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Another story 37-1.私の出来ること。
氣が重たかった懇談も修学旅行も氣が付いたら終わっていて、季節はまた梅雨になる。
このお家で過ごせるようになって2年。
ここに居る時だけは、居ても良い子、ここに居る子でいられた。
どうしよう。どうしよう。
落ち着け。落ち着け。
手が震えて息が出来なくなりだすけど、もう一度携帯のボタンを押す。
まだ繋がらない。
おばあちゃんが病院に運ばれたとおっちゃんから連絡貰って、何度も電話をかけているのに、真ちゃんの携帯に繋がらない。
何度も、真ちゃんが入院した時にタイムスリップする。
その度に大丈夫と言い聞かせて電話をかけるけど繋がらない。
今日に限って、魔法の飴がない。
どうしよう。どうしよう。
タイムスリップして、こっちに戻って。を繰り返す。
お仕事中だと分かっていたけど、1人でどうしたらいいか分からず、ねーさんと美樹ちゃんのいるお店にかけた。
ねーさんを呼んでもらうようなんとか言えたけど、ねーさんが出る時には、半分タイムスリップしている状態から戻れなくなっていて上手く説明出来ない。
ねーさんから美樹ちゃんに替わった。
美樹ちゃんが何度も大丈夫。と言ってくれて落ち着くまで待ってくれる。
時々聞こえる美樹ちゃんの声に安心した。
おばあちゃんの弟子のおっちゃんから、おばあちゃんが乗馬中落馬して怪我したこと。
病院を聞いたこと。
真ちゃんに何回かけても繋がらないこと。
真ちゃんと私を呼んでっておばあちゃんが言ってくれてること。
私が先に行くより真ちゃんに先に向かって欲しいけど繋がらない。
何度もタイムスリップしながら、おっちゃんから言われた事を言った。
美樹ちゃんは、タイムスリップするたびに「大丈夫」と言ってくれた。
美樹ちゃんに言われて、真ちゃんの会社に電話してみると出たのは真ちゃんでおっちゃんに言われた通りを伝えた。
最初は私を迎えに来てくれると言っていたけど、美樹ちゃんが帰ってきてから連れて行ってくれることを伝えて先に向かってもらった。
ひとまずミッションを終えて脱力すると、またタイムスリップ。
真ちゃんが怪我して入院した時。
真ちゃんが帰ってこなかったらどうしよう。
歩けなくなっちゃったらどうしよう。
本当に元氣になれる?
自分の軽率な考えで騒ぎにしてしまった後悔が、今自分が体験してるような感覚。
おばあちゃん大丈夫なのかな。
でも、真ちゃんもあれだけの怪我していたけど、元氣になったし大丈夫。のループ。
思っていたよりもずっと早く美樹ちゃんが帰ってきてくれた。
私の顔を見て「頑張ったなー。きーちゃんなら出来る言うたやろ」と言って頭を撫でてくれて安心した。
美樹ちゃんって、時々、友達から聞いて「こんなお父さんだったらなー」っていうお父さんのイメージみたいな時がある。
美樹ちゃんはお父さんというよりもお兄さんって歳だからお父さんみたいって思ってるのは内緒だけどね。
美樹ちゃんに病院に連れて行ってもらって、おばあちゃんは私の顔見ると「心配かけたねぇ。痛いわぁ。歳とったわ」と言っていた。
「だから、そろそろ馬はやめろ言うてるのに」と真ちゃんが言っていた。
病院の先生が来て、おばあちゃんの状態と入院計画を話すからと真ちゃんを連れて行ったタイミングで美樹ちゃんはねーさんを迎えに行くからと帰ってしまった。
病室に残されちゃった。
おばあちゃんは痛そうだからあんまり話しかけない方がいいし、ちょっと手持ち無沙汰。
「きいちゃん、今日泊まっていってもらえる?ここに1人で寝るのかなわんわ」とおばあちゃん。
「泊まれるの?先生にきかないと」と言うと、「まあ、任せなさいな」と笑う。
痛いのに無理して笑わないでいいよ。
少しして、先生と真ちゃんが戻ってきた。
先生はおばあちゃんに入院計画を説明する。
「先生、今日孫に一緒に居てもろたらあきませんやろか。歳とってこんな怪我したらこのまま寝たきりなるんちゃうか不安で。そのままこの子らの事も分からなくなってしまうくらいなら助けていただいたけど、今のうちにお迎え来てもろたら良かった思ってね」
泣きながら先生に言うおばあちゃん。
「骨折言うてもちゃんとリハビリしたら寝たきりなりませんから。でも、今日は驚いたでしょうしお孫さん一緒に居てもらって安心されるならいいですよ」と先生。
おばあちゃんは何度も先生にお礼を言っている。
そして、真ちゃんはなんとも言えない顔をしていた。
「何がお迎えや。そんなん来ても塩まいて追い返すやろ」
先生が、付き添いの書類用意しますね。と部屋を出た後に真ちゃんが言った。
「でも、行けましたやろ」とおばあちゃんが笑う。
「泊まらんで。明日早いねん」
「かわいい方の孫が泊まっていってくれる言うてるから憎たらしいのはさっさと帰り」と笑うおばあちゃん。
痛くないのかな。無理しなくていいよ。
てか、さっき言ってたかわいい方の孫ってもしかして私のことかな?そうだったら嬉しいな。
「キリエ泊まるん?学校は?」
「今日金曜日。」
「そうか。それなら泊まるわ」
「デカイのはさっさ帰り。かわい氣のない孫はいらへんわ」
看護師さんが書類を持ってきてくれて、書類の説明をしてくれる。
真ちゃんは住所と名前を書いていて、横から覗いてみるとと私の名前も書いてあった。
続柄「孫」になっていて、なんだか嬉しかった。
「簡易ベッドご用意できますよ」と言ってもらったのでお願いした。
おばあちゃんの病室、なんだか大きいよね。
たしかに1人でここに寝るのちょっと嫌かも。
おばあちゃんの所へは、出来るだけ学校が終わってから寄った。
「ホンマ、嬉しいわ。ありがとうね」と行くたびにおばあちゃんが言ってくれる。
おばあちゃんに頼まれものをしておうちに取りに行ったり、必要なものを買いに行く、着替えを洗濯してくる。くらいしか出来ないけど、その度にありがとうと言ってくれて、私でも役に立てるのかなと思うと嬉しかった。
真ちゃんはお仕事が忙しいみたいであまり顔を出せないからその代わりにならないかもしれないけど、自分に出来ることをお手伝いしたかった。
おばあちゃんの怪我は、先生が驚くくらい回復が早くて、看護師さんが「骨の年齢、50代でしたよ。素晴らしい」と言っていた。
おばあちゃんも、最初のうちは「痛い」と言うことが多くて「ちょっと流して」と言うことが多かったけど、次第に「痛い」と言わずに寝返りもサクッとやってしまって看護師さんもリハビリの先生も驚いていた。
それでもまだ退院は出来ないみたいで、会いに行ってる間1日10回は「帰りたいわぁ」と言っていた。
真ちゃんが入院した時におばあちゃんに「流す」方法を教わっていて、まさか教えてもらったおばあちゃんにしてあげることになるなんて思ってなかった。
だけど、やってみると「楽になっだわ、ありがとう」と言ってくれて嬉しい。
私に出来ることがあるんだね。
夏休み目前になった。
いつものようにおばあちゃんの所に行く。
おばあちゃんはもう杖をつきながらも普通に歩けるようになっていて、先生も看護師さんも「同じ歳頃の方だとまだ歩くまでも行ってない人が多いですよ」と驚いていた。
「洗濯してきたから、いれとくね」
と引き出しに洗濯してきたものを入れると、おばあちゃんはいつものように「ありがとう。本当に私は幸せや」と言ってくれた。
今日あったことなんかを話していると、先生と事務の人(?)が来た。
「今日、ほかにお家の方いらっしゃいますか?」と聞かれると「この子だけですの。あとは全然顔見せんし。やっぱり孫娘が一番ですわ」とおばあちゃんが言った。
「孫娘」と言ってもらえたのが嬉しかった。
「これからのお話をしたいのですが…」と言われる。
当たり前の事で、私じゃ無理。
私が大人だったら良かったのに。
「どうせ今日言うても、すぐ来ないから今私だけで聞きます」とおばあちゃんが言うので、席を外そうとすると「きいちゃんもおってね」と言ってくれた。
先生たちのお話は、これからのおばあちゃんのことだった。
もうだいぶ歩けるようになったし、怪我以外で病氣などは全く心配がないこと。
退院も視野に入れて話を進めたいけれど、退院しても日中はおばあちゃんが1人になると聞いているのでリハビリの専門の病院に転院してはどうかと言われた。
おばあちゃんは「1人でも大丈夫ですよ。夜は誰かしら居るから」と言ったけれど、
その1人の時間が長く、年齢からその間に転倒したりするとそれこそ心配している寝たきりになってしまう可能性もあること。
家事はまだ大変だろう。と先生が説明する。
それでもおばあちゃんは「退院したいですわ」と譲らない。
このループが何回かした時にふと思いついた。
真ちゃんが入院していた時、自分の感情でいらないことを言ってしまったせいでちょっと騒ぎになってしまったのを思い出したけれど、
何とかおばあちゃんが退院出来るようにしたくて「私が付いていたらおばあちゃんは家に帰れますか?」と先生に聞いてみた。
先生は「お孫さん別居と聞いていましたが、日中付いていられるなら」と言った。
「明後日から夏休みだから、おばあちゃんのおうちにお泊りさせてもらったらずっと付いていられます!」
ここまで言って、またやらかしたと氣付いた。
おばあちゃんにお泊りさせて。と聞いていないし、真ちゃんやねーさん、美樹ちゃんにも相談していない。
何故なら、本当に今思いついたから。
遅いと分かりつつ、おばあちゃんに「夏休み中お泊りしてもいい?お手伝いさせてもらってもいい?」と聞いた。
おばあちゃんは「ホンマにええの?そうしてくれると嬉しいわぁ」と何故か涙ぐんで「ありがとう」と何度も言ってくれた。
「夏休みはこの子についててもらうけど、学校始まっても心配ならリハビリの病院いきますわ」とおばあちゃんが言う。
「ええ、お孫さんですねぇ。明後日から夏休み?」と先生。
「明日が終業式です」
「じゃあ、明後日の午前中に退院にしましょうか」と先生。
おばあちゃんは嬉しそうに先生に何度もお礼を言っていた。
良かったー。
「良かったですね。退院ということなので、帰られてから必要なことなんかのお話いいですか?」と事務の方。
「前に大きい方のお孫さんにですね、お家の設備について伺っていて…」と話が始まる。
多分、「大人の方の」って事だと思うけど、真ちゃんは背が高いからかな?とか思うとなんかおかしくなった。
おばあちゃんは、私を呼んでくれて一緒に話を聞く。
おばあちゃんが使っている母屋のお手洗いが和式だから、日中余裕があれば離れの洋式のお手洗いを使ってもいいけど、夜の間はポータブルを用意しておいた方がいいこと。
お風呂は介護の道具(椅子とか)を使って介助してもらいながら入ればいいこと。
出来れば家事はお任せした方がいいですね。
食事は椅子でした方がいいかもしれないこと。
必要な道具なんかは、退院の日に退院時間までの朝イチでお家に来て設置してもらうことを決めた。
お話が終わって帰ろうと準備していると、
「ホンマにありがとう。こんなに良くしてくれる子はおらんわ。ありがとう」と何度も言ってくれた。
「家の鍵渡しておくわね。家おってもらわないとあかんから、明日は泊まってね。藤森に言うておくわね」とお家の鍵を渡してくれた。
「荷物、大変やろ。藤森に迎えに行かそうか?」と言ってくれたけど、学校が終わってから準備をするから何時に準備が終わるかわからない。
「電車で行くから大丈夫。ありがとう」と答えておいた。
退院の日、来るからね。と言って病院を出た。
「おばあちゃん、帰れるね」と嬉しかったけど、バスに乗っている時に、真ちゃんやねー
さん、美樹ちゃんに何の相談もしないで決めちゃったことを思い出した。
「何て言おう」
特に真ちゃん。
おばあちゃんの本当の孫だし、その真ちゃんを差し置いてこんなこと決めて良かったのか。
夏休みはみんなでどこか行こう。ってねーさんたちが言ってくれてたのに、夏休み中ずっとおばあちゃんちならその計画が大きく狂ってしまう。
やっぱり、やらかし。
思いつきで喋っちゃダメだと、思っていたはずなのに。
そうなると、ネガティブが広がり出してしまう。
「とっさに私が付いていたいと言ったけど、夏休み中なんておばあちゃん迷惑だったかな」
「真ちゃん、勝手に決めて嫌な氣持ちなるよね」
これは独りよがりって言うんだろうな。と思ったら、帰ってこの事を話すのが怖くなった。
今日も、真ちゃんは遅くなると言っていて、夕食は美樹ちゃん、ねーさん、マハルくんとの4人だった。
「あのね…」
意を決して、今日おばあちゃんと決めたことを2人に話した。
不安過ぎて混乱しながら説明をすると、美樹ちゃんが「世話大変やろうけど、頑張れるんやろ?なら頑張っといで。もし、助けがいるなら言うてきたらええから」と言ってくれた。
ねーさんも「おばあちゃま、嬉しいだろうねー。きーちゃんなんて優しい子♡おねーちゃんは嬉しい」と言ってくれた。
ちょうど話が終わった時、真ちゃんの車の音がした。
来た!一番の怖いやつ!
どうしよう。怒るかな?嫌な氣持ちなるよね?と不安になっていたら、マハルくんがハイハイで突撃してきてニコニコ笑ってくれた。
マハルくんを抱っこして、癒しパワーをもらおうとウロウロ。
ねーさんに「落ち着きなよ、大丈夫だって」と言ってくれて、美樹ちゃんも「もし怒り出したら先にぶん殴ったるからちゃんと言いや」と言ってくれるけど、心臓がバクバクしてる。
真ちゃんがリビングに入ってくる。
緊張しすぎて、多分一瞬息も心臓も止まったと思う。
「え?何?」と私たちの顔を見て真ちゃんが言った。
何て言ったらいいだろう。
心臓がバクバクする。
思わず、ねーさんと美樹ちゃんにヘルプの視線を送ってしまった。
「まずさ、真弥、そこまで怖い顔しとったら言えるもんも言えんからとりあえず荷物おろして座りぃや。きーちゃん、何も悪いことしてへんから謝らんの」と美樹ちゃん。
ねーさんたちに説明したことを同じように言った。
「マジでもう退院?」と真ちゃんも驚いていた。
「荷物、持ってくがな。てか、その間一緒に帰るわ」と真ちゃん。
「でも、真ちゃんお仕事…」
まだ真ちゃんの邪魔しちゃう。
「ここからと向こうからとそんなに変わらんから氣にすんな」と言ってくれた。
「ホンマ、ごめんね」
お布団に入ってから、改めて真ちゃんに謝った。
「何が?」
「勝手に決めちゃったから」
「婆が折れへんかったんやろ。それに、婆のことそんだけ考えてくれてんの嬉しいで。謝らんとあかんのこっちやし。キリエが謝ること何もないで」と真ちゃんが言う。
「あ、結局持ってく荷物用意してへん」
「明日したらええが」
今日、1人で舞い上がったりドキドキしたりして疲れた。
でも、私でも役に立てるってことやんな。
今までもそうだけど、これからいっぱいみんなにお世話になるから少しでも役に立ちたかったんだ。