ出てるよ。
「ほら、早く行かなきゃチェックインの時間あるでしょ。忘れ物してない?」と2人を追い出す。「ホンマ美樹ちゃん行かなくて大丈夫?」「大丈夫、大丈夫。お土産買ってきてね」「うん、買ってくるね♪」
「ちょー、キリコ、温泉に泊まりやで、部屋に露天風呂やで!」「いいじゃーん。しかも貰ったんやったらいいやん」「あかんやろ、絶対あかんって」立場逆転してない?今まで私が言ってたやん、それ。ずるいってば。私がきーちゃんの心配したーい。「何が問題あるのよ。いいじゃん、温泉ご招待」「聞いたやろ、部屋に露天風呂やで!あかんやつや。いや、いっそいらん事して嫌われるがいいわ」ちょっと、お父さん、キャラ変わってるよ?嫌われるようないらん事したらダメだし。「純粋に温泉を楽しみにしてるとか思わないわけ?」「真弥やで。今は爺さんか父ちゃんみたいになってるけど真弥やで」……。思い出す過去。オンナ遊び激しかったよね。「やだ、なんか不安になってきた」
私たちの不安をよそに楽しかったみたいで。「延長したの♡」(きーちゃん)「延長!?」(旦那)「ただの連泊です」(真ちゃん)思いのほか、素晴らしかったみたいでお氣に召したきーちゃん。寝たらすぐ帰らなきゃいけないから、夕食時に今日は寝ない宣言。そしてホントその通りに寝ようとしない。翌朝、仕方ないから、別の部屋でもいいから空いてる部屋ないか聞いたら同じ部屋がそのまま空きだったので連泊決定。の流れだったみたい。
豪勢ですなぁ。よろしいなぁ。若さでお肌プルプルなのにもう一段とぷるっぷるツヤッツヤだもんね。
「お部屋ね、一個だけだったの」(きーちゃん)「離れってやつです」(真ちゃん)「お部屋の露天風呂、広かったよ♡2人でも入れるよ♪余裕よ」「入ったの!?」これには思わず旦那と声を合わせてしまった。「入ってませんから」(真ちゃん)「せやねん。広いから一緒に入ろうよーって言ったんだけどね、大きいお風呂入ってくるって一緒に入ってくれへんかった。せっかくお部屋に露天風呂あるのに、真ちゃんお部屋の露天風呂一回も入ってないねんで」ああ、びっくり。てか、一緒に入ろうって誘っちゃダメだってば。絶対きーちゃん、何の意味もなく一緒に入ろうって言ったよね。もしかして、将来の魔性の女だし試したとか?いやいやいや。そんなことないか。逆になんか真ちゃんが氣の毒になってきたよ、おねーさんは。
「でね、昨日はね帰らなくていいから卓球もしてん。真ちゃん凄いねんで!浴衣の帯めっちゃかわいく結んでくれてん♪」「マハルくんもおっきくなったら温泉行こうねー♡」と笑うきーちゃんと、温泉に行ったはずなのに疲れてる真ちゃん。なんだ、うん、おつかれさま。そして今朝、チェックアウトして帰宅。天氣いいからマハルのお布団干してくれたんだって。だからこんな消灯時間ギリギリだったのね。昼間に来ないから心配したよ。「だって明日帰ってくるもんねー。学校だからお迎え行けないけど」そっか、学校だったね。「きーちゃんが帰ったらもうマハル帰ってるね。」「急いで帰るねー」「きーちゃんにおかえりするからね」
「なんや、疲れた…」きーちゃん達が帰ったあと、旦那が一言。「まあ、ずっと宿泊だからねー。落ち着かないもんね」「違うわwwwきーちゃんや。あれ、あかんで、母さん、ちょっと教えてあげなさいな」「そんなもの、自然に覚えるものなの!」「ヒヤヒヤしたりホッとしたり忙しいわ。…マハル!お前が男で良かったよ」馬鹿じゃない?最近、開き直ってお父さんになってるよ?
五日ぶりの我が家。帰る時は息子がいるって変な感じ。「マハル、おまえの家やでー」息子を抱きながらそう言ってる旦那の姿を見て、何かいいなーとしみじみ思ったり。長いこと留守にしてた氣がする。
家に入ると、リビング横のきーちゃんの寝ている部屋にお布団が敷かれている。「まだ別に寝てるの?」てっきり一緒に寝てるのかと思った。「これはキリコの。帰ってきてもまだ横になって過ごさないとあかんからってきーちゃん朝敷いて行ってん」ってことは一緒に寝てるのか。大丈夫だったでしょうね?なんかいきなり心配になってきたわ。お布団の横に何か置いてる。見に行くときーちゃんからのお手紙で『おかえりなさい。待ってたよ。帰ってきて嬉しい♡でも、ちゃんとすぐに寝てね』嬉しくて旦那に見せる。「上で休むなら上行ってや。下で寝るって言った時用に敷く言うてたで」そんなの、下できーちゃんの帰りを待つに決まってる。早く帰っておいで。早く思いっきりギューってしたい。
「きーちゃん迎えに行ってくるわ」と真ちゃん。「そうなの?行ってらっしゃい」と送り出したけども。行って帰って2時間もあれば帰ってくるはずなんだけど…。「きーちゃんたち遅いね」「買い物でもしてんちゃうん?」と旦那のんき。
19時前に帰宅した2人。旦那の言う通りお買い物してきてくれたみたいだけど、きーちゃんの様子が変。「おかえりー」って帰宅したきーちゃんが私に言うとすぐに真ちゃんの部屋に行ってしまった。
「きーちゃんどうしたの?」と真ちゃんに聞くけど濁される。「真弥、何かしたんちゃうやろな」旦那の必殺技が出るけど、「してへんわ!ちょっと、疲れてるんやわ。晩飯まで寝かせたって」とご飯を作りに台所へ行く真ちゃん。
当番表が書き換えられてるのが目に入った。「これ書き直したん?」と真ちゃんに聞く。夕食当番も掃除当番も洗濯係もきーちゃんと真ちゃん。下に『帰って来た日、兄ちゃん晩御飯』と書かれてるけど私と旦那の名前が無い。
「キリコは1ヶ月は安静やしそしたら美樹は帰ってからと休みの日はマハルの世話しなあかんから。って」へぇーーー。きーちゃんの手帳を思い出した。産後、できるお手伝いと氣をつけること。を病院で聞いてくれた話をした。
一緒に寝たと思ったんだけど、私が寝た後に真ちゃんの部屋で晩酌してた旦那のところに行って聞いたんだって。その後の検診の日に看護師さんに補足してもらったのね。「成長したよねー」としみじみしてると、マハルが起きたので私はマハルの元へ。ノンキに構えてたけど、自分のペースで動けないって意外と大変ね。
翌日、旦那と真ちゃんは仕事に行ってきーちゃんも登校していた。初めてのマハルと2人。構えたものの何とかこなして旦那と真ちゃんが帰ってくる頃には、自分なりの手抜きをして寝ることも出来ていた。
「きーちゃんは?」帰宅した旦那に聞かれる。「まだだけど?電車で帰るからって言ってたから帰るの7時くらいじゃないの?」「もう、8時前なんですけどね。」と旦那に言われて時計を見ると20時前だった。「ホンマや!どうしよう!」と焦っていると真ちゃんの電話が鳴った。「行くわ。そこにおって」きーちゃんからだったみたいで。「寝てしまって乗り過ごしたって。ねーさんに心配かけてごめんなさいって言っててやってさ。迎えに行ってくるわ」真ちゃんは着替えずにきーちゃんを迎えに行った。
一瞬、ウッドデッキで空を見上げるきーちゃんを思い出して不安になった。寝過ごしただけで良かった。ホッとするのもつかの間、息子に大泣きで呼ばれる。やっぱり大変なのは大変ね。
30分もしないうちに、旦那に真ちゃんから電話があった。「ちょっと外まわって帰るって。先寝とけって」えーー。昨日帰ってからあんまりきーちゃんと話が出来てないからなんか寂しい。
2人が帰ってきたのは、日付が変わる直前だった。きーちゃんにおかえりを言おうとリビングへ向かう。リビングドアまで行くときーちゃんの声が聞こえた。「明日、どうしたらいい?ねーさんにね、聞きたいけど、マハルくんのお世話の邪魔したくないなー」「キリエはどないしたいんさ」あれ?真ちゃん今キリエって言わなかった?なになに?留守中なんか進展があったの?好奇心旺盛なのって、罪だよねー。聞き耳たてちゃうよね。
「明日、行きたくないー。見たくない」「休むか?」「休まないー。でも行きたくない」「こればっかりはなぁ。わからん!」「私もわからんよぉ」「とりあえず寝ようで」「いややー。寝たら朝になる」「なってもええやんか。」「いーやーやー。学校行かなあかんやんー」「休むか?」「休まない」あれ?2人に何かあったのかと思ったけど、よくわからないループしてるだけ?もう!期待して損した!つまらない!場合によっては空氣読んでそっと戻ろうかと思ったけどやめやめ!入ってやる。
「おかえりー」勢いよくリビングに入った。「ねーさん!寝てなきゃあかんやん!」きーちゃんがソファーから立つ。「おかえりくらい言わせてよ」「ただいま」「きーちゃん遅いからマハルも寂しいって言ってたんだからね!」「キリコが寂しかったんちゃうん?」真ちゃん、おだまり。
「今、ついでに聞いたらええやんか」と真ちゃんと首を振るきーちゃん。「キリエが聞きたいことあるんやって」あ、やっぱりキリエって言った!「真ちゃん!名前、ねーさんたちの前は言わないでって言ったのにー!」「ごめんって」私に聞きたいことあるのに、私を置いてけぼりかい!「で、何なに?」きーちゃんの隣に無理やり座る。「あのね、学校で…」ときーちゃんが話し出した瞬間マハルの声が聞こえた。そうよね、赤ん坊は空氣よめないからね。「マハル連れてくるから待ってて!ちゃんと待っててよ!真ちゃん、ちゃんとここで待ってるか見張ってて!」
マハルを連れてリビングに戻る。ちゃんと待っててくれた。「ミルクとオムツだから、まずちゃちゃっとオムツかえて、ミルク中さっきの続きね!」「じゃあミルク作るね」
「かわいいーー♡今日の疲れがふっとぶねー♡」ミルクを飲むマハルにとろけるきーちゃん。なんかオッサンみたいな一言ついてたけど。「で、さっきの話の続き何?」「マハルくん聞いてるのに?」「大丈夫!マハルは大好きなきーちゃんが悩んでる方が嫌だよねー」空氣を呼んだ乳児。ミルクの途中でニヤッと笑う。(新生児の反応だと思う。)「かわいいよー♡真ちゃん、かわいいってばー♡」ダイニングテーブルに座ってコーヒーを飲みだした真ちゃんを呼ぶきーちゃん。「マハルがかわいいの分かったから聞いてもらいなさいな」とそのままコーヒーを飲んでる真ちゃん。
「あのね、、、」お友達のことらしい。昨日、最近彼氏が出来たというお友達に「どこまでしてもいいかな?」と相談されたそうで。きーちゃんが話してくれてるのに、鼻水出そうになった。中学生だよ?中2だよ?と思ったけど、自分含め周りがどうだったか…が一瞬で思い出されて少し冷静になる。「で?」「どこまでしてもいい?って何をどこまでするの?って聞いたらめっちゃバシバシされてね、意味わからんねん」
うんうん。されると思うよ。そういうお年頃。「教えてくれないのに顔合わすたびに聞いてくるん」そうだろうね。たまにそんな子いるわ。そういう相手がいるんだよって自慢したい子。「その子のこと嫌いじゃないんだけどね、彼氏の話とか聞いてくる時になるとね、なんかでっかいスライムが来るん」でっかいスライム?「そのスライムね、なんだろ氣持ち悪くなる甘い匂いがしてねしんどくなるねん。前のスーパーであった真ちゃんの元カノがね『遊んであげられなくなってごめんね』って言った時みたいな匂い」いきなり元カノの話が出て焦ったのか向こうで思いっきりむせた声がしたけど、無視することにした。
「あいつ、いつそんな事言うてん!」真ちゃん、おだまり。無視だ、無視。「あの匂いは嫌だし、聞いてくる意味もわからんからあんまり会いたくないねん。でもな、その子のことは嫌じゃないん。あのスライムが嫌でね、どうしたらいいかなーって」「それで?」「どこまでしたらいいって言ったらいい?何を聞いてるん?分からへんって言ってもずっと言うねん。あのスライム何?」
んーーーと。困ったなぁ。ミルクを飲み終わったマハルは寝てしまったから、そっと横に寝かせる。「きーちゃん好きな人居る?」「ねーさんと、美樹ちゃんと、真ちゃんとマハルくん♡あとばーちゃんも兄ちゃん好き♡」好きな人聞いたら真ちゃんより先に名前が出たよと旦那に教えてあげよ。喜ぶわぁ。じゃなくって。きーちゃん、そうじゃない。その好きは意味が違う。えー。難しいーー。
「何にもしてなかったら、自然とその人のこと考えてたり、自然と手を繋ぎたいなーとか、もっとギューってしたいなーとか…逆もあるよね、手繋いで欲しいな、ギューってしてくれたらいいのにもっとくっついてよー。って思う人」「んー……」そんなに悩まなくていいから。「この人とだったら世界で2人だけになっちゃっても大丈夫とか、むしろ2人だけになればいいのにとか」考え込むきーちゃん。そんなに難しい話してないから。「自分の前から居なくなっちゃったらって考えると怖くなっちゃうとか」「真ちゃん!」あら。良かったじゃーん。真ちゃんの方を見ると、顔を背けられた。何よー。照れんなよー。前提を話すだけでなんか疲れた。
「オッケー、じゃあねぇ」次、どうしようか。「好きって氣持ちがね、お互いに同じになってそれを伝えてるのが彼氏とか彼女ね。伝えてお互い一緒に居たくているのが付き合うってことでね」「うん」んーーー。なんて言えばいいのかなー。「好きがもっと育つと、もっと自分のことを知ってもらいたくなってね、相手のことももっと知りたくなるの。2人だけの世界を作っていってね、2人だけの秘密も出来てくるのね。」「楽しそう♪」きーちゃん、今絶対、秘密基地を想像したよね?絶対したね。まあ、いいや。
「その秘密はね、2人が思い合って築き上げたものだったり何かにぶつかって一緒に乗り越えたりするものでね、2人は仲をもっともっと深めていくんだけど、その仲を深める方法がたくさんあるの。愛情表現って聞いたことある?」「あるよー」「愛情表現は人の数だけあって、順番も人によって違うから他人がどの愛情表現が良くて、誰がダメって言えないからね、「どこまでしたらいい?」って聞かれたら『自分がいいと思う所までで自分で決めたらいいと思うけどな』でいいと思うよ。」「ありがとう♪そうする」
「あと、そのスライムはね、時々「私、幸せなの。いいでしょー?」って自慢したくなる人って居ててね、いいでしょー♪の自慢だけだったらいいんだけど、「あなたより私は幸せ」って人と比べたい氣持ちの自慢が入ってたりすることがあるの。自分が幸せじゃなかったり心に不安があったりって理由で。その不安とかの入った自慢だからじゃないかなーって思う」「大好きな人がいて幸せなのに人と比べたいの?」「そうなの。人って難しいよねー。このね、誰かより自分は優れてるんだ、幸せなんだ。って比べたい氣持ちはね、誰にでもあるものだと思うの。「自慢するお友達は悪い!」って決めつけたらダメだけど、スライムは嫌だけどお友達はいい子ってちゃんとわかってるもんね」
「またスライムが出てきたら、『あーすごいねー。いいなーって思って欲しいんだねー』って思えばいいよ」「そっかー」そう言ってマハルを見つめるきーちゃん。ちゃんと分かるように話せただろうか。「あ、もう一個いい?」ときーちゃんは真ちゃんの方を見て、私に言う。「いいよ」「あのね…最初の話のね、内緒話でもいい?」
ねーさんや美樹ちゃんが好き。って言うのと、真ちゃんが好き。って言うのは違う好きなのかなー。これには私がうふふ♪と言ってしまった。かわいい。もう、超かわいい。なんでうちの子こんなにかわいいの。
「きーちゃんどうだと思う?」「わかんないー。でもね、時々もーっとくっつきたくなる」いやーん、超かわいい。うちの子かわいすぎるんですけど!「くっつきたくなったらね、くっついてみたら?向こうが嫌!って思えば嫌って言うだろうし、嬉しいって思うかもしれない。ねえ、真ちゃん」いきなりパス出してやった。だって、きーちゃんの特別が私じゃないの悔しいじゃない。「え?何が?」いきなりのパスに戸惑ってる。ざまーみろだわ。
そうか、お友達ができて良かったと思ってたけどそれはそれで大変みたいだね。それも成長だよね。きーちゃんの場合、ちょっと一歩一歩大きくしなきゃいけない所があったり、いろんなステップが順番通りじゃないし。
「ねーさん、ありがとっ♪」きーちゃんからギューってハグしてくれる。嬉しい。くっつきたくなってくれたのかしら。いいタイミングでマハルが泣く。「ママ取ってないよーごめんね」「違うよねー、ぼくだってきーちゃんに抱っこしてもらいたいのーだよね」きーちゃんはそーっとマハルを抱っこする。泣き止んだマハルはきーちゃんを見てる。「かわいいなー♡赤ちゃんって幸せがカタチになってるよね」赤ちゃんって幸せがカタチになってる。かぁ。なんか良い表現。マハルに歌を歌ってくれるきーちゃん。きーちゃんも私たちの幸せのカタチなんだよ。
「ただいまー」今朝、スッキリした顔で登校したきーちゃんはスッキリした顔で帰ってきた。きーちゃんは、マハルが寝てるのを確認すると私をギューっとハグしてくれる。かわいい。「マハルくんが見たらね、ママ取られちゃうって思ったら大変だから。でもマハルくんもギューってしたーい 」ほんとかわいい。私もハグし返す。「きーちゃん、カバン一個忘れてんで」ときーちゃんを迎えに行ってた真ちゃんが遅れて入ってくる。あれ?昨日はキリエって呼んでたのに。「ありがとー」とカバンを取りに行って真ちゃんの前で立ち止まるきーちゃん。「なに?」きーちゃんは真ちゃんにも思いっきりハグ。それに驚く真ちゃん。ヤバイ、ヤバイ、うちの子めっちゃかわいい。「ごめん。嫌だった?」でた、必殺上目遣い。「誰が嫌言うてんー」とハグしかえす真ちゃん。「きゃーねーさん助けてー」何してんの。うーん、やっぱりお父さんと娘にしか見えないわ。良いタイミングでマハルが起きて泣きだす。「マハルがぼくのきーちゃんやーって怒ってるよ」
久しぶりにみんな揃ってご飯で喜んでいるとマハルが泣く。「抱っこしてきていい?」ときーちゃんが立ち上がる。「ご飯食べててね」とマハルの所へ行った。「看護師さんがね、ママは温かいご飯をなかなか食べられないから家族がいる時は温かいご飯を食べられるように協力してあげてって、これはね、パパも氣付きにくいから教えてあげてねって」とマハルを抱っこして戻ってきた。
ありがたく温かいご飯をいただく。「ありがと、急ぐね」「ゆっくり食べて!その分マハルくん抱っこ出来るもーん♡あ、真ちゃん、ちょっとだけ抱っこしてて!」とマハルをパスしてきーちゃんは急いで髪をくくる。「赤ちゃん、髪の毛つかんで怪我することがあるんだって。あぶないー忘れてた」氣を取り直してきーちゃんに抱っこされてるマハルはやっぱりご機嫌で。「きーちゃん、変わるから食べや」と先に食べ終わった真ちゃんが変わってくれる。ごめんね、食べるの遅くて。旦那はノンキにビール飲んでるし。どっちがお父さんかしらね!
でも、やっぱきーちゃんって言ったね。昨日は確かにキリエって呼んでたのに。その違いなに?その前にいつからキリエって呼んでたの?氣になる。