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Another story 67-2.お願い。
「明後日から3日間期末テストやねんて。出られそうな日だけ行ってみるか?」
電話を終えた真ちゃんが言った。
「テスト出来るかな」
ねーさんが帰った後、少しでも勉強が追いつけるように担任の先生が送ってくれる課題を真ちゃんが一緒にやってくれるけど、登校は出来ていなかった。
「心配なら無理せんでええで。けど、テストは受けるだけでも違う言うてはったからどうするかと思ってな」
まだ1人で学校まで行ってテストを受けて帰ってくる。当たり前のことだけど、出先でまた混乱したり自分でない自分に乗っ取られてしまったらと思うと怖かった。
けど、学校を休み続けていることも嫌だ。
「テスト中行ってみるんやったら終わるまで学校で待たせてもらえるようにしてるから」
え?誰が?
「まだ電車では行けへんやろ。だから送って行って終わるまで待たせてもらって車で帰れば負担ないやろ」
それはとっても嬉しいけど。
「真ちゃんお仕事は?」
「大丈夫やで」
真ちゃんの言葉に甘えてテスト期間試しに登校することにした。
いつものように制服を取り出す。
いざスカートを取り出そうとすると手が震えて動かなくなる。
何で着替えるのが怖いんだろう。
深呼吸してスカートに手を伸ばすけど、どうしても震えて持てない。
何度もそんなことを繰り返す。
「キリエ、スカートのしつけ糸取るの忘れてた」
寝室に真ちゃんが来た。
「しつけ糸?」
一瞬真ちゃんが止まった。
「ほら、変なところ破れたで新しくしたやんか」
「破れたっけ?」
「破れた、破れた。派手に転けて。そんな所繕うのみっともないからって婆に新調しろ言われたやんか」と言って笑うけど、なんだか変。
「どないしてん。それともジャージで行くか?www」
「制服で行くよ。テストなのにジャージって変だよ」と笑って返事をしたけど、氣になる。
よく見るとスカートだけじゃない。ブラウスもベストも新しくなってる。
あと1年しか着ないのに私はどんな転け方したんだろ。
着替えてリビングに行くと真ちゃんが充電してくれる。
「大丈夫。行って帰るだけやから無理すんな」
「うん、頑張るね」
いつも、真ちゃんに心配かけて。
いつになったら私はしっかりするんだろう。
久しぶりの登校。
大丈夫、3年生のクラスは元々空氣みたいなものだったから。
居てもいなくても同じ存在なのは慣れてる。
なのに緊張する。あまり居たことない慣れない場所は本当にキツイ。
居なくても同じ存在なのになんでこんなに氣持ち悪くなるんだろう。
テスト自体は、思ったよりもすんなりとできた。
真ちゃんが一緒に課題をやってくれてたおかげかも。
3時間のテストを完了して車に乗る。
たった3時間。
それだけなのに帰る途中から氣分が悪くなって帰って寝込んでしまう。
「ワタシ仕事下でやるでソファー来るか?」
「ごめんね」
やっぱり仕事あったんだ。
「なんで謝るねんな」
仕事してる真ちゃんの隣で横になる。
抜けたタイムラインはどんな出来事があった?
なんで今まで以上にこんなにめんどくさいヤツになっちゃった?
「はい、謎思考禁止ー」と言って真ちゃんが笑う。
「まためんどくさいヤツとか思ってんちゃう?」
バレた。やっぱり千里眼。
「何ならめんどくさい方がええねん。色々手をかけられる」
何だそれ。
3日間のテストを何とかこなして、テスト休みに入る。
何ヶ月かの間、私は何がどうなって何をしていたのかわからないままだった。
「きいちゃん、久しぶりにお習字せえへん?」
テスト最終日、私を迎えに来てくれた後真ちゃんはお仕事に行った。
まだ病み上がりだからとおばあちゃんが家に居てくれた。
おばあちゃんは文箱を取ってきて言った。
お習字、最近全然やってなかった。
お習字どころか字も書いてなかったから、課題のプリントやテストでも自分が思った文字のバランスで書けなくて驚いた。
墨をすっている間におばあちゃんがお手本を書いてくれる。
この時間がとっても好き。
「きいちゃん、今とても焦ってるやろ」
書きあがった文字を見ておばあちゃんが言った。
やっぱり文字に表れるんだろうか。
「焦るな言う方が難しいかもしれんけどな」
おばあちゃんは静かに話す。
「きいちゃんはちゃんと喰われんと帰ってきた。それでええんよ」
喰われる。
思い出せない期間、私は仇為すという『何か』に喰われかけていたんだろうか。
「病氣した時と同じ。焦らんと少しづつ戻せばええからね」
「真ちゃんが行かせてくれてるのに学校も長いこと休んでた。マハルくん達居るのにねーさんを長いこと独り占めしてた」
「真弥やキリコさんは何て言うてる?そんなん氣にせんでいいって言うてるんじゃないの?」
うん、言ってくれた。
「申し訳ないと思うんやったら、きーちゃんはきーちゃんで居ると良いよ」
私が私で居る?
「そう、無理して取り繕ったりせんと居ったらいいの。きーちゃんはそれに甘えへん子やから」
どういうことだ??
「自分の想いに正直に居てごらん」
自分の想い?
「感じたことをこれは感じたらあかんって禁止するんやなくて、素直に感じてみたらええよ」
なんだか簡単そうで難しそうだぞ。
「みんな、きいちゃんが笑う顔が好きなんよ。だから、笑ってたらみんな嬉しいよ」
テスト休みに入ってからも、とってもマイペースな時間を過ごす。
真ちゃんやおばあちゃんはお仕事の合間に一緒に散歩やお習字の時間を作ってくれる。
散歩したりお習字をすると上手く氣が巡るのが穏やかに過ごすことが出来た。
「真ちゃん、今日もうお仕事ない?」
「どした?」
「どっか連れてって」
何だか外の景色が見たかった。
真ちゃんは黙って私を見た。
あ、頼むタイミングダメだった感じ。
思ったままって言うのはこういう事じゃなかったのか。
そうだよね、今日お仕事行ってたもんね。しんどいよね。
調子、乗りすぎ。
「どこがいいかな。まだ人多い所は心配やしな」
良いのかな?
「って結局同じ所やけどな」と展望台に向かう道中、真ちゃんが笑うけど展望台好きだから問題無しですよ。
山の上は少し涼しくて時々吹く風が心地よかった。
「外出したいって思えるようになって良かった」と言う真ちゃんの声は優しかった。
「いっぱい迷惑かけてごめんね。まだやっぱり思い出せへん。私、どれだけ迷惑かけた?どうしたらみんなにごめんなさいできる?」と言ってから後悔。
本当にそう思ってる。
けど、こんなこと言っても真ちゃんは『氣にすんな』って言ってくれるの分かってる。分かってて言うなんて卑怯だ。反吐が出そうだ。
「また謎思考しとるやろ」
してるのかな。
「いい?キリエが謝ることは一つもしてへん。迷惑もかけてへん」
真ちゃんはまっすぐ私を見る。
「こうやって帰って来ただけでいい」
根堅洲国に居た間、私はどうしていたんだろう。
何で真ちゃんの光を奪い続けたのにこうやって言ってくれるんだろう。
「何も奪ってへんで。あれはワタシが弱かっただけや」
真ちゃんは弱くなんかない。
「そんなこと言いたいからどっか行きたいって言い出したんと違うやろ?どうした?」
「私が別の私に喰われたらどうしよう…」
確かに私じゃない私が動いて話していた。
私が思ってもない事を勝手に話して勝手に動いた。
勝手に真ちゃんを怖がった。側に居てくれる事を拒絶した。
私が戻って来れたのは偶然で、また忘れた頃に私じゃない私が現れて私が消えたらどうしよう。真ちゃんを怖いと言いながら勝手に私じゃない私が命を絶ったらどうしよう。
私はまだ何も返せてない。
ごめんなさいばかりが増える。
今もいつ私じゃない私が現れるのか怖い。
話せなくなったみんなとまた話せる様になったのは私が消える前だから?
見えなくなってたものがまた見えるようになったのは消える前だからじゃないかと思うと怖い。
散々居なくなりたいって言っておきながら勝手なのは分かってる。
真ちゃんの前から私が消える時に、私じゃない私が怖いと言って、真ちゃんが覚えてる私の姿が真ちゃんを怖がってる姿で消えちゃうのは嫌。
「キリエは消えへん。ちゃんと帰ってきた。それだけで充分やから。だから消えたらどうしようって思わんでいい。キリエがこうやって居るだけでいい」
そうやって言ってくれるのも、想像付いたのに。
こうやって自分が安心したいからいつも真ちゃんに泣きつく。
そうやって真ちゃんの全部を奪う私なんて嫌い。
「キリエが自分が嫌いな分好きでいるから帰ってきて。どっかに行ってしまってても帰ってくるって思ってて」
シードラゴンは本当は強いと言った。
シードラゴン達が一度だけ助けてくれるからもう一度歩きなさいと言った。
真ちゃんは帰って来ただけ充分だと言ってくれた。
本当は強いのか分からない。
弱いままで居たくない。
強くなるから、今は真ちゃんの光を分けて。
真ちゃんの光と重なっていたら、そうしたら、強くなる氣がする。
朝から涼しくて真ちゃんと神社までお散歩。
「何だか今日は空氣、違う」
何だろう。いつもよりも、軽く賑やか。
お祭りみたいな。
「何やろな」
「真ちゃんもそう思う?」
「確かにいつもとは少し違うかもしれんけど」
「笑ってる?なんだろ、今日は眩しいね」
賑やかな空氣の理由は拝殿に立った時に分かった。
結婚式をしていた。
本殿から光が射しているようで綺麗。
その光が広がって私たちの元にも届く。
その光は強くて優しい。
私もその光の中に行きたいと思った。
手を合わせながらこの瞬間に立ち会えたことのお礼を伝えると「いつでも待っているよ」と言われた氣がした。
今日は神域全体が賑やかで私も浮かれそう。
『嗚呼良かった。ちゃんと氣が付いたんだね』
木陰で休憩中、すぐ近くで何かが言った。
何に氣が付いたんだろう。
『区切りの日』
区切りの日?
『そう。もう自分でも氣が付いてる。けどまた同じ事を繰り返すのが怖い。だから氣付かないふりしてる』
何だか言いたいとしていることは、ふわっとわかるけど…。
見えないモノたちの言うことはいつも結構抽象的。
『全部言ってしまうと、氣が付かないでしょ』
そうか。その為だったんだね。
なるほど、なるほど。
区切り…かぁ。
区切りとさっき見た光。
あの光は知ってる。見たことある。
「カミナリだ」
「カミナリ?」
「そう!来世の道を壊したカミナリ!」
「はい??」
真ちゃん、混乱中。
でも繋がった。
『私は違うけどね。でも光はそう』
光はカミナリさま?神さまだったん?
『神さま…そうだね、神さまだと思えば神さま。どう思う?』
神さまだと思う。
『聞いてごらん』と何かはくすくす笑う。
「真ちゃん!!」
「はい」
「もっかい!」
「はい?」
「神さまの所行こう!」
「今詣でたのに?」
拝殿に向かう。
来世の道を壊したのは神さまですか?
「まだやらなきゃいけないことがある」と言ったのも?
私に出来ることありますか?
黒い着物が見えた。
裾だけが見えたのに、私だと思った。
黒の着物は私ですか?ここに居るの?
『場を整える。
立ち位置を整える。』
場を整える?立ち位置?
『立ち位置は大切』
立ち位置は大切??
あかん、また混乱してきた。
私の立ち位置。と、黒の着物。
繋がらない。
なんだかパズルのよう。
『隣、隣』
狛犬さんの声。
隣に居るのは真ちゃんだけど…
もうちょっとヒントください。
私の前を歩く真ちゃんが見えた。
そして、さっき見たお式。
私も同じようにここに来ていい?
『そうすることで、あなたの力を正しく使える。言葉の力を信じなさい』
真ちゃんとここに来ることで私の力を正しく使える…。
言葉の力を信じる?
…。
……。
………。
分かんない…。
今日のパズルは難しいぞ。
境内をウロウロしながら考える。
「せめて陰に入ればいいのに。直射日光当たってたらまた体調崩すで」
真ちゃんに木陰まで強制送還される。
「ちょっと前歩いてー」
木陰でさっき浮かんだ映像を再現。
分からなかった。
「分からんのかいなwww」
「なぞなぞ?パズル?難易度高い。今日はベリーハードだー」
もう一度拝殿に戻る。
素直に「分かりません!けど真ちゃんとここに来ていいですか?」と聞く。
本殿から光が射した。
「おいで」と言われたようだった。
「答え合わせ終わった?」
階段の下で待っててくれた真ちゃんが言う。
「ここに来る!だからここに一緒に来て!おいでって!」
「…キリエがベリーハードの超難解や…」
真ちゃんの所にジャンプ。
「今来てますよ」と私をキャッチして真ちゃんが言った。
「違うねん!来てるけど前を歩くねん」
拝殿の階段を先に登ってもらう。その後ろをついていく。
良いところまでいってると思うんだけどなー。
あと2段というところで真ちゃんが立ち止まる。
あぶないなー。激突するやんか。
「これですけどね」
「はい」
「ここでなく、この中とちゃいました?」
「あーー、中って言われたらそんな氣はするけど今は入れないでしょ」
「そらホイホイ入れないですな」
「だからね、こっち側でやってみてん」
「キリエさん」
「なんでしょう」
「朝の、覚えてる?」
「お式してたね」
「アレじゃないですか?」と真ちゃんが言った瞬間、明るいのに雨が降って来た。
急いで神さまと狛犬さんに挨拶してダッシュで帰る。
「狐の嫁入りだねー」
雨が降ってるけど、空は晴れる。
「狐の嫁入りって好き。虹が出たらもっと好き」
窓から空を見上げる。
ここで映画だと虹がでるんだろうけど現実はそんなに甘くなかった。
「さすがにそこまで上手くは行かんなwww」
「ですよねーー」
「それでさ、、、」
一緒に夕食の準備中。
「さっきの話…」
いつの話?
たくさんありすぎてどれの事か。
「狐の嫁入りと朝の式」
えーーっと、パズルの続きですか。
ちょっと待って。
パズル解きモードから外れてたから戻ります。
「キリエも嫁入りしませんか?」
一瞬、花嫁衣装を着たキツネが「コン」と鳴く。
ちょっとかわいい。
いや、多分違う。このキツネさんじゃない。
「さっき、拝殿でそう聞こえた。けどまた謎思考になっとる氣がするんですが…」
「今はね、花嫁キツネちゃんがコンって鳴いたよ」
「あら、それはかわいいね」
「でしょ」
「あーー、やっぱ待って!」
何を?
「嫁入りの話。違う!謎思考せんとちょっとだけ待って!」
どういう事?
「嫁入りして欲しい。けど今返事聞くのは怖いから検討だけして!」
「返事が怖い?なんか、私も怖くなって来た」
「なんでやwww」
嫁入りってことはお嫁さんになることだよね。
じゃあ、他所からお嫁さん他に来ない?
ちゃんと家族になれるってこと?
でも、そうしたらもっと迷惑かけるんじゃないかな。私に何ができる?してもらうばっかり。
真ちゃんに良いことって何があるんだろ。
そうしたら私の力を正しく使える?
立ち位置は大切って言ってたな。
お嫁さんになったら私はどんな立ち位置になる?
そもそも今の私の立ち位置って?
居候どころか学校行かせて貰ってるのに何一つ役に立たないし、しょっちゅう寝込むし、いわゆる穀潰し…。
あ、言葉にすると自分で自分のことを言っただけなのに結構ショックだ。
これ、謎思考になるって言うのかな。モヤモヤしてきた。
一度考えるとマイナスのループは止まらずなかなか寝付けなかった。
「お買い物、私も行っても良い?」
謎思考のモヤモヤは続いてたけど、身体も軽いし今日ならいける氣がしてお買い物についていけないか聞いてみた。
少し動いて自分の中のいろんなものを動かしたかった。
「無理せんとツラくなったら言うんやで」と真ちゃんは二つ返事で連れて行ってくれた。
けど、結果瞬殺で敗北。
大きめスーパー。
地下に車を止めて食料品売り場に着いた瞬間目眩がして氣分が悪くなってきた。
何かがマーブル模様のように私に混ざってくる感じと、お店に並ぶ物たちの刺激。
買い物するだけの時間だし耐えていようと頑張ってみたけど、すぐに真ちゃんにバレてしまった。
そして買い物をせず地下の自動販売機でお茶だけ買って帰宅。
何しに行ったんや…。
私を家に送った後、真ちゃんは再び買い物へ。
私が行きたいって言わなきゃ真ちゃんに二度手間かけることなんてなかったのに。
自己嫌悪。
1人ベットの中で悶絶。
もう、こんな風になるのホント嫌。
行き場のないモヤモヤが充満していく。
「お習字しよう!」
おばあちゃんから貰った文箱を出して墨をする。
ざわざわする心が落ち着くまでゆっくりする。
「自分の想いに正直に居てごらん」
おばあちゃんの言葉を思い出した。
私の想いに正直に居る。
私の想い…。
真ちゃんにとって何が良いことあるんだろう。とか、散々居なくなりたいと言ってた私が言ってもいいのか。とかのオマケの感情をひとつひとつ外してく。
私の想いの真ん中はシンプル。
ここで真ちゃんと居たい。
自分でもコントロール出来ない感情の波があって、それに飲まれてしまうと現実逃避で来世だとか黄泉の国だとかに逃げてしまいたくなる。
現に今だって自分の無価値さに逃亡したくなる。
けど、やっぱり真ちゃんに一緒にいて欲しいと思うんだ。一緒に居たいと思うんだ。
じゃあ、ここで真ちゃんと居たい。と思うならどうしたら私はここで居られる?
私の想いってのはだいぶシンプルになってきた。
そこで終わってもモヤモヤは晴れないんだから次へ進もう。
区切りをつける。
そうだよ、区切りだ。
いっつも逃げて来世だとか黄泉の国だとかに行きたいと思うけど、まずそれをやめてみよう。
逃げ出したいと思う私に区切りを付けよう。
辛くても悲しくても、ここに居るって決めよう。
まだよく分からないことのが大きいけど、これを伝えてみよう。
あ、でも伝えたらめんどくさかったり鬱陶しかったりするかな。
マイナスループ、しんどいなぁ。
「寝てへんで大丈夫なん?」
帰ってきたから荷物を取りに出ると一言目で心配されちゃった。
分かってたことだけど、ホント申し訳なくなる。
「あんな、多分ねまた心が折れてシードラゴンの所や黄泉の国に行きたいってなることあると思うねん」
「うん」
「けどね、それでもそっちに逃げないでここに居たいねん」
「うん」
「真ちゃんはね、光でね、だから一緒に居て欲しいねん。だから真ちゃんが良いよって時になったら真ちゃんちの子にして下さい!」
ほぼ勢いに任せて言った。
そして天使が通る。
その一瞬で後悔の波がやってくる。
「謎思考ストップ」と言って真ちゃんが笑う。
「ありがとう。めっちゃ嬉しい。もちろん喜んで」と続ける。
「けどな、キリエさん」
「はい」
「今のは人生の中で結構重要な一瞬やと思うねんな」
「そう?」
「うん、その重要な一瞬をな、キリエはトイレットペーパー抱えとるしワタシはスーパーの袋持ってるし…出来れば家の中で落ち着いた時に聞けたらありがたかったです」
そう言われてみたら…そうかも。
ま、いっか。笑っとけ。