Another story51-1.本当に居たい場所。

朝になって、熱は下がった。
やっぱりモヤモヤしてたのが原因だったみたい。
ねーさんが言ったように真ちゃんは喜んだのかどうかは分からないけど、仕事に行く時もライトなものをお願いしてたはずのお姫さま扱いは逆にレベルアップしてる氣がする。


お仕事が終わって、夜にねーさんに電話をかけてみたけど、私のしょうもない話をしてる場合じゃなかった。
「ねーさん、大丈夫?私に出来ることある?」
美樹ちゃんパパが亡くなったとねーさんが言った。
『きーちゃんが電話くれて声が聞けて落ち着いたよー。ありがとね』
近かったらお手伝いに来てってお願いするんだけどね。とねーさんが笑うけど、声がバラバラだった。
心配だったけど、早めに電話を切った。
ねーさんの所に行けないかな。
明らかに声が心配な声をしてた。
でも、前にお手伝いとか言って結局泊めてもらうことになったりして迷惑かけちゃったし、私が行ってもマハルくんを見てるしかできないし。
「どうした?」
お風呂からあがってきた真ちゃんにねーさんの事を話す。
何か考えた後「通夜にだけ出て帰ることになるかもしれんけど、美樹にかけてみるわ」と言ってくれた。


「参列は制服でいいの?」
「せやな。向こうで着るのは…これくらいの方がええかー」と言ってクローゼットから私の着替えを出してくれる。
あの後、美樹ちゃんに連絡して聞いてもらうと美樹ちゃんは遠いから無理させてしまうと心配してくれたけど、マハルくんを見ててもらえるのはすごく助かるしねーさんも心配だから来てもらえたら嬉しいし助かると言ってくれた。
急いで用意する。


午前中、電話した時に最初に電話に出たのが美樹ちゃんパパでねーさんが作業の一段落が着くまで話をしてた。
美樹ちゃんパパともねーさんの家に電話するようになってから、その時に色々話をしてくれるようになっていた。
美樹ちゃんパパも電話をかけることを嫌がらず、かけない日の後は「風邪ひいてなかったか心配してたよ」と言ってくれたり、今日のお昼間の電話の時は「夏休み待ってるよ」と言ってくれて、テストどうだった?と聞いてくれたしマハルくんの様子や遊びに行った時に用意しておくからと私の好きなお菓子の話や、美樹ちゃんパパにお土産のリクエストを聞いたりしていつも通りだったのに。


「もうお店やってないやんなー」
日付が変わる直前だからお店があいてないのは分かってるけど、美樹ちゃんパパのリクエストのお土産持っていきたいな。
「何がいいって言うてはったん?」
「壬生菜のお漬物とかぶらの千枚漬け。前にお土産で持って行った時すごく美味しかったんやって」
引っ越しの日、荷物を運び込む前にお見舞いに行った時に渡したお漬物がとっても美味しくてもう一度食べたいと言ってた。
病院のお食事は香の物が味氣なくて欲しかったんだって。
美樹ちゃんがお医者さんに確認してオッケーが出たから、お氣に入りのお店のお漬物を買って行った。
「あそこのなら、婆んちにあるんちゃうか?」
真ちゃんがおばあちゃんに電話してくれると、ちょうど今日買ってきた所であるから持っていきと言ってくれた。


おばあちゃんの家に着くと、おばあちゃんが用意して待っててくれた。
「きぃちゃん、お葬儀出るんやったらこれ持って行き」とおばあちゃんのお数珠を渡してくれた。
「私のあるよ」
お手伝いするようになった時、最初の頃におばあちゃんが用意してくれたお数珠を持っている。
「それもええねんけどな、こっちのがよう育てとるからね。両方持っとき」
「ありがとう」
美樹ちゃんパパのリクエストの壬生菜のお漬物もかぶらの千枚漬けも両方あって良かった。
おばあちゃんは渡す新しいお線香と車で食べられるようにとおにぎりも用意してくれた。


「ちゃんと姫さまの自覚ありやなー」と真ちゃん。
「姫さまの自覚ってなに?」
「姫さんはワガママ言うて周りを振り回すんじゃなくて、周りの様子を見極めて自分のやらなあかんことをちゃんとしなあかんわけよ」と言うけど、私、何もしてないけど。
「何でな。キリコらの話聞いて、すぐに行きたい言うたやんか」
それはそうだけど。
美樹ちゃんが助かるって言ってくれたから行けるだけだしなぁ。
「ホンマ助かるらしいで。今は会館借りて葬儀するのも増えたけどアイツらは家でするやろ。そうすると嫁さんの仕事めっちゃあるわけよ。マハル居ったらキリコはほぼ動けんから」
美樹ちゃんはマハルくんを見てくれるのが本当に助かるから迷惑だとか思わないでくれと私に伝えてと真ちゃんに言ってたと教えてくれた。
「それにな、キリコはキリエが居ったらねーちゃんモード入るからそこでもキリエが必要なんやって」
「なんで?」
「ねーちゃんモード入ったキリコとそうでないと
キリコ、マジで違うで」と笑う。
ねーちゃんモードって何?いつものねーさんと違うの?
「そら、キリエはねーちゃんモード入ったキリコしか知らんからやんか。ねーちゃんモード入らんかったらキリエ以上に世話やけるで」とまた笑う。
世話やけるねーさんって想像つかない。
美樹ちゃんが私が氣にしなくて良いように氣遣ってくれるのが嬉しいし、大変な時に私のことまで考えて真ちゃんにそう言ってくれてるのが本当にすごいなぁと思う。


サービスエリアで休憩中。
「真ちゃん、あんな…」
自分が行きたいと言っておきながらだけど。
いきなり不安になってきた。
「どした?」
「大丈夫って言って。ワープもしないし、分からなくならへんって言って」
回数は少し減ったけど。
もし、ねーさんの所に行ってる最中になっちゃったら。
真ちゃんが大丈夫って言ってくれたら大丈夫な氣がする。
「大丈夫。心配せんでもそんなんならへんで」
うん、大丈夫。
でもね、大丈夫って言ってくれるだけで良いんですけど?
人が居てるから、公衆の面前で思いっきりハグしてくれなくても結構ですから。
それは後で人の居ない所でお願いします。


サービスエリアで1時間半真ちゃんが仮眠を取る時も、不安にならないように普段寝る時みたいにちゃんと腕を結んでいてくれていたおかげか勝手に私が動き回ることもなく、ワープすることもなく明け方にはねーさん達のおうちに到着した。
「大丈夫。何も心配せんでええで。キリエはやらないとあかんこと全部ちゃんとできる」
車から降りる直前、真ちゃんからもう一度言ってくれた。
「ありがと。大丈夫」
不安になるから、そっちに意識が行ってしまうんだ。大丈夫だと思ったら大丈夫。


車から降りるとねーさんと美樹ちゃんが迎えてくれた。
「お手伝い、何でも言ってね」
私が出来ることをするだけ。それでいい。
ねーさんの光がチカチカして落ち着いてなくて氣になったから、ハグしてる時少し私の光を渡す。
これは真ちゃんが教えてくれたおまじない。
大事な人が光が暗かったり欠けている時、自分がきちんと光っていたら分けることが出来るんだって。


おうちに入って、美樹ちゃんパパにお土産をお供えする。
本当はね、食べてもらえたら良かったんだけど。
「ありがとう」と美樹ちゃんパパが言ってくれた氣がした。
「父さんな、きーちゃんから電話ないと『大丈夫か?無理してんと違うか?』って言うとってんで」と美樹ちゃんが教えてくれた。
「きーちゃんが美樹ちゃんパパ言うやろ?パパって言われた事ないからなんや照れるなー言うてたけどな、パパって呼ばれるのもなかなかええなー言うてな」と笑った。
「父さんもきーちゃんが最期のお別れ来てくれて喜んどるわ。色々頼むと思うけどよろしくな。でもしんどなったらすぐ言ってや、無理したらあかんで」と心配してくれた。


ねーさんが朝ごはんを用意してくれた。
「ねーさんの朝ごはんだー」
これで今日と明日と、頑張れる。
エネルギーチャージ完了!
朝ごはんを食べた後、納棺までの間、真ちゃんは美樹ちゃんと葬儀の段取りを整えた後しばらく仮眠。
その間、弔問の人を迎えたり通夜膳の為のテーブルを母屋に運んだり、座布団を確認したり。
マハルくんはおんぶするとすぐに寝てしまったからお手伝いすることが出来た。
行く前におばあちゃんが、地方によってしきたりが違うからお手伝いに来た土地の人に教わりなさい。と教えて居てくれたから、聞くのは失礼でないと分かって普通に何をしたらいいか聞けたからよかった。


「きーちゃん、無理してへんか?真弥と休んでてええからな」と美樹ちゃんは時々声をかけてくれた。
マハルくんが起きる頃、近所のお手伝いの人も増えて来てバタバタしてきたため一旦(私の迷子予防に)真ちゃんと3人でお散歩に出る。
マハルくんはまたまた大きくなっていて、走るスピードも速くなってるし、川へ突撃しようとするから結構ドキドキした。


お散歩中のワンコと遊んでる姿も可愛い。
「まーくんと一緒やからきーちゃんやねー」とワンコを連れたおばさんに言われてびっくりした。
美樹ちゃんパパが大阪のマハルくんのお姉ちゃんだと言ってくれて夏休み遊びに来るって話してたんだって。
普通なら何でこんな他人の子が来るねんと思われても仕方ないのに、美樹ちゃんパパは普通に迎えてくれてマハルくんのお姉ちゃんって言ってくれてたのがとっても嬉しくて、美樹ちゃんパパともうお喋り出来ないのが寂しい。
「お見舞い行った時、エラい意氣投合しとったからなぁ」と真ちゃんが言った。
それはね、たまたまなんだよ。
美樹ちゃんパパの趣味が書道で、書いたものがとっても素敵だったからその話をしてもらってただけなんだよ。
「また後で伺うからね、よっちゃんに言っててね」と言われて別れる。
美樹ちゃんがよっちゃんって呼ばれてたのを思い出した。
「美樹ちゃんは美樹ちゃん。って感じだからよっちゃんって違和感」と言うと真ちゃんは何故か大笑いして、それを見たマハルくんも真似して大笑い。マハルくんめっちゃ可愛い。


納棺が済んでお通夜までの時間、ねーさんはやっぱり大変みたいでリビングのソファーに座っていた。
大変な時なんだけど、その横顔がとっても綺麗で思わず見惚れてしまった。
「お茶淹れましたよー」
マハルくんにお茶菓子を持ってもらって一緒にねーさんと声をかけた。
ねーさんの光は、だいぶいつもの光に戻っていた。
「きーちゃん、大丈夫?朝からお手伝いばっかで疲れたでしょ?」と心配してくれる。
「大丈夫!」
ねーさんもマハルくんも美樹ちゃんも居るから。
みんなの役に立つなら全然大丈夫!
と思ってたけど、真ちゃんが来てちょっと奥で休みなさいと言われてしまった。
大丈夫よ。と言ってみたけど、「大丈夫だと思っても、実は無理してて葬儀の最中に倒れる方が迷惑かかるで」と言われてしまって返す言葉がない。
多分、今の私の調子は自分より真ちゃんのが分かってくれてる。


「そしてワタシも充電ー」と真ちゃんも休憩。
「ホンマ大丈夫か?」
「大丈夫ー。ありがとー」
みんなすごく心配してくれてるあたり、やっぱりいつも心配かけてたんだろうなぁ。
自分では大丈夫な感じがしてても、後から熱出したりお腹痛くなったり。
今はそれにプラスしてワープしたり、分からなくなったり。
これ以上迷惑かけるのは嫌だから、真ちゃんの言うことを聞いておくのが一番迷惑かけずに済むのかも。


お通夜の間、最初は大人しくしてたけど途中で退屈してきたマハルくんと2人で私たちに用意して貰ったお部屋で待っていることに。
マハルくんはお利口さんで一緒に絵本を読むと次々と「もういっこ」と持ってくる。
ホントかわいい。
しかも「きーちゃん」ってしっかり呼んでくれるようになって、おしゃべりも随分分かるようになった。
お歌もたくさん歌ってくれて、踊ってる姿は本当に癒される。
折り紙をすると喜んでくれるのも嬉しい。


「ホント助かったよー。きーちゃんありがとうねー」
寝る前、ねーさんがそう言ってたくさんハグしてくれてとっても嬉しい。
お邪魔にはなってないよね。


「どこが邪魔になってるかもしれんと思うのか教えていただきたいんですけどね」
寝る時真ちゃんに確認すると逆に質問されてしまった。
「今日キリエが居らんかったらマハル泣き喚いてキリコは途中退席になっとったで」
「それだけやん。押しかけて泊まってるし」
「泊まってけ言ったんは美樹やで。氣にしすぎ。また胃に穴あくでー」と笑う。
胃に穴あくのはもう勘弁。
ホント、あの時は死ぬかと思った。
そう言えば、あの時も念願の来世へ行けるチャンスだったのに物凄く抵抗してた。
私、もしかしたら来世へ行きたいわけじゃなくて自分が居ても良い場所に居たかっただけ?


巻き戻す記憶。
胃に穴があいて、初めて血を吐いた日。
合格発表の日だったな。うん。
ねーさん達がお祝いってお食事を連れて行ってくれて…そうだ、真ちゃんの元カノさんがやって来たんだ。
家に帰るまでは耐えられたのに、帰った瞬間、一氣に氣持ち悪いのと胃が痛くなって帰ったらトイレに直行したな。
最初の何回かは食べたものに血が混ざる位で、吐ききったら血しか出てこなくなって怖くなってたらねーさんが心配して来てくれた。
「ドア開けるよ」って言われたから急いで飛んだ血を片付けて、洗剤の匂いで余計に氣持ち悪くなってトイレの中で死ぬのかとか思いながら吐いて…。
でもやっぱりトイレの中では死にたくないと思ったし、せっかく真ちゃんが約束してくれたのにまだ死にたくないって思った。
約束。
約束…なんだっけ。
そうだ、もっと一緒に居る時間増やすって言ってくれたんだ。
シードラゴンが迎えに来ても即答でこっちに残るって答えられる位に、寂しいだとか思わない位一緒に居るって言ってくれたな。うん。
真ちゃんの世界には私が居ないとダメだって。
だから、真ちゃんは私のこと、絶対に要らなくならないって。
だから、真ちゃんの世界から消えたくないって思ったんだ。
真ちゃんはずっとこう言い続けてくれてる。


ちょっと待って。
何て滑稽な。
何てかっこ悪い。
やっぱり、そうだ。
来世じゃなくても良かったんだ。
私が居ても良いところならどこでも良かったんだ。
なのに来世へ行きたい、シードラゴンの所へ行きたいって、もしかしなくても現実逃避ってやつ?
超かっこ悪い。超みっともない。
しかも、真ちゃんは優しいからそれを言ったら絶対引き止めてくれるって分かってるから真ちゃんに泣きついてただけ?
引き止めて優しい言葉をかけてくれるのが居心地がいいから。
真ちゃんにならワガママ言ってもいいって思ってたんだ。
私、何さま?




『結局、自分がかわいいからそんなこと出来るねん』
あ、タイムスリップ。
この間の学校だ。
真ちゃんが四六時中ついててくれて、私がしんどくならないように見ててくれるのは、私が甘えてるからだって。
自分しかかわいくないから、他人にそんなこと出来るんだって。
全然不幸でもないのに、不幸なフリして構って欲しいだけの迷惑なやつだって。
もっと不幸な人間は沢山いるって。
今に真ちゃんは私が重いと思って棄てるって。
そしたら、私はまたかわいそうな自分のフリをして誰かに甘えるんだって。
違うって言いたかったのに言い返せなかったのは、そう思ってたから?
私って重いんだろうか。


高校卒業しても真ちゃんと居たいって思ってたけど、居ちゃいけないんじゃない?
でも、真ちゃんの世界には私が必要だって言ってくれた。
どうしたらいいんだろう。
こうやって寝る時も心配しなくても良いようにって寝にくいのにどっかに行かないようにしてくれてるし、倒れないよう今日も見ててくれたし。
一緒に居るのがそんなことしなくても良い人だったらもっと楽だもんね。
 
知らないフリして3年間過ごす?3年間我慢させる?
その間、自分の好きなことも出来なくて私の面倒を見ておかなきゃいけなくて。
それは、重いことなんだよね。
私がそんな甘えたことを言わなかったら、もっと真ちゃんだって好きに自分の時間使えるもんね。


分からなくなってきた。


「どうした?やっぱりしんどいか?」
あかんあかん。
考え込み過ぎて変な顔してしまってたかも。
「大丈夫ー」
もし、実は来世に行きたかったわけじゃないって言ったら、真ちゃんはどう思うのかな。
「熱は上がって来てへんみたいやけど、早よ寝な。明日もまたマハル見とかなあかんしな」


「もし、私がね…」
「うん」
「ここに居たい。まだ真ちゃんのお姫さまで居ていい?って言ったらあかん?」
何でなのか分からないけど、お姫さまごっこしてから私の中のごちゃごちゃとしてたのがスッキリして来た氣がする。
もうちょっとスッキリしたいんだけどな。
けど…私がお姫さまとかダメだ。 なんて厚かましい。
「うそ!ごめん!おやすみ」
また思いつきで変なのなこと口走ってしまった。
5分前に戻りたい。
「もうちょっとやなくて、これからって言うたやん。ずっと姫さまなんやろ?」


ん?
色々と、あれ?
「ここに居たいって言い出して面倒じゃない?」
「何で?ここに居ってってずっと言ってるのに?」
「散々鬱陶しいこと言ってたくせにどっちやねんって…」
「誰がそんなん言うんさ」
「誰がお姫さまやねん、厚かましいとか」
「誰がそんなん思うんさ」
「まだここ居ていい?」
「ここ以外に居らなあかん所ある?」
「ホンマはね、行きたいの来世じゃ無かったかもしれないって言ってもここに居てもいい?」
「何で聞くん?居ってってずっと言い続けてるで。どうしたー?落ち着けー」と笑う真ちゃん。


「本当は来世に行きたいんじゃなかったかもしれないん。あれだけずっと大騒ぎしてたのにごめんなさい。」
「何で謝るねんな。まずな、何があってもキリエはここに居らなあかん。ここに居ってってこれはずっと言ってるやん」
うん、言ってくれてる。
「キリエが来世に行きたいんじゃなかったって氣付いたの、何も悪いことじゃないねんで。それはこの世界でもキリエが居てもいいって理解してくれたってことやん」
「真ちゃんは私が来世へ行きたいわけじゃなかったってわかってたん?」
「それはさすがに分からんかったわ。今までキリエはそうだと思ってたんやろ。来世やシードラゴンの世界がキリエが居てもいい世界で、キリエは自分が居てもいい世界に行きたかった。これは別に嘘をついてたわけじゃないから謝ることじゃないと思うねんな。でも、今はこっちでもキリエは居っていいって分かったからキリエの中で整理できて本当は来世へ行きたいわけじゃ無かったってわかったんやんか」
そうなんかな。
「お姫さまごっこでそれに氣付いたならやった値打ちがあるってもんよ。キリエに必要なんはキリエが許すことやってのは思ってたからなー」
「許すって?」
「自分は居てもいい」
「ここに?」
「そう。どの世界に居ても良い。来世やシードラゴンの世界に行きたいのはこの世界は自分が居たらいけない世界だからって理由なんて悲しいやん。その理由が、来世やシードラゴンの世界が好きだからって理由やったらきっとこんなに引き止めんかった。この世界でもキリエは居っていいし、キリエが必要だと思う人間は居てるって知って欲しかった。それにはこの世界に居ても良いってキリエが許さないといくら他人が言ったところでな、キリエはそれを受け取らん」
ちょっとややこしいなぁ。
混乱してきたかも。と言うと真ちゃんはちょっと笑う。
「それを受け取ってもらえるようになるにはまずキリエが相応しい扱いを受けて偏った認識をニュートラルに戻さないとあかんわけよ」
「偏った認識?」
「そう。否定され続けて最後は自分の存在すら認められず許されんかった。でもこんな扱いはキリエに相応しくないって知ってもらわないと始まらんわけや」

相応しい扱い…。
海でシードラゴンと話をした時にシードラゴンも言ってたな。
私に相応しい扱いを受けることができないのがおかしいと思わないのかって。
それは私が居てはいけない忌むべき存在だからここではこの扱いなんだって思ってた。
「お姫さまが私に相応しい扱いなん?お姫さまじゃないで」
「お姫さまやで。他が違うって言っても、ワタシやキリコや美樹にとってはお姫さまやで。この際あの二人は置いとこう。ワタシには大事な姫さんやねん。ここに居るだけで良い存在やねん。居らなあかん人間やねんで」
ねーさん達も置いとかないでー。と言うとまた笑った。
「私に何が出来る?何も出来へんで」
「何もせんでええねん。居るだけでええねん」
そうなん?それでもええの?
「この期間はワタシの言うこと聞いてもらうって言ったやろ。だからひとまずお姫さまごっこの間は信用してもらおうか」と笑った。

なんだか、よく分からない。
お姫さまごっこの間信用してたら分かるのかな。