-
- Jujuの書庫
- Story & Another story
- Story 84.家族写真。
Story 84.家族写真。
また春が来て、きーちゃんから送られてくる写真を貼るアルバムはまた新しいものになる。「今は、来世に行く為の場所じゃなくて、知らなかった景色を見に行ってる。この国だけでもいろんな風景があって楽しい」と書かれていて、そこに写るきーちゃん達はとても幸せそうで嬉しくなった。
海だったり山だったり。はたまた賑やかな街の中、のんびりとした場所。遊園地、スキー場。お家で制作しているところ。真ちゃんとお茶をしているところ。「ねーさんが弾いてたの見て弾きたかった」とキーボードを習いに行ってその発表会。ライブで歌う姿。楽屋でみんなで寛ぐ姿。おばあちゃまやおじいちゃま。真ちゃんのパパ。そして真ちゃんと。幼い頃からきーちゃんがきっと想い描いていた、当たり前の幸せな日常がたくさん切り取られている。
お教室からお客さんとして仕事を依頼する人も居て、時々こっちに来る。その時はもちろん、宿は我が家。「仕事で来てるか遊びに来てるかわからん」と真ちゃんが笑う。「だってうちはきーちゃんの実家だしー」お父さんお母さんにしては頼りないかもしれないけど、私たちは自称もうもう一人のお父さんお母さんだもん。来るたびに小さかった女の子は、髪も背も伸びてたくさんの幸せなお土産話を持ってきてくれる。会うたびにしっかりして、大人になった。
「月末、いつから来んの?」と旦那に聞く真ちゃん。旦那が独立するにあたり、関西の店のオーナーに色々と教えてもらいつつ店の手伝いをするためにしばらく単身赴任予定。その間、部屋を借りようかと言っていたけれど、真ちゃんが「うちで泊まればええやん」と言ってくれた。本当は私たちも一緒に行きたかったんだけど、私の仕事がある為断念した。「美樹だけずるいわー」「連休に遊びに来たらええやん」「そうだけどー」ホント、私も行きたかった。
「なんで美樹と寝なあかんねんwwwおっさんと寝るとか無いわ」この間はきーちゃんと一緒に寝られなかったからリベンジ。旦那に真ちゃんと一緒に奥の部屋で寝てもらうと宣言したら早速苦情が来たけど、無視した。きーちゃんは、旦那のことを「おっさん」と言われてめちゃくちゃウケてまた呼吸困難になっている。私だってきーちゃんと寝たいし、普段一緒に寝てるんだからひと晩くらいいいじゃない。案の定、マハルも「きーちゃんと寝る!」とベッドに乱入してきたけど、寝た瞬間に自分のベッドに移動させちゃった。
「さっき、私の実家って言ってくれてうれしい。ありがと」お布団に入るときーちゃんが言った。「嬉しいって言ってくれて嬉しい」きーちゃんに行った所の話を聞いたり、バンドの話を聞いたり、私たちの家族の話をしたり。お邪魔虫の居ないベッドでの夜更かし。
「輪廻転生の話、覚えてる?」ときーちゃん。覚えてるってば。「この間、真ちゃんが話してたよ」おっと、ついにきーちゃんに話したのか?「なんて?」「色々回るのはね、来世へ行く場所を探すためだって言ってたけど、本当はもっとずっと前に色んな景色を見に行こうって約束してたからなんだよって。来世に行く為の場所を探すんじゃなくて、過去の約束の為だったんだ、ごめんなって」きーちゃんは少し嬉しそうだった。「それの方がいいなーって思って。だからね、今世で約束クリア出来るくらいたくさん行こうねって約束したん」きーちゃんは来世ではなく、今に希望をもつことができたんだと思うと嬉しくなった。
遥か昔、幸せであるようにと願った女の子は幸せになったみたいだ。そして、これからも幸せであるように。もちろん、今度はその幸せの中に私たちも一緒にずっと居続けるつもり。
「連休にこっちこれる?」「行くよ。単身赴任ってさみしいもんw」「あのね、、、」加奈子からの提案なんだけど…ときーちゃん。加奈子の彼氏がカメラをやっていて、最近人を撮るようになったらしい。だから、私たちが加奈子の作った服を着て彼氏に写真を撮ってもらわないか?というものだった。「なにそれ、すっごく楽しそう!」「でしょ!最初家族写真のイメージで私と真ちゃんでって言われたんだけど、家族だったら絶対ねーさんや美樹ちゃんたちもいた方が家族って感じだなって。真ちゃんも加奈ちゃんもそっちのが良いって言ってたから聞いてみようって」きーちゃんも私たちのことを家族だって思ってくれてたんだ。
旦那は一足先にきーちゃん達の所へ単身赴任したけど、翌週の連休に私たちもきーちゃん達のところへ。加奈子が言ってくれた家族写真を撮りに。
「超ひさしぶりーーーー」加奈子は相変わらずで、やっぱり加奈子のノリも大好きだし落ち着く。加奈子と彼氏が今回の写真のイメージを話してくれる。私、旦那、きーちゃん、真ちゃん。そして子供たち。7人での集合写真も撮るけど、その他にも普段の様子も撮りたいとのこと。「それをさ、一冊にまとめたら良くない??」と加奈子。「やだ、それ最高!!」私たち女子組は盛り上がるけど、男子チームは「そんなの恥ずかしすぎる」となんだか遠慮している。
集合写真はスタジオを借りて撮る。ちゃんと服に合わせて毎回ヘアメイクを変えてくれるそうで、加奈子の専門学校の後輩女の子2人と男の子2人も来てくれた。男の子の方は美容師の卵らしい。本格的ねー。加奈子が用意してくれた私の服はもちろん黒い細身のワンピース。よくわかってるじゃない。「やっぱり悪い魔女やでwww」着替えた私を見て旦那と真ちゃんが言う。後で覚えてらっしゃい。きーちゃんにくっつけないように魔法をかけて差し上げましょうか?きーちゃんは白いブラウスと黒のコルセットのついたミニスカート。「ラスボス感出るからキリコは下に座った方がいいんじゃない?」加奈子までラスボス感とかどういうことよ。それを聞いてきーちゃんはケラケラ笑う。私と娘は下に、旦那はタマキを抱っこ。マハルはきーちゃんの隣が良いと言い張った為、真ん中の椅子にはマハル、きーちゃん、真ちゃん。何だか緊張するけど楽しい。
ポジションを入れ替えて何枚か撮ったり、私ときーちゃん2人だけだったり、子供達だけ。私たち5人。私たち夫婦。色んなパターンで撮影。結構楽しくて、写真に撮られるのクセになりそう。「真ちゃんらさ、なんでメイクしてもしなくてもそんなに変わらないの?腹立つわぁ」衣装に合わせて加奈子と加奈子の後輩ちゃん達がヘアメイクもしてくれるけど、真ちゃんもきーちゃんもさほど普段と変わらない。どういうことよ。「結構変わると思ったけど、お化粧しても変わってない?」とショックを受けるきーちゃん。「キリエは元々可愛いから変わらんのやで」「そうなん?それならいいや♪」おい、こら、そこの馬鹿夫婦。ちょっとは自重しなさい。公衆の面前で目のやり場が困るほどイチャつくな。父さんは眉間にシワ寄せるし、後輩ちゃん達は「キャー」なんてキュンキュンしてるけど彼氏くんはドン引きしてるじゃないの。けど、きーちゃんが褒め言葉を素直に受け取ることが出来るようになっていて嬉しい驚き。
「じゃーん、久しぶりに特殊装備ーーー」きーちゃんが、式で着た黒無垢を着て登場。「きーちゃんすっごーーーい!かわいいーー!」とマハルと後輩ちゃん達、加奈子のテンションが上がる。本物のお姫さまみたいだもんね。「私もナマで見たかったんだもん」と加奈子。「場所は違うんだけどねーー」と言いつつ、車で移動して外で撮影。今回の撮影を外でするために、いろんな所に撮影許可を取りまくったらしい。加奈子の行動力は相変わらず凄すぎる。加奈子は花嫁行列もやりたかったみたいだけど、人数が用意できなくて断念したと悔しそうに教えてくれた。
和装の婚礼衣装を着た2人は、外ではとっても目立つ。笑観光客にも写真撮られて、照れまくる2人。それでも、日本庭園に立つと私も見とれるくらい絵になっている。ちょけて石段から2人でジャンプしてるのを撮るのはどうかと思うけど。せっかくの絵になる2人が台無し。
「そう、私、日本のトップモデル!」外国から観光に来たという若者3人がとっても食いついて私に「プロのモデルなの?」と聞くからそう答えてみた。「嘘教えんなし。外交問題に発展したらどうすんねん」と旦那は苦笑していたけど、信じてそんな所に立ち会えるなんて!と喜んでいたからいいじゃない。日本の良いお土産になるじゃない。
外での撮影が終わったあとは、後輩ちゃん達と別れて加奈子&彼氏くんを連れてきーちゃん達の家へ移動して普段の様子の撮影。3分クッキングごっこの流行りはまだ続いていたらしく、お人形さんとパンクな兄ちゃんの変わった2人による3分クッキングもしっかり写真におさまった。マハルも憧れのお侍さんになってなかなか着物を脱がない。
加奈子の行動力には驚かされるけど、加奈子の彼氏の行動力もなかなかなもので、翌日には写真を現像して2人が届けてくれた。「本にはまだできてないけど、ひとまず」と言って見せてくれた写真。
「すっごくいいと思わない?本にするのに厳選が必要だわー」と加奈子が言う通りどれも素敵。家族写真は大きく1ページにしたいという。ホント、家族写真は傑作だと思うわ。子供達が公園で遊んでいる写真は、キッズモデルみたいで本当にかわいくて「うちの子モデルデビューさせてみる?」とダンナに言うと「親バカが過ぎるわ」と一笑された。
今回も絶対撮りたいと言われて撮った2度目の紅差しの儀。これもまたいい感じ。「魔女が花嫁に呪いをかけてるようにしか見えん」と笑う旦那。どういうことよ、その呪いをかけてる魔女はあなたの妻ですけど。「何度見ても絵になる2人だよね。私ときーちゃん。」と言うとやっぱり旦那は無表情に。ホントどういうことよ。きーちゃんと2人でお茶を飲みながら話しているところも撮られてた。
「美樹ちゃん、やっぱり飲んでる所撮られてるよー」ときーちゃんが笑う。しっかり飲んでるところが撮されている。しかもちゃんと飲んだビールの缶や焼酎の瓶まで入ってる。「呑んだくれ感バッチリじゃない」「いつもそんなに飲んでへんやないかwww」酔った真ちゃんがきーちゃんに絡み、旦那がマハルの刀で真ちゃんを斬る。我が家のお馴染みの風景もちゃんと撮られている。これが無いとね。彼氏くん、良く分かってるわ。きーちゃんを巡って、マハルと真ちゃんが刀を交える写真も何だか可愛い。
きーちゃんに抱っこされて満面の笑みを浮かべるマハルの写真も可愛い。何枚か家に飾ろうと思ったけど、良いと思ったものを飾ろうとしたら壁一面必要になりそう。
婚礼衣装のきーちゃんと真ちゃんの写真はどれも素敵だった。手を繋いで向き合って笑う写真が一番好き。ちょけて石段からジャンプしてる写真が意外と普段の2人の表情を写していた。
加奈子達が持ってきてくれた家族7人の写真はきーちゃんの作ったワイヤーアートのフォトフレームに入れられて、リビングに飾られた。「これはね、幸せのフレームなの。幸せと嬉しい氣持ちをね閉じ込めたん」ときーちゃん。幸せのフレームの私たち。私たちだけの家族のかたち。
私の大切な家族が収められた写真集、出来上がりが楽しみ。