Story 30.二回目の誕生日。

冬になって街はクリスマスの空氣になる。マハルもすくすくを通り越してぷくぷくになりだして、きーちゃんはいっそうメロメロでいてくれる。いつも私のことを氣遣ってくれるし、マハルの面倒もたくさん見てくれるからおそらく私は随分と恵まれた育児をしていると思う。そして、きーちゃん自身も随分と落ち着いているように見える。
もうすぐきーちゃんのお誕生日だから、この1年たくさん成長したきーちゃんをいっぱいお祝いしようと思ったけど…「そっかー楽しんでおいでー」誕生日が週末だから明後日泊まりがけで遊びに行くというきーちゃん。(と真ちゃん)「わざわざ泊まりでいかんでも…」と旦那はブツクサ。「いいやん、最近は全然おでかけ出来てないんだし」食事中、旦那はすんごい視線を真ちゃんに送り続けてホントお父さん。頑張れ、真ちゃん。
そんな心配しなくても2人は相変わらずで。一瞬お年頃な悩みに突入するかと思われたきーちゃんも何とか学校へ行き帰ってマハルのお世話を手伝ってくれる生活をしていて、真ちゃんに構ってられないっていうのが正解かも。そのせいか真ちゃんは、一時期よりも友達と遊びに行ったりする回数が増えた。グループの中に女子が居ることはあるけど、健全に男友達との約束ばっかり。別に誰と行くかなんてサラッと教えておいてくれたら良いだけなのに、メンバー全員とどこに行くか教えてくれる。小学生じゃないんだからと変なマメさに呆れたり。この間は泊りがけで登山に行ってたし、きーちゃんが安定してるおかげか泊りがけの旅行なんかも行って、程よく氣分転換出来てるんだろう。
けど、やっぱりきーちゃんのことは大事に思っているのは傍から見ていてよく分かる。旦那の休みの日は、きーちゃんの氣分転換になるようにと色んな所に2人で出かけていた。四六時中一緒にいることがなくなって、ほど良い距離感なのかしら?とも思ったり。やっぱり、きーちゃんにかかるストレスがマックスになると寝込むけど自分で調子が悪くなると先生に電話して来てもらったり、そもそも自分の調子を観察できるようになってきて疲れた時はちゃんと休めるようになったりしっかりしてきた。
きーちゃんの誕生日前日。きーちゃんは学校から帰って真ちゃんが帰って来るのをソワソワと待っている。社長さんは完全に回復してからでいいのに。と言ってくれたけど、真ちゃんはだいぶ回復したからと週4日朝から夕方まで仕事に復帰した。夜中に出発して星を見に行くんだって。寒いのに。珍しく旦那と真ちゃんが同じタイミングで帰宅。2人の出発があるので早い夕食取っていた時、旦那に電話があった。やり取りを聞いていると何だか嫌な予感。
「かーさん、あかんかったわ」止まる空氣。かーさんとは旦那のおかあさん。少し前から入院していたんだけど。「ちょっと帰るわ。キリコはマハルおるし残り。ねーちゃんもそう言うてたわ。」「なんで?私も行くって」「マハルにはまだ遠いやろ。家ほどキリコを手伝えんし落ち着かんやろ」旦那が私を氣遣ってくれてるのはよく分かるんだけど納得できない。「大丈夫だって。まだ会ってないんだよ」まだ、マハルを会わせてなかった。「暖かくなったらおいで」って言ってくれてたのに。マハルが泣き出したけど、私は旦那に自分も行くと説得していてきーちゃんがミルクをあげてくれた。
「真ちゃん…あのね…」きーちゃんがマハルと真ちゃんを連れてリビングを出た。しばらくして戻ってきて、真ちゃんが旦那に何か言ってる。旦那は何か考えてるみたいで。「ねえ、どうしたの?」マハルと遊んでくれていたきーちゃんに聞いた。
「マハルくんが大丈夫なんだったらね、私たち近くにホテルとって一緒に行ってお通夜とかご葬儀の時マハルくん見るのダメかな?って真ちゃんに相談したの」「でも今からきーちゃん星見にいくんでしょ?」「星はずっとあるもん。マハルくんがおばーちゃんと会えるの今だけだもん。」ときーちゃん。私は、きーちゃんたちが言ってくれたことに甘えたい。でも、明日はお誕生日で「星を見に行くんだ」って前から楽しみにしてたきーちゃん。マハルが生まれてからもたくさん助けてくれて、多分いっぱい我慢させちゃってる。だから、久しぶりの楽しみを諦めさせてしまうのが申し訳ないのと、甘えたいのとどうしたらいいか分からなくなっていた。
「でもね、遠いんでしょ?マハルくんがしんどくなったらどうしようって。それにママの身体もとってもボロボロでちゃんと回復するまでに時間が必要だから無理はダメだし、美樹ちゃんに聞いてもらってるの。本当はねーさんに聞くのが一番なのかもしれないけど…」旦那に直接真ちゃんから言ってもらった方が、旦那は私も連れて行く…と言ってくれるかと思って。と続けるきーちゃん。マハルが生まれる前、看護師さんに「お姉ちゃんが一番でいい?」と聞いてくれた通り、私のこと考えてくれてるきーちゃんがとても頼もしく感じる。ママの身体の話もその時看護師さんから教わったそう。
「キリコ、ちょっと」と旦那に呼ばれた。「真弥がな、」やっぱりさっきの話だ。「きーちゃんから聞いたよ。マハルも元氣だし、甘えられるなら甘えたい。私もおばちゃんに会いたい」本当はお義母さんなんだけど、本当に小さい頃から知っててお互い照れるから「おばちゃんって言って」と言ってくれてて。「でも、きーちゃんら出かけるんやろ」旦那もきーちゃんのお誕生日なのを氣にしてる。「お誕生日なのも、星を見に行くの楽しみにしてるのもわかってるけど、きーちゃんがね私たちのこと相談してくれてん」
きーちゃんから真ちゃんに相談してくれてたことは知らなかったみたいで、旦那はきーちゃんを見る。きーちゃんはマハルに歌を歌ってくれていた。「なんか、イッキに大人になったなぁ」ときーちゃんを見た旦那は言う。本当にそう思う。今まで面倒みなきゃいけない小さな子だと思ってたのに。「大人なったんやったら、ホテル取らんとうちで泊まってもらうけどな。かわいい娘をオトコとホテルなんて宿泊させんわ!」旦那よ、だから、キャラ変わってるってば。「バカじゃないwww」
「真ちゃん…」二階へ荷物を取りに行こうとして真ちゃんの部屋の前を通った時、きーちゃんが真ちゃんを呼んでいた。思わず聞き耳を立てる。「せっかく星を見に連れてってくれるって言ったのにごめんね」「キリエがそうしたいって思ったんやろ?」やっぱりキリエって呼んでる!あれからずっと「きーちゃん」って言ってたから私の思い違いかと思ってた。その急接近、どうしたの?いつから呼んでるの?氣になるってば。「そうだけど。せっかく言ってくれたのに勝手についていきたいって言っちゃって、真ちゃんのこと考えへんかったもん。ごめんなさい」「なんで謝るねんな。キリエはキリコとマハルに会ってほしいって思ったんやろ。自分の楽しみよりも2人のことを想えたの嬉しいで。氣にすんな。また行こうや。星は逃げへんて」きーちゃんが真ちゃんにギューっとしてるの見ちゃった。こんな時だけども。なんか、いいよねー。若いなー。「ほら、早く用意せな。アイツら待たせたらあかんやろ」と真ちゃんの声がして、荷物を用意しに行くのを忘れてたことを思い出して二階へ上がった。
義姉から電話が来て2時間弱。旦那の実家に向かう。旦那は向こうで色々しなきゃいけないからと真ちゃんが運転してくれて、私たちは後ろに座ってきーちゃんは助手席。なんだか新鮮。後ろから見るきーちゃんは、髪を下ろしているせいかやっぱり少し大人っぽく見えた。私たちを氣遣ってか口数が少なく、時々真ちゃんと話して笑うけれど、私をそっとしていてくれていた。
途中のサービスエリアで真ちゃんと遊んでいる姿を見て、無理をさせ過ぎているかと心配したけど少し安心。明け方に到着。マハルは道中良い子で、ついた頃にはぐっすり寝ていた。義姉が出迎えてくれて、旦那がマハルを見てもらう為に2人が来たことを言うと一旦出ようとする2人を引き止める。さすが真ちゃん、ビシッとご挨拶してる。やっぱりええトコの子だよね。私そんなにちゃんと出来る自信ないなーとか思ったり。きーちゃんもびっくりするくらいしっかりやり取りしていて、大人モード入ってるのがわかった。
義姉の家には、きーちゃんと同い年の女の子と2つ上の男の子。きーちゃんと同い年の姪はホントイメージ通りな中学生らしい中学生女子。だから前に会った時にきーちゃんの幼さがよくわかった。大人モードのきーちゃんは、反対の意味で同い年に見えない。今まで完全に大人モードに入った所は見たことがなかったけど、こんなにイメージが変わってしまうっていうことは大人モードはきーちゃんが生きてくための方法だったんだろうな。と思った。
義姉に勧められて朝食をとってホテルに移動することになったものの真ちゃんも歳上受けがいいもんだから、集まりだす叔父や叔母に氣に入られ引き止められる始末。起きてきた姪が真ちゃんを見て一目惚れしたのかってくらいポーッとしてたのが印象的で、波乱の幕開けになりませんように。静かに送らせてと祈ったのも思い出。親戚一同を2人が引き受けてくれたおかげ(?)で私たちはゆっくりお別れできたわけだけど。
義姉にマハルの世話を頼んでるしわざわざ行き来してもらうのは大変だからと、実家で泊まれば良いと言われ旦那が真ちゃんに打診中。あれから近くのホテルを探してみたけど予約が取れなかった。真ちゃんはきーちゃんがもたないだろうし、夜は最初の予定通り車中泊して星を見るから氣にしないでと言うけど、確かにここに泊まるのが一番楽だと思う。けど、泊まるとなると知らない人ばかりだし、マハルのお世話もあるからきーちゃんは持たないんじゃないかと心配になる。だから、真ちゃんが断るのもわかる。
「ねーさん、あのね…」旦那と真ちゃんが相談している時にきーちゃんに呼ばれる。「おばさんがね、遠慮しないで泊まっていって。って言ってくれたん。でもね、みんな大変なのにいきなり泊まることになったら美樹ちゃんやねーさん失礼なの連れてきてって言われない?おじさんたちもそうしろって言ってくれるのね。だから、どっちがいいかわからなくて。断ったら失礼?それとも泊まる方が失礼?ねーさん、ごめんなさい。そこまで考えてなかった」誰も居ないところできーちゃんが言う。「真ちゃんはなんて言ってた?」「真ちゃんは星見に連れて行ってくれるって。そっちのが緊張しないやろって。でももし断る方が失礼だったらお言葉に甘えた方が良いのかなって」難しいところだよね。普通に義姉たちはいきなり泊まることについて裏はない人たちだし、むしろマハルの世話と運転手で付き合わされてると思っているみたいだから、言葉通りでいいと思う。それは、きーちゃんが大丈夫なんだったら。ただでさえ、葬儀という場だしきーちゃんにとっては知らない人しかいない。負担が心配。
そのままこれをきーちゃんに伝えてみた。「ありがとう。泊めてもらうね。本当、ねーさんたちは大丈夫?」「マハルも見てもらうし、泊まって行ってくれる方が安心は安心だよ」「ありがと。真ちゃんに言ってみるね。ホント、ごめんね」そう言ってきーちゃんは真ちゃんの所へ行った。後から聞いたら、きーちゃんは旦那にも謝っていたらしく、とても氣にしているんじゃないかと心配になった。
田舎の通夜と葬儀だから自宅で行う。時間が近づくと親戚や近所の方の訪問で心配はしていたもののきーちゃんに意識がいかないまま時間が過ぎてしまった。お通夜の間、きーちゃんは2人が泊まるために用意してもらった奥の部屋でマハルを見ていてくれて、マハルくんとっても良い子だったよ。といつも通りの様子で話す姿に安心していたけれど、食事をしている時に、真ちゃんは何故か姪に占領されて集まったちびっこたちと真ちゃんを巡る取り合いが起こり、きーちゃんが完全に一人でマハルを見ていてくれていたことがちびっ子の一人の密告により判明。
まったく知らない所で一人マハルの面倒を見る負担は大きく食事にほとんど箸をつけていないようだった。真ちゃんに言おうとするけど、姪がなぜか常に隣にいてどれだけ真ちゃんのこと氣に入ったの。と頭を抱える。最近の中学生は積極的ね。姪がそんな調子だから、大人モードのきーちゃんはとても出来た子のように親戚には映るようで、姪の対抗心むき出しの視線をきーちゃんに送るのを見た時は目眩がしそうだった。旦那もきーちゃんを心配しているようで、多分一番様子を見に行ってくれてた。
翌日の葬儀も同じ調子で、火葬と初七日の法要が終わるまできーちゃんを一人にさせてしまった。きーちゃんがマハルを見てくれていたおかげで私はとても助かったものの、ただ一人に任せっきりだったのは申し訳なく思ってる。
「キリコ、ちょっと」法要が終わってすぐ旦那に呼ばれる。「もう一泊って言ってたけど、一段落したら帰らへんか?キリコも疲れてるやろうけどきーちゃんが心配や」と旦那。法要は火葬場のホールで行なった。子供たちの面倒を見るという名目で真ちゃんも連行されていてきーちゃんは実家で一人マハルを見てくれていた。旦那が葬儀前に真ちゃんきーちゃんとで真ちゃんが子どもたちを見るためとホールへ呼ばれていることを話をしていて、その時にきーちゃんは「急にきたんだしお手伝いになるんだったら行ってきて。お隣のおばあちゃんが一緒にお留守番してくれるから大丈夫よ」と言ってくれたらしい。きーちゃんはマハルの子守りの合間には、手伝いに来てもらっていたご近所さんに混ざって手伝いもしてくれていて奥様方と仲良くなっていた。
「熱が出たりはしてへんみたいやけど普通でも疲れるやろ。で、真弥も氣になってても早めに出ようとか言われへんやろ。キリコも疲れとるやろうけど」「私は大丈夫。美樹がいいなら私も早めに帰った方がいいかなって思う」母親の葬儀で一番大変だった旦那に氣を使わせてしまった。けど大変でも、そうやって周りのことも見ることができるところは本当に尊敬する。
法要から帰ってきーちゃんとマハルの居る部屋に行くと、二人は昼寝をしていた。マハルがきーちゃんにくっついて寝ている。きーちゃんもマハルに寄り添ってくれていてその光景はとても穏やかで幸せなものだった。旦那が真ちゃんからきーちゃんがほとんど寝ていなかったと聞いて心配していたから、少しでも寝られているのがホッとする。子供たちから真ちゃんを引き離してこれから帰ろうと話すと私たちを氣にしてくれたけど、旦那の「多分きーちゃん限界やろ」の一言が効いた。やっぱりお父さんだよね。うちの旦那。頼れるわ。「きーちゃんも真ちゃんも無理させちゃってるよね。引き止めてごめんね」と真ちゃんに謝るけど、「キリエはそんなに氣にしてへんで」と笑う。やっぱりキリエって呼んでるー!えーずるい。真ちゃんばっかりずるい。いつから?何があったのー!氣になるから、帰ったら尋問しよう。
お昼寝から起きたきーちゃんに、これから夕食をいただいたら帰ろうね。と言うと、やっぱり私たちのことを氣にしてくれた。遅れたけど帰ったら、きーちゃんのお誕生日会やろうね。と言うと「うふふ♪」と笑ってくれた。
夕食の時、旦那が「急に明日仕事入ったから帰るわ」と言う。もうあらかじめ義姉か義兄には言ってるものだと思ったからちょっとびっくり。義姉も「明日くらい休めないの?」と言っていたけど、上手いこと押し切っていた。さすが姉弟だよね。姪が結構ショックみたい。まあね、歳上のお兄さんに憧れる年頃だからね。都会(まち)に住んでて、男前で背も高くて優しい異性だったら憧れちゃうよね。氣持ちはわかるよ。うん。かわいいなぁ。と思うけど、ただ、きーちゃんが義父や義姉夫妻に褒められるたび、真ちゃんと話すたびに私でも分かるくらいの敵意をきーちゃんに向けるのはやめて欲しい。真ちゃんの妹ってことにしてたけど、違うの氣付いてるのかしら。女子ってその辺敏感だしなぁ。きーちゃんはやっぱり、お吸い物みたいな一人づつ出されたもの以外は箸をつけていないようだった。多分ね、大きな寿司桶からみんなが取るから氣付いてないと思ってるんだろうけど、着いた時の朝食からほとんど食べてないよね。
帰りも真ちゃんが運転して私たちが後ろ。私が運転しても良かったんだけどマハルを見なきゃいけないから。と休憩ごとに旦那と交代で運転してくれるらしい。帰りはマメにゆっくり休憩をとって帰る。サービスエリアで、きーちゃんはまた空を見上げていた。この2日ほぼ大人モードだったきーちゃん。まだ氣が張っているのかまだ精一杯の防御をしているのか、いつものような雰囲氣には戻っていなかった。
運転手交代。きーちゃんと真ちゃんは三列目に座った。少しして後ろを見ると、真ちゃんに寄りかかってようやく寝たようだった。大人モードを外して、ちょっとでも楽になってくれたらいいんだけど。「きーちゃんね、さっきもご飯食べてなかったんだよね」と旦那に言ってみた。「昼食べてへんのに?」
朝、きーちゃんだけ残ると決まった時。火葬中に昼食の予定だから、きーちゃんの分と旦那が葬儀前にコンビニへ行ってお弁当を買って来てくれていた。けど、私たちが戻った時にはまだ未開封だった。「マハルくん寝たらいただこうと思ったんだけど、一緒に寝ちゃった」ときーちゃんは笑った。夕食も近いからとお弁当は食べず「お腹空いた!」と言っていた甥にあげてしまった。「次の休憩でさ、何か食べない?」次のサービスエリアで食事を取ることにして寄ったけど、きーちゃんは食べないという。「お腹空いてない?お昼も、夜も食べてないやん」「夜はいただいたよー。食べすぎて車酔いしたらあかんし。ありがとう」
マハルの授乳とおむつ替えに私とマハルだけ車に戻る時、外できーちゃんが1人で空を見上げながら魔法の飴を口に入れたのが見えた。「真ちゃん、真ちゃん」売店でオヤツを選んでいる真ちゃんの所へ向かった。「え?もうおむつ替えたん?早ない?」と驚いてるけど無視した。「きーちゃん、見てて。一緒にいて。無理させた私が言うのは何だけど、きーちゃんホント限界かもしれない。ご飯もね、夜食べたって言ってたけどお吸い物しか手ぇつけてないねん」「キリエは大丈夫やからまずマハルのおむつ替えて来てや」と笑ってくれたけど、やっぱり真ちゃんも心配だったみたいですぐにきーちゃんの所に向かってくれた。
考えすぎかもしれないけど空を見上げながら飴を食べていたきーちゃんを見た時、元のきーちゃんを見ることができなくなるんじゃないかと思った。私たちの前でも、成長ではなくて防御のための大人モードのきーちゃんになってしまう氣がした。きーちゃんが飴を食べたのは、本当のきーちゃんが消えそうだからこっちに意識を引き止めようと自分でしているためなような氣がした。
マハルの授乳とおむつ替えを終えて、車から降りるときーちゃんたちが見えた。寒いのに空を見ている。「誕生日ね、真ちゃんが星を見に連れて行ってくれるって。車で寝るんだよ。楽しみー」と、きーちゃんが楽しそうに話してくれたのを思い出した。あんなに楽しみにしていたのに仕方ないのかもしれないけど、誕生日はプリンセスの日だよって言った私がきーちゃんの優しさに甘えてきーちゃんを一人にさせてしまった。誕生日だったのに、知らない所で知らない人ばかりで時々敵意を向けられてマハルのお世話をさせちゃった。
「寒くない?暖かいの買って出発しよう」ときーちゃんたちの所へ行った。きーちゃんたちが手を繋いでいるの見ーちゃった♪旦那には言うと面倒だから内緒にしておこう。