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Story 73.367日。
「了解ー。お氣をつけてー」夕方、真ちゃんから電話。なんか、きーちゃんと約束があったのを忘れてたから今日は遅くなるらしい。きーちゃん、そんな事言ってたっけ?と思ったけど、きーちゃんは家の事は真ちゃんが管理して教えてくれると言ってたから忘れてるのかもしれない。何の約束だったんだろう。忘れていたことをかなり焦っていたみたいだけど。
きーちゃん達が帰宅したのは、随分と遅くなってからだった。「ねーさん、起きてたの?大丈夫?」リビングでお茶を飲みながらくつろぐ私を見てきーちゃんは心配してくれた。「大丈夫、大丈夫」最近、眠りが浅いから実は普通に日付変わっても起きてたりするんだよね。「遅かったね。真ちゃんは?」「そのままお風呂に入りに行ったよ」
「でも、起きてて良かったー」ときーちゃんはコンビニの袋からケーキを出してくれた。「大人組だけー♡真ちゃん出てからでも大丈夫?」でもケーキ2つじゃない。もしかして、私起きてたらまずかったかしら。「氣にしないで2人で食べなよ」「違う、違う。私のは別にあるのー」と台所で別の袋から何かを取り出している。「何これ?ティラミス?」ティラミスっぽいけど、穴が空いてるし変色してる氣が…。なんか、グロいよ。「ティラミスよー」きーちゃんは鼻歌まじりで楽しそうに何だか変形している容器から慎重にお皿に取り出している。
真ちゃんがお風呂から上がるまでの間、今日の話を聞いた。きーちゃんのバイト上がりの時間前にお店に迎えに来た真ちゃん。いつもは最寄り駅までのお迎えでお店に来るのは珍しいらしい。家に向かうと思っていたら、よく行く展望台に連れて行ってくれたんだって。そこで真ちゃんはこのティラミスにろうそくを立てて「お誕生日おめでとう」って。「でもね、誕生日、明後日なん」ときーちゃんがうふふと笑った。
そうだよね、今日だっけ?って一瞬悩んだ。フライングだよね。「だからね、新しい私の1年は367日やねん」またうふふと笑う。誕生日間違えたなんて、人によっては怒りそうなものだけど。きーちゃんは何だか嬉しそうだから、ナイスフライングなんだろうか。
真ちゃん、ちゃんときーちゃんの誕生日は覚えていたんだけど何故か今日がその誕生日だと思ってしまったらしく会社で仕事中に勘違いしたまま焦り、ダッシュで仕事を終わらせてお店にケーキを買いに行ったそう。残念ながらホールケーキが売り切れてしまっていて、時間を見たらきーちゃんのバイト上がりの時間に近づいてるしでケーキを諦めてきーちゃんを迎えに行った真ちゃん。
展望台に向かう途中に寄ったコンビニでティラミスが置いてあるのに氣付いて、きーちゃんに内緒でこっそりゲット。でも誕生日用のろうそくはコンビニにはもちろん売ってなくて、買ったろうそくなんと仏壇用。「お誕生日おめでとう」でティラミスに仏壇用ろうそくを立てるとか。この時点で、もうおかしくて。火力が強すぎてティラミスが燃えてるみたいになってしまったらしく、そのせいで容器が少し変形してるし、表面に穴があいていて焦げてるところ、白く変色してると思ったのは蝋だったんだ。しかも、そもそも誕生日じゃない。
可笑しい。馬鹿だ。笑えるんだけど何だか真ちゃんらしいなぁ。「だからね、今年の誕生日は今日なん」誕生日を間違われてしまっても、そう言って嬉しそうなきーちゃん。なんか、いいなー。うん、微笑ましいなぁ。
話が終わる頃、丁度真ちゃんがお風呂から上がってきた。1人で空回ってしまった可愛いヤツの為にビールを取りに行こうと台所へ向かう時に「誕生日、間違えたらダメじゃん」と言うと「やっぱバレてた」と頭を抱えてる。真ちゃんも真ちゃんで、可愛いところあるよね。
「キリエこっち食べや」蝋が落ちてるし焦げてるからティラミスは自分が食べると真ちゃんが言うけど、きーちゃんはティラミスの方を食べると言い張る。「せっかく真ちゃんが一生懸命探してくれたのに。返品不可でーす」とティラミスを死守するきーちゃん。こっそり真ちゃんに「ありがと」と言って笑うきーちゃん、やっぱり可愛い。そして、ティラミスとケーキと半分ずつにして食べる2人。別居中の妊婦に何見せつけてくれてんのさ。ムカつくなぁ、もう。
「かーちゃん!すごいで!来て!来て!」クリスマスの朝、マハルとタマキに叩き起こされた。半分寝ながらリビングに行くと、クリスマスツリーの前にプレゼントが積んであった。これはすごい。外国の映画みたい。
「しーーーん、きーーーちゃーーーん!!」マハルが2人を起こしに行こうとするけど全力で止めておいた。クリスマスに珍しく起きるのが遅いとか、ねぇ。「これ、開けていい?」マハルタマキがプレゼントの前でそわそわしてる。うちは、サンタさんからプレゼントをとーちゃんかーちゃんが預かって渡す。というシステムなので起きたらプレゼントが置いてあるというシチュエーションに慣れてない息子たち。マハルとタマキのだったら開けてもいいけど、あなたたちのは今日家に届いたものをとーちゃんが持ってきてくれるから、たぶん違うと思う。
にしても、プレゼントまでインテリアとして飾るとか手が込んでるな。昨夜寝る時は無かったから寝た後にセッティングしてくれたのか。と感心しながらプレゼントの山を見ると、箱に名前がちゃんと書いてある。マハルとタマキ。息子たちのだった。そして私たち夫婦ともうひとつ『Princess』すっごい。なんか、感動。お腹の赤ん坊にまで。
感動している間に、息子たちの姿がない。きーちゃん達の所行った?慌てて追いかける。「いぇーい、新タッグチャンピオンーー」ときーちゃん。息子たちの下敷きになってる真ちゃん。朝っぱらから、色々ごめん。息子たちはきーちゃんに合わせて「イェーイ」とか言ってるけど、すぐに捕獲。「大丈夫、私は間一髪のところで起き上がったから踏まれたの真ちゃんだけ!」ホンマ、ごめん。
「来て!来て!来てーー!」とマハルは真ちゃんを叩き起こし、リビングへ連れて行く。滑り台の一件からマハルはきーちゃんだけでなく真ちゃんも大好きになり2人の後ろを付きまとっている。「マハル、自分の名前わかる?」と真ちゃんに言われマハルはドヤ顔で自分の名前が書かれた箱を見せた。「やるな、タマキって書いてるのはどれ?」引き続き弟の名前がある箱をドヤ顔で見せる。「よし、これタマキに渡したり。じゃあかーちゃんのはどれだ」あ、これ分かるのかな。『かーちゃん』って書いてないぞ。「これ!(`・ω・´)」「正解!かーちゃんに渡したり」と言われて持ってきてくれる。「次、とーちゃんどれだ」ちょっと難しいかな?私たちのは漢字で書かれてるからなー。「これ!」「正解!これはとーちゃんが来たら渡すねんで」「ほかのは?」「じゃあ、キリエのはどれだ」きーちゃんのを見つけてきーちゃんに渡しに行くマハルとタマキ。「これ、えいごかいてる!」流石に『Princess』は分からないかー。「まだおるやん。マハルとタマキの妹な」「産まれたら渡すん?今?」「かーちゃんに渡しときー」息子たちはサンタさんのお手伝いと言って嬉しそうに再びプレゼントを持ってきてくれる。「しん、プレゼント、ふたつあんで」「ひとつは真ちゃんのじゃないの?」と言ってみると2人はどっちが真ちゃんのか悩んでる。「ひとつえいごやからこっちがしんのヤツ!」ひとつ英語?残った大きな箱を見ると『brothers』「これってもしかして、この子ら2人に?」「当たり」2人にと聞いて、息子たち大喜び。開けるとジャングルジム。この間、買い物連れて行ってもらった時見つけて欲しがってたヤツだ。
この様子を昼過ぎに到着した旦那に言うと呆氣に取られてる。「来年のクリスマスのハードル、上がったで」と言う。うん、それ思った。来年からどうしようか。むしろ毎年こっちでクリスマスを過ごしてやろうか。笑けど、息子たちから旦那のプレゼントを受け取ると嬉しそう。ちなみに旦那にはお酒と私には欲しいと言っていたストールとマッサージクリームでした。ここのサンタさんは、好みをよく分かってらっしゃる。息子たちは、我が家に来たサンタさんからのプレゼントももらって嬉しそう。そりゃ、プレゼントいつもの倍だもんね。
旦那は今日からお正月休みで年明けまで滞在予定。ホントに実家に来たようだわ。「明日の大掃除はキリコの分まで働かせていただきます」と旦那。明日は1日かけて大掃除するらしい。「美樹ちゃん疲れたやろ、ゆっくりしててねー。家族水入らずで楽しいクリスマスをー」ときーちゃん。今から2人で仕事に出かけて夜は遅くなるらしい。
2人を見送って、息子たちはお昼寝中。ようやく一息。「あの2人、一応新婚さんで良いんだよね」ふと思った。「何?いきなり」「何か変なのーって」「変なのって何やねんな」旦那は笑うけど、新婚さんやらご夫婦やらの単語って似合わないなーと思って。「それはキリコが慣れてないだけちゃうの?」そうなのかしら。さすがに慣れるでしょ。
「そういえばきーちゃんどないなんよ」「記憶がおかしくなる話?」「そう」日常生活に困るような感じはなさそうだけど。「大丈夫なんやったらええねんけどな」ここに来る時にきーちゃんから聞いたことを話していたから、旦那も心配だったみたい。確かに物忘れというかスコーンと記憶飛んでいるというか、何かをしていたこと自体忘れるということはあった。それは、家の掃除だったから2回掃除機をかけただけで何か支障はあったわけじゃない。
夏、検査をしたけど脳に疾患があるわけじゃないそうでその時はやっぱり精神疾患を疑われた。記憶が曖昧になるのは小さい頃からと言ってきーちゃん自身もメンタルなお薬の投薬治療はしたくないと結果様子を見るしかないよね。と現在に至るらしい。
「小さい頃からっての厄介やなぁ。それが最近また出てきてるってのもアレやな」「また出てきたわけじゃないって」私たちと生活していた時も、時々あったと言う。学校から帰る時によく電車を乗り過ごしていたのも、降りる駅が分からなくなったり、そもそも自分は何で電車に乗っているのか分からなかったり、定期券に氣付いて書いている駅で降りたもののどこへ向かえば良いか分からず駅で数時間過ごしていたから。夜中、氣付いたら家の外に出ていたこともあったらしい。幸い家の近所だったから帰ろうとしたら、真ちゃんが迎えに来てその時に自分でも分からないけど外に居たことを話した。元々一緒の部屋で寝ることはあったけど、その時からまたフラッと出て行かないよう必ず真ちゃんの部屋で寝させてもらうようになったと言っていた。
もっともっと幼い頃から時々記憶が曖昧になる事があって。きーちゃんの中には自分が経験した体感のある記憶とそうでないものがある。と言う。そうでない記憶は、間違いなく自分がやっているけど『ドラマや映画の話を知っている』と同じ感じの『自分がこうしていたと知っている』この感覚は、きーちゃん本人しか多分理解出来ないんだろうと思う。自分の行動に自身の感情が伴っていない記憶。と言うんだろうか。「自分の人生の中でこんなことがあった」ということが自分の思い出ではないらしい。
「その辺りよう分からんな。難しい」「私もきーちゃんから聞いたけど、分からなかった」「あかんやん」きーちゃんはよくフラッシュバックして混乱していたのも、この記憶が曖昧になる影響なんじゃないかと思う。普通は、何日も何ヶ月も前のことを詳細に覚えてるなんてことはほとんどない。よっぽど印象に残るようなこと以外。けど、きーちゃんは何ヶ月どころか何年も前のことを昨日の話のように話すことがあった。
『ある出来事』というパーツが繋がって人生のタイムラインになっているとしたら、普通なら過去から順につながるところがきーちゃんはその『ある出来事』のパーツがきちんと繋がっていなくて、何年も前の『ある出来事』のパーツがいきなり手前に来てしまうことがある。「その説明よく分からん」と旦那。私もちゃんと理解出来てるわけじゃないけど。これがしっくり来ているから仕方ない。
「とにかく、きーちゃんの『記憶』ってのはバラバラなんじゃないかな?ちゃんと繋がってないから空白が出来たりしてそれが『記憶が曖昧』になるみたいな」「何で?」「何でと言われても分かんないけど。エミさんはね、きーちゃんみたいな感覚やチカラを持ってる子が普通に馴染めるわけないからその分トラウマにもなるだろうねって。」「トラウマあったらどうなんの」「『トラウマになる辛い思い出』ってパーツをきーちゃんのタイムラインから外すの。外すだけで無くしたわけじゃないから外したパーツは残ってるじゃん。だから花火だったり思い出すきっかけの出来事があるとその外したパーツが『今』のきーちゃんの場所にはまってフラッシュバック」言ってて自分もよく分からなくなってきちゃった。もう、ニュアンスで理解して。と言いたいけど旦那は頭を抱えてる。絶対ややこしい話を振ってしまったとか思ってるでしょ。私もややこしいって思うもん。
「で、結局どうしようってことなってん?」「だから、様子見だよね」「解決ならんやん」「そうだよ。誰もどうしたらいいか分かんない。だから真ちゃんが今試行錯誤してる」「難儀な…」ホントそれ。きーちゃん自身、何も悪くないから余計にややこしい。結局のところ、何が原因かもどうしたらいいかもわからない。きーちゃんは「そういう体質だって思って付き合うかー」と言う。
人と違う感覚を持ってるってだけで大変だと思うのに、そのせいで記憶障害や氣分障害なんかの二次障害も出ていて。思ってたよりも、ずっと深刻だった。
2人が帰ってきたのは日付が変わってからで、帰り途中できーちゃんは体調崩してそのまま寝室に。時々あることだと真ちゃんは言うけど、顔色が悪いし歩けないくらいってよっぽどだと思うけど。
最近のきーちゃんは体調も落ち着いてるものだと思い込んでいたけど、寝込む頻度は昔とそんなに変わらないらしい。里帰りで来てから元氣だったんだけど、こっちのが珍しいとか。
「なんや、2人とも大変やな」きーちゃんはきーちゃんで寝込むし、真ちゃんはその看病あるしで旦那が言うけど真ちゃんは全然苦にならないと言う。曰く「元氣なのが一番やけど手がかかった方がいい」と。分からない。きーちゃんには自分(しんちゃん)が必要なんだと実感出来るし、きーちゃんにも真ちゃんが居ないとダメなんだと思って貰えるから手がかかればかかるほど良い。それに寝込む姿は自分だけが見られる特権だ。と言うけど、分からない。ホント、この人やっぱり屈折した変態だわ。別に寝込まなくたってきーちゃんは真ちゃんのこと必要としてると思うけど?
「寝てなくていいの?」晩酌タイム中、きーちゃんが起きてきた。まだ顔色は悪い。「なんか寝られないからこっち来た。風邪じゃないからこっちいていい?」きーちゃんの必殺技が出たら、ダメだって言えるわけないじゃないの。「今日、ちょっとハードやったから果てたー」と言う。サンタさんからのプレゼントのストールに一緒に包まる。ちょっと嬉しそうに私にひっついてるきーちゃんがかわいい。体調を崩している時、寂しくなってみんなの居る所に来るのも変わらないね。甘えたモードのきーちゃん、今日は真ちゃんじゃなくて私の所に来ててちょっと真ちゃんに勝った氣分。「そうだ、今日ねお菓子貰ったんだ」と言って持ってきてくれる。「大人組だけ特別ー♡」チョコレートの詰め合わせ。これ息子たちが見たら全部食べたがるな。てか瞬殺で無くなる。きーちゃんも大人組に仲間入りしてるの嬉しいわ。「年越し、ねーさんと居るの初めてじゃない?」ときーちゃん。ホントだね。何だかんだで、きーちゃんずっと年越しはおばあちゃまのお家にいるもんね。楽しみになってきた。