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- Story 32.14歳。
Story 32.14歳。
「本当にごめん!きーちゃんも本当にごめん」禿げ上がる勢いで2人に謝る。家を出る時から何度謝っただろう。義母の四十九日法要前日。旦那の実家へ向かうための車中。「なんでねーさんが謝るのー?旅行に行けて嬉しいよ♪」ときーちゃん。
話を遡ること昨日の夜。珍しく義姉から私に電話がかかってきた。話は四十九日法要のこと。旦那に言っても真ちゃんは仕事だから!と強く断り続けていたので作戦変更したみたいで。私にかけて連れて行くと言うまで電話を切らさない作戦。途中で旦那が変わってくれて、何度か電話を切ってもかかってくる。出るまで鳴る。の繰り返し。義姉ってこんなことする人だっけ?子供(姪)に甘すぎる。余計に連れて行きたくないわ!お礼って言ってるけど、逆に嫌がらせだわ!と言いつつも、結局行ってもらって解放されたわけで。
あまりにもしつこいから、まず旦那が「法要に出ない!」と言いだし、そうしたら「法要に出ろ、連れてこい」と続く。根負けというか、「他人やし行って迷惑違ったら、行こうか?」と引き氣味に真ちゃんが折れたカタチとなった。
きーちゃんは「じゃあ、私実家帰っとく」と言うけど、実家帰ると見せかけて帰ってない上に野宿を企てた。という前科があるためそれは認めることが出来ないので連れて行く。けど、行く前から嫌な予感しかない。四十九日が無ければ、めっちゃ無視するんだけど。場合によっては、キレることも辞さない覚悟だ!きーちゃんを守りきる!と戦闘態勢に入ってる私をよそにきーちゃんはものすごい涼しい顔をしてる。そして、既に大人モードに入ってる?最近、今までのきーちゃんと大人モードのきーちゃんが半々になってきてるからどっちがどっちかわからないんだけど。もしかしたら、大人モードに近づいただけかな。と思ったり。
早朝に出た為、まだ外は暗い。「外が氣持ちいいからここいてる」サービスエリアでマハル、ピットイン。待っている間、中で何か飲み物を…と言っていたけど、きーちゃんは一人で外にいると言う。「今度は風邪で熱出すとあかんからあかん!」と真ちゃんに引っ張られて行く。きーちゃんたちを見送りつつ、しっかり手を繋いでたのおねえさんはしっかり見たわよ。必要以上に波乱は起きて欲しくないので、冷やかしたり旦那には言いたいけど言わないでおこう。
タイヤ交換(オムツ)とエネルギー補給(授乳)を終えたマハルはご機嫌。旦那に電話して戻って来てもらい、氣を取り直して出発。日の出を見るんだと張り切ったきーちゃんは、日の出の時間就寝中。残念!
早朝に出たおかげで昼過ぎに到着。義姉と姪っ子が出迎えてくれるけど、やな予感。私、一氣に嫌いになってるよなー。とか思ってちょっと笑える。「えー、なんで妹もおるん!」明らかに不服そうな姪っ子。ママに言ってるつもりだろうけど、ちゃんとこっちにも聴こえてるよ。中学生女子の世界、忘れてたけど結構熾烈だったよね。こわーい。遅いお昼をいただくんだけど、大人モードきーちゃんはきちんとご挨拶もしてお行儀もいいし、義父も義姉夫婦も褒めるものだからおもしろくない姪っ子の視線がきーちゃんの隣にいる私も居心地悪い。もう、既に私が帰りたい。やっぱり今日の夜中に出たら良かった。そんな痛い視線を華麗にかわすきーちゃん。
マハルのお昼寝がてら私達は別室へ。きーちゃんに姪っ子のこと氣にしないでいいからね。と言うと「何が?」と返ってきた。「だって感じ悪くない?」「全然。外の世界と変わらないし」そうなの?いつもこんな世界なの?てか、なんで私たちの周りってちょっとクセがある人しかないんだろ。
「ねぇ、本当に妹?」姪っ子の言葉に凍りつく夕食準備中。「本当に妹って?」怖々聞いてみる。「あの子。妹とか言ってるけど似てないし。兄妹な感じしないんだけど」女子ってホント変な所鋭いよね。嫌になっちゃう。「ママもそう思わないー?」と義姉に聞くけど、「何馬鹿なこと言ってるの。あんたも手伝って」とあしらわれる。そうだよねー。ここでこんな話に親が同意したらひくわ。「だってお互い名前で呼んでるし、異常な程一緒にいてない?」変に勘がいいと嫌われるわよ。「うち、親に捨てられたりして結構複雑なんで」ここで黙って手伝ってたきーちゃん。「え!!」これに驚いたのは義姉。そうだよね、親に捨てられたって結構なパワーワードだよね。「兄に養って貰えるようになったのは最近で、拾って貰わなかったら大変でした」とニッコリきーちゃん。所々辻褄合わせで変えてるけど、ざっくり合ってるね。上手に辻褄合わせつつ話をするきーちゃん。「親が居ないんで、美樹ちゃん達がいつも助けてくれて。だからこの間もお手伝い出来るかなーって思って着いてきちゃったけど、結局迷惑かけちゃって。今日も私まで来てしまって本当すみません」と頭を下げるきーちゃんに義姉やられた模様。もしかして、きーちゃん着いた瞬間の姪っ子の一言に怒ってる?「ご両親いらっしゃらないなら、1人で留守番になるもんね。うちは1人2人増えたからって氣にならないからそんな謝らないでね。だからそんなにしっかりしてるのね」「迷惑ばっかりかけちゃってます」「子供は迷惑とか考えちゃダメだって。そんなこと言ったらうちの子なんて迷惑しかかけないんだから」と言って笑う義姉。ええ、結構迷惑かかったよ。自覚がございますのね。「引き取ってくれたのが最近で離れてた方が長いせいか、繋がりが薄いみたいでよく他人みたいって言われちゃうんです」「そうだったのね。お兄さんも立派ねぇ。」まとめた。あのツッコミまとめちゃった。義姉信用しちゃってるわ。これ、ホントの話なら映画に出来るってば。にしても…将来の魔性の女。女優だわ。大人モード、こわっ。ちょっと引いたわ。多分、こっち来てからの姪っ子の全ての言動に怒ってるよね。でも、姪っ子の視線もめっちゃ痛いんですけど。もう、ホントなんで私の周りってクセ強いのしか居ないの。私、この空氣、ちょっと嫌かも。帰りたい。
夕食中もしっかり真ちゃんの隣に座りながら、きーちゃんに攻撃力高い視線を送る姪っ子。義姉がきーちゃんを不憫に思ったみたいで、アレこれと氣を遣ってくれるものだから、その度に痛い視線が送られてくる。きーちゃんは全然応えてないような感じで、私が食事を先に取れるよう抱っこして遊んでくれている。14歳ってこんなに修羅場だっけ。もっと子供じゃない?と目眩がする。でも、結構女子らしさが出るのってこれ位だった氣もするけど、それとも時代?
食事が終わって、やっと一息つけると思ったらまだ終わらず。姪っ子が仲間を召喚。お友達が4人やって来た。今日は泊まりとか。義姉たち何にも言わないわけ?明日、法要でしょ。仲間含めて5人の14歳の決して友好的でない視線。きーちゃんは、相変わらず涼しい表情でマハルと遊んでくれている。私が耐えられなくなってきた。ノン氣に義兄と喋ってる旦那と、14歳女子たちに囲まれる真ちゃん、マハルときーちゃんを連れ出すことにした。「マハルくん、もうすぐ寝そうだから行ってきてー。ねんねさせとくよ」「久しぶりに地元を回りたい」と誘ったものだから、きーちゃんが氣を遣ってくれる。けど、きーちゃんをこのいたたまれないアウェーから離したいんだってば。「まーくん、おばちゃんと居ようか。みんなで行ってきたらいいよ。」と義姉。ナイスアシスト。でもさすがに寝かしつけまでは頼むのはアレなんで、寝かせてからお願いすることにした。
大好きなきーちゃんのためだと空氣を読んだのか、ぐずることなく寝るマハル。うちの息子、本当にエラいわ。姪っ子はもちろんついて行きたいようだったけど、友達がいる手前留守番。5人も車に乗らない。で終了。
疲れた。車に乗った瞬間の解放感。今からうちの実家の離れに泊まりたい。最初からそうすれば良かった。後悔先に立たず。助手席の真ちゃんもなんだか疲れてる。そりゃそうだよね、騒がしい女子軍団に付き合わされてるもんね。女の子の扱いに手馴れてるはずだけど、一応ちゃんと対応してるのはやっぱりうちの親族だからだよね。
自分の実家なせいか、旦那はいつも通り。「疲れてるのに、元氣やなぁ」とのんき。殺伐としたリビングで義兄たちと喋ってるくらいだから、氣付いてないんだろうな。マハルが熱出したら困るから飲まないで。って言って正解だったかも。隣に座るきーちゃんは、無言で外の風景を見ていた。
海まで来た。夜に来るの久しぶり。ここで「私も大阪行くから!」って旦那に言ったなぁ。若かった。我が記憶ながら、甘酸っぱいわ。旦那たちは少し離れて一服していて、きーちゃんは座って空を見上げてる。戻ったらまたあの居た堪れない空氣なのかしら。出来れば、あの子達が寝てから帰りたい。でも、マハルも心配。
さすがに冬の海は寒い。「寒いー」と言うと「自分が来たい言うたくせに」と旦那に返された。「だって、あの空氣だよ、私が耐えられなかった」一服し終えたのを見計らって、旦那だけ少し離れた所に呼んだ。そして、来てからのこと夕食の支度中のことを話す。きーちゃんの女優っぷりに大笑いするも、「まだ由佳、中学生やで。そこまで変な視線送ったりするかー?」とあまり信用してない。仲間を呼んでからも、当たり前だけどきーちゃんのことをよく思っていない空氣のことも信用してない。「中学生だからじゃない!女子ってこれ位が一番怖いんだから。なんて言うの?子供の直球さと大人の狡猾さと嫌らしさと兼ね備えて…知ってるでしょ!あの頃だよ!」私たちは幼稚園に上がる前から同じ校区で、中学まで同じ学校。よって、私がどんな感じで育ったのか知っている。思い出せ。あまり私自身思い出したくないんだけどね。
「まあ、知ってるけど」一応、濁してくれるんだ。「ちょうどあれくらいだよ。」「あんま、力になれんとは思うけど…もうちょっと氣を付けとくわな。すまんな」と言ってタバコに火をつける旦那。少し離れた所に居る2人を見ると、話をするわけでもなくきーちゃんは座って海と空を見ているようだった。
また、見えないお友達が出来て誘いの言葉をかけられていないか少し不安になってしまった。
「寒いー寒い寒い!」車に乗り込んでもなかなか暖かくならない。きーちゃんが毛布を渡してくれる。「きーちゃんも寒いでしょ。かけときなよ」「じゃあ、ねーさん後ろに来て♪一緒にかけよ」外出して、初めてきーちゃんが話したかもしれない。一番後ろへ行って2人で毛布に包まる。きーちゃんは相変わらず黙って外を見ていたけれど、実家に到着する直前に「ねーさん、ありがと」と言ってうふふ♪と笑った。
家に入ると義姉が迎えてくれた。「まーくんずっとねんねしてたよ」と教えてくれる。ホントうちの息子最高。「寒かったでしょ。順にお風呂入っちゃって」と言ってくれた。姪っ子たちは自分の部屋に行ったみたいでちょっと安心。「きーちゃん、お風呂一緒に入ろうよ」と誘ってみる。「マハルくんそろそろ起きない?寝てるうちに先入って」と言ってくれるきーちゃん。天使か。「マハル起きたら見とくから2人で入るんやったらはいれば?」と旦那。早速、氣をつかってくれたのね。旦那がそう言うものだから、きーちゃんもお風呂の用意をする。旦那の実家のお風呂は広いから好き。私ときーちゃんと入っても余裕。
「きーちゃん、ごめんね」「ねーさんは何にも悪くないよー。やっぱり実家帰れば良かったね。ごめんね」逆に謝るきーちゃん。でもね、帰ると言いながら野宿未遂の前科あるから安心して送り出せないわ。「全然変わってなかったわー。さっき行った海でね、美樹に私も大阪行くからって言ったん」「そうなん?それで?」と今日一番いつものきーちゃんに近くなった。「美樹ってば、じゃあ休みの日遊ぼうや。だってー。たまたま進路が一緒の大阪だって思ったみたい。バカでしょー」懐かしいなぁ。「ちょうど、きーちゃんくらいの時にね、私もきーちゃんと同じで学校が大っ嫌いでね。きっかけは忘れるくらいに些細なことだったんだと思う。同級生の女の子の視線がとっても嫌でさ。きーちゃんが言ってる悪意と同じだったんだろうなって思うけど、当時は知らないじゃない。時代もあったけどやんちゃする方に走っちゃってさー」
ちょっと昔話をしてみる。きーちゃんは黙って聞いてくれる。「やんちゃするから街行くやん?大阪に比べたら田舎なんだけどね。」そこで仲良くなった子たちは、全然学校の子とは違って悪意を向けてこないやん。まあ、氣が合うからってのもあるんだけど。当時の私はこんな田舎の中だけしか知らないからアイツらはデカい顔して平氣で人のこと苦しめられるんだ。ってホント地元が嫌いでさ。地元っていうか、地元の同級生だね。だから、美樹が大阪に出るって親から聞いて私も大阪行く!って決めて追いかけちゃった。地元の同級生と同じ高校に通うなんて絶対嫌だったからねー。由佳を見て地味に思い出しちゃってたんだけど、仲間呼ぶの反則だよね。しっかり思い出しちゃったわ。同級生のあの視線。何年たってもここの人間は変わらないのかーって思ってさ。ここの人間かなぁ。ここの14歳は。かな。難しい年頃だからねー。きーちゃんが言うように仕方なくて、こんな田舎だから他に発散できないのかもしれないね。きーちゃん、ごめんね。もっと甘えて。って言ったのに、自分がビビって全然きーちゃん守れてないね。さっき海行って、怖かったの置いて来たからね。
「うん。ありがとう。ねーさん達が居るからね、全然大丈夫だったよ。ちょっと夕方、意地悪言っちゃったけど。」ときーちゃんはうふふ♪と笑った。やっぱり、夕方のあれは意図的に言ってたんだ。恐ろしい子!やっぱり将来の魔性のオンナかも。
「今日はマハルこっちで寝かせるから、キリコはきーちゃんと寝ぇや」お風呂から上がるとマハルを抱きながら旦那が言ってくれた。それは嬉しいんだけど、大丈夫?結構飲んでるやん。まあ、隣の部屋だし襖あけて寝ればいいか。と旦那に甘えることにした。「さっきの話さ、あれが無かったら大阪出てないし、そしたら美樹と付き合ってもないし、きーちゃんとも勿論会えなかったし、そしたら今が無いじゃない?だからさ、なんか今、急にあれで良かったなーって思った!念願のかわいい妹に会うためだったんだよ」きーちゃんと並んでお布団に入って、急にそんなことを思って。だからって、きーちゃんに対してもそんな時が来るよなんて言えないんだけど、きーちゃんに伝えたくなった。きーちゃんはまたうふふ♪と笑った。
マハルが夜中に起きた時を心配していたけど、旦那と真ちゃんはその都度起きてミルクをあげたりオムツをかえたり寝かせてくれて、途中何度か起きたもののゆっくり寝かせてもらえた。真ちゃんには旦那に付き合わせてマハルの世話させてごめん。と謝ったけど、「貴重な体験でした」と笑って許してくれた。昨夜ふっきれたものの少し氣が重い。相手は14歳のお子さまよー!と喝を入れる。きーちゃんは私が起きた時にはもう着替えていて、義姉と一緒にマハルと遊んでくれていた。
6時過ぎにマハルが起きた時、旦那と真ちゃんは起きてくれたけどきーちゃんが夜中寝てないでしょ。と言ってお世話してくれたみたい。同じ頃に義姉も起きて来て、リビングのが暖かいしみんな寝られるでしょ。と呼んでくれたそう。私が敵視しててごめんなさい。と戦闘態勢で挑んでいたことを心の中で謝った。けど、娘のいいなりはどうかと思うよ!
「キリコとキリエって姉妹みたいだね。キリコちゃんはずっと小さい頃から妹欲しいって言ってたんだよ。だから妹が出来たみたいで嬉しいんだよ。って」きーちゃんが朝からとっても嬉しそうで大人モードではあるものの、柔らかい雰囲氣だったから聞いてみると、今朝義姉と2人でマハルを見てくれていた時に義姉が言っていたと教えてくれた。ええ、言ってました。ことあるごとに言ってました。だから、きーちゃんに「その通り」というとまたうふふ♪と笑ってくれた。
えっと、君たちいつ帰るの?9時過ぎ、姪とその仲間たちが起きて来てゆっくりと朝食を食べている。法要ってさ、10時じゃなかったっけ?もう、あなたのパパもママも着替えてるし、みんな着替えてるけど?別室で待機する予定のきーちゃんもちゃんと制服着てるんだけど?全然着替える様子もなく仲間たちは集まってなんか楽しそうに話をしている。義姉よ、そろそろ注意した方がいいんじゃないの?呆れていると、礼服に着替えた旦那と真ちゃんがリビングに来る。真ちゃんが入ると姪とその仲間たちの黄色い声が上がる。えーっと、この方アイドルかなんかですか?普通のその辺に居るにーちゃんだと思いますけど?きーちゃんは、一瞬冷めた視線を彼女たちに送りまた何事も無かったようにマハルと遊ぶ。その姿を見て、やっぱりきーちゃんってどこか普通の14歳とは違うのかもしれない。と思ったり。
10時10分前。そろそろお寺さん来ると思うんだけどー?相変わらず女子トークを繰り広げる姪とその仲間たち。「あの子達は部屋にいるから」と義姉。はぁぁぁ?開いた口が塞がらない。それでいいの?「言っても聞かないんだもの」価値観が違いすぎて目眩がする。結局、姪は法要に参加せず。どうなってるの。義姉とは子育て方針合わないと思う!
きーちゃんと真ちゃんにようやく当初予定通りにマハルのお世話をお願いできた。お寺さんが来てくれた辺りから機嫌が悪くなり出したので法要の間散歩に出ると言って外に連れて行ってくれた。出席しないけど、お寺さんを呼んで法要をするからときちんと着替えている14歳と、祖母の法要でも参加せず友達と遊ぶ14歳か。
なんだか、人生って複雑。基本、姪っ子も悪い子ではないと思う。多分ね。同じ14年生きていてもこんなに違うもんなのよね。自分の時もきっとそうだったんだろう。同じ場所にいても分かり合えることはなかったんだろうな。無理矢理わかり合おうとしなくて良かったのかもしれない。
義母の法要が終わり、マハルを外に連れ出してくれたきーちゃんと真ちゃんも戻ってきた。「はあ?私たちこれから大阪帰るんだけど?」出たよ、義姉のお宅のお姫さまのわがまま。泊まりに来ていた仲間たちと共に買い物に連れてけと言い出した。運転手は、もちろん真ちゃん。「部活の準備しないとダメなの!」「知らないよ。ママに連れて行ってもらえばいいやん」「パパもママ忙しいって」「私たちもこれからうーーーんと長いこと運転して帰るんだけど?」ダメだ。子ども相手にマジギレしそう。「ちょっと位いいじゃん」「良くない!チャリで行きなよ」「荷物あるじゃん」「知らないよ!」義姉夫婦、目の前でこのやり取りしてるのに知らんぷりか。
「すぐ戻ってくるから」「すぐ出発するからー」「夕方って言ってた!」「あんたらが訳わかんないこと言うからでしょ」この不毛なやりとり。10分はしてる。「何時間も運転するんだから、しんどいだろうなーって思いやりはないわけ?」「すぐ帰れば夕方まで休めるってば!」両親!なんとか言ってよ。「ちょっと位なら大丈夫やで、行こうか?」と見兼ねた真ちゃん。大喜びの姪たち。後ろから明らかに殺氣を感じる。私の後ろにはきーちゃん。目が合うときーちゃんはニコッと笑って「マハルくん、おいで」とマハルを抱っこしてくれたけど、目が合った瞬間すごい無表情だったのをしっかり見てしまった。「美樹!一緒に行ったげて!」真ちゃん単独よりはマシだろうと、旦那にも行ってもらうことにした。大騒ぎして一行は出かけて行った。
車を見送り、マハルときーちゃんの所へ戻る。抱っこされるマハルはもう寝そうで、きーちゃんは子守唄を歌ってる。「きーちゃん、ごめんね」なんで私が謝らなきゃいけないのか。と言った瞬間に思ったりしたけど。「何が?マハルくんお布団つれてくね」そういうと、きーちゃんはマハルを抱いて奥の部屋へ行った。本当、疲れる。義姉がお茶を淹れてくれた。「あの子言い出したら聞かないから」とか夫婦揃って言うけど、それってどうなの?苛々がマックスになりそうだから、「私も運転代われるよう少し休みまーす」と言って奥の部屋に向かった。襖を開けるのが少し氣まずい。いや、別に私が氣まずくなる必要はないな。と思い直して襖を開ける。
お布団ではマハルがぐっすりと寝ていた。あれ?きーちゃんは?きーちゃんが居ない。マハルの隣に居ると思い込んでいたきーちゃんの姿がなく、左を見ると部屋の隅でうずくまっていた。「大丈夫?しんどい?」三角座りをして顔をあげないまま首を振るきーちゃん。「熱出てきちゃった?ちょっと休もうか?」相変わらず、顔をあげないまま首を振る。「大丈夫、熱も出てないし、しんどくない。ありがと」その声は明らかに泣いていて、隣に座って頭を撫でるしか出来なかった。「きーちゃん、ホントごめん。守ってあげるからねって言ってるのにまた泣かせちゃったね」きーちゃんは、やっぱり顔を伏せたまま首を振る。「ねーさんも誰も悪くない。勝手にいじけてるだけだから」顔をあげてくれない。「じゃあ何でいじけちゃったん」話してくれるかなー。
「わかんない。自分の中に黒い雲が出てきて。外に出しちゃいけないって思ってもいっぱい出てくるん。ねーさんも離れてて。これ絶対嫌なヤツだから」もう一段きーちゃんに近づいて座り直した。きーちゃんはもう一段左のはしっこの方に寄ってしまった。「大丈夫。きーちゃんの黒い雲なんて全然影響ないで。いつから?」どうしたらきーちゃんの中に現れた黒い雲っていうのを無くせるかわからないから、背中を撫でてみる。「さっき。」「マハルを寝かせてくれた時?」また顔を伏せたまま首を振るきーちゃん。「真ちゃんが行こうかって言った時」あ、なーんだ。きーちゃんの中から現れた黒い雲ってヤキモチか。きーちゃんには黒い雲に見えるのか。
あれ?前にも黒い雲って言ってたけど…ああ、そうだ。あれは人の良くない思念がどうとか言ってたな。嫉妬も良くない思念ってのに入るんだろうけど、きーちゃんのヤキモチからの黒い雲はそんな怖いものじゃない氣がする。
ってか、かわいいなー。「由佳が連れてけってしつこいから?」また首を振る。あれ?違うの?「お願いしてるの聞いてるのは何にも思わなかった。真ちゃんが行こうか?って言った時に一氣に中から黒い雲が出てきて。真ちゃんに黒い雲向けちゃったかもしれない。前、あんなにしんどかったの知ってるのに」やっぱりヤキモチだね。うん。「私も悪いモノになっちゃうかもしれない。なりたくないけど。消えない。多分、真ちゃんが帰ってきたら絶対向けちゃう。なりたくない」きーちゃんの黒い雲を向けられた所で真相を知ったら逆に真ちゃんは喜ぶんじゃないかなー。なんて思ったけど、おそらく心の中で修羅場が繰り広げられてるきーちゃんに言っても余計に混乱しそうだしなぁ。どうしようかな。「きーちゃんは悪いモノになんかならへんよ」きーちゃんの見える黒い雲は私には見えないけど、きーちゃんの中から消えてくようにと背中を撫でる。「きーちゃん、真ちゃんが行こうかって言った時何て思った?『何で?』って?それとも『行っちゃ嫌だ』?」「わかんない。黒いのがすぐ出てきたから。そしたら、あの子と喋ってるのが見えた。昨日のとかこの間のとか」「そっかそっかー。大丈夫。全然悪いモノじゃない。多分、今のきーちゃんの中にある黒い雲はきーちゃんの悲しい氣持ちだと思うなー。」「悲しい氣持ちと黒い雲が出てきてショックなのと、本当はそれを言ってしまいたいけど、みんなを困らせないためにきーちゃんが我慢したものだから、何にも悪いモノじゃない。きーちゃんの優しい氣持ちだからきーちゃんは悪いモノになんかならない」それが本当はどんなものかわからないけど、そう思った。「本当は行ってほしくないし、あんなにくっついて話もして欲しくない。けど、それを言っちゃダメってきーちゃんは思ってるから行き場がなくなってきーちゃんの氣持ちが中で澱んじゃっただけだよ。これはね、真ちゃんに言ってもいいし、ぶつけちゃってもいいと思うな」「言っちゃったらまたいっぱい我慢させちゃうもん」
我慢させて、嫌われる方がイヤ。前にきーちゃんが言っていたのを思い出した。
「こういうのって、時と場合によるんだけど…これは言っちゃっても全然いいと思うよー」「嫌いにならないかな?」ようやく顔を上げた。同じお姫さまでも、こうも違うかー。こっちも世話がやけるな。「ぜーったいならないって」「ホンマに?」世話がやけるけど、ホントに可愛い妹。泣き虫でとっても弱くて、なのに1人で何とかしなきゃって泣きながら耐えて。もっと甘えたって誰も怒らないのに。
「ホントホント。おねーちゃんを信じなさい。そんなんで嫌いになるようなヤツ、きーちゃんから嫌いになっちゃえ」「それは無理ー」と言って笑うけど。あら、あらあらあら。きーちゃんから嫌いは無理なんだ。ホントかわいいなー、もう。そうか、そうか。そうなってくんだろうなーって薄々は思ってたけど、きーちゃんにとってお父さんとかお兄さんとかそこから超えたモノになりだしてるのね。
現代の光源氏よ、もうすぐ報われるよ。あなたの紫の上はちゃんと成長してるよ。良かったね。紫の上、もとい、きーちゃんは多分、今まで自分が持ったことのない感情で修羅場を迎えてるだろうけど、それはちゃんと成長してるんだと思うと何だか嬉しくなった。もっと自分の感情をしっかり味わってそして表に出せば良いんだよ。表に出して良いんだからね。怖い父さんは、優しくて美人な母さんに任せとけ。
すぐって、2時間も3時間もかかるんだっけ?日付変わるまでに帰りたいから15時にはここを出るって言ってなかったかしらね。16時を過ぎて私もなんだモヤモヤしてきた。帰る支度も出来ちゃった。きーちゃんはあの後ちょっと疲れたからってマハルとお昼寝しちゃって、ワタシ結構ヒマなんですけど。
結局、帰ってきたのは17時を回ってからだった。姪はとってもご機嫌。そりゃそうでしょうね。「は?結局部活の買ってないの?」あえて義姉夫婦と姪とその仲間たちの前で言ってみた。「しかも色々買わせたとか」あえて大きくため息をついてみるけど、うん効いてない。そして、なんでそんなにくっついて話す必要あるのかしらね。帰ってからも姪は真ちゃんから離れず何か一生懸命話をしている。まあ、かわいいと言えばかわいいんだけどね。
生まれてから、蝶よ花よと育てられたらこうなるのかしら。過剰なまでの自分への自信。うちのきーちゃんに半分分けてあげてほしい。もっと蝶よ花よと接してみようかしら。
「用意していただいたんですが、ごめんなさい。車に酔うとダメなので」台所からきーちゃんと義姉が話していた。結局、夕食をいただいて帰ることになったんだけど、きーちゃんは食べないという。きーちゃんが車に酔うなんて見たこともないよ。「感じ悪ー。ママが用意する前に言えってのー」と姪と仲間たちがコソコソ。大丈夫。あんたたちも充分感じ悪いよ。ああ、女子中学生。いらないトラウマ呼び起こさせるんじゃないよ。てか、仲間たちいつまでいるのよ。「向こうで宿題してます」と言って奥の部屋に行ってしまった。宿題持ってきてないくせに。
真ちゃんがマハル見とくから先に食べてと言ってくれたけど、「真弥も食べときや。見とくわ」とマハルを取り上げる旦那。空氣読めよー。もう。まあ、私は先にご飯いただくんですけどね!旦那はマハルを連れてきーちゃんのいる部屋へ行く。急いで食べて私も奥の部屋に向かう。
「もうちょいアイツらくらい図太くてもええねんからなー。まだそこまで氣ぃまわす必要ないで」旦那の声がする。「見たやろ。パパ、ママ言うてさ。まだそんなん言うとってええ歳やねんから。パパママにしては頼りないやろうけどさ、遠慮なく言うてきたらええねんで。きーちゃんの家族やねんから」旦那の声と一緒にマハルも何か言ってる。「マハルも『言えよー』言うとるでwww後で何か食おうな。食べたいの考えときや。早いうちに言わないと店閉まるからな」ノンキにしてると思ってたけど。ちょっと見直した。
「おまたせー食べたよ」聞かなかったことにして部屋に入った。きーちゃんの表情はさっきよりもずっと柔らかくて安心。マハルも超ご機嫌できーちゃんを見ていた。3人でマハルと遊んでいると姪から解放されたらしく真ちゃんが入ってきた。
「おつかれ。顔、死んでるよ」疲れ果ててるのをいじってやった。まあ、疲れるだろうね。ホント、ごめん。「帰りますか」と旦那が立ち上がる。「美樹、ご飯食べへんの?」私が食べるからって先にマハルを見てくれたから旦那もまだ食べてない。「いいよ。きーちゃんと後でなんか上手いの2人で食うからwww」と行って、マハルを抱いてリビングへ行ってしまった。「帰るわ」と言ったようで引き留める義姉の声がしたけど、私もカバンを持って部屋を出た。
玄関を出て車まで、真ちゃんがきーちゃんのカバン持とうとするけどきーちゃんが全力で拒否してる。うん、やっぱり拗ねてるね。元々は私たちのせいだけど、頑張れ。きーちゃんのご機嫌いつ直るかなー。きーちゃんは拗ねているものの義姉夫婦へはきちんとご挨拶をする。真ちゃんが運転するからてっきり助手席かと思ったら一番後ろに座るから私もきーちゃんの隣に座った。「何食べようか。パフェも食べてもいいからね。けど美樹たちにあげちゃだめだからね」というときーちゃんはうふふ♪と笑った。
高速に乗って最初のサービスエリア。お店まで距離がある所にしか車を止められなくて駐車場を歩くけど、真ちゃんが危ないからときーちゃんの手を引こうとすると拒否。「きーちゃん。あぶないから氣ぃつけや」と旦那が手を出すとあっさり手を繋ぐ。旦那のドヤ顔よ。大人げないってば。真ちゃんはやっぱり複雑な表情をするもんだから、頑張れ。とちょっと応援したくなった。真ちゃんのせいじゃないんだけどね、もうしばらく拗ねてるだろうなー。多分、きーちゃんではない別のオンナだったら旦那と手を繋いでるのを見たら私もイラッとしたかもしれないけど、どう見ても親娘だから逆にニヤニヤしてしまう。
「ないね、パフェ」「残念」サービスエリアだから仕方ない。仕方ないからご飯だけ食べようと旦那が食券を買うときーちゃんは「食べない」という。「美樹ちゃん食べて。その間お土産見てくる」ときーちゃんはお土産コーナーへ。真ちゃんもきーちゃんを追いかける。後は2人で何とかしてもらいましょ。
「私、うどんね」「キリコ、食うたのにまだ食うん?」「さっき、聞いちゃったよ。やるじゃんお父さん♪」と言ってみた。「うっせぇwww」照れてるけど、最近もう何か割り切ってお父さんだよね。と言うと「なんかホンマにそんな氣がしてきたわ」と言う。父の自覚が出てきたのね。
前世か何かでお父さんだったんだろうな。夢で見たって言ってたし。かわいい大切に育ててた娘と生まれ変わって再会ってドラマチックだよね。今度は花嫁姿見れるといいね。きーちゃんが花嫁さんかぁ。何年後なんだろうね。全く想像つかないや。
食事が終わるタイミングでマハルがピットインの氣配。旦那は途中できーちゃんが何か食べられるように買って一服してくると言うのでマハルを連れて先に車に戻ることにした。
外に出ると、きーちゃん達の姿が見えたのでマハルのピットインで先に戻ると伝える。おねぇさんは、手を繋いでいるのを見逃さなかったよ。もうすぐ怖いお父さん来るからね。氣をつけなよー。機嫌直ったのかしらね。本人的にはアレかもしれないけど、きーちゃんがヤキモチやいて拗ねることが出来るようになったのは本当嬉しい。隠そうとはするけど、ちゃんと感情を出してるし私たちを信用してくれてる様な氣がして。
運転手交代。マハルはピットインでぐっすり寝たから、旦那が運転、私は助手席へ。きーちゃんたちは並んで座っていて、お姫さまのご機嫌は直ったようで少し安心しつつ、どうやって機嫌直したのか興味があったりする。時々後ろからきーちゃんの笑う声が聞こえる。
日付が変わる前に帰宅したかったのに、大幅に遅れて帰宅できたのは深夜になってから。車を停めるとその場で脱力する旦那。「もうこのまま寝かせてくれー」とかおバカなことを言ってる。マハルもきーちゃんもぐっすり寝ているので起こすのはかわいそうなんだけど。マハルはともかくきーちゃんはさすがに運べない。「このままここで寝るー」真ちゃんがきーちゃんを起こすと旦那と同じことを言う。そこはお父さんに似なくていいのよ、娘。「じゃあ1人で寝とき」と真ちゃんが車から降りようとする。「やーだーー。1人にしないでー。一緒に居てー」と真ちゃんの後を追う。きーちゃん、使うタイミング間違ってるよ。使うのここじゃない。あってるんだけど、今じゃない。
「なあ、荷物持てん」「持たんでいいーー」旦那から荷物を受け取ろうとしてる真ちゃんの後ろにしがみつくきーちゃん。きーちゃん、ホント寝起き悪いよね。「先、連れてったげや」と旦那少し呆れてる。「こんなデカい荷物持ってったかなー」と言ってきーちゃんを抱えて家に入る。「荷物違うわー」と言いながらきーちゃん楽しそう。何してんの。きーちゃんを連れてってあげろと言った旦那が引きつっているのが面白い。拗ねたり泣いたり忙しいなぁ。
ホントに可愛いんだから。