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Another story 50-4.お姫さまごっこ。
学校やバイトの帰りに迎えに来てもらったり、寝室を一緒にしてもらったことで安心したのか一時期よりワープすることも自分が分からなくなることの回数は減った。
お家の方の仕事の時、今まではバイトの日は家で、休みの日はおばあちゃんの家で待っていたけど連れて行ってくれるようになった。
「帰りに観光出来るしええやろ」と真ちゃんは氣にしてないように言ってくれるけど、確実に真ちゃんの時間を奪ってしまってることに罪悪感が出てきた。
「ごめんね」
ごめんねと謝ったところで真ちゃんの時間を奪ってしまってることには変わらないんだけど。
今まで散々居なくなりたいと言ってたくせに、真ちゃんに言えば聞いてくれるとやっぱり怖いと泣きついた自分が本当に嫌だ。
「何が?」
「今日もお断りしたんやろ?」
今日、友達から誘われてた。けど、言われた瞬間に断っていた。
「今日のはええねん。どのみち行くつもり無かったし。てか、他には?」
「他に?」
「ずっと何か言いたげな顔してるやん。どうしたー?」
泣きついた自分嫌になってることお見通しだった。
前々から思ってたけど、いつも色んなことよく氣付けるよね。
「そんなことあるわけないけどな、万が一遊びに行ってる間にキリエが怖がってるようなことになったら死んでからも後悔するって分かってるし、何より…」
何より?
「今のワタシの趣味はキリエですから」
何それ。
「ホンマは学校にも行かせないで仕事にも行かんと一日家の中で観察してたいし」
私を納得させる為に大げさに言ってるのは分かってるけど、何かそれおかしいよ。私は朝顔かカイワレ大根ですか。
『あー、それは犯罪者の思考だわwwwきーちゃんうちに避難してくる?逃げなさい、危ないwww』と笑うねーさん。
手紙だけでは足りなくてバイトの無い日はねーさんに電話して今日あったことを聞いてもらっていた。
最初は毎日電話したらねーさんも嫌かなーと思って電話をかけるのを控えたらねーさんがそんなことは氣にしないで良いとバイトのシフトを知らせておいて電話していい日はねーさんからかけてきてくれた。
「誰が犯罪者やねん、失礼なwww」
「だからね、ねーさん所に避難するのって大有りだと思うねん。今からねーさんの所に避難したい!」
「何でやねんw普通避難するんやったらそんなんワタシに宣言せんと逃げなwww」
お茶を飲みながらねーさんとの話をする。
ねーさんが送ってくれたハーブティーは飲みきってしまったけど、同じものや他の種類のものを用意してくれて夜寝られるようにお茶タイムをするのが日課になっていた。
「怖いって思ってるのは仕方ないやん。怖いもんは怖いねんから。1人で隠れて怖い思いしてるより全然ええよ。それに」
それに?
「ここに居りたいってことやろ。ワタシの望み通りなっとるのに不満に思うわけないやんか」
そんなものなん?
「キリエは不満なん?」
不満…ってこれだけしてもらってて不満なんて思えるわけない。
それとも、不満げに見えるんだろうか。
「これだけしてもらっててとか思ってるやろ」
何で分かるんですかね。
「そう思うならもうちょっとワタシの言うこと聞いてくれるとありがたいんですけどね」
言うこと聞くってなに?
「バイトはせんで良いって言うてるのにバイトには行くわ、服買いに行こう言うても未だに遠慮はするわ、家のこともせんでいいって言うてるのにするし、オヤツも小学生みたいに1日100円分しか買わへんし」
それは居候してる上に学校まで通わせて貰ってたら当たり前かと。
「まだ自分は居候やと思っとるし」
千里眼か何かをお持ちなんですかね?見抜かれ過ぎて逆に怖いわ。
「居候やとか世話なってるとか思うんやったらさ」
「はい」
「ひとまず1週間、ワタシが言う通りにしてもらいましょうか。いかがですか?」
「言う通り?」
「バイトは今週はもう無いからええし、もうすぐテストやんな」
「うん」
「まず、ワタシより絶対先に起きない。食事も自分で用意しない家事もしない。ワタシより先に寝る。ワタシの言うことは全部信じる」
何だそれ。
こっちに来てから、真ちゃんより早く起きたこと無いですが?そして真ちゃんより先に寝てますけど?
「キリエの世話を全部ワタシがする」
もうやってもらってますけど?
「今日から1週間キリエは姫さまな。姫君らしく振舞ってもらおうか」
何それ?意味不明。
姫君らしく振舞うって何?
「まあ、任せときー。お姫さまごっこってヤツですな」と笑う。
ホント意味不明。
「真ちゃんはそれの何が楽しいの?私は色々楽になって嬉しいことだらけやけど、真ちゃんに良いこと何一つないと思うねんけど」
本当に素朴な疑問。
「なんで?」
なんで?ってどんな返答ですか。
答えになってませんよ。
「言うたやんか。一日中世話して観察してたいって。それが出来て良いことだらけやんか」
「もしかしてホンマに犯罪者なん…?」
「違うわwww」
意図がよく分からない。けど、テスト休みが終わるまで真ちゃんの言う通りに生活する。と言うことになった。
美樹ちゃんはスポンサー様の意向を汲むのも大事だと言ってたけど、このスポンサー様の意向はよく分からない。
テスト最終日。
昼前に学校が終わって、いつものように真ちゃんが迎えに来てくれた。
テスト休み中は、バイトはお休みで真ちゃんとおばあちゃんのお仕事のお手伝い。
一時期よりワープしたりすることは減ったものの無くなることはなく、それでも何とか一番恐れてる事態にならなくて済んでいた。
テスト期間中から相変わらずお姫さまごっこは続いていて、四六時中お姫さま待遇してくれて何だか逆に居心地悪かったりする。
「面白いこと言うなー。今までそんなん言われたことないけど?」
お姫さま待遇は落ち着かないからもう少しライトな感じでお願いします。と言うと真ちゃんが言う。
ん?
今まで?
「今までもお姫さまごっこしたことあるん?」
素朴な疑問。
「あー、ここまで徹底して何日もやったことはないけどねー」
何で視線逸らすん?
「ちゃんとやったんはキリエが初めてやで。今までのんは今回の練習的な…てか、誕生日とか限定やったし…」
何で焦ってるん。
そうかー、真ちゃんのお姫さまは私だけじゃなかったのかー。と思うと、何だろ。モヤモヤしてきた。
『やっぱり筋金入りの変態犯罪者だわ。真ちゃんを世の中に出さない為にもきーちゃん頑張れwww』
電話をした時にこの話をするとやっぱりねーさんは笑う。
「この間は避難しといでって言ってくれたのに」
前と言ってることが違うー。
『きーちゃんの尊い犠牲の上に世の中の平和が保たれるんだよ、いわゆる人柱?頑張れwww』
大人って、大人ってーー!
って違う!
真ちゃんがお姫さまごっこが好きかどうかの話じゃなくて、私がモヤモヤする話をしてるの。
「お姫さまごっこが好きなのはええの!ただ、前にもしたことあるんやって思うとモヤモヤすんの!」
ねーさんはもう一度大笑い。
もー、何なんだー!
モヤモヤあるなら言っておいでって言ってたのに笑い飛ばすなんて。
ホンマ大人って!!
何?人柱って!
平成の御代に人柱って!
『ごめんごめん。きーちゃんはそこでモヤモヤしてるんだもんねwww』
まだ笑ってるし。ねーさん全然ごめんって思ってないでしょ。
『じゃあね、真ちゃんに今までの人以上にお姫さまってしてって言ってごらん?www』
だから何で笑うの。
笑うから一氣に説得力がダウンしてますよ?
「言ったらどうなるん?」
『真ちゃんが喜ぶwww』
「何それ!答えになってないー!」
また大笑いするねーさん。
何だか相談の電話した時のが、ねーさん爆笑してませんか?
結局、ねーさんの爆笑は止まらないまま電話を切って私のモヤモヤは晴れないままだった。
モヤモヤが晴れないものだから、久しぶりに夜中、熱を出してしまった。
「何や、熱出すの久しぶりやなぁ」と言う真ちゃんに苛々する。
世話になっている身でスポンサー様に対して苛つくなどとしてはいけないと思いつつも何か腹が立つ。
先生を呼んでくれると言ってくれたけど、熱の原因はモヤモヤだと分かってるから朝になっても下がってなかったら呼んでもらうことにした。
お姫さまごっこはあと2日。
寝て起きて寝たらおしまい。
ねーさんは「今までの人以上にお姫さまってして」って言えばいいって、言った所で真ちゃんが喜ぶって笑いながら言ってたけど、言ってみたらこのモヤモヤは無くなるんだろうか。ついでに熱も下がるんだろうか。
色々と考える力は無いのに、氣になるしやっぱりモヤモヤする。
「お姫さまごっこって趣味なん?」
「いきなりどないしてん」
もう考えるのしんどいし、モヤモヤしてたら下がる熱も下がらない氣がするし。
「今までお姫さまになった人以上にお姫さまってして」
「え??何?」
ねーさんの嘘つき。
喜ばないやん。何もモヤモヤなくならないやん。
何?って返ってきたやん。
その続きの言葉なんて考えてなかったよ。
余計にモヤモヤしてきた!
「やっぱ何でもない。おやすみなさい」
続きの言葉考えるのもしんどいから寝る!
あと2日で終わりだし、終わったらきっとモヤモヤも終わる。
「ワタシの考え過ぎかもしれないんですがね」
しまった。熱出て動く元氣ないんだから腕を結ぶのやめたら良かった。
反対向けない。何だか氣まずい。
「氣になってたりするん?」
一緒に寝てもらってるのは、1人で勝手に動き回らないようにするには最適だけど、今はすごく氣まずい。
「氣になってるっていうか…いい!もうしんどいから寝ます!おやすみなさい」
何だかモヤモヤして熱を出す自分も、他にもお姫さまが居るかもしれないってこともいきなり煩わしくなってきた。
「あかんー、氣になるやんか」
追及しないで。
「もう!大丈夫!向こうで寝る」
「熱下がってへんのにあかん。てか、言うまでこれ解かんからな」
そうだった。
もう!自分が言ったことだけど、何でこうなるんだ。
「モヤモヤなくなったら熱下がるから向こうで寝られます」
「言わんかったらモヤモヤ無くならんで」
そうだった。痛恨のミス。
「何を熱が出るまでモヤモヤしとったん」
「分かんない!ねーさんに聞いても分かんなかった!」
「キリコ?」
「そう!でも爆笑して終わったけど」
それを聞いて真ちゃんまで笑う。
何かイラッとする。
「笑わんから言うてや」
「やだ。ねーさんが爆笑した話の時は真ちゃんも絶対笑うし」
大人不信になりかねないんだからね。
むしろもう大人不信になってる。
「絶対笑わんから言うてや」
「ホンマに?」
「ホンマ、ホンマ」
でも、これねーさんに言うのはサラッと言えたのに真ちゃんに言うとなると何だか抵抗が…。
「真ちゃんのお姫さまが他にも居るのがモヤモヤするの!」
天使が飛んだ。
だからやめておけば良かった。
とっても氣まずい沈黙。
「居らんよ」
「だって今までそんなこと言われた事無いって言ってた!」
「あー、言ったような氣がする」
「お姫さまが他にも居るってことでしょー!それが何かモヤモヤすんの!何か嫌なん!私だけが良いの!」
やらかした。
勢いに任せて何か余計な事言った氣がする。
「だからキリエ以外に居らんって。そんなん氣にして熱出したん?」
そんなんって言った!
熱が出るくらいのモヤモヤをそんなんって!
やっぱ大人不信になる!てかなってやる。
「だって嫌なものは嫌やもん!ねーさんも真ちゃんも笑うけど嫌なのー!真ちゃんのお姫さまは私だけがいいのに他の人にもお姫さましてるの嫌やの!」
こんな事言い出してしまうとか、絶対熱のせいだ。
そうか、私、これでモヤモヤしてたんだ。
なんて勝手なんだろ。
「キリエ以外居らん言うてるねんから泣かんでええやんかー」
「居るって言った!」
「濡れ衣やwwwそれは言うてへんwww」
「何で笑うのー」
「ホンマに居らんから」
絶対真ちゃんめんどくさい奴って思ってる。
私も自分でめんどくさいって思うもん。
「今は絶対居らんし、これからキリエ以外に姫さんは居らんし作らんから。だからキリエもこれからちゃんと姫さんで居ってや」
何だろう、うまく丸め込まれた氣がする。
ひとまず明日ねーさんに喜ばなかったって言っとかなきゃ。