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Another story 50-2.ねーさんロス。
出発して約5分。
道はずっとまっすぐだったけど、サイドミラーにはもう知らない風景が映るだけでねーさん達の姿もお家も見えない。
朝からずっと泣きたかったけど、ねーさんとマハルくんとお散歩に行った時も涙が何度も出てきそうになったけど、「じゃあまたね」の時も泣かずに言えたけど…
限界ーーーー。
もう無理だと思ったら、涙腺が決壊した。
「頑張ったー、偉かったなー」と運転中の真ちゃんが優しい口調で頭を撫でてくれるから余計に涙が止まらない。
普段はあんまり喋らないけど、ここぞって時に相談に乗ってくれて力を貸してくれて美樹ちゃんがお父さんなら良かったとずっと思ってた。
内緒で行くアイス屋さんでのお喋りも大好きだった。理想のお父さんだった。
マハルくんと一緒に居たら私も幸せのカタチなのかもしれないと思うくらい私の所に可愛い笑顔で来てくれて、おはようとおやすみのほっぺスリスリするのが大好きだった。お風呂で一緒に歌うのも幸せだった。
最初、道に迷ってどうしようかと寂しくて仕方ない時に声をかけてくれてからずっと私のことを見て氣にかけてくれて、時々怒られたけどお母さんに教わるんだろうことや、一番の友達に話すだろうこと全部をしてくれたねーさんは一番の憧れの大人で。
二度と会えないわけじゃないし、夏休みになったらまた真ちゃんが連れて行ってくれるって言ってくれたけど、家に帰っても「おかえり」と言って貰えないこと会いたい時に会えないことが寂しかった。
持ってたタオルハンカチだけでなくて真ちゃんが貸してくれたハンカチでも全然足りなくてバスタオルを用意しておけば良かったかもしれない。
多分、生まれて今までで一番泣いてるかもしれない。
誰も私の話を聞いてくれない時より、氣が付いたら家族の中に私が居なくなってしまってた時より、痛い言葉が降ってきた時より、シードラゴンに見放されたと氣付いた時より、寂しくて悲しかった。
自分でももういい加減に泣き止めって思うのに、今自分が履いてる靴、着てる服、持ってる鞄全部がねーさんと買いに行った楽しい思い出でどれを見ても寂しくなってなかなか泣き止めない。
「絶対ワタシが泣かしたって思われたわー」と笑いながら真ちゃんがチョコを渡してくれる。
高速のサービスエリアに着いても涙は止まらなくて、流石にこの状態でご飯は食べられないからオヤツと飲み物を買いに行ったけど、車で待ってたら良かったかも。
泣きすぎて呼吸もおかしい。
涙を拭きすぎて目の周りは痛いし、鼻水だって止まらない。
「もう泣き止みたいー。止めてー」
「それはどうにもできませんwwwまあ、落ち着いてチョコでも召し上がれ」
チョコの癒し効果ってあるのかな。少し落ち着いた。
「もう一枚ちょうだいー」
「3枚目行くと今度は吐くでwww」
「やけ食い」
「チョコをやけ食いとか見てる方が胸焼けするわ」
さすがに家に着く頃は落ち着いてきたけど、家に入って明らかに寂しくなったリビングに入るとまた寂しくなった。
泣きすぎて感情がおかしくなったのかもしれない。
何を見ても悲しくて寂しくて仕方ない。
またメソメソしていると携帯が鳴る。
ねーさんからだったけど、今出たらきっと泣いてるのがバレる。
真ちゃんに代わりに出てもらって隣の部屋に避難。
「もう寝たって言うといたでー。寂しいんやったら電話出て声聞いたら良かったやん」
「声聞いたら余計会いたくなるー」
「夏休みまでの我慢やから。それまでに引っ越しもしてしまわなあかんしな」
そうだった。引っ越しもあるんだった。
「お部屋どこにするん?」
「明日見に行ってもええし、連休明けてからでもええし」
「明日!明日引っ越ししよう!リビング居るだけで悲しくなる」
「明日決めてもすぐ引っ越しは無理やしwww」
結局、どの部屋に行っても何しても寂しい氣持ちは消えなくてすぐに涙が出てくる。
台所からねーさんが「きーちゃん、ちょっとお皿とってー」って、夕方「さあ、洗濯たたむよー」って言って笑って。
コタツに入りながらハーブティーをブランドしたり、もうすぐ寝る時間だから安心して寝られるようにとつけてくれたアロマポット。
この家はねーさん達の思い出が多過ぎる。
本当に涙腺が決壊したかもしれない。
家具を見るだけで、ふといつもの香りがするだけで寂しくなる。
「マハルより泣いてるんちゃうの?」と笑いながらも真ちゃんは呆れずにずっと付き合ってくれて、寝る時も一緒に居てくれた。
最近、何だか一段と真ちゃんの距離が近くなった氣がして時々「一旦離れてー!」と言いたくなることもあるけど、今日はその近い距離が安心出来た。
次の日は、お昼近くまで寝た後新しい家を見に行く。
真ちゃんが働いてる会社が管理してるからと社長さんも一緒に来てくれた。
三軒を回って、真ちゃんが押していた3LDKのお部屋がやっぱり一番豪華でお洒落な感じがしたけど駅から歩いて帰るルートの治安が心配だと言って真ちゃんが呆氣なく却下してしまった。
新築の2DKのお部屋は、書類だと広くてちょっといいかな?と思ったけど周りの空氣なのかマンションに近づくにつれて目眩がして立っていられなくなってきて却下。
真ちゃん曰く「高圧線のせいやろなぁ」
たしかに近くに高圧線があるけど、そんなの関係あるの?
「人は電氣ですよ。厳密に言ったらちょっとちゃうけど」
前にも真ちゃんが言ってたな。
人にも電氣の信号がたくさん出ていて、それで身体を動かしてる。だから周りに電氣が沢山あると身体がキャッチしてしまって元々の信号が狂ってしんどくなるって。
最後のお部屋は私のイチオシ。
築年数は他の2つよりも古いのに、中はとっても明るいし綺麗でなんだかワクワクする。
「ここがやっぱり一番ええかなー」
という真ちゃんの一言で最後のお部屋に決定。
「ここにする」と社長さんに言うとすぐにメジャーを取り出して部屋のあちこちの採寸をし始める真ちゃん。
「真ちゃん、今、何してるんですか?」
社長さんに聞いてみる。
「色々と家具を買い直すなら測ってた方が後から困らんやろ。だからやで」と教えてくれた。
家具、買い直すの?
真ちゃんの部屋に一式揃ってる氣がするねんけどなー。兄ちゃんは「要らんものだけ置いて行けばええで」って言ってたし、ねーさん達の部屋に置いてた冷蔵庫とか置いていってくれたからそれを使えば新しくするものなくない?
「せっかくの新生活やん、新調した方が良くない?」と真ちゃん。
そんなものなのかー。
「さっきの、詐欺で捕まらへん?」
家具屋さんと電氣屋さんの帰り道、妙な罪悪感に駆られて氣が氣じゃない。
「嘘は言ってへんで。6月から2人で住むために引っ越するから揃えるって言ったら勝手にお祝いや言うて値引きしてくれただけやで。我ながらええ時期に引っ越し決めたよなー」と予算よりずっと安く家電も家具も買えることになって真ちゃんはご機嫌だけど。
見積書の値引きにしっかりと「ブライダル」と書かれていたのを見てしまった。
「ブライダルって結婚する人用やろ。結婚しないのにする人の割引使ったら詐欺やんー。明日朝警察来たりとかしない?大丈夫?」
割と本氣でドキドキしてるのに真ちゃんは大笑いするし。
何でこの人は私の不安をいちいち笑うの。
帰ったらねーさんに大丈夫か相談しよう。
ねーさんの声聞いたらまだ寂しくなりそうだけど、心配したまま寝て起きたら警察が来ました。なんてことになるよりずっといい。
ただでさえ、誘拐犯になる可能性もあるのに何で笑えるの?
帰ってねーさんに電話して、この事を話すとねーさんまで大笑いした。
しかも、電話の向こうから美樹ちゃんの笑い声まで聞こえてきた。
しかも、2人で「苦しいー」とか言ってさらに笑ってるし。
大人って!大人って!!!
何なんだーーー!!
心配事あったら電話しておいで。って言ってたのに心配を大笑いするなんて!
その様子を見て後ろで真ちゃんまで笑い転げてるし。
私、本当に人間不信になるかも。
『大丈夫wwwそんなんで警察来ないからーwww』と言いながらまだ笑ってるねーさん。
『もし来ても、16歳なった瞬間に私たち結婚するんです!で言い張ればいいからwww』とか言ってまだ笑う。
「だから結婚しないのにするって言ったら嘘やん!だから詐欺で捕まらへん?って心配してるのに警察にまで嘘言うの?もう犯罪重ねまくりやんか!死刑になったらどうするん?」
真剣に聞いてるのにまたねーさんと真ちゃんが大笑いしてる。
ねーさんはまた美樹ちゃんにそれを言って、美樹ちゃんまで笑う声が聞こえる。
ホンマ、大人って!!
結局、ねーさんは『警察来たらもう全部真ちゃんが勝手に言って詐欺したんです!私はダメだって言ったよ!って言えば許してくれるから大丈夫』と最後まで笑ったまま電話を切った。
私、ホンマに大人不信になるかも。
「分かった!キリエが16歳なったらすぐ結婚しよう!wwそれやったら嘘ちゃうから詐欺にならんでwまだ結婚出来やん年頃やからしてへんだけやwww」と電話を切った後真ちゃんが笑いながら言う始末。
どういうことだよ。
ホンマに大人って!
「でも、キリコと電話しても寂しくならんかったやろw」とまだ笑ってる真ちゃん。
ホントだ。全然寂しくならなかった。
けど、むしろ、違う意味でモヤモヤしてる。
お布団でゆっくり寝られるのは最後かもしれないとドキドキしながらお布団に入ったけど、次の日の朝、警察がやって来た。なんてことにはならなかった。
まだ家具の現物届いてないし、もしかしたら引っ越しして商品が届いてから来るかもしれないから安心できない。
「な、大丈夫やったやろ」とドヤ顔真ちゃん。
取り寄せてもらったキャビネットが届いたと連絡があって家具屋さんに行った時、真ちゃんがお店の人に「16になってないからまだ結婚しないのにブライダル割引使うの詐欺や!ってずっと言い続ける」と言ってしまった。
お店の人は「誕生日が待ち遠しいですねー、大丈夫ですよー」と笑ってたけど。
絶対勘違いしてる。
真ちゃんもそのまま「ワタシのが誕生日が待ち遠しいんですわー」とか言って談笑してるし。
だから、結婚するかのようにお店の人に言うのが詐欺じゃないのかって言ってるのに。
「つつがなく高校行きたかったら黙っときやー」と言われて大人しく言うこと聞いて喋らずにいてしまったけど本当に大丈夫なんだろうか。
「大人の処世術ってやつよ」
ホンマに?
そういうものなん?
「じゃあ、ホンマに誕生日なったら結婚する?」なんて笑ってるし。
「しません!」
「即答www」
また笑う。なんかモヤモヤする!
「ええでー。12月までまだ半年あるからゆっくり考えたら」
なんだそれ。
「ホンマに16なった瞬間結婚しても全然ウェルカムですけど?」
「真ちゃん、高校行かせて貰っておきながら何なんですけどね」
「なんでしょう」
「真ちゃん、もうちょっと人生考え直した方が良いかと思います」
「なんでやねんwww」
「家具を買う為に詐欺を働いて、それを隠すために結婚しようとか言い出すって色々間違ってると思うの」
「キリエの言う通りやなーwでも、家具買う為に結婚しようと言ってるわけちゃうで。キリコには同じシチュエーションでは絶対言わんwww」
「ねーさんはもう美樹ちゃんと結婚してますからね」
「何でそっちに行くねんなwww相手がキリエやから言うてるって話してんのに」
「……。」
「何やの、その目は」
「もっと人生考え直した方が良いかと思います」
28歳になるまでの話もそうだし、真ちゃんの貴重な時間を私の為に使おうというそのスタンス。
これ、本当に考え直した方が良いかと思う。
人生の無駄使いにも程がある。
「人生の無駄使いとかwww」
だから何で笑うの。
夜、ねーさんに電話する。
今日の一件を言うとやっぱり大笑いするねーさん。
納得いかない。
「絶対、人生の使い方間違えてると思うの!」
『間違ってないwww間違ってないwwwむしろ、有効な使い方してるから。大丈夫、安心しなって』
『あ、でも私には言わないって件、夏休みにゆっくり語り合おうや。家族会議だって言っといて。何だか腹立つから!』と言ってやっぱり笑う。
相談する人選間違えたかな。
「もう!美樹ちゃんに代わって!」
『いいよー』
代わってもらったけど、やっぱり間違えたかも。
美樹ちゃん、何も言ってないのにもう笑ってた。
「何で何も言ってないのに笑うの!」
『だいたい想像つくwww』
つかないで。
想像つくってどういうことだ。
『ほら、真弥の人生やで自由にさせたげなさいな』
「いくらでも好きにしたらいいと思うけどね、その使い道が問題だと思うの!」
『きっとな、しばらくしたら熱冷めるから。人間そんなに興味は長いこと続かんから。もうちょい付き合ってやってwww』
「そのしばらくの時間が勿体無いやん。人生長くても無限じゃないねんで!」
『そうやねんけどさ、スポンサー様の言うこと聞くの大事やからwww3年の我慢やwww』
そうだった。
スポンサー様だった。
詐欺の件は世間に黙っておいた方がいいんだろうか。真ちゃんが警察に連行されるのは嫌だ。
夜中葛藤がお腹に来た。
お腹痛いーー。氣持ち悪いー。
お腹壊してないのにお腹痛いの本当嫌だ。
詐欺して家具を安く買うのを止められなくてごめんなさい。嘘だって分かってるのに黙っててごめんなさい。だからお腹痛いの治ってー。
何度も誰かに謝る。
お腹痛い時って何で無性に謝りたくなるんだろう。
「ホンマにキリエは心配症やなぁ。また胃に穴開けるで」
リビングのソファーで寝てると真ちゃんが起きてきた。
また胃に穴が空いたって、真ちゃんが逮捕されないようにいい考えが浮かぶんだったら何個でも開けてやる。
「これ飲んだら寝るでー」と真ちゃんが温かいお茶を淹れてくれた。
「キリコがな、こういう時に飲ませてやれって送って来たで」
「いつ?」
「今日」
知らなかった。
電話した時、何も言ってなかったのに。
ハーブティは甘い香りがして、飲むと少し苦くてねーさんを思い出した。
ねーさんに無性に会いたい。
「ねーさんに会いたいよーー」
なんて言うんだっけ?
ホームシック?
「ねーさんに会いたいー今からねーさんに会いに行く」
「あかんあかんwww夏休みまで我慢して。ワタシ居りますやん」
「真ちゃんじゃ嫌!ねーさんがいいー」
ものすごくワガママ言って駄々こねてるだけなのはわかってるけど、真剣に悩んだことを話しても大笑いしてしまうけど、ねーさんに会いたい。
お腹痛いのと、ねーさんに会いたいのとが混ざって自分でも訳が分からなくなって大泣き。
「マハルと変わらんやんw今日は一緒に寝たるから布団行くでー」
「今日はってねーさん達が行ってからいつも私の布団来るやんー」
お布団に入っても、ねーさんに会いたくてしばらく泣き止めない。
自分でも嫌になるけど、感情のコントロールが出来なかった。
ねーさんロスとでも言うんだろうか。
何かの拍子でいきなりスイッチが入ってしまってねーさんに会いたくて涙が止まらなくなる。というのが夏休みにねーさんに会いにいくまで続いてしまって、その度に真ちゃんは落ち着くまで一緒に居てくれた。
これが、私が心配していた通り1人で暮らさなきゃいけなかったらきっと寂しすぎておかしくなっていたかもしれない。