Story 53.最終選択。

いきなりのどかな所から長距離移動のうえ都会に連れ出してバタバタさせてしまったせいか、夜中からマハルが発熱。 帰れないことはないけど、もう一泊させてと頼むのはどうかと悩んでいたら「うちは氣にすんな」と言ってくれて真ちゃんは出勤したけどやっぱり悩む。 
当たり前なんだけど、真ちゃんが仕事行って1人で留守番にも慣れたみたいで家のことを始めるきーちゃん。 「実はね、休みの日は、洗濯回したらもう一回寝るねん。でもこれ真ちゃんに内緒にしててね」 真ちゃんが仕事に行ってる間に寝るのに罪悪感があるみたい。 ワタシ旦那が仕事行ってる時、普通に昼寝してるけど。笑  
きーちゃんが先生を呼んでくれて診てもらう。 やっぱり無理させてたみたい。疲れたんやろなー。とのこと。 マハル本人はとっても元氣できーちゃんにつきまとってキャッキャ言ってる。 「座薬だけ渡しとくわ。上がったら使いな。にしてもでかくなったなー」と先生。 前に会った時はもっと赤ちゃん赤ちゃんしてたって。 そうだったかな。そうかもしれない。 この際だから、最近のきーちゃんの様子を聞いてみる。  「最近?出番減ったで」と笑う先生。 熱を出して寝込むのは減ったんだ。 何か安心。 「こっちもこっちで、また雰囲氣変わったなー」と先生。 そうでしょ。私もそれ思ってるんですよ。 やっぱり雰囲氣変わったよね。 思春期の女の子の変化ってすごいよね。 「真弥も変わったな」と笑う先生。 あ、先生の前でもそうですか。しっかり言い聞かせておきます。 「奥さんや真弥について色々回ってるみたいやで」 だからいろんな所に行った写真がホントにたくさんあったんだ。 休みごとに行ってるにしてもかなりの場所行ってるよねって思っていたんだよね。 おばあちゃまたちと色々と教えてもらって安定しているのかな。  
「あ、真ちゃん帰ってきた」 昼過ぎからきーちゃんも調子悪いと横になっていたけど、夕方いきなり起きる。 けど、すぐに「あかん、起きられへん」とまた倒れこんだ。 「寝てなよー。先生来てくれてたのに自分も調子悪いなら診てもらったら良かったのに」 目は二重になってないけど、顔が真っ青だよ。 「貧血かなぁ。ぐるぐるするのと頭いたーい」 「ここでいいの?マハル起きてるしベッド行きなよ」 マハルはだいぶ元氣になってテレビの音に合わせて踊ってるんだけど。 「ここでいいー。せっかく、ねーさんたち居るのに」とリビングでタオルケットを被っている。 
「マハル元氣そうやけど…体調不良入れ替え?」 リビングで横になってるきーちゃんとその隣で踊るマハルを見て真ちゃんの一言。 「貧血だって。昼過ぎから横になってるよ」 「マハル起きてるんやったらベッド行けばええやん」 「って言ってるんだけどねぇ」 「世話のやける子やなぁ」と言ってきーちゃんを抱えてベッドに運ぶ。 けど、真ちゃんが着替えに行ってる間に戻ってくる。 「もう、大丈夫だからー」と言うけど、顔色悪いよ。 「今日も泊めてもらうから寝とき」と旦那。 「ホント?まだ居てくれる?」 「明日まで邪魔するで」 さっき、マハルの熱が下がったし夜に出発しようかって言ってたのを氣にしてたのか。 重ねてごめんね。 「ありがとーーー!」 きーちゃんは旦那をハグしてる所に戻ってきた真ちゃんにベッドへ強制送還されていった。 

最近は熱が出る代わりに貧血を起こすらしい。 でも、「今日のは絶対はしゃぎ過ぎや」と断言する真ちゃん。 「やっぱキリコは別格なんやろうなー」と言ってくれるけど。 
私たちが実家に引っ越した時や義父の葬儀の時、きーちゃんは笑顔で帰って行ったけど、 帰りの車の中は、ずっとさみしい、帰りたくないって泣いてたって。 さみしい顔を見せると心配するから。って、しばらく我慢した後、一氣に泣き出して大変やったんやから。と真ちゃんが教えてくれた。 
きーちゃんの優しさとさみしいって思ってくれること、すごく嬉しい。 多分。このタイミングでやっぱりこっち帰る!と言うのを逃すともう戻って来ることは出来なくなる氣がする。 けど、このまま地元で生活する。という選択肢しか無かった。 自分でもわからない。 大阪でみんなといる方が遥かに色々楽しいし、楽なのにね。 

夜、晩酌してるとマハルとベッドで寝ていたきーちゃんが起きてきた。 「仲間にいーれーてー」と自分用のアイスとお茶を持ってきた。 アイスとウーロン茶、好きね。 
他愛ないおしゃべり。 それが楽しい。 きーちゃんは私の隣に座ってアイスを食べる。 隠れ甘党な旦那に半分以上あげてるけど。 もう何年かしたら、きーちゃんもオフィシャルに一緒に飲めるね。そしたら、外に飲みに行こう。 その頃はどんな娘さんになってるのかなー。と思ったり。 氣付いたらマハルもきーちゃんみたいにアイス持って参加するようになるのかな。なんて考えたら楽しみだ。 
一緒に暮らしてたのは、ほんの3年。 短いなぁ。 やっぱりこっちの生活に未練あるなー。と思ったり。 それでも、私が地元に戻ったこと。 これは意味があるんだろうと思う。 でも、時々はこうやってこのメンバーで過ごしたいと思うんだよな。 
この間、家の近所で「女学校からのお友達なの」というご婦人2人に会った。 それがとっても素敵で、お2人ともご主人に先立たれてしまったから「2人でいろんなところを回ってるのよ」と教えてくれた。 何十年もして、きーちゃんと2人で色んな所を回るってのも楽しいかもしれない。 

「次はみんなで一緒に来てね♪」 見送ってくれたきーちゃんに言われてしまった。 ええ、次回こっちに来る時は計画の上お邪魔いたします。 次は予定通り真ちゃんのお盆休みにきーちゃんたちが来てくれる約束をした。  
お盆休みまでの間も、きーちゃんは手紙をくれた。 真ちゃんはお盆休みまでの間、仕事で遅くなる日が多くなるからおばあちゃまのおうちで過ごしているらしい。 でも、バイトは行ってるみたいだった。 おばあちゃまが近くに居るからきーちゃんが1人で過ごすよりはいいけど、ちょっと心配だ。  と、思っていたら、きーちゃんを心配してる場合ではなくなってしまった。 2人目妊娠発覚。 マハルの時とは違う不安しかない。 やっぱり感想は嘘でしょ。 前回の時のように絶対安静を言い渡されたわけじゃないから全然いいんだけど。 旦那は驚きながらも喜んでいたけど、正直、不安だ。 ああ、やっぱり大阪に戻りたい。って言おうかな。前言撤回したい。 遅めのお盆休み。 きーちゃんたちが来る日になった。 「あれ?焼けた?」 いつも色白さんなきーちゃんは健康的な小麦色になっている。 真ちゃんのお休みの日にプールに行ってきたらしい。 日焼けを氣にしないの、若いなぁ。 よく考えたら、夏休みらしい夏休みきーちゃん初めて? 毎年何かしら起きてた氣がする。 
妊娠の話をきーちゃんにすると、びっくりするくらい喜んでくれた。 「近かったらお手伝いするのになぁ」と小さな声で呟いて、やっぱり帰りたいなぁと思ったのは内緒。 きーちゃんが近くに居てくれるのはホント心強いんだけどな。 
義姉夫婦との話はまだ決着していないから帰りたいと言うチャンスではあるけど、そういう訳にいかない。 旦那もようやく今の職場に慣れてきたと言ってるし、妊婦で引っ越しもしんどすぎる。 マハルだって、ようやくこっちの生活に慣れたところだ。 大阪に戻れたとしても、前みたいに一緒に暮らすのは無理だろう。 仕方なし感一杯(?)で地元に戻ってきたけれど、いくら帰りたいと言ってもすぐに引っ越します。なんて言えないし、こっちで暮らすと決めて実際に暮らし始めたら「もう戻っていいよ」ってなにそれ? 良いように使われた感じがして癪に触るというのが大きいかも。 何より、すぐにやっぱり帰ります。と自分が決めたことを覆すのも嫌。 プライドの問題だ。 どっちにしろ、旦那とは話し合って、このまま地元で暮らすと決めた。 だから、実家から出るにしても地元に残る。 
 一緒にお買い物に行ってまたきーちゃんの料理のレパートリーが増えていることに驚き。 おばあちゃまや真ちゃんに相変わらずお料理を教えてもらってるんだって。 2人で並んで夕食の支度をしていると…姉夫婦プラス姪が襲来。 何のアンテナ持ってるのかしらね。 
もう、やめて。 なんでピンポイントで今日なの。 きーちゃんは姪の姿を見た瞬間に、表情が暗くなってしまった。 そんなきーちゃんは御構い無しに、姪は真ちゃんが来ていることにテンションが上がりご飯を食べたら話し合い中どこかに連れて行ってと早速おねだり開始。 自分の思いを素直に出して、かわいいっちゃかわいいんだけど。 「私たちの後のこと考えないでスパッと断っていいからね。昔の取っ替え引っ替えの頃の真ちゃんに戻っていいから!」と私も旦那も真ちゃんに言うけど明らかに困ってる。 
義姉夫婦が話し合いをする為に来たのは目に見えてる。 それは私がこの間居なかったから。 自分が原因だけど困った。非常に困った。 旦那も「普通いきなり来ないやろ」と既に怒りだしているし、きーちゃんは俯いたままだし。 マハルは機嫌よくご飯を食べてるしのカオスな世界がリビングで繰り広げられて目眩がしてきた。 
「真ちゃん、ご飯食べたら出かけるん?」 きーちゃんが小さな声で言う。 「ちょっとしんどくなってきたから、一緒におって」 きーちゃんの必殺技が出た。 しかも初めてのパターン。 ちゃんと言ってる。ちょっと驚きだわ。 
 真ちゃんも、遠出やったし疲れたのもあるから今日は連れていけないと断るけど、まあ、姪には通じないよね。 「しんどかったら1人で寝てたらいいやん。この歳で兄貴にべったりとかありえんし」としっかり言い返してるし。 このガッツ、ある意味羨ましい。 てか、きーちゃんにもその自信分けてあげて。 
「この歳でお父さんお母さんが大事な話をするのについてくるのもありえへんと思うけど?」 きーちゃんが分かりやすく反撃したぁ!ホント、驚き! どうしちゃったの? これには旦那と顔を見合わせちゃったよね。 「はあ?意味わからんし」 氣の強い姪はそんなのには動じないのも何となく想像ついてた。 「今日、着いたところで長いこと運転してきて疲れてるんだから、ちょっとは労ろうとか思わないわけ?そんな事も分からないんだったら一生彼氏なんか出来ないわよー」思わず言っちゃった。 大人げないなと(特に最後の一言)思うんだけどね。 「はあ?彼氏くらいおるし!」 おるんかい!なら別にいいじゃんか。 最近の若い子が分からないわ。 「じゃあ彼氏と遊んでたらいいでしょ」 「誰と遊ぼうか私の勝手やし!」 可愛くない子は嫌いよ。 
「ごめん、ちょっと待って」 言い合いを始めた私と姪を止めに入る真ちゃん。 「この言い合い、キリエにはキツイからもうちょいトーンダウンして」と言って、自分の前に出されてるビールと旦那のビールを一氣に飲んで、「飲んでしまったから、車運転出来んわ。ごめん」とにっこり。 なるほど、物理的に出かけられないようにしたのね。 「由佳、あんたは何しに来たのよ。遊びに行きたいなら1人で行ってきたらいいでしょう。ホントやめて」と義姉。 「意味わかんないし!なんで1人で行かなきゃダメなん。娘に夜1人で行って来いとか!」 姪はまさかの母親にも言われお怒りモード入ってるし、真ちゃんは普通に旦那のおかわりビールまで飲んでるし。 
これ、酔っ払いモード入るぞ。 真ちゃん、底無しに飲むけど酔いが回ってくるの超早いのよね。 と思ってたらもう酔っ払いモードに入ってきーちゃん溺愛モード発動。 コラコラ、兄妹なんでしょ。イチャこき過ぎだから。 「一緒に行くから向こうで休もう。美樹、マハル連れてきたら見とくで」と言ってきーちゃんを連れて荷物を置いてる部屋に行ってしまった。 布団を出すのに私も2人を追いかける。 リビングで「あの子が居たらいっつもそうやん!みんなして、意味わかんないし!」と姪が叫んでるけど無視した。 

部屋に入るときーちゃん充電中。 まあ、きーちゃんからしたら反撃するのものすごいエネルギー必要だっただろうしな。 「ねーさん、ごめんー」ときーちゃん。 「何で謝るの。ちゃんと言えたやん、成長したねー」 充電係奪ってやったわ。 私だってきーちゃんで充電しとかなきゃ、これから少しの間バトルになるだろうし。 盛大にドヤ顔で真ちゃんを見ると笑ってるし。 なに、余裕ね、アナタ。 「来てくれてるのにホントごめん。ちょっとだけ待ってて。頑張ってくる!」 真ちゃんに謝る。 「どうぞー。でマハルは?」 「連れてきて大丈夫?きーちゃんしんどいならいいよ」 「マハルくんあっちで話聞くの嫌じゃない?トゲトゲしてたよ?」ときーちゃん。  そうだった。きーちゃん、マハルに嫌な言葉も聞かせたくないし、悪い空氣の場所には居させたくないって氣をつかってくれる子だった。 「ちょっと充電したくなっただけだから、大丈夫。マハルくんからも充電するね」 一旦、真ちゃんも一緒にリビングに来てマハルを連れて行ってくれた。 
さて、既に戦闘態勢に入ってる旦那の隣に座る。 義姉の言い分はやっぱり、このうちに戻って来たい。 何故なら、家賃が浮くから! 姪の進学があったから何かと大変なんだって。 今日いきなり来たのは前回私が居なかったからと、義兄が休みだから。 姪が新しい所に馴染めず高校も行けなくなってしまったから慣れた所の方が姪に負担はかからないからここ(実家に)戻りたいと思ってる。 義兄は、私たちから一旦ここに戻ったらどうかと持ちかけられた。と義姉と姪から聞いていたけどここに来て急に実家からは出ないって言うのはどうかと思う。と言うけど。 
ん? 誰がここに戻って来て良いと言いました? これには旦那も反応する。 義姉も姪も微妙な反応。 ウソ言ったでしょ。 少し追及したら、少し強く言えば旦那は折れると思っていたから義兄に言ってしまったとのこと。 馬鹿じゃん? 
旦那は、こっちに来るのに自分も私も色々と悩んだし、むしろ私には頼み込んでこっちに戻ってもらった。 近いならまだしも10年働いて世話になった所へも急に辞めることにして不義理もしてしまった。 それでも、オーナーは知り合いに声をかけてくれてこっちですぐに働けるようにして貰ったのに、またすぐ辞めますとか言いたくない。 それに、自分らの都合だけでここに戻る時もそうだし今回も急にこんな話してくるのは如何なものか。と冷静に言った。 
旦那が冷静にイチから説明したおかげか義兄は理解してくれたし、義姉には私たちからこの話をして来たという矛盾を指摘する。 形成逆転だ。早く終わりそう。 とホッとしたのもつかの間。 義姉と姪は折れない。 もう、その話は家帰ってやって。 とウンザリしてると、旦那が席を外した。 少しして戻って私を呼ぶ。 
「整理しとったら、まだ父さんの通帳出て来たんやわ。これ渡して黙らせるわ。詳しくはアレが帰ってから言うから任せてくれんか?」 そういや、黙々と義父の片付けしてくれてたよね。 義父の残したものだし、全部任せるよ。と答えた。 
 「ねーちゃん。これ片付けてたら出て来たんやわ。これだけあったら、こっちに戻るにしろ向こうで新しく生活するにしろタシになるやろ」と義父の通帳を渡す。 義姉夫婦は通帳を見る。 そして、義姉も速攻で寝返る。 なにが「こっちの都合ばっかで悪かったわねー」だ。 すごく好きってわけではなかったけど、好きレベルノーマルだったのがアンチになりそうだわ。 
また改めて明日この通帳の移動に来ると言う。 いや、明日まだきーちゃんたちいるんだけど? ゆっくり夏休み満喫させてよ。久しぶりに一緒に過ごせるんだから。 いつの間にかリビングを出ていた旦那が帰ってきて「明日昼前に来て」と言う。 だからきーちゃんたちいるんだけど? 機嫌良く、というか小躍りしながら帰る義姉一家を見送る。 疲れたーー。 
「あの通帳、すごい威力だったね」 脱力しながら旦那に言う。 「そりゃ、マンションの頭金くらいは軽く入ってたし♪」 は?マジで? 任せると言ったけど、ちょっと惜しいよ?笑 
「あれねーちゃんの名前だけやったやん…こっちは俺の名前が書いてんねん」 ともう一冊の通帳を私に渡してくれた。 たしかに旦那の名前が、義父の字で書かれている。 通帳に紙が挟んであって、広げると手紙だった。 急なことなのに、自分を心配して快くこっちに戻ってきたことの感謝と、義姉と揉めた時はもう一冊の方だけ見つかった事にして義姉に渡してこの通帳のことは内緒にしておくよう書かれていた。「しかも、ねーちゃんの倍入ってんねんなー。車買おうかなwww」と笑っている。 義父と旦那、親子だわ。 なんか、そう思った。 
 この襲来のお陰で夕食が遅くなっちゃった。 「しんどくなったって嘘言っちゃった。」 夕食を温めなおすのに台所に居ると、きーちゃんがお手伝いに来た。 「ああ言ったら、真ちゃんは絶対行かないでくれるってわかってたし、行かないで欲しいなーって」とうふふ♪と笑う。 やだ、魔性のオンナ疑惑復活! 恐ろしい子! そんな計算しなくても行かないと思うけどなー。 まあ、素直になったと言うことは喜んでおこう。 
食事が終わると、旦那たちは友達のやってる店に行ってくると出かけてしまった。 もう、食事中結構飲んでるのに。 どれだけ飲むのよ。 本人は店に向かってる道中歩いてる間に酔いなんか醒めると言ってたけど。 まあ、2人とも息抜きも必要だし行って来いと送り出した。 きーちゃんも普通に「行ってらっしゃい」とアイスのお土産と交換に送り出したし。 マハルが寝たら、きーちゃん独り占めしてやる。