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Story 54.受け止める。
「最近はね、あんまり見えないよ。でも急に見えたりするとすっごく怖い」 マハルが寝て、まだ旦那たちは帰って来ていないからきーちゃんと女子トーク。 とは言っても、キャッキャうふふ♡な感じでは無く、きーちゃんの見えるもの。の話。
そう言えば、ちゃんとどう見えるのか聞いたことないなぁと思って。 テレビとかで見る幽霊とかそう言ったものが見える人なのかなと思っていたけど、そういったものは滅多に見ないらしい。 きーちゃんがキャッチするのは、人の念だとかそう言ったもので、人のエネルギーみたいなモノに干渉されやすいと真ちゃんが言っていたな。 そういうもののチャンネルに合ってしまいやすいとか。 色で見えることもあれば、刺々しい形だったりスライムのようなドロドロとしたものだったり、どれがこの形や色というモノでは無いらしい。 音になって一氣にその場を包むこともあると言う。
誰かが争っている時、きーちゃんは当事者でなくても争いの意思が自分に向けられているように感じたり、誰かが恥をかいたり責められる場面では自分がその人になっているように錯覚することもある。と言う。 責めたりする氣持ちではなく、その「言葉」の力をキャッチしてしまう。 確かにきーちゃん、テレビはつけるけどドラマやニュースは好きでないようで音楽番組ばかり見てた。もちろん言葉の力だけでなくて、その人の感情もキャッチしてしまう。 ニュースやドラマは特にしんどい。と言っていたことがあったのはこのせいだったんだ。
これは後から真ちゃんに確認してわかったことだけど、きーちゃんが小さい頃から学校が苦手なのは、周りの子たちの不安だったり苛立ちだったりの氣分をキャッチして自分のことのようになってしまうからだった。 自分でそれが自覚があれば対処出来るけれど、自覚がなかったからキャッチしたものを自分の感情だと捉えてしまった。そりゃ、苦手になるよね。 しかもキャッチするものによっては、きーちゃんが言っていた得体の知れない色や形や音になって見えたり感じたりするんだから、怖い場所や嫌な場所になるよね。
「ぼぼちゃん?だっけあれは?」 と聞くと物凄く驚くきーちゃん。 「ねーさんも見えたん?」 「ごめん、私は見えないんだけどね、前に真ちゃんから聞いてどんなのかなーって。さるぼぼかわいいよね」 「うん、かわいい♡」 ぼぼちゃんは3人(3体?)居てたんだって。 氣が付いたら3ぼぼちゃんと遊ぶようになって、小学生の頃に真ちゃんと会った時はね、真ちゃんをぼぼちゃんが連れてきてくれたんだってー。と教えてくれた。 そういえば、真ちゃんそんな事言ってたな。
「一回ね、私がすごーくピンチになっちゃって、ぼぼちゃん達が助けてくれたん。それから居なくなっちゃった」 さるぼぼって厄除けとかそんなのだったな。と昔旅行に行った時読んだ説明書きを思い出した。 「いつも一緒には居られなくなったけど、時々来てくれて助けてくれたん。ぼぼちゃん、小さくてかわいいのにすごくない?」 「そうなんだ!」 しばらく姿を見せなかったけど、ここ何年かの間に何度か会えたと嬉しそうに言うきーちゃん。 真ちゃんが入院した時もぼぼちゃんが側に居たんだって。「また一緒に遊べたらいいんだけどなー」と少し寂しそうに言った。
さるぼぼが動いて、一緒に遊んだり、助けてくれたり。 ぼぼちゃんだけでなく、妖怪と言われるような人間ではないものも身近にいて、普通だとかなり考えられないようなことだったり、空想じゃないのか?と思ったりするけど、きーちゃんの口から聞くと本当なんだろうなと思える不思議。 テレビで霊能者が出ていたり心霊現象の特集をしたりしていると、結構好きだから見てしまうけど、どこまでが本当なんだろう。と思ったり全部エンターテイメントとしてのお話かな?と思ったりしていた。 けど、2人もそんな不思議なことが身近にある人間が居ると、自分の知ってる世界だけでこれは嘘だ。とか空想だよ。と片付けてしまうのは、余りにも視野が狭いなぁ。と思う。 自分が見たり感じたりできなくても、それらは本当にあるんだろうな。 そうなると、見えたら見えたの苦労はあることは分かるけど見てみたくなったりもする。 「一時、もう会えなくなるって言われてたやん。あの後からやっぱりもう会えてないの?」「前ほど会えなくなっちゃったんだけど、お家のお手伝いをし始めてから少しは会えるよ」と嬉しそう。お家のお手伝いって真ちゃんの家業だよね。不思議な家業のお手伝いだから、きーちゃんの持ってる感覚が鋭く戻ってきたんだろうか。
でも、そんな話を事実としてオフィシャルに受け取る人は多分多くないはず。 マハルは最近、「見てー」と言うような仕草をすることがある。 手が離せなかったり、「はいはいー」と軽く流すと一人前に怒る。 小さいきーちゃんの「私を見てー」はこれが積み重なったものじゃないかと思った。 言っても信じて貰えなかったり、言うことを咎められたりしたのかもしれない。 それを学習して「見てー」や「あのね」が言えなくなった小さいきーちゃんは、きーちゃんが成長してもずっと心の中で自分の話を聞いてくれる、見てくれる人を待ってたんだ。 私は、そういったモノを見ることもないし、感じることもない。ただそんなことがあるんだ。と教えて貰うだけ。 それでも、きーちゃんは私のことを大事に思ってくれて信頼してくれるのはよく分かるし嬉しく思う。 真ちゃんばっかり、きーちゃんの特別でずるいー。と思うことも沢山あるけど、それは共有出来るからなんだろうな。 言っても信じて貰えない、咎められるようなことを、信じて理解して共感してくれる。 そんな人が現れたら、どう考えても特別になるよね。 やっぱり、羨ましいけどね! きーちゃんの前に真ちゃんが現れて良かったなぁと思う。 そうじゃなかったら、救いがなさ過ぎる。 一度会えなくなってしまったけど、また2人がこうして過ごせるようになったのは少しは私のおかげね。と自分を褒めておこう。 もしかしたら、わたしが居なくても必然的に会えたのかもしれないけどさ。
私たちが地元に戻る前にきーちゃんは、このお家みたいなお店がしたいと言っていた。 雑貨が好きだから、自分の好きな雑貨がたくさんあって、自分みたいな人も読める本もたくさんあって。 そして、私はねーさんたちみたいになるの。と教えてくれた。 「ねーさんたち」って何かな。と思ってたんだけど、それはきっと自分の世界を本当だと受け取る人のことかな。と思うのは自画自賛過ぎるかしら。
きーちゃんの雑貨屋さん、行ってみたい。 おばあちゃんになって、旦那に先立たれたら、きーちゃんの元に転がり込んでお茶を飲みながら店番するのも良いかもしれない。 それをきーちゃんに言うと「それ楽しみ♡でも、美樹ちゃんが早くに死んじゃうのは嫌だな」と言う。「美樹には100まで生きて貰って、100歳過ぎて私が1人になったら店番しに行くのは?」と聞いてみた。 「それならいい♪」と楽しそう。 「でも、100歳過ぎてからでしょ?2人ともよぼよぼのおばあちゃんだったらお店できるかなぁ」 「でも、おばあちゃま、あと20年はあんな感じでお元氣そうだよ?それ位の歳だよ」 と言うと「じゃあ、全然大丈夫だねー」と笑った。
私が100歳になる頃、きーちゃんは色んなことを経験して学んで、絵本に出てくる魔女や長老みたいになってるかもしれないね。 魔女がいる雑貨屋さん。 物語に出てきそう。 ピンチに陥った主人公が、癒しにやってきたり、旅立つ準備に来たり。 はたまた重要な知恵をもつおばあちゃんのいる雑貨屋さん。 優しくて物知りでみんなが大好きな魔法使いのおばあちゃん。 きーちゃんなら、そんなおばあちゃんになりそうな氣がする。
午前1時を過ぎて、家の前にタクシーが止まったのが見えた。 「帰ってきたね」とカーテンを開けて外を覗くきーちゃん。 「でも、こんな遅くまで遊ぶなんて不良よねー」と言うときーちゃんは何だかツボに入ったみたいで大笑いしてる。 それを見てたら、私までつられて笑いが止まらなくなっちゃって帰宅した2人にドン引きされてしまった。
「え!!!」 旦那が「ごめん、帰りに途中で寄って買おうと思っててんけど、アイス忘れてた…」と言うと絶句するきーちゃん。 「大丈夫、うん大丈夫だよ。楽しかったんだもんね。私も楽しかったから大丈夫」と言うけど、全然大丈夫じゃなさそうだよ? 「明日!明日買いに行こう!好きなん買ったるから」と旦那と真ちゃんが焦ってるのが面白い。 きーちゃんが我が家(?)のお姫さまなのは変わらないね。
「きーちゃん、これ食べるー?」 冷凍庫からきーちゃんの好きなストロベリーのアイスを取ってくると、きーちゃんの表情が明るくなった。 きーちゃんが来たら食べるかと思って、大量に買っておいたんだよねー。 美味しいポジションいただき。
それからみんなでまた晩酌タイム。 私が再び飲めなくなってるのがつまらない。 2人だけ、更に飲んでからに。 途中でマハルも起きてきて、夜中だというのに超ハイテンション。 マハルもきーちゃん達が居るの嬉しいんだよねー。 でも、寝て?笑
結局、明け方まで飲んでた2人はそのまま撃沈してしまいきーちゃんの提案でお布団を持ってきてみんなで寝ることに。 「こうやってみんなで寝るの楽しいね」 ときーちゃんが喜んでくれて良かった。
旦那の携帯が鳴って目が覚めた。 「ねーちゃん、あと1時間位で来るってよ」 そうだった。忘れてたけど、今日も来るんだった。 義姉たちとは旦那が単独で行ってくれることになった。 「で、こいつらひっつき過ぎちゃうか?こんなに布団敷き詰めてんのに何でわざわざ同じ布団でひっついて寝ないとあかんねん。暑いのに」 まだ寝てるきーちゃん達を見てブツクサ言ってる旦那、やっぱりお父さん過ぎやしませんか? 娘だってもうお年頃なんだから口うるさく言うと嫌われるよー。 まあ、お父さんが居るのに堂々と抱き合って寝るってのはどうかと思うけど。布団入った時そんなに近かったっけ。最近の若い者は恥じらいってのを学んだ方がいいと思うわ。 ホントはね、今日は私の調子が良かったらどこか出かけようかと言ってたのにね。 ちょっと不満だわ。 まあ、早くに片付けておこうと言う旦那の氣持ちだからありがたく受け取るけど。
旦那が出かける準備をしていると、きーちゃん達が起きたみたいで声が聞こえた。 マハルはいつもなら泣いて私を呼ぶけど、今日は機嫌いい声がしてる。 ああ、きーちゃん達居ると楽。 逆にきーちゃん達がこっちに移住してくれないかしら。部屋はあるわよ。
旦那に言われて、私たちは義姉たちがやって来る前に買い物に出発。 曰く「姪が来てたら、またいらない厄介がおこる。」 自分の姪なのにね。事実だけど。 きーちゃん達はちゃんとマハルのベビーシートを用意してくれていて感動した。 マハルが生まれた時、きっと乗ることがたくさんあるからと真ちゃんの車用にもベビーシートを用意してくれていた。 処分しちゃったかと思ってたから、旦那の車から移動させなきゃと言っていたけど、ちゃんと乗せて来てくれてた。
買い物に行った後は、私の両親の御墓参りにも行ってくれて。 「ねーさんに会わせてくれてありがとうございますってやっと言えた♪」と真ちゃんに言ってるのが聴こえて、嬉しくなる。
旦那から連絡が来て一旦帰宅。 流石に果ててる。 「もう、お出かけいいよ。しんどそうやで」 かわいい娘と久しぶりに会うからと、前からどこに連れて行こうかな。とか密かに楽しみにしていた旦那。 今からでも行ける所へ出かけようとするけど、あまりに疲れてるからきーちゃんが心配してくれてる。 「ごめんな。その代わり花火しようか?さっき、帰りに買ってきてん」と旦那が車へ向かうと、大量に花火が積んであった。 娘に甘いなぁ。 そして車に花火積んだままにしてるの、危ないからやめて。 でも、これ全部出来るのかしら。 明日も居てるし、連続でもいいか。
きーちゃんとマハルは花火を楽しみにしているようで、夕食の時から窓の外を何度も見て「まだ暗くならないね」と言ってる。 その度にマハルも一緒に窓まで行って何か言ってる。 2人が並んで外を見てる姿は悶絶するくらいかわいい。思わず写真を撮っちゃったわ。「そろそろええんちゃうかー?」と旦那が言うと、きーちゃんはダッシュで荷物を置いている部屋に行った。 玄関、あっちよ?
「ねーさん、これ着て♪」と紙袋を持ってきた。 中には浴衣が入ってる。 「どうしたのこれ?」 「おばあちゃんからプレゼント。ねーさんと夏祭り行くって言ったら色違いのをプレゼントしてくれたんだよ」 やだー。嬉しいー。 着替えて来よう。 夏祭り行こうって言ってたけど、町内のお祭りだよ?氣合い入れすぎ。がっかりしたらどうしようと思ったけど、きーちゃんと色違い嬉しい。 「ちょっと、ちょっと母さんや」と着替えていると旦那がやって来る。 「どうしたの?」 「きーちゃん、浴衣着せて貰うって真弥連れてったで」 だからどうした。 「着替えやぞ。ええんか?」 「いいでしょ。帯結んで貰うんでしょ?てか別に今更着替えを見せたところで…なんじゃないのー?」 ちょっと意地悪言っちゃった。笑 「は?マジで?」 動揺し過ぎでしょ。どう見たってあの2人は今更着替えどころかの話になってるじゃない。 旦那、こんなキャラだっけ? お腹の子、女の子だったら…より面倒くさそうなんだけど。 男の子でありますように。 やっぱり父親ってのは娘には一生穢れなき無垢なままでいて欲しいのかしら。
着替えて戻るときーちゃんも着替え完了。 髪も結わえて、赤い浴衣がかわいい。 なんか、帯の結び方エライ手が込んでるんですけど。真ちゃん、ホント、手先器用ね。 「おそろいー♡」 赤と黒、色違いの浴衣。 私とお揃いなの喜んでくれるなんて嬉しい。 ホント、かわいいわー。
マハル、初めての花火。 突撃していくから、油断ならない。 こっちに来てすぐの頃は庭の池に突撃して行ったし、割と何でもかんでも突撃していくタイプなようだ。 これ、もっと走り回るようになったら怖すぎる。
しばらくきーちゃんも楽しんでいたみたいだけど、急に真ちゃんと私の所へ来る。 「やっぱりタイムスリップする。今、こっちやんな?」 視線が泳いで、泣きそうになってる。 「せやで。今はキリコとマハルとやっとるで」と真ちゃんが言うけど、タイムスリップって何? 「大丈夫、今はこっち」と言って、きーちゃん充電。 「きーちゃん、調子悪い?」と真ちゃんに聞いてみる。 「すぐ戻ると思うわ」 真ちゃんはきーちゃんの背中を撫でて時々何かを言いながら落ち着かせる。 けど、あんたたち顔が近いから!一応(自称)両親の前なんだから自重しなさい。 少しして、きーちゃんはさっきの表情から変わって笑顔になって、旦那と打ち上げ花火に火をつけに行った。 「ホント、大丈夫?残り明日でもいいよ?」 念のため真ちゃんに確認する。 きーちゃんがタイムスリップと言っているのは、フラッシュバックのこと。 きーちゃんは完全にその時が再生されて完全に錯乱することは少ないけど、時々確認しないと混乱してしまう。 だから、意識がまだこっちにある間に落ち着けばその当時を再生することがないから、さっきのは大丈夫だと教えてくれた。
フラッシュバックって、トラウマがある場合に何かのスイッチが入って起きるんだったよね。 花火にスイッチがあるのかな。 「フラッシュバックのスイッチは花火だけ?」 「花火だけちゃうな。なんやろ、どれって確定させんの難しいくらいあるで」と真ちゃんは笑うけど、私が一緒にいた時でも氣付いてない間もフラッシュバックが起きていたり、今もまだ起こしたりしていると聞いて、何とかならないのかと心配になる。 きーちゃんがトラウマになるものに関連するモノや体験が、フラッシュバックのスイッチになる。 トラウマになった体験が自分にとって危険だと判断するから、本能的に危険を知らせる為にフラッシュバックが起こるらしい。シンプルに考えたら、それに似た体験が自分にとって危険でないと分かればフラッシュバックが起こることがなくなるはず。 「どんだけあるか分からないけど、出てきたらその都度消してくつもり」だと真ちゃんは言う。
その都度消していく。 きっと、さっきのもそうなんだ。 けど、それが全部消えるのはいつになるんだろう。 純粋に大変なのが見えてる。
きーちゃんがフラッシュバックするは、もちろん最近だけでなかった。 一緒に暮らしていた時からずっとあって、最近になってこうやってフラッシュバックを起こしかけた時真ちゃんに伝えられるようになってきたと教えてくれた。 錯乱したり、倒れてしまうのはこのせいだったのかもと思うとどれだけのものを抱えているのか。 大変だとは思うけど、こうやって真ちゃんに受け止めてもらえるのは良かったのかもしれない。
花火は大量にあったのに、なんだかんだで全部やってしまった。 きーちゃんは、時々フラッシュバックしそうになるのか不安げな表情で真ちゃんの顔を見たけど、真ちゃんは言った通りきーちゃんを落ち着かせて花火に誘っていた。 終わる頃には、きーちゃんはとても楽しそうにしていて旦那や私に「楽しかったよー、ありがと」って言うものだから、酔い始めていた旦那はメロメロに。
「マハルくん寝たら、こっちに戻ってくる?」 マハルを寝かしつけに行こうとすると、きーちゃんが言った。 「戻るよ、どうしたの?」 「後でね、ちょっと相談したいことあるねん。聞いてもらえる?」 改まってどうしたんだろう。 もちろん聞くよ。今のうちお風呂入って待っててね。と答えてマハルを寝かしつけに向かった。 改まってどうしたんだろう。
マハルを寝かしつけた後、リビングに向かった。 きーちゃんはまだお風呂からあがっていなかった。 旦那と真ちゃんはいつもの如く飲んでるし、相談ごとってなるとこの人たち邪魔だなぁ。 お風呂屋さん行けば良かったかな。
きーちゃんがお風呂から上がってきた。 結局、リビングの飲兵衛たちとリビング反対側に座って聞くことにした。 「あのね…」 なんだ、言いづらいのかな。 「別の部屋行く?」 外野が氣になるのかなと思ったけどそうじゃないみたい。 「どうしたら強くなれるかな」 いろんな時にフラッシュバックを起こすこと、キャパオーバーして倒れてしまうこと、自分がコントロールできなくなること。 その度に真ちゃんや周りに氣を使わせてしまうこと。 「さっきも折角美樹ちゃんが花火買ってきてくれたのに、変なタイムスリップしたし…」 「みんなが楽しいのに、それで空氣悪くするでしょ?それが嫌。」 フラッシュバック起こすのはきーちゃんのせいじゃないし、キャパオーバーを起こしてしまうのだってきーちゃんのせいじゃない。 「こんなんだから、真ちゃんもめんどくさいヤツやなって嫌にならへんかなって」 急にどうした?
聞いてみると、学校で友達数人と話していた時にふとそんな話になったんだって。 そしたら、「めっちゃ重い。めんどくさい。今に嫌になるやろうな」って言われたそう。 これを言った子は、まだそんなに話したことは無いんだけど同じグループに居てる子。 「病弱を理由にして、自分は可哀想だとアピールしてるだけだと。それに付き合わせられる方は堪ったもんじゃない」「可哀想で辛い思いしてるのは自分だけじゃない」「単に甘えてるだけ」「結局自分が一番かわいいと思ってるからそんな事できるねん」と言われた。 聞いていて腹が立ってきた。 きーちゃんの何を知ってそこまで言わなきゃいけないんだ。 子供が言うことに腹を立てるのは大人げないとは分かっているけど、何の権利があってきーちゃんのことをここまで言えるのか。
きーちゃんはその言葉を真に受けてしまってるようで、「何とか耐えようとするんだけど、無理になっちゃって、言って良いよって言ってくれるから真ちゃんに言ってしまうねん」 「引っ越ししてから、仕事終わったらすぐ帰ってきてくれるし友達とも遊びに行けないし。家をあけるときはおばあちゃんに頼んでくれたりしててね、全然自由がないねん。」 「真ちゃんはね、1人で怖かったりしんどかったりするよりも言ってくれた方が良いから言ってって言ってくれるねん。全然苦じゃないからって。でもこのままやったら、やっぱり嫌になっちゃうよね?しんどいよね?」 何だか、前も似たこと言ってたよね。 その時は、そんな事ないと分かったはずだけど、他人から言われたらショックはショックだろうし、不安になるのかもしれない。 「真ちゃんに聞いたとしても絶対大丈夫って言ってくれるの分かってるから、強くなって面倒かけないようにしたいねん」 「私が何度も倒れたりするとその度に空氣悪くするけど、みんなが優しいから言わないだけやでって。それに甘えて調子乗ってるやろ。わたしの為に言ってるねんで。って」 会ったことない子供に対して、本氣で腹が立っていた。それが伝わってしまったんだろう。 それでもあなたの為を思ってと言いながら、平氣で傷つけているのが許せなかった。
きーちゃんは「ごめんね、これも甘えてるね。大丈夫!ホントごめんね!」と言った。 きーちゃんが何とか自分で乗り越えないといけない話なのかもしれない。 けど、見たことも名前も知らない子供に対して許せなかった。 過保護だと言われるかもしれない。 でもなんて言えばいいのかもわからない。 けど、きーちゃんが言われっぱなしで心を痛めていることが嫌だし辛い。
「きーちゃんは甘えてないよ。こうやって相談してくれるの嬉しいよ」 何で言えばいいかわからない。 「ごめんね、お友達のこと悪く言うように聞こえるかもしれないけど、私は言った子のこと許せない。きーちゃんにそんな事言っていいとは思わない。甘えてるかどうかなんて誰も決められないよ」 ただ、自分が感じたことを伝えることにした。 「きーちゃんは甘えてない。自分でちゃんと強くなろうとしてる。きーちゃんがどうしたら強くなるかは分からないけどね、きーちゃんは確実に強くなってる。」 それは、私が一番知ってる。 きーちゃんは、ちゃんと強くなってる。優しくなってる。 「真ちゃんがどう思ってるかは分からないんだけどね、それはね、真ちゃんにちゃんと言ってもらうしかないと思う。でも、見てる限りは自由がないだとか、我慢してるとか全然見えないよ。甘えてるだとか、アピールしてるなんて思ってないと思う。きーちゃんが1人で悩んでしんどくなって泣いてる方が嫌なんじゃないかな?真ちゃんがそう言ってたんやろ?」
ちゃんときーちゃんの質問に答えられてるのかわからない。 「真ちゃんの氣持ちはその子が決めることじゃない。だから勝手に真ちゃんの氣持ちを言われたからって決めちゃダメだからね。真ちゃんや私たちの言葉とその子の言葉、きーちゃんはどっちを信じたい?」 「ねーさん達の方に決まってる!」 「でしょ?それならそんな言葉を信じないで。無理に強くなろうとしなくていい。我慢しないで」 「それにね、真ちゃんね、きーちゃんが甘えてる方が嬉しそうよ?」と言うと「そうなんー?もっとちゃんとしなきゃと思ってた」ときーちゃんがやっと笑ってくれた。
新しい生活が始まれば当然新しく問題も出てくるわけで、いくら傷つかないで欲しいと言っても無理なわけで。 分かっているけど、必要以上にきーちゃんは心を痛めている氣がする。 笑って聞き流すだけの力をつけたら良いのに。純粋に向けられたものを受け取ってしまうんだ。 自分が無いからしっかり自分を持てば良い。と言い切ることだって出来るかもしれない。 けど、私にはそんなこと言えなかった。
少し表情が明るくなったきーちゃんは、大好きなアイスを食べてる。 しっかり酔っ払いな真ちゃんは、例の如くきーちゃんにちょっかいかけていて、きーちゃんが戻しても戻してもパーカーのフードを被せてる。 それして遊ぶの好きだよね? 溺愛っぷりが酷いんじゃないの?と思ったりするけど、きーちゃんにはこのくらいきーちゃんのことを溺愛してくれる人がいた方が良いのかもしれない。
新しい生活を始めて3か月。 年単位での想いが成就したんだろうし、もう少しは溺愛は続くだろうけど。 きーちゃんが甘えることが出来るならいいよね。