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Story 77.新しい友達。
誰がこの展開を想像出来ただろうか。姪の興味は、完全にきーちゃんに移った。きーちゃんに食事を用意してた真ちゃんが戻ると、姪はマシンガンの如く真ちゃんに明日きーちゃんと遊んでいいか聞いている。「束縛すんの絶対ダメだって!逃げられるよ?」とか力説してるけど、意味不明。
結局、真ちゃんはきーちゃんが行きたいなら別に良いけど、今日倒れた所だから絶対無理しないという約束で明日2人は遊びに行くことに決定。姪は速攻で携帯を取り出して友達に電話し始める。
姪曰く、同い年の子があと4人集まって、旦那の職場近くのカラオケに行く予定らしい。カラオケだったら変なことにはならないはず。けど、心配だーー!本当、大丈夫なの?おそらく、私も旦那も真ちゃんも一抹の不安がよぎってる。きーちゃんの人見知りちゃんは多分治ってないだろうし、何人も部屋に集まるとか。
姪が提案した通り、旦那が仕事が終わる18時過ぎにきーちゃんを迎えに行くことになった。そして、姪は昼過ぎにやってきた。「いってきます」と嬉しそうにきーちゃんは出かけたけど、正直、不安しかない。
私も、真ちゃんもその数時間ソワソワ。大丈夫何だろうか。土地勘もない所だし。あの子の一味なら何も考えずに絶対ファストフード食べるし、きっと同じタイプの子が集まるはず。色んな意味で刺激が強すぎてきーちゃん熱出さないかしら。旦那の仕事が終わる1時間前、旦那から電話がきた。旦那も心配過ぎて1時間早く上がって今から迎えに行くという。私たちも買い物ついでに出て合流することになった。
旦那が姪に連絡をしてくれて、私たちが行くスーパーのフードコートで待ち合わせ。フードコート…危険な香りしかしない。思った通り。見つけたけどハンバーガー食べてるよ、みんな。きーちゃん大丈夫なんだろうか。「よっちゃん!キリってばどんだけお嬢なん!」旦那を見つけた姪が叫ぶ。キリ?きーちゃんのこと?「キリの旦那ってどっち?若い方?」「カッコいい?」「王子な格好しとる思ったら普通の格好やん!そこは合わせて王子な格好しな!!」とかお友達が盛り上がってるし。王子な格好って何?真ちゃんが王子な格好したらコントだよ。うちの旦那、若くなくて悪かったわね。
流石にハンバーガーは食べてないきーちゃんはクレープを食べていて、私たちに氣付いて小さく手を振る。クレープって選択がかわいいよね。「きーーーちゃーーーん」突撃するマハル。今日一日遊ぼうと思ったらきーちゃん出かけちゃってずっと機嫌悪かったから怒るかと思ったら女子たちに「かわいい」と言われデレデレのマハル。母はあなたの将来が少し心配になったわ。
「ほとんどスーパーにも1人で行かないってホント?なんで?お手伝いさんがいたりするの?」「家事もほとんどしてないとか言ってたけど普段キリって何してんの?」「キリってうちらみたいな格好絶対似合うと思うねんけど、したらあかんの?」次々と女子ズから質問が飛んできて戸惑うわ。女の子慣れしてるはずの真ちゃんも若干ひいてる。旦那もひいてる。
男の子もいたらどうしようとか思ったけど女の子ばっかでちょっと安心。でも騒がしい。この年頃の私や加奈子ってこんなのだった……かもしれない。
きーちゃんと同年代の子には、きーちゃんの生活がとても興味あるらしい。まあ、別世界だもんね。今さっきハンバーガー食べてたと言うのに「出たついでに食事して帰ろう」と旦那が言うとちゃっかりついてくる氣な姪。おいおい。けど、きーちゃんが「ゆうちゃん達も一緒にご飯食べたらあかん?」と旦那と真ちゃんに必殺技を繰り出すものだから速攻落ちる2人。きーちゃんの必殺技のレベル確実に上がってる。恐ろしい子!さすがにフードコートで食事は出来ないので分乗して別の店へ。「きーちゃん食べられるのどれや?」と先導すると言った割に頭を抱える旦那。昨日、自分の目でお店や食べ物で体調を崩すのを見たせいか慎重になっている様子。どこが良いか悩んでいるときーちゃんから着信。さっき通り過ぎた店はどうかと言うけど、そのお店は氣にはなってたけど高そうで行ったことないお店。笑クレジットカード持ってきてるし、清水から飛び降りるか!と決めてそのお店に入る。姪達もついて来ると言ってやらかした!と言う表情。若い子っぽくてかわいいわね。「大丈夫、よっちゃんが何とかしてくれるよ」と姪にコソッと言うと湧き上がる歓声。ホント若いわね。
きーちゃんの体質的に食べる物にも氣を使わないといけないと氣付いた真ちゃんは、二人で暮らしだして少し経ったくらいから仕事で行く先の農家さんに頼んで限りなく自然に近い物を作ってもらうようにしているし、その他購入する物にも氣を使っているとのこと。そんなこと氣にせずうちに来た時スーパーで普通に買い物してたわ。「言ってくれたらいいのに」きーちゃんが氣を遣わせると申し訳ないからと固く口止めされていたらしい。もしかしたら、一緒に暮らしていた時の体調不良の原因のひとつだったのかも。そこまで意識が回らなかったな。「それは仕方ないで。俺かて氣付いたん2人で暮らしだしてからやし」にしても、だからと言ってわざわざ作ってもらうとかすごいな。「全部が全部なわけちゃうで。普通にスーパーにも行くし」だから氣付かなかったと言い訳しとこ。そんなきーちゃんは女子ズと楽しそうに笑っている。同じ年頃の子達と居る姿はやっぱり新鮮で、真ちゃんも嬉しそうな表情をしていた。
「またこっち来たら連絡ちょうだいねー」とか言われて和やかに解散。お食事は全部真ちゃんがご馳走してくれて、自称きーちゃんの両親の威厳は無し。けど、こういうのは遠慮なく受け取るタイプなので氣にせずに甘えた。笑
「楽しかった?」聞いてみる。「楽しかったよ♪すっごいパワーだよねー。圧倒されちゃったー。私も元氣になりそう」楽しかったなら良かった。「友達って言ってくれたよ♪」カラオケに行き倒しているらしい姪は、カラオケ店の人と話をしていてきーちゃんのことを「うちらの新しい友達」と言っていたらしい。きーちゃんがとても嬉しそうに話してくれた。みんな嫌な色も音も無くて、純粋なエネルギーが飛び交っている感じだと言っていたから、純粋にちょっと足りない子なだけかもしれない。姪を捕まえてなんなんですけどね。
帰って子ども達も寝て一息ついていたら、姪のみやってきた。「これね、言ってたやつ。明日帰るって言ってたから持ってきた。ぜーったい似合うって!」と大きな紙袋を置いて「今から彼氏んち行くから!」と言って嵐のように去っていった。うん、確かにすごいパワーだわ。「これ何?」「ゆうちゃんがね、一回チャレンジしてみたらいいよって。もう着ない服あげるって言ってくれてん」そういやさっきも言ってたけど、由佳だからゆうちゃんなのね。(今更納得)袋から出す。うわー、めっちゃきーちゃんと真逆な…。流行りの服が何着も入っていた。これ着たら露出し過ぎじゃない?と思うのは歳のせいなのかしら。旦那と真ちゃん絶句。でも、わざわざ届けにだけ来るとか意外と良いやつ?
試しに姪が持ってきた服を着せてみて、メイクも合わせてバッチリしてみた。「こういう服着ないからなんかドキドキするー」ときーちゃんは楽しそう。いつもとテイストの違うメイクに挑戦出来るから私まで楽しくなってきた。
見せたら再び旦那と真ちゃん絶句。姪たちが言ってた通りで意外と似合ってると思うんだけどなぁ。脚が綺麗だから、超ミニスカートもすごく映えるし。ブーツも履かせたくなるな。「いややぁーー、いつものキリエのがええわー。そんな格好したら嫌やー!」「そんな短いスカートはあかん!腹冷えるで!」しばらく絶句した後、2人は同時に全否定。あなたたち、何言ってんの。旦那、おっさん丸出しな発言よ、それ。
「やっぱこの格好は可愛い子じゃないと可愛くないんだよ」ホラ、さっきまで楽しそうだったきーちゃん明らかにテンション下がってるじゃない。「ちゃうねん!キリエは何しても一番可愛いいねんで、でもいつものが最高に似合ってるってことやからな」真ちゃん、自分の嫁によくそんな事恥ずかしげも無くシレッと言えるね。「着替えてくる。ついでにお風呂入るね」ショボーンとしたままきーちゃんは奥の部屋へ。真ちゃんもきーちゃんを追いかける。「ほら美樹達があんな反応するからー、きーちゃんかわいそうー。あの反応はかなりショックだと思うよ」「そんなん言うてもさー」「あーあ、悲しすぎて寝込むかもねー」微妙な反応が相当ショックだったのか、それともなだめられてるのが時間がかかっているのかお風呂に入りに行く氣配がない。「ほらー。きーちゃんかわいそー。明日マハルにきーちゃんいじめたって斬り捨てられるわー」2人ともマハルに斬り捨てられるがいいわ。言いつけてやる。
少しして、ようやくお風呂に入ったきーちゃんが戻ってきた。けど、やっぱりショックだったらしく、表情が暗い。「大丈夫、可愛かったよ。美樹はおっさんだから若い子の感性が理解出来ないだけやし、真ちゃんは屈折した変態だから流行りの格好が自分の好みじゃないだけだから。他の若い子だったら絶対かわいいって言うよ」と言って、アイスを渡すとようやく笑うきーちゃん。「美樹ちゃんはおっさんじゃないよー」「じゃあ、おっさんやめてお父さんにしとこうか」と言うとまた笑う。ホント、世話の焼ける人ばっかだな。「誰が屈折した変態やねん」とブツクサ言う人が居るけど、私のかわいい妹を泣かした罰でスルーしておいた。
予定では2泊してきーちゃん達は帰る予定だったけど、帰る日の朝きーちゃん熱を出してダウン。やっぱり昨日刺激が強すぎたんじゃ…。
起きてきた2人はきーちゃんが具合が悪いことを隠そうとしていたけど、さすがに私もそこまで鈍感じゃない。「私運転できないから乗ってるだけやし大丈夫」と言って帰る支度を始めたけど、そらもう一泊、せめて熱が下がるまで引き止めるよね。旦那も心配してもう一泊していけと言って出勤した。父の一声は偉大できーちゃんはおとなしく「もう一泊お世話になります」と言ってお布団へ。「いきなりまた迷惑かけてごめんねー」お布団の中できーちゃんがやっぱり謝る。だから、そういう時は『ありがとう』の方が嬉しいって言ってるのに。
それに、もう一泊してくれるしきーちゃんは寝ておかなきゃいけないのをいい事に真ちゃんに締まりにくいドアの補修頼めたし、高い所の窓も拭いてもらったからむしろラッキー。
マハルとタマキは久々に登園したし、娘も寝ていて静かだ。
きーちゃんに聞くと、夜中から調子が悪くなったらしい。真ちゃんももう一泊できるよう私達に言うと言ったけどきーちゃんが内緒にしておいて早めに帰れば大丈夫だと言ったらしい。氣にしなくてもいいのに。マハルたちは夕方まで居ないから今のうちに休んでおくんだよ。
きーちゃんの充電方法は相変わらずで、様子を見に行くとソファーで座って本を読む真ちゃんにくっついて寝ていた。「絶対昨日飛ばしすぎたんやで」と真ちゃん。私もそう思う。「卒業してから同年代の子らと過ごすのも滅多に無いからなぁ」と言う。
きーちゃん自身が元氣が有り余っている時は、多少人が多い所へ出かけてもファストフードを食べようとも平氣だけど、最近特に家の仕事に重点を置くようになってからその辺りが敏感になって、自分の体調がよくわからなくて見当がつかないからと遊びに行く約束をするのを控えてると言う。
「由佳ちゃんの言うこともよく分かるねんけどなぁ」心配で過保護になってしまうらしい。卒業してすぐに学校関係の友達らと遊びに行った事があって街中に出たことや沢山の人数で集まったせいか帰ってきて倒れたらしい。
「キリエの事をあまり良く思ってないメンバーも居たらしくてな」きーちゃんが意図しなくても、どうしても他人の念を受けやすいらしい。羨望の念だけでなく憎悪だったりネガティブだと言われる念を受けやすくて、そうなると身体だけでなく精神的にもダメージを受けてしまう。
きーちゃん自身、それを理解して対処して行こうと努力はしているもののすぐに何とか出来るようになるというわけにいかなくて、きーちゃんが楽しみにしていようが、相手に悪意が無かろうがこうやって寝込んでしまう。
明らかにネガティブな想いを向けられている方が警戒できるけど、その想いを向けている本人すら氣付かないものまでダイレクトに受け取ってしまうから大変。
「何でそんなに羨ましいとか言ったのを向けられるわけ?」確かにね、客観的に見たら自分のことを本当に大事にしてくれる人がすぐ近くにいるってのは羨ましいことかもしれない。でも、体調を崩すほどの悪意を向けられる事なのかと。「言うたやん、キリエは姫さまやって」うん。恥ずかしげもなく言ってたね。
きーちゃんのような『お姫さま』だったり『王さま』『お殿様』『女王さま』いわゆる貴族みたいな特別な位にいる人ってのは、現代でも居るらしい。それは生まれた家庭の話ではなく、その人の魂がそうなんだって。そんな人が、それに相応しい家に生まれるとそこまでは不具合は無いけど、そうでない一般市民の家に生まれる人の方が圧倒的に今は多い。だからきーちゃんみたいに難儀してる人は多いと思うと真ちゃん。
高い位が良いとか、位が低いからダメではなくて、それこそ適材適所でそれぞれの位でやるべきことがある。それでもやっぱり高い位に居る人と言うのは羨望の眼差しを受けるわけで、それが転じて妬みや嫉みになる。
「夏のコンビニみたいなもんよ」「なにそれ」「明かりに釣られて来た虫がべったり窓に張り付くやろ。アレやアレ。コンビニの明かりみたいに光って見えるんやろな」「やだー」想像したら氣持ち悪くなってきた。けど、納得。確かに光に引き寄せられるって感覚は分かるし、位の高い人はどうしても色々な感情を向けられやすいのも分かる。私もきっときーちゃんの光に惹かれて出会ったんだ。妬み嫉みは無いけどね。
「キリエは姫さまってよりなんやろ、巫女さんとかもっと宗教的な…神さんにもっと近い感じかなぁ」多分、きーちゃんはずっと普通の人よりも神さまに近い所で生きていたと言う。今のきーちゃんではなく、過去のいろんなきーちゃんが。人であって人でない位置。人としての喜怒哀楽を許されない存在。そういえば、アキちゃんもそんなことを言ってたな。アキちゃんの場合、もう一段ぶっとんで現人神とまで言ってたけど。やっぱりこう言ったことに明るい人にはそれが分かるんだろうか。
それを聞いて、なんでここまで不器用なんだろうと思っていた疑問が解けた氣がした。きっと、ようやく普通の人として生きるチャンスがやって来たんだろう。だけど、やったことが無ければすぐには出来ない。だからこんなにも人間らしい感情について試行錯誤しているんだろう。
「だからって、キリエはすごい選ばれた人間だ、崇め奉れと言ってるわけちゃうで」分かってるってば。私もそこまで馬鹿じゃない。「でも前にアキちゃんも同じようなこと言ってたよ」真ちゃんとは逆にひれ伏せばええねんと言ってたけど。アキちゃんが言ってた『現人神』の話をしてみると「まあ、アイツらしいっちゃアイツらしいけどな」と苦笑いしつつ、「神よりも人間としていて欲しいわ」と呟いた。それはね、私も一緒だよ。だから、きーちゃんが人間としての道を選択してくれたのが嬉しい。
時代が時代。もっと見えないものが身近にあって畏敬の念が当たり前に浸透している時代ならもっと生きやすかったかもしれない。そう言った人たちの持つ感覚や力がきちんと能力として認められる時代だったら。けど、今はオカルトだとかカルトだとかと怪しまれ排除されてしまう。普通の人として生まれてきたら、余計にその力は疎《うと》まれ蔑《さげす》まれてしまう。だから生きていく間に学習して、その感覚や力を消して行ってしまう人が多い。それが良かったのか悪かったのか分からないけど、きーちゃんはこの歳までそこまで能力が消えることなく持ち続けた。そのことに苦しんだり悩んだりしながらも、その能力を必要とする所にたどり着いた。だから私たちが無理してるとか頑張りすぎだとか思う位でもきーちゃんは自分の力を使うべき所で使っているんだ。
「真ちゃんもさ、そんな仕事するくらいだから高い位の人なん?」きーちゃんと同じ所にいるもんね。何なら色々教えてるし、面倒みてるし。「いや。この話で行くと普通の位。一般庶民です」あれ?そうなの?何か拍子抜け。「近くに居ることは出来るけど、同じ位置ではない。使用人とか奴隷とかお付きの人間とか言った方がイメージしやすい?」お世話する人ってこと?「『本来』はな」エライ『本来』を強調するじゃない。「言うたやん、『時代が時代なら』って」うん、言ったね。「『現代』のメリット」意味分かんない。「本来なら近づいてはいけない、近づけないような人と対等になれるのが『現代』のメリットやと思うねんな。本当の所は対等でなかったとしても」だからきーちゃんと話せるし、触れることも出来る。きーちゃんが自分を必要としたからこうやって過ごすことが出来る。と言う。
私や旦那が過去どうやってきーちゃんと関わっていたか今は分からないけど、自分は何度もきーちゃんと関わっていた。けど、きーちゃんは常に自分とは違う立場に居て話すことすら出来ないこともあったし、話せたとしても今のように接することは許されていなかった。そういやきーちゃんがおそらく前世だと思われる話をした時、その時の真ちゃんはお付きのようなポジションで普通に話をしたくても必要以外話をしてくれなくて寂しかったって言ってたな。なら、きーちゃんも今こうやって一緒に過ごせることが嬉しいならいいなと思った。
「ようやくここまで来てんなー」確かに世話がやけるといえば世話がやけるし大変だと思うこともあるけど、これまでのことを思ったらそんなのは大したことじゃない。世話をすることが出来るのも嬉しけど、何よりすぐそこに居るし、話をして笑いあったり触れることもできる。ずっと自分だけのものにしたかったのに叶わなかったのがやっと今叶った。多少の難儀なんて氣にならない。と言ってきーちゃんを見る真ちゃん。
でもそれは自分にとってはメリットだけど、きーちゃんにとっては生きづらいという最大のデメリット。だから、きーちゃんが少しでも在るべき姿でいられるように出来ることをしようと思ってる。と言う。
「って、コイツきもーい!とか思ったやろ」せっかくカッコいいこと言ってたのに、何でそう話を締めるのよ。もう!「大丈夫!そんな話、私大好物だから!」「大好物って何やねん」と笑う。「前世とかそういうのでしょ?じゃあ真ちゃんは何年も何百年もずっと出会う度にきーちゃんを想い続けたってこと?」「まあ、そういうことになりますね」「ほんっと、そういうの大好物!」
「私がきーちゃんとどう関わってきたかって真ちゃん分かるの?」分かるなら教えてほしい。「どうやろうな。分かる時もあるし分からん時のが多いなぁ。その時必要なら分かるねんけどな」誰かに見てもらうのも有りだけど、その人にとってその『記憶』が必要なタイミングであれはその頃の『記憶』は現れるらしい。自分の記憶のように、その時の『一生』が一氣に自分の中に入ってくるんだって。
私が前に寝込んだ時に見た夢の話をした。きーちゃんだと思う可愛がっていた小さい女の子。その子の成長が見られないならせめて幸せになって欲しいと願ったこと。きーちゃんが同じような夢の話をしたこと。「ああ、言うてたな。キリコも見てたんや」ちょっと意外そう。
「これを言ったらオマエがさっき言うてたんは何やねんって言われそうやけどさ、多分意味はないんやと思う。ただそういう縁と想いがあったってだけ。でも、その想いがあるから行動が出来るみたいな」なんか、納得。何の意味があるんだろうって思うけど、ただきーちゃんが幸せでいて欲しい。それで良いんだ。それに、今はこうやってきーちゃんが成長していく姿を見ることが出来てる。私たちがどんな縁で繋がっているのか知りたくなるけど、そこまで考えなくていいのね。
「きーちゃんがさ、真ちゃんが全身青の旅人って言ってたでしょ?あれ何?」着けていたマントが藍色で、きーちゃんのいう通り色んな場所を旅をして回っていたという。ある国で奴隷と間違われたから逃げ出して殺されかけた時に、神官のきーちゃんが助けたらしい。神官と言う名の生贄になるのを待つ人だったきーちゃん。その世界ではその事はとても地位も名誉もある事で生贄になる事に対して誇りを持っていたけど、神域から出ることは許されず、見たことのない世界に興味を持って知りたがった。旅してまわった場所の話をすると楽しそうに聞いていた。「多分、それが始まりだと思う。そこからかな」
外の景色を知りたくて仕方ない女の子は、よその国の話をすると目をキラキラさせながらもっと他の話をせがむ。それがとっても可愛かった。また奴隷と間違われてしまうといけないからと自分が生贄となる時まで我慢してくれと自分の教導者としての身分を与えた当時のきーちゃん。自分が生贄となって国を守ることの引き換えに自由にこの国から出られるようにすると言っていたそう。教導者として付いていると、神官であるきーちゃんはとても国の人から尊敬され愛されてることを知った。なのに生贄として命を捧げなければいけない。その国の風習や観念としては理解できるけれど生贄として彼女が命を落とさなければいけないことに疑問を持った。生き永らえて一緒に国を出る事は出来ないのかと思って「自分が生贄となって命を落とすことに疑問を持たないのか。もしも疑問があるならこの国を一緒に出よう。色んな景色を見よう」と言ってみた。神さまの元に行くことに何の迷いはない。とても誇りに思う。こんなにも自分のことを愛してくれる人たちの為にもなるならこんなにも嬉しいことはない。けど、もし、違う自分の時にまた会えたらその時にたくさんの景色を見せて欲しいとその時のきーちゃんは言ったそう。
何世紀もの片思いってこと?やっぱり大好物だわ。
だから、今、色んな所に行ってたんだ。きーちゃんも覚えていない約束をちゃんと果たしてるんだと思ったら、自分のことじゃないけど何だか泣きそうになった。
「で、どうなったの?」「彼女は生贄になったよ。生贄が現世に想いを残さず神の元で働けるようにって、ワタクシは滅多打ちにされて殺された挙句、野ざらしの道端に捨てられました。多分、民衆は変な想像したんやろうなぁ。神官に手を出すように思われたんやろか」「まあ、過去《前世》って言われても真ちゃんは真ちゃんだからね。思われたんじゃないの?誰彼構わず節操なく手を出しそうだったんでしょ」「ひでぇwww」
最期の姿まで思い出すのか。それはちょっと嫌だなぁ。悲惨な最期なら思い出さない方が幸せかもしれない。
「それって何時代?」「何時代やろなぁ。分からん。どの国かすら分からん」そんなものか。でも、きーちゃんが話してたことや今日の真ちゃんの話を照らし合わせるとかなり古い時代だよね。生贄だもんね。その頃から2人の縁は続いてるのか。そら、特別な存在になるな。うん。これはもう仕方ないか。
途中、娘が起きてミルクをあげたりオムツ変えたりあやしながらだったりしながら、真ちゃんが覚えてる『過去』の2人の話を聞いた。
性別が逆転していたり同性だったり年齢が逆転していたりはするけれど、近くにいるのに近づいてはいけないそんな距離ばかり。近づけたとしても、想いは叶わない。きーちゃんの事を守るのが役割なんだろうと、毎回守る役割ができて幸せではあったけど、やっぱり自分だけのものにしたい氣持ちも募る。「よく考えたら自分でもおかしいんちゃうの?とか前世とか持ち出してキモいって思うけどな。しゃあないやん」と笑う。
きーちゃんも「ようやく」と言っていた。「ようやく」と言った意味が繋がった。こんなにも物語のような、それよりも惹きつけられる話だった。「きーちゃんは覚えてるん?」「いや、断片的に前に言うてたみたいに見てるかもしれんけどちゃんとは知らんのちゃう?」それもまた報われないね。もし、きーちゃんもその『記憶』を思い出したらまた2人は変わるのかな。
「それを知ってるからって幸せって事にはならんからなー。知らん方が幸せってこともあるし」まあ、ね、うん。そうだけども。